[9月15日11:45.天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]
私はまだ残暑の厳しい中、東京中央学園に到着した。
正門では警備員が立哨していて、『御用の方は、通用門から入りください』という看板が掲げられていた。
私が通用門に回ると、今度はそこに、『御用の方は、必ず事務室で入構手続きをしてください』という看板が立っている。
愛原:「こんにちは。PTA会長代行の愛原です」
かつては事務員が直接応対していたが、今では警備員が応対している。
もっとも、私がかつて勤めていた警備会社とは違う会社だ。
警備員:「お疲れ様です。それでは、こちらに御記入を」
PTA会長代行ともなれば、アポ無しで入構はできる。
もっとも、このように手続きはしないといけないが。
学校関係者に配布される入構証があり、これを提示すれば、このような簡単な入構手続きで入れてしまう。
そして、入構証は事務室に預け、代わりに入構許可証(ビジター)が渡される。
これを持って、ようやく校内に入れるというわけだ。
私はそれを首に掛け、持って来た上履きに穿き替えて中に入った。
表向き、学校は通常運転のようだった。
リサ達のクラスは体育の授業ということで、体育館に行ってみた。
猛暑日を記録することもある都内ということもあり、9月一杯までの体育はプールか、空調の効いた体育館と決まっているからだ。
リサはスク水を持って行かなかったから、恐らく体育館にいるのだろう。
プールの方を見ると、男子生徒が授業を受けていた。
今日は男子がプールで、女子が体育館らしい。
すると……。
愛原:「こ、これは……!」
体育館の中を覗いてみると、女子生徒の3分の1がブルマであった。
その3分の1の中に、リサ達がいた。
リサのヤツ、本当にブルマを復活させるとは……。
リサ:「あっ、愛原先生!」
リサは私に気づくと、ワザと尻を向けて、ブルマの裾を直す仕草をした。
私は苦笑しつつも、アイコンタクトで、
愛原:「いいから、授業に集中しろ」
と言った。
少なくとも、リサのクラスは通常運転のようだな。
私は外に出ると、教育資料館の方に向かってみた。
坂上:「いいですか?慎重に運び出してくださいね」
業者:「はい!」
すると、半壊している教育資料館に業者が何人も出入りしていた。
この暑いのに、防塵メガネやマスクをしている。
本当に大変だ。
どうやら、館内にある資料を外に運び出しているらしい。
そして、その立ち会いをしているのは、リサの担任の坂上修一先生であった。
リサ達のクラスは体育の授業中であるが、坂上先生は体育教師ではない。
愛原:「坂上先生」
坂上:「おっ、これはこれは愛原さん」
愛原:「何をされてるんですか?」
坂上:「この時間は私の授業が無いもので、教頭から、『それなら業者の立ち会いをしてくれ』って言われましてねぇ……」
愛原:「それは大変ですね。依頼してくれれば、探偵という名の何でも屋の私達でやりましたのに……」
坂上:「あっ、その手があったか!……でもまあ、今日はいいです」
愛原:「館内の資料を運び出しているんですか?」
坂上:「そうなんです」
愛原:「ついに取り壊しが決定しましたか」
坂上:「いえ、その逆です」
愛原:「えっ?」
坂上:「理事会で再建が決まったそうです。その工事の為に、資料達を避難させているところです」
愛原:「そ、そうなんですか?」
坂上:「幸い、保管場所が確保できたということでね」
業者:「はい、ちょっとすいません!大きいの通ります!」
中から大きなショーケースが出て来た。
それは歴代の制服などを展示しているショーケースだった。
あの、“トイレの花子さん”が着ていたセーラー服もある。
今でこそ東京中央学園の女子の制服はブレザーだが、昔はセーラー服だった。
今のブレザーはモスグリーンだが、セーラー服の方は、くすんだ緑色である。
冬服は陸上自衛隊が着ている物と色合いが似ているが、夏服の方は襟が明るい緑色だった。
スカートの色は、今も昔も変わらない。
展示物の中には体操服もあって、ブルマが数種類あった。
リサが言っていたのは、これだったのだ。
1番古いのが、いわゆる『提灯ブルマ』だが、その時はただの紺色だったようだ。
スクールカラーの緑色になったのは、3代目になってから。
学園との納入業者が替わる度に、業者が取引しているメーカーも変わる為か、ブルマのデザインも若干変わったりした。
デザインといっても、細部や色合いがやや変わっただけで、無地であることに変わりは無い。
スカートの下に穿いても違和感が無いようにする為、あえて横にラインは入れなかったとのこと。
全盛期には中等部はローカット、高等部はハイカットという風に一時期固定化されたが、衰退期に入ると、その垣根が無くなり、高等部でもローカットを穿く者がいたという。
そして、2000年代に入り、校則が改正されて、ブルマは『事実上の廃止』となる。
それをリサが2020年代で、『事実上の復活』を成し遂げた。
リサがローカットブルマを穿いている為、それを『魔王軍』が真似し、それに追随することを判断した一部の女子も……といった感じだ。
業者:「すいません、先生。大きいのを運び出したところで、昼休憩に入りたいのですが、よろしいでしょうか?」
坂上:「あ、はい。構いませんよ」
業者:「午後イチにはトラックが来るので、それで全て運び出す予定です」
坂上:「分かりました。御苦労さまです」
業者の責任者は、坂上先生から昼休憩の許可をもらうと、他の作業員達にそれを伝えに言った。
愛原:「坂上先生、この後、お時間ありますか?」
坂上:「ええ。私もそう思っていたところです」
私と坂上先生は、校舎内に戻ることにした。
尚、午前中最後の授業は、もう少し続く。
私はまだ残暑の厳しい中、東京中央学園に到着した。
正門では警備員が立哨していて、『御用の方は、通用門から入りください』という看板が掲げられていた。
私が通用門に回ると、今度はそこに、『御用の方は、必ず事務室で入構手続きをしてください』という看板が立っている。
愛原:「こんにちは。PTA会長代行の愛原です」
かつては事務員が直接応対していたが、今では警備員が応対している。
もっとも、私がかつて勤めていた警備会社とは違う会社だ。
警備員:「お疲れ様です。それでは、こちらに御記入を」
PTA会長代行ともなれば、アポ無しで入構はできる。
もっとも、このように手続きはしないといけないが。
学校関係者に配布される入構証があり、これを提示すれば、このような簡単な入構手続きで入れてしまう。
そして、入構証は事務室に預け、代わりに入構許可証(ビジター)が渡される。
これを持って、ようやく校内に入れるというわけだ。
私はそれを首に掛け、持って来た上履きに穿き替えて中に入った。
表向き、学校は通常運転のようだった。
リサ達のクラスは体育の授業ということで、体育館に行ってみた。
猛暑日を記録することもある都内ということもあり、9月一杯までの体育はプールか、空調の効いた体育館と決まっているからだ。
リサはスク水を持って行かなかったから、恐らく体育館にいるのだろう。
プールの方を見ると、男子生徒が授業を受けていた。
今日は男子がプールで、女子が体育館らしい。
すると……。
愛原:「こ、これは……!」
体育館の中を覗いてみると、女子生徒の3分の1がブルマであった。
その3分の1の中に、リサ達がいた。
リサのヤツ、本当にブルマを復活させるとは……。
リサ:「あっ、愛原先生!」
リサは私に気づくと、ワザと尻を向けて、ブルマの裾を直す仕草をした。
私は苦笑しつつも、アイコンタクトで、
愛原:「いいから、授業に集中しろ」
と言った。
少なくとも、リサのクラスは通常運転のようだな。
私は外に出ると、教育資料館の方に向かってみた。
坂上:「いいですか?慎重に運び出してくださいね」
業者:「はい!」
すると、半壊している教育資料館に業者が何人も出入りしていた。
この暑いのに、防塵メガネやマスクをしている。
本当に大変だ。
どうやら、館内にある資料を外に運び出しているらしい。
そして、その立ち会いをしているのは、リサの担任の坂上修一先生であった。
リサ達のクラスは体育の授業中であるが、坂上先生は体育教師ではない。
愛原:「坂上先生」
坂上:「おっ、これはこれは愛原さん」
愛原:「何をされてるんですか?」
坂上:「この時間は私の授業が無いもので、教頭から、『それなら業者の立ち会いをしてくれ』って言われましてねぇ……」
愛原:「それは大変ですね。依頼してくれれば、探偵という名の何でも屋の私達でやりましたのに……」
坂上:「あっ、その手があったか!……でもまあ、今日はいいです」
愛原:「館内の資料を運び出しているんですか?」
坂上:「そうなんです」
愛原:「ついに取り壊しが決定しましたか」
坂上:「いえ、その逆です」
愛原:「えっ?」
坂上:「理事会で再建が決まったそうです。その工事の為に、資料達を避難させているところです」
愛原:「そ、そうなんですか?」
坂上:「幸い、保管場所が確保できたということでね」
業者:「はい、ちょっとすいません!大きいの通ります!」
中から大きなショーケースが出て来た。
それは歴代の制服などを展示しているショーケースだった。
あの、“トイレの花子さん”が着ていたセーラー服もある。
今でこそ東京中央学園の女子の制服はブレザーだが、昔はセーラー服だった。
今のブレザーはモスグリーンだが、セーラー服の方は、くすんだ緑色である。
冬服は陸上自衛隊が着ている物と色合いが似ているが、夏服の方は襟が明るい緑色だった。
スカートの色は、今も昔も変わらない。
展示物の中には体操服もあって、ブルマが数種類あった。
リサが言っていたのは、これだったのだ。
1番古いのが、いわゆる『提灯ブルマ』だが、その時はただの紺色だったようだ。
スクールカラーの緑色になったのは、3代目になってから。
学園との納入業者が替わる度に、業者が取引しているメーカーも変わる為か、ブルマのデザインも若干変わったりした。
デザインといっても、細部や色合いがやや変わっただけで、無地であることに変わりは無い。
スカートの下に穿いても違和感が無いようにする為、あえて横にラインは入れなかったとのこと。
全盛期には中等部はローカット、高等部はハイカットという風に一時期固定化されたが、衰退期に入ると、その垣根が無くなり、高等部でもローカットを穿く者がいたという。
そして、2000年代に入り、校則が改正されて、ブルマは『事実上の廃止』となる。
それをリサが2020年代で、『事実上の復活』を成し遂げた。
リサがローカットブルマを穿いている為、それを『魔王軍』が真似し、それに追随することを判断した一部の女子も……といった感じだ。
業者:「すいません、先生。大きいのを運び出したところで、昼休憩に入りたいのですが、よろしいでしょうか?」
坂上:「あ、はい。構いませんよ」
業者:「午後イチにはトラックが来るので、それで全て運び出す予定です」
坂上:「分かりました。御苦労さまです」
業者の責任者は、坂上先生から昼休憩の許可をもらうと、他の作業員達にそれを伝えに言った。
愛原:「坂上先生、この後、お時間ありますか?」
坂上:「ええ。私もそう思っていたところです」
私と坂上先生は、校舎内に戻ることにした。
尚、午前中最後の授業は、もう少し続く。
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