報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「千葉県成田市」

2024-07-03 15:51:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月15日15時58分 天候:曇 千葉県成田市花崎町 京成電鉄京成本線14A07電車・先頭車内→京成成田駅]

 京成上野駅から凡そ1時間強。
 京成線内では、スカイライナーの次に速い快速特急電車は京成成田駅に接近した。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく、成田、成田、終点です。お出口は、左側です。この電車は、次の成田駅が終点です。どなた様もお忘れ物、落とし物をなさいませんよう、お支度をしてお待ちください。成田からのお乗り換えの御案内です。空港第2ビル経由、成田空港行きは、5番線から16時2分の発車です。東成田線、芝山鉄道線方面、芝山千代田行きは、その後2番線から、16時14分の発車です。この電車は成田で、折り返し運転となります。本日も京成をご利用頂き、ありがとうございました」〕

 自動放送を流していた車掌だったが、終点前になると、肉声で放送を始めた。

 愛原「およそ1時間か。まあ、まだ先があるがな」
 リサ「まだ、乗り換えあるんだね」
 愛原「次が最後の乗り換えだよぉ……。腰が痛くなる……」
 父親「何だぁ?情けないな。今の電車の座席は、割といいじゃないか。父さんが若い頃の国電は……」
 愛原「あー、はいはい。その話は既に耳にタコ」

 『マル生打倒』とか、『共闘』とか落書きされた電車で通勤してた話とか聞かされた。
 ニューヨークの地下鉄は市民が落書きしていたが、日本の旧国鉄は職員が落書きしていたという体たらく。
 乗客が落書きしても文句は言えないぞ?
 そして、電車は京成成田駅1番線に到着した。

 

〔「ご乗車ありがとうございました。成田、成田、終点です。お忘れ物、落とし物の無いよう、お降りください。1番線に到着の電車は折り返し、16時5分発、快速特急、上野行きとなります。本線、成田空港行きは5番線にお回りください。16時4分発、成田空港行きにお乗り換えできます。東成田線、東成田方面、芝山千代田行きは2番線でお待ちください。16時14分発、芝山千代田行きが参ります」〕

 愛原「ここで待ってろってさ。多分、この電車が折り返し発車して行ったら、芝山鉄道が来るダイヤになってるんだろう」

 実際は、次の東成田駅までが京成電鉄。
 そこから先の芝山千代田駅までの1区間が芝山鉄道線となる。
 但し、運転系統上は京成成田~芝山千代田となっている為、殆ど同一と見て良い。
 時間帯によっては、本線との直通電車も存在する。

 リサ「ちょっと、トイレ行ってきていい?」
 愛原「いいよ」

 1番線、2番線の下り方向にトイレがある。
 多くの乗客は、5番線へと向かって行った。
 成田空港に近いからか、外国人が多く見られる。
 私はホームの上にある自販機で、飲み物を買い求めた。

 愛原「やれやれ、もう少しだ」
 父親「駅から温泉は近いのか?」
 愛原「徒歩数分だよ」
 父親「そりゃあいい。あとは明日、温泉から空港へのアクセスだな……」
 愛原「送迎バスがあるよ」
 父親「そうなのか!それは便利だ!」
 愛原「まあね」

[同日16時09分 天候:晴 京成成田駅→京成東成田線1681電車・先頭車内]

 1番線の特急電車が発車して行き、その5分後、2番線に4両編成の電車がやってきた。
 フロント部分には、『ワンマン』の表示がある。
 ステンレス製の車体だが、本線を爆走する他の電車と比べれば、明らかに古い車両だった。
 かつては本線を爆走していた電車が、老朽化してくると、支線に回すというやり方は、日本の鉄道会社ではよくあることだ。

 

 車内も、座席などは新しく交換されているのだろうが、天井には懐かしい扇風機が回っている。

 愛原「昔の仙石線みたいだなぁ……」

 私は座席に腰かけながら、そう呟いた。
 連結器上の銘板を見ると、製造が昭和40年代になっている。

 愛原「昭和40年代の電車か。ますます、仙石線の103系と同世代だな」
 リサ「昭和40年代……」
 愛原「ヘタすると、オマエの両親が逃避行していた時期じゃないのか?」

 上野医師の日記では、1970年代半ばになっていた。
 リサの実年齢はアラフィフ。
 アラフィフなら、70年代生まれだろう。

 リサ「そうかも……」
 愛原「この電車が新車だった頃の話だ」
 リサ「へえ……」

 天井にはゴツい冷房の吹き出し口がある。
 まるで後付けのように見えるが、恐らく最初から付いていたのだろう。
 私鉄では旧国鉄よりもサービスの良さをアピールする為、冷房化は欠かせなかったとされる。
 それでも扇風機が設置されているのは、まだこの電車が本線を爆走していた頃、乗り入れ先の都営浅草線では昔、冷房の使用が制限されていた為(トンネルの熱排気が不十分だったらしい)、それの対策用とのこと。

〔京成電鉄をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、普通、芝山千代田行きです。この電車は、ワンマン電車です〕

 先頭の運転席に運転士が乗り込み、機器を操作している。
 そうしているうちに、自動放送が流れた。
 本線で流れていた物と同じ、女性声優のものである。
 但し、本線のは車掌が手持ちのタブレットで操作しているとのことなので、ワンマン運転のこちらは、本当に自動で流れるものなのだろう。
 バスの自動放送と違って、運転中に操作はできないだろうからだ。

〔「16時14分発、東成田経由、芝山千代田行きです。京成上野、空港第2ビル、成田空港方面には参りませんので、ご注意ください」〕

 ワンマン運転なので、肉声放送は運転士が行う。
 尚、次の東成田駅でも成田空港にアクセスすることはできる。
 何しろ……かつては、そこが成田空港駅だったからだ。
 今でも空港第2ビルまでの徒歩連絡通路が完備されているくらいだ。
 また、駅の外の公道には、成田空港ターナミナル間無料循環バスの停留所もあり、それで第1ターミナルや第3ターミナルへのアクセスも可能。

 高橋「先生~」
 愛原「何だ?」
 高橋「タバコ吸いたいっス」
 愛原「電車ん中は禁煙だ。昔の千葉のヤンキーじゃあるまいし」
 パール「ワンマン電車は、監視の目の届かない後ろの車両が狙い目……」
 愛原「温泉に着いたら、喫煙所あるから!」
 リサ「先生、肉食べたーい」
 愛原「夕食の時にあるから!」

 取りあえずは、この3人の欲求を押さえなくては……。

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