報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「事件の後の帰宅」

2024-07-17 20:36:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月21日20時45分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家]

 雨が降る中、リサと愛原は帰宅した。
 留守番していた高橋夫婦が1階ガレージのシャッターを開けてくれていたおかげで、デイライトの車はその中に入ることができた。
 よって、リサ達は雨に濡れずに帰宅できたのである。

 善場「到着しました」
 愛原「ありがとうございます」
 善場「リサは改めて明日、警察による現場検証がありますので、お付き合いください」
 愛原「警察……警視庁のレベルなんですか?」
 善場「現場検証には、私も付き合います。やはり教育機関で、殺人未遂事件が起きたことは重大ですから」
 愛原「まあ、私も再度学校に行くことになりそうですがね」
 リサ「そうなの!?」
 愛原「臨時の保護者会が行われる。リサ達もリサ達で、月曜日の全校朝礼は長くなるだろうな」
 リサ「うへー……わたしは被害者なのに」
 愛原「それだけ衝撃が大きかったということさ」
 リサ「それにしても、どうして城ヶ崎弟はわたしが犯人だって疑ったんだろう?」
 善場「何でも生徒会長が失禁するところを、都合良くカメラで撮影した人物がいたそうです」
 リサ「ギクッ」
 善場「その動画データが、彼女の自室から見つかったそうですよ」
 愛原「それにしたって、撮影者は分からなかったはずですが?」
 善場「それ以外については、警察の取り調べ中です。とにかく明日、警視庁の現場検証に御協力をお願いします」
 愛原「分かりました」

 リサ達は車から降りた。

 善場「それではお疲れ様でした」
 愛原「お疲れ様でした。また明日、よろしくお願いします」
 善場「こちらこそ。現場検証は10時からです。9時半にはお迎えに参りますので」
 愛原「えっ?」
 善場「どうかされましたか?」
 愛原「わざわざ迎えに来て頂けるんですか?」
 善場「はい。私共で監視しているBOWに問題が発生しましたので。もちろん、現場検証と臨時保護者会は開催が被るでしょうから、愛原所長はPTA会長として、保護者会の方を優先して頂いて構いません」
 愛原「分かりました」

 デイライトの車が出て行くと、愛原はガレージのシャッターを閉めた。

 愛原「参ったなぁ……」
 リサ「とんでもないヤツだったね。死刑になればいいのに」
 愛原「いや、ならんよ」

 聞いた話、事件を目の当たりにした女子生徒2人も、ショックで意識を失ったり、過呼吸になったりして救急搬送されたそうだ。

 愛原「お前はもう夕食食べてろ」
 リサ「先生は?」
 愛原「明日の緊急保護者会に向けて、色々準備しなくちゃいけないことがある」

 愛原はそう言って、エレベーターのボタンを押した。

 リサ「そうなんだ」
 愛原「PTA会長は色々大変なんだよ」
 リサ「うん、そうだね」

 そしてエレベーターに乗り込み、3階のボタンを押した。
 エレベーターがゆっくり上がって行き、3階に到着する。

 リサ「ただいま」
 高橋「おっ、帰って来た。さすがは殺しても死なねぇ化け物だぜ」
 リサ「わたしを殺したかったら、ロケットランチャー持って来なってね」
 高橋「それでも死にそうにねぇな?」
 リサ「ねぇ!……お腹空いた!」
 パール「はいはい。もう用意してありますよ」

 ダイニングのテーブルの上には、夕食が載っていた。

 リサ「わぁい!」

 リサは鞄をリビングのソファに放り投げると、自分の定位置に座った。

 

 今日はポークソテーのようである。
 リサは箸を手に取ると、ガツガツ食べ始めた。

 愛原「ちょっと俺は下の事務所にいるから」
 高橋「仕事っスか?」
 愛原「明日の緊急保護者会の資料作りさ。元々俺はPTA会長だから、立場上、参加しないといけないんだが、ガチの被害者がリサなもんだから、リサのことを話さないといけないから」
 高橋「メッタ刺しにされたのに、フツーに登校してますなんて、どうボケたらいいのか、ネタ作りが大変っスね」
 愛原「しかも明日は警察の現場検証だろ?尚更だよ」
 高橋「ですねぇ……」
 パール「リサさん……血の匂いが微かにしますよ……!?」

 パールは普段、善場とはまた違うポーカーフェイスをしているのだが、それはシリアルキラーが正体を隠す為の無表情である。
 それが今、微かな血の匂いを嗅ぎ取って、僅かにその片鱗を見せた。

 リサ「あー!だから、ずっとお腹空いてんたんだ!」
 愛原「夕飯食ったら、すぐ風呂入れよ!」

 クリニックに搬送された時、血は現場で拭き取られたのだが、完全にというわけではなかったようだ。

 リサ「はーい」
 高橋「俺、風呂沸かしてきます」
 パール「じゃあ、私は先生にコーヒーでもお入れしますね」
 愛原「ああ、すまない」

 高橋は風呂場に行き、愛原とパールはエレベーターに乗り込んで2階へ下りてしまった。
 よって、ダイニングはリサ1人となってしまう。
 テレビを点けると、民放はバラエティ番組とかをやっていたが、NHKに切り替えるとニュースをやっていた。

〔「……今日午後5時頃、東京都台東区の高等学校で、生徒同士による刺傷事件がありました」〕

 リサ「うわ……やってる」

〔「……こちら、台東区上野の上空に来ています。今日午後5時頃、学校法人東京中央学園上野高校から、消防宛てに、『男子生徒が女子生徒をナイフで何度も刺した』という通報が寄せられました。……」〕

 ヘリコプターからの映像がテレビに映し出される。

〔「……男子生徒は駆け付けた警視庁上野警察署の警察官に取り押さえられ、その場で現行犯逮捕されました。その際、銃声の音がしたということですが、詳細は不明です。男子生徒はひどく興奮しており、当初は警察官に激しく抵抗した為、警察官が発砲したのではと見られていますが、詳細は不明です」〕

 リサ「えっ?レイチェルが撃ってなかった???」

 まさかの揉み消し!?

 リサ「BSAAひでぇ!」

〔「……女子生徒につきましては、救急車で病院に搬送されたものの、幸い命に別状は無いとのことです」〕

 リサ「メッタ刺しにされたら、フツー死ぬんだけどね。……まあ、わたしのことだけどw」

〔「……以上、現場からお伝えしました」〕

 リサ「わたしもインタビュー受けたりして!?」
 高橋「人食い鬼はコイツでーす!皆さん、豆ぶつけてくださーいってか」
 リサ「節分じゃないよ!」
 高橋「いいから、さっさと食っちまえ」
 リサ「分かってるよぉ!どうせ今食べたところで、まだお風呂沸いてないんだし!」
 高橋「4階のシャワー使えばいいのによ……」
 リサ「まあ、先生は『風呂に入れ』と言ったわけだからね。先生の命令はゼッタイ!」
 高橋「そりゃそうだ」

 高橋は大きく頷いた。
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“愛原リサの日常” 「復讐」 2

2024-07-17 15:18:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月19日20時00分 天候:雨 東京都中央区日本橋某所 某クリニック]

 リサはあの後、呼ばれた救急車に乗せられた。
 傷自体はBOW故、すぐに塞がっていた。
 しかし、自分が刺された時に噴き出した血はそのままだから、そりゃ周りの人間は驚くだろう。
 新聞部2年生男子の上坂が現校舎の職員室に飛び込み、事態を速やかに報告したことで、大きく動いた。
 上坂の適格な行動は、さすが将来新聞記者を目指す新聞部員ならではと言えよう。
 リサとしては特に搬送など必要無いのだが、それでも成り行き上、搬送せざるを得ない状況だった。
 そこで、本来は入院設備など無い診療所ではあるが、リサの都内における検査場である日本橋地区のクリニックに搬送された。
 リサを刺した1年生男子の城ヶ崎という者は、救急と一緒に駆け付けた警察に連行されて行った。

 愛原「リサぁっ!!リサ!大丈夫だった!?」

 リサが収容されている特別処置室に、愛原が飛び込んで来る。

 リサ「あ、先生」
 倉田「愛原先生、ケガ人の前です。あまり、騒がないで……」
 リサ「わたしはもう無傷だよぉ……」
 愛原「わーっ!リサ!良かった良かった!無事だったんだな!?」
 リサ「そりゃBOWだもの。ナイフで刺されたくらいじゃ死なないって」

 それを知らないはずがない愛原なのに、何故か愛原はポンポンとリサの両肩を何度も叩いた。

 愛原「いやあ、良かった良かった!うんうん!良かった良かった!」
 リサ「そ、そう?」
 倉田「愛原さん」

 一緒に付き添った副担任の倉田が、愛原に話し掛ける。

 倉田「状況を説明しますので、カンファレンスルームへ」
 愛原「は、はい!」

 倉田と愛原は、特別処置室を出て行った。
 この特別処置室、外側からは機械室の入口に偽装されている。
 入れ替わるようにして、善場が入ってきた。

 善場「どうですか、気分は?」
 リサ「お腹空いた」
 善場「それなら、異常無しですね。特に、人食いはしていませんね?」
 リサ「男の肉なんて食わないよ。あ、愛原先生のは食べたいかも」
 善場「それは許可できません。それより、どうしてあなたは刺されたか分かりますか?」
 リサ「さあ……?」
 善場「だいぶ前、生徒会長が屋上から飛び降り自殺を図りました。今から、半年以上前のことですね。覚えていますか?」
 リサ「まあ、そんなこともあったかもね。それで?」
 善場「どうして、飛び降り自殺を図ったのでしょう?」
 リサ「ま、まあ、総会中にウ○チブリブリお漏らししたから、それで飛び降りたんじゃない?もう、皆が見てる前でブリブリーってね」
 善場「なるほど。ショックで飛び降りたというわけですね」
 リサ「だから何?まさか、化けて出て来たとでも言うの?」
 善場「いいえ。私は何となくあなたが犯人のような気がしますが」
 リサ「さ、さあ……何のことやら……。証拠でもあるの?」

 善場にはそれには答えなかった。

 善場「前・生徒会長には弟がいましてね。彼は今年、高等部の1年生なんですよ。弟ですから、苗字はもちろん城ヶ崎と言います」
 リサ「城ヶ崎……マジか。復讐に来たってか」
 善場「そのような旨の供述を、彼は警察でしているようです」
 リサ「学校は退学だろうねぇ?」
 善場「でしょうね。殺人未遂の現行犯ですからね、通常の人間であれば」
 リサ「あー……わたしは人間じゃないもんねぇ……」
 善場「とはいえ、学校にナイフを無許可で持ち込んでいたのは、どうあっても誤魔化せません。つまり、銃刀法違反の現行犯で立件ということになります」
 リサ「うちの学園、『補導で停学、逮捕で退学』だから、退学だね」
 善場「はい。あなたには、納得できないかもしれませんが」
 リサ「うん。せっかくの制服が血だらけになっちゃったよ。さすがにあれはもう着れないね」

 今のリサは副担任の倉田が持って来た学校のジャージに着替えている。
 また、愛原が代わりの私服を持って来てくれたようだ。

 善場「代わりの制服は用意します。幸いあなたの体型は標準的ですから、メーカーなどに在庫はあるはずです」
 リサ「それは助かる。平均以下の子供体型から、ようやく平均体型になれたよ。まあ、卒業までに平均越えのグラマーになれるかどうかは不明だけど……」
 善場「現時点ではまだ何とも言えませんね。とにかく、普段の行動には十分気を付けるんですよ。あまりにこういう事が多いと、私も庇い切れなくなります」
 リサ「……分かりました」

[同日20時30分 天候:晴 同クリニック→BPO法人デイライト車中]

 リサはジャージから愛原の持って来た私服に着替えた。

 リサ「学校のジャージはダサいね。まだ、ブルマの方がスッキリしてていいよ」
 愛原「それはありがとう」
 リサ「うん。……うん?」
 善場「……愛原所長、ちょっと日本語の使い方がおかしいです」
 愛原「失礼しました」

 もう夜間なので、クリニックの入居しているビルの正面エントランスは閉鎖されている。
 その為、警備室の前を通って、休日・夜間通用口から出ることになる。

 リサ「先生も、昔はあの仕事をしてたの?」
 愛原「そうだよ。まあ、懐かしいな」
 リサ「あの警備会社?」
 愛原「いや、全然違う」
 善場「所長がお勤めになられていた警備会社は、日本全国に支社や営業所のある大手だったそうですね?」
 愛原「まあ、そんなところです。今でも、『戻ってこないか?』なんて誘いはありますよ」
 善場「警備会社も、どこも人手不足だそうですからね」
 愛原「そうですね」

 ビルの外に出ると、裏路地の所に1台の黒塗りのミニバンが停車している。
 そこに黒スーツの大柄な男が待機しており、善場の姿を見かけると、助手席後ろのスライドドアを開けた。

 善場「所長の御宅までお送り致します」
 愛原「どうも、お手数おかけします」
 リサ「お邪魔しまーす」

 リサと愛原は、リアシートに乗り込んだ。
 2人の乗車を確認した善場の部下は、スライドドアを閉めた。
 電動なので、ドアの取っ手を操作すれば、あとは自動で開閉する。

 リサ「お腹空いた……」
 愛原「帰れば、ちゃんと飯は用意してあるから」
 リサ「うん……」

 車が走り出す。
 雨が降っているので、フロントガラスの上をワイパーが動いていた。

 善場「ただ、今回の事件のせいで、1つ台無しになったことがありましてね……」
 愛原「何ですか?」
 善場「また、やり直しですよ。リサの血を使って、とある特効薬を作る計画があったんです。先ほどの血液検査で、数値が足りなくなってしまい、またやり直しですよ」
 愛原「何の特効薬ですか?」
 善場「子宮頸がんワクチンです。子宮頸がんワクチンは、実はまだ開発中なんです。リサの血は、子宮頸がんを発症させるHPVを立ちどころに殺す効果があり、それはどんな重症患者にも効くところまで分かっています。ただ、Gウィルスの濃度の関係もあるので、しばらくリサの体の中で循環させる必要があったのです」
 愛原「Gウィルスが混じっていてもですか?」
 善場「そこで、Gウィルスに噛ませている偽性特異菌です。詳しいことは話せませんが、それで安全なワクチンを作れるかもしれないという話はあったんですよね」
 愛原「それがまたやり直しと?」
 善場「そうですね」
 リサ「城ヶ崎弟、国家反逆罪で死刑かな?」
 善場「その前に、あなたが普段の行動を反省しなくてはなりませんよ?」
 リサ「はーい……」
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