報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「深夜の探偵達」

2024-07-23 20:38:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月22日21時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階・浴室]

 リサは風呂に入ろうとしていた。
 着替えの下着と体操服とブルマなどを持って脱衣所に入る。
 そこで服を脱いで、自分用の脱衣カゴの中にそれを入れる。
 そこには既に着ていた服が入っており、具体的には昼間に着ていた制服のブラウスと下着。
 ブラウスこそモールデッドとの戦闘の際に汚れはしなかったものの、戦闘中にかいた変な汗を吸って、異臭が漂っていた。
 下着はともかく、ブラウスもクリーニングに出した方が良かったのでは思ったのだが、パールが、それくらい洗濯機で落ちるという。
 さすがは、斉藤家のメイド。
 イギリスのヴィクトリア朝のメイドは、完全に役割分担が決まっていたそうだが、斉藤家では別。
 それぞれがローテーションで、その日の当番をこなしていた。
 因みに一部の職種では、ヴィクトリア朝のメイドであっても、職種替えはあったようだ。
 パールも斉藤家メイド時代は、様々な役割をこなしており、ランドリーメイドも当番でやっていたほどだ。

 リサ「変な汗かくの、何とかならないかなぁ……」

 何ともならないであろう。
 今やBSAAの顧問職にある重鎮達ですら、たまに現場に赴くと、緊張の連続で変な汗をかいてナンボだという。
 人外級の強さとはいえ、それでも生身の人間でさえそうなのだ。
 ましてや、体内にGウィルスだの偽性特異菌だのを抱えているリサなんか特にそうだと思われる。
 しかし、このブラウスが、まさかあんなことになるとは……。

[4月23日01時32分 天候:曇 同地区内 愛原家4階・リサの部屋]

 リサ「……サイアク」

 リサは夜中に目が覚めた。
 変な夢を見たからである。
 気分を改める為に、トイレに行っておこうと思った。
 その前に、水を飲んでおく。
 室内にペットボトルが数本ほど入る小さなクーラーボックスを置いており、その中に水のペットボトルなどを入れている。
 それからトイレに行こうと、部屋を出ようとした。

 リサ「むー……」

 リサは鬼形態に戻っているせいか、五感が鋭くなっている。
 嗅覚もその1つ。
 最近は自分の体臭が気になってしょうがない。
 だが、それも思春期特有のものだと学校で言われた。
 食人はしていないものの、それ以外の獣肉はバクバク食べる為に、体臭は他の同年代の女子よりキツいかもしれない。
 その為、食人をしたことのある鬼や化け物の臭いはかなりキツい。
 夫を食い殺した上野利恵は、食人はそれ1人しかしていないにも関わらず、リサの鼻につくほどの臭いを放っている。
 普通の人間には、さほど分からない上、上野もデオドラントスプレーを使用して誤魔化している。

 リサ「変な夢見て、寝汗かいたからなぁ……。ついでにシャワーも使うか」

 リサは部屋からタオルを持って行った。
 因みにトイレに行ってからシャワーを浴びるのは面倒だということで、シャワーを浴びながらオシッコしたことがある。
 とても爽快で、もちろんした後はちゃんとシャワーで洗い流したのだが、それでも多少の臭いは残っていたのか、後で愛原にバレてメチャクチャ怒られた。
 『じゃあ、次は先生にオシッコ掛けてマーキングするよぉ……』なんて言ったら、呆れられたが。
 さすがに怒られたので、面倒でもトイレを済ませてからシャワーを使った。

 リサ「体毛剃ったら、あの夢か……」

 どこかの山に棲む鬼の男達に捕まった夢。
 服を剥ぎ取られ、このまま輪姦(マワ)されるのかと思いきや、鬼の特徴である剛毛な体毛を剃ってくれと剃刀を渡された。
 しかし、猥褻する気はあったようで、体毛を剃らせながらセクハラはしてくるという何とも奇妙な夢であった。

 リサ「はぁーあ……」

 リサは自分の頭に生えている2本角を疎ましく思いながら、髪を洗った。

 リサ「ん?」

 体を洗った後で体を拭いていると、シャワー室の外から物音がした。
 どうやら、愛原のようである。
 そのままシャワー室の前を通り過ぎると、隣のトイレに入っていったようだ。

 リサ「先生もトイレか……」

 トイレの前で全裸待機してやろうかと思い、牙を覗かせてニヤッと笑ったが、もっといい事思いついたので、急いで服を着た。
 そして、愛原の部屋に向かう。
 案の定、いつもならリサを警戒して施錠している愛原の部屋が、今は開いていた。

 リサ「でへへへ……!『トイレの前で全裸待機』じゃなくて、『ベッドの中で全裸待機』作戦~♪」

 リサはよだれを垂らしながら笑うと、着ていた体操服の上を脱ごうとした。

 リサ「ん?」

 その時、ベッドの下に何かが落ちているのが見えた。
 そこからは嗅ぎ覚えのある臭いが2つ漂っていた。
 鬼形態の目は、暗闇でもよく見える。
 だから、それがすぐに何なのか分かった。
 それは、昼間に着ていた自分のブラウス。
 拾い上げて嗅いでみると、愛原の体臭が混じっていた。

 リサ「……!……はは……」

 リサは全てを察した。
 そして、物凄く一言では言い表せない複雑な気分になった。

 リサ「ははは……はははは……」

 自然と笑いは零れたものの、それは引きつった、不自然な笑いだった。
 と、トイレの方から水が流れる音がする。
 リサは急いでブラウスを床に置くと、急いで部屋を出て、自分の部屋に戻った。
 そして、自分のベッドに潜り込む。

 リサ「……!……!!」

 そして、今度は声にならない笑いをする。
 気持ちとして、大きく分けて3つ。
 1つは、『キモい』。
 もう1つは、『嬉しい』
 最後の1つは、『嫉妬』。

 リサ「そっかぁ……そうなんだ……はは……はははは……」

 複雑な気持ちのまま、何度もベッドの中を右に向いたり左に向いたりしているうちに、いつの間にか眠りに落ちた。
 そして、今度は変な夢を見ることはなかった。
 ……いや、見たのかもしれないが、起きた時には覚えてないという程度。

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