報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「厳戒態勢」 2

2024-09-09 20:26:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月10日18時00分 天候:雨 沖縄県那覇市某所 那覇中央ホテル1階ロビー]

 ロビーのソファに座り、私達修学旅行引率者は、明日の予定についてどうするか話し合った。
 表向きには、市内で発生した連続殺人事件の犯人が逃走中だからという理由で、今夕の市内散策は中止になっている。
 もっとも、外は本格的に雨が降り出し、今は強くなったり弱くなったりの天気だ。
 今夜一杯、雨は降り続けるという。
 生徒の中には折り畳み傘を持って来ている者もいたが、殆どの生徒は傘を持って来ていない。
 なので、例え厳戒態勢でなくても、外に出る生徒は少なかったかもしれない。
 明日は空港に集合するまで、自由行動ということになっている。
 1番安全なのは、予定を早めて帰京することだろう。
 だが、個人旅行なら飛行機を別便に切り替えることは簡単にできるだろうが、団体旅行だとなかなかそう簡単にはいかない。

 坂上「旅行会社に問い合わせてみましたが、私達まるっと早められる飛行機は無いそうです」
 倉田「バラバラで帰ってもらいます?」
 三上「それだと、団体行動の意味が無い。羽田空港までは団体行動というのが原則です」

 本来は羽田空港で解散することになっている。

 愛原「1番安全で確実なのは、明日もホテル内待機ですね。ただ、那覇空港まで行こうとすると、モノレールの駅が最寄りですが、東京モノレールほど大量輸送できる交通機関ではありませんし、かといって明日、急にバスが手配できるかというと、恐らく難しいでしょう」
 高橋「真っ昼間なら大丈夫なんじゃないスか?」
 愛原「事件はその昼間に起きたわけだからねぇ……」
 高橋「うっ……」
 愛原「それも、この近くではないとはいえ、同じ那覇市内だ。生徒達がバラバラに行動して、危険な目にでも遭ったりしたら困る。……というのが正論だろうな」

 私達は犯人が誰か分かってる。
 そして、恐らくその犯人は、無関係の生徒は襲わないだろう。
 狙われるのは、リサだ。
 ただ、そうなると、逆に生徒の安全の為にはリサを離した方が良いとも言える。
 つまり、逆に生徒達には自由行動してもらい、リサにはどこかに隠れていてもらうということだな。
 それを果たして、どうやって説明するべきか……。

 愛原「ん?」

 その時、私のスマホに音声着信があった。
 画面を見ると、それは善場係長からだった。

 愛原「ちょっと、失礼します」

 私は電話を手に、ロビーの隅に移動した。

 愛原「はい、もしもし?」
 善場「愛原所長、お疲れさまです。善場です」
 愛原「善場係長、お疲れ様です」
 善場「状況が状況なので、私も今から沖縄に向かいます」
 愛原「はい!?」
 善場「本日、最終便のチケットが取れましたので、深夜にはなりますが、一応お知らせしておきます」
 愛原「そんなにマズい状況なんですか?」
 善場「何せ相手は、リサに匹敵する相手です。それが何の制御も監視も無く、動き回っているのだから当然です。修学旅行の方はどうですか?」
 愛原「今、那覇市内のホテルにチェックインしています。今、天候が悪いのと、市内が厳戒態勢ということもあり、予定されていた市内散策は中止となりました。生徒達にはホテルから出ないよう、厳重に言い渡しております」
 善場「マスコミの報道によると、表向きには連続殺人事件の犯人が逃走中だからということになっていますね。それも、通り魔の」
 愛原「そうです」
 善場「これが本当なのであればそれでいいのですが、今回は違いますからね」
 愛原「斉藤早苗……ですね」
 善場「狙いはリサでしょう。ある意味、リサは他の生徒達から離した方が安全かもしれません」
 愛原「やはりそうですか。どうしましょう?今からでも、リサをシングルルームに替えてもらいましょうか?」
 善場「いえ、それだと周囲から怪しまれるので、今夜は部屋はそのままで結構です。斉藤早苗はあまり目立つようなことはしたくないようですので、皆が集まっているホテルに侵入してまで何か行動を起こすというようなことは無いでしょう。問題は明日ですね。明日は自由行動ということで、リサが1人になった時を狙うかもしれません」
 愛原「やはりそうですか。どうしますか?リサはホテルに待機させますか?」
 善場「それには及びません。BSAAに依頼して、リサを保護してもらいます。その指示はレイチェルにも行っているはずです。幸い沖縄には米軍基地があり、そこにBSAA北米支部日本国派遣隊がいますから、そちらに匿ってもらいます」
 愛原「さすがに軍用基地にまで侵入はできないでしょうからね」
 善場「いえ、すると思います」
 愛原「はい!?」
 善場「むしろ、それが狙いです。軍用基地内でしたら、多少目立った攻撃をしても、いくらでも誤魔化せますから」

 善場係長は、そこで斉藤早苗を仕留めるつもりなのだ。

 善場「明日、ホテルのチェックアウトは何時の予定ですか?」
 愛原「9時です」
 善場「分かりました。レイチェルは北米支部から指示を受けていると思いますので、その通りにしてください」
 愛原「私達、米軍基地に入れますかね?」
 善場「私共からBSAA日本地区本部隊を通して、その申請はしています。まだ、許可は下りていませんが……。翌日に改めて確認をしますので、その時にまた連絡します」
 愛原「承知致しました」

 私が電話を終え、先ほどの席に戻ると、打ち合わせは終わっていた。
 一応、結論としては、自由行動の中止はしないとのことだった。
 その代わり、『最低3人以上のグループで行動すること』『1人だけで行動しないこと』『裏通りなど、人けの無い所には立ち入らないこと』『警察の指示には絶対従うこと』を生徒達に言い聞かせるのを最低条件とした。
 それを聞いた上で、私は坂上先生に善場係長からの電話の内容を伝えた。

 坂上「そうですか。ではやはり、この決断は正しかったようですね」
 愛原「はい。他の生徒に危害は及ばないと思いますので、自由行動を制限する必要は無いと思います」
 坂上「承知致しました」

 レイチェルの話によれば、那覇市の北隣の町、浦添市に『キャンプ・キンザー』という米軍基地がある。
 幸いそこにBSAA派遣隊が駐留しているので、そこに匿うことは可能だという。
 歩いて行けるわけではないが、車を使えば簡単にアクセスできる距離だし、実はモノレールも比較的近くを走っている。
 だから、帰りの飛行機の時間まで匿ってもらい、あとはしれっと車なりモノレールなりで那覇空港にアクセスすれば良いと思っていた。
 この時は。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「厳戒態勢」

2024-09-09 16:00:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月10日15時50分 天候:雨 沖縄県国頭郡金武町 沖縄自動車道上り線・伊芸サービスエリア→琉球バス交通貸切バス車内]

 出発の時間になる頃、また雨足が強くなってきた。

 リサ「あーん、濡れちゃったー!先生、見て見て。スケブラ」
 愛原「さっさと体拭きなさい!」

 リサのブラウスは濡れていて、その下に着ている黒いカルバンクラインのブラが透けていた。

 リサ「はーい」
 愛原「ここで脱ぐな!」
 レイチェル「BOWは風邪引かないから大丈夫ですよ」
 愛原「それもそうだ」
 リサ「えー……」

 バスガイド「それでは皆様、お揃いになりましたので、出発致します。何事もなければ、このまま皆様の宿泊先へ向かいたいと思います。所要時間は、およそ1時間を予定しております。再び高速道路を走行致しますので、シートベルトの着用をお願い致します」

 レイチェルにも聞いてみたが、やはりBSAAでも情報は掴んでいるという。
 ピンポイントとはいえ、強化型Tウィルスの感染者が2人出たということで、BSAAでは今厳戒態勢中とのこと。
 表向きには……。

 坂上「えー、皆さんに1つ連絡があります」

 2号車の引率教師の1人で、リサの担任の坂上先生が車内のマイクを手にした。

 坂上「本当はホテルに着いたら、夕食まで市内散策という予定になっていましたが、今回はキャンセルして、ホテルの中で待機していてもらいます。と言いますのは、このような悪天候というのも去ることながら、今、那覇市内で連続通り魔殺人事件が発生し、その犯人は今もなお逃走中とのことです」

 そう。
 表向きには殺人犯が逃走中の為、那覇市内は厳戒態勢ということになっている。
 強化型Tウィルスによって、デイライトが雇った調査員2人が死亡している。
 尚、この調査員というのは、デイライトの職員ではなく、私達と同様、デイライトと契約した探偵業者とのこと。
 私達は直接リサの監視に当たっている為、同時に我那覇絵恋の家は見張れない。
 そこでデイライトは、別の探偵業者に依頼したようである。
 そしたら、このザマだ。

 坂上「よって皆さんの安全の為、ホテルの中で待機ということになりました。もう1度念を押しますが、絶対にホテルからは出ないように。以上です」
 男子生徒A「マジか……」
 男子生徒B「沖縄の夜がぁ……国際通りの夜がぁ……」
 男子生徒C「オッサンか、オメェはw」

[同日17時00分 天候:雨 沖縄県那覇市某所 那覇中央ホテル]

 那覇市内に入ると、確かに何台ものパトカーとすれ違った。
 それどころか、大通りでは軍用車までいて、沖縄駐留米軍の物かと思ったが、車体には『BSAA NA』と書かれていた。
 BSAA北米支部である。
 沖縄駐留米軍の基地に出向して、警戒態勢に入っているようだ。
 レイチェルの所属でもあるが、レイチェルは別に何か反応するわけではなかった。
 ただ、時折インカムで、英語でどこかとやり取りしているだけだった。

 バスガイド「皆様、長らくのご乗車お疲れ様でした。バスはまもなく、皆様の最後の宿泊先、那覇中央ホテルへと到着致します。どうか、お忘れ物の無いように、よくお確かめください」

 バスはホテルに予定通りに到着した。
 最初に泊まった沖縄ホテルと同様、洋室や和室が存在するホテルである。
 シェラトン沖縄サンマリーナ・リゾートほどの高級感は無いものの、ビジネスホテルのようなチープさも無い。
 レストランも併設されており、夕食や朝食はそこで取れるようである。
 また、大浴場もある。

 愛原「よし、忘れ物無し」
 高橋「こっちもオッケーです」

 このバスとは、今日でお別れとなる。
 その為、忘れ物、落とし物チェックは念入りに行わなければならない。

 愛原「オッケーです」
 バスガイド「ありがとうございました」

 私達もホテルに入る。
 既に生徒達はロビーに集まっており、三上先生が改めて、ホテルからは出ないように注意を呼び掛けていた。
 その代わり、ホテル内では比較的自由に過ごさせることにする。
 夕食は団体予約にしているので、19時に1階のレストランに集合とする。
 大浴場に関しては、特に使用時間を定めない。
 ヘタに定めてしまうと、そこに生徒の利用が集中して、却って他の宿泊客の迷惑になる恐れがあるからである。
 分散させれば迷惑になりにくいという考えだ。
 また、部屋にもユニットバスがあるので、それを使ってもいい。

 リサ「おー、ゲリラ豪雨」

 特に雷は鳴っていなかったが、確かに雨が強くなっていた。

 三上「それでは各自、鍵を受け取り、部屋に待機しているように」
 坂上「夕食前に入浴してもいいですが、部屋備え付けの浴衣とかは寝る時に着てくださいね」
 三上「おっ、そうだった。それと、引率者の皆さんは、明日のことについて打ち合わせしますので、荷物を置いたらロビーに来てください」
 愛原「分かりました」

 私は鍵を受け取り、エレベーターに乗って、自分達の部屋に向かった。

 

 愛原「うん、まあまあの部屋だな」

 生徒達は基本、和室に4人一組で泊まるとのことだが、私達引率者は洋室シングルやツインである。
 設備的には、ビジネスホテルとそんなに変わらない。
 ただ、ペットボトルの水が2本サービスで置いてあった。

 高橋「先生!大浴場付きですって!」
 愛原「だから、引率者が生徒達と一緒に入っちゃダメだって」
 高橋「えー……。でも、このホテルの風呂は、洗い場が無いっスよ」

 ユニットバスの造りは、ビジネスホテルと同じ。
 3点ユニット方式である。

 高橋「広い風呂でゆったりする方がいいっスよ!」
 愛原「つっても、温泉じゃないしなぁ……」
 高橋「せんせぇ……」(´;ω;`)
 愛原「分かった分かった。前向きに検討に検討を重ねるよ。岸田総理みたいに」
 高橋「それ、何もしないってことじゃないっスか!」
 愛原「さーて、打ち合わせに行くぞ!打ち合わせ!」
 高橋「先生!」

 私はさっさとロビーに向かった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする