報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

愚痴より小説書いてる方が楽しかったりしてw

2013-12-01 15:12:40 | 日記
 “妖狐 威吹”より、「元顕正会員vs現役法華講員」

[ある夏の土曜日16:30.東京都中央区銀座2丁目 威吹邪甲&稲生ユウタ]

「お大事に」
「どうも、お世話様でした」
 ユタと威吹は、あるクリニックから出てきた。
「ここが妖狐族の指定病院なんてね……。フツーのクリニックじゃないか」
 ユタは外に出てから、改めてクリニックの外観を見て言った。
「……だね。400年も経って、さすがに制度の改変があったことをすっかり忘れていた。無論、そんなの理由にならないからね」
 盟約者は年に1度の割合で、妖狐族が進出している医療機関にて健康診断が義務付けられていた。
 “獲物”に疫病をうつさない、うつされないための対策らしい。
 制度改変を知ったのはユタ。
「しかし、僕と威吹の関係なんて絶対秘密なのかと思ったら……」
 ユタは買ったばかりのスマートフォンを出した。
「他の“獲物”さんが、自分達のことフェイスブックで公開しているのには驚いたよ」
「ふぇいすぶっくって、何だい?」
 威吹は首を傾げた。
 ユタが開いたFBは、京都に在住しているという“獲物”の女性のものだった。相手の妖狐は、また威吹とはまた違うクーリッシュなタイプのイケメンだ。
 制度改変のことは、このFBで知った。連絡を取ってみたら親切に教えてくれたが、あいにくと指定医療機関は埼玉には無く、都内まで出ないとダメらしかった。しかも、ここ銀座だった。
「ん?」
 一方通行の路地裏。ユタは何故か落ちている紙切れが気になった。一瞬、JRの“みどりの窓口”や指定席券売機で発行されているキップのように見えたのだ。
「何だ、馬券か……」
「馬券?」
「そういえばこの近くに、ウインズがあったな」
 ユタは軽く威吹に説明していた。
「……なるほど。何となく分かった。で、その馬券とやらが当たったら、どうするんだい?」
「僕もやったことは無いんだけど、要はこれを換金するわけさ。ちょっと行ってみよう」
 現代の文化を教えてあげるのもいいだろうとユタは思った。
「今はこれも機械で、換金できちゃうからね」
「ふーん……」

[16:40.JRAウインズ銀座 威吹、ユタ]

「車通りまーす!ご注意くださーい!」
 警備員達の交通誘導を横目に入場する。どこのウインズでも、入場料は無料だ。入場だけなら、年齢制限も無い。
「要はね、買った馬券をあの機械に入れると、勝手に計算して換金してくれるんだ」
「ほおほお……」
「まあ、これは外れ馬券だろうから、突っ込んだところで、弾かれるのがオチだけどね」
「どうやるの?」
「ちょうど今、空いてるな。こうやるんだよ」
 ユタは馬券を機械に通した。
「でね、もしこれが当たっていたら、掛け金とオッズに応じた賞金が出てくるんだ」
「へえ……」
「外れていたら、馬券だけが出てくるから」
〔お札をお取りください〕
「ほら、こうやってお札を取れ……はい!?」
 ユタは機械の方を向き直った。すると、今度はジャラジャラと端数分と思われる小銭も出てきた。
「え……?」
 ユタ、しばし固まる。そんなユタの様子を見て、威吹は首を傾げた。
「ん?当たっていたのかい?ユタ、金はもう出てきたみたいだけど?……ユタ?どうしたの?」
「えー……と」
「? 賞金が足りないのかい?もし何だったら、ボクが主催者に直談判してくるけど?」
「い、いや、違う……」
「おい、兄ちゃん達、何やってんだよ?早く金取ってどけよ」
 後ろから60代くらいの壮年客が煽ってきた。
「は、はい!」
 ユタは金を取って、取りあえず機械から離れた。
「ひぃ、ふぅ、みぃ……。札は10枚あるな。で、小銭の方が……」
 威吹は金勘定をしていた。どうやってしまっていたのか、懐からそろばんを出して計算している。
「い、威吹……」
「ん?」
「取りあえず、ここ離れよう……」
「? うん」
 ユタは無造作に金を財布に入れた。
「だからよ!オレの当たっていた馬券がどこか落としたんだって!!」
「いや、お気持ちは分かりますがね、お客さん。だけど、現にその馬券が無いんじゃ、どうしようも無いんですよ」
 緑色の制服を着た職員(整理員)に食って掛かる男の姿をユタは見つけた。
 暑い夏だというのに黒いジャケットを羽織り、下は黒いズボン。身長は180センチ以上、体重も100キロくらいはありそうな大柄で強面の男だった。
「10万だよ、10万!間違いなく当たってんだって!落とした場所は分かってんだ!シルバーフォックス・クリニックの前だよ!行ってみたら無かったんだ!誰かに拾われたんだよ!」
「いや、ですからね……」
「オジさん」
 そこへ1人の通り掛かった小学生くらいの少年が話し掛けてきた。
「誰がオジさんだ!まだ32だぞ!」
「いや、小学生から見りゃオッサンだよ、兄ちゃん。タケシ、知らねぇオッサンに話し掛けるなって言ってんだろー。帰るぞ」
「はーい」
 さっきユタ達を煽った壮年客だった。
「そういや、さっきも10万当てた兄ちゃん達がいたな。だから、本命のオッズがクソだったんだな……」
「うん。てゆーか、拾ってきたヤツだよ、じいじ」
「はははっ、マジかよー。超ラッキーな連中だなー」
「ちょ、ちょっと待った!」
 黒ジャケットの男は、壮年と少年を呼び止めた。
「拾った場所ってどこだ!?」
「あのクリニックの前」
 と、少年は指さした。
「俺が落とした所じゃねーか!拾った奴はどこに!?」
「そこで換金してたよー」
「なにっ、じゃああの兄ちゃん達がそうだったのかー。ますますラッキーな連中だぜ」
 壮年の男は孫の手を引きながらも、もう片手には缶ビールを片手にしている。
「1人は長い銀髪に着物着てたぜ」
「着物!?」
「おう。上は白っぽいヤツで、下は紺色の袴だったかな。多分、遠くからでも分かるぜ」
「くっ……」
「あっちの出口から出てったよー」
 と、少年は東口、マクドナルドの方を指さした。
「じいじ、マック食べたーい」
「ちっ、しょうがねーな。このビール飲んでからな」
 
[16:50.銀座2丁目→東京メトロ銀座一丁目駅 ユタ、威吹]

「……そういうことだったのか」
 ユタから事情を聞いた威吹は、ようやく理解した。そして言う。
「まあ、あの時点で、馬券とやらが当たっていたかどうかなんて分からないし、それに落とす方が悪い
「とどのつまり、この一言に尽きるんだけどね」
 ところが、当の落とした本人はそれで納得できるわけでもなく……。
「いた!着物姿の男!」
 黒ジャケットの男は、すぐに威吹達を発見した。
「おう、コラ!待てやーっ!!」
「うわ、見つかった!」
 ユタは飛び上がった。
「逃げろ、威吹!」
「承知!……狐妖術、“惑”!ハっ!!」
 威吹は妖術を放った。
「うっ!?」
 男は威吹とユタが、何人もいて、それぞれが別の方向に逃げていくように見えた。
「このやろ!催眠術か、何かか……!ん?催眠術……?」
 男は何かを思い出そうとしている。

 威吹達は銀座一丁目駅の改札口まで来ていた。
「ふう……。ここまで来れば……」
 ユタは息が上がっていた。
「あちぃ……」
「この時代の江戸の夏は暑いね」
「夏でも涼しかった江戸時代が羨ましいくらいだ」
「もう大丈夫かな?」
「だいぶ幻惑させたからね。むしろ、ここまで来ることは……」
「コラーッ!見つけたぞ!」
「げっ!?」
「え?オレの妖術、効かなかっ……た?」
 威吹は困惑した。男の手には、数珠らしき物が握られていた。
「威吹、電車に乗るぞ!」
「う、うん!」
 威吹はユタからSuicaを与えられ、電車の乗り方も教わっていた。2人はすぐに改札内に飛び込んだ。
「待てや、コラ!」
「ちょ、ちょっとお客さん!」
 駅員が男を止める。
「Pasmoか乗車券をお買い求めください!」
「それどころじゃねーんだよ!!」
「お急ぎなのは分かりますが、電車すぐ来ますから」

[17:10.東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅2番線→西武6050系車内 威吹、ユタ]

「よしっ、ちょうど電車がいた!」
〔「新木場行き、ドアが閉まります」〕
 2人が飛び乗ると同時に、ドアが閉まる。
「助かったー」
 そこへ男も走ってきたが後の祭りで、電車はすぐに走り出した。
〔次は新富町、新富町です〕
〔The Next station is Shintomicho.〕
「ここから、どうやって帰るの?」
 威吹が当然の質問をしてきた。
「あ、そうか。いいルート考えないと……」
 ユタはドアの上にある路線図を見た。

[17:15. 銀座一丁目駅 黒ジャケットの男]

「思い出した!確かあいつら、催眠術でうちの講員を無理やり顕正会に入れた顕正会員達じゃねーか!」
 男は憤慨した様子で、携帯電話を取り出した。
「東京地区班長、藤谷から一斉緊急連絡!顕正会員2名、俺の金を窃盗して新木場方面に逃走中。江東区並びに江戸川区の講員達は、直ちに新木場駅周辺を固めろ!」(次回に続く)

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 何かあまり藤谷のイメージが良く書かれていないが、これは威吹を視点としたスピンオフだから。全体的に威吹から見て信仰者のイメージが悪いために、こういった表現になっている。
 本来、拾得物横領のユタが悪く書かれていないのも、威吹から見れば悪事ではないから。

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2 コメント

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Unknown (ポテンヒット)
2013-12-01 17:07:49
職場の鉄子にムリヤリ付き合わされて、夜勤明けのダリ~身体で東武ファンフェスタに行ってきた……わけだが、結論から言うとスッゲ~つまんなかったorz

鉄イベントに行ったら何をする……?見るとか撮るとか知るとか、とにかく鉄を楽しむよな?しかし、女の感性は違うようだ。ず~っと食堂でひたすらお喋りであるorz

それでも鉄の話しをするんならまだいい。鉄子の話題は職場の悪口ばかりである。せっかく南栗橋に来たってのに、俺はただのグチの聞き役だったぜorz

ちなみに南栗橋のフードブースのバラエティー豊富な食いもんは、高いだけで大した事ない。ボートピア栗橋のほうが安くてウマ~であるw

ボートや競輪の結果など知らん。今は眠いし知るの恐いから明日ダイジェスト見るw
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ポテンヒットさんへ。 (ユタ)
2013-12-01 18:19:03
 お疲れさまです。コメントありがとうございます。

 鉄子さんって本当にいるんですね。

 他にもバス会社で似たようなイベントがあったようですが、私もまた泊まり勤務明けでしたので、帰って寝てましたw
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