報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「成田空港より帰京」 2

2024-07-08 21:39:04 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月16日09時19分 天候:曇 東京都墨田区江東橋 JR総武本線780F列車5号車内→JR錦糸町駅]

〔まもなく錦糸町、錦糸町。お出口は、右側です。総武線各駅停車と地下鉄半蔵門線は、お乗り換えです。錦糸町から先は、各駅に止まります〕

 成田空港から1時間20分、私達は無事に錦糸町駅へと到着した。
 ここから更にバスに乗り換えるのだが、JRの駅としては、ここが最寄り駅となる。

 愛原「さーてと、やっと降りる駅だ」
 リサ「今頃、先生のお父さんとお母さん、空の上だね」
 愛原「ああ、そうだな。来月には、俺達も空の上だ」
 リサ「うふふ……」

 電車がホームに止まると、ドアチャイムと共に片開きのドアが開いた。

〔きんしちょう、錦糸町。ご乗車、ありがとうございます。次は、馬喰町に、停車します〕

 ここで電車を降りる。

 愛原「ちょっとバスの時間まで、空きがあるんだ。トイレ休憩したり、タバコ休憩したりして時間を潰そう」
 高橋「分かりました」

 ホームからコンコースに下りると、私達はトイレに向かった。

 リサ「電車のトイレ、きれいだったよ」
 愛原「そりゃ、新型のE235系だもんな」

 トイレを済ませると、改札を出て南口へ。
 駅前広場にある喫煙所で、高橋夫婦は一服。
 私とリサは、NewDaysで飲み物を買って水分補給した。

 愛原「帰ったら、ゆっくりするか」
 リサ「わたし、宿題やる」
 愛原「ああ。そういうのは、さっさと片付けた方がいい」
 リサ「ところで、善場さんから電話は?」
 愛原「いや、まだ無いな。まさかとは思うが、日曜日出勤してしたりしてな」
 リサ「エージェントになると大変だなぁ……
 愛原「そうだよ。最悪、バイオハザードたけなわの所を走り回らなきゃいけなくなる」
 リサ「やだねぇ……」
 愛原「今は、そんな大規模でバイオハザードも起こってないから大丈夫だろ。日本国内では、斉藤早苗……つまり、白井伝三郎を捕まえれば」
 リサ「うん、確かに」

[同日09時47~09時52分 天候:曇 錦糸町駅前バス停→都営バス錦11系統車内]

 高橋夫婦の一服が終わり、まだ少し早いが、バス停に行くことにした。
 1時間に2本しかない。
 バス運転手不足による減便というよりは、乗客が少なくなったから減便になったのだろう。
 かつては東京駅丸の内北口に向かう東20系統もあったのが、こちらは廃止されてしまった。

 高橋「先生、お昼は何にしましょう?」
 愛原「そうだな……。ラーメンでも作ってくれないか?この前買った袋麺あるだろ?」
 高橋「分かりました」
 リサ「ラーメンか。なるほど……」
 愛原「リサにはチャーシュー麺で」
 高橋「了解です」

 そんなことを話しているうちに、バスがやってくる。
 成田空港のターミナル間無料循環バスで乗ったのと同じ車種だった。
 違うのは、車椅子スペースの跳ね上げ席が跳ね上げられていないことだ。
 バスに乗り込み、後ろの席に座る。
 マスコットキャラクター“みんくる”のイラストが入っている。

 高橋「夜はどうしますか?」
 愛原「夜は……鍋にでもするか?スーパーで適当に食材買ってきてさ……」
 高橋「分かりました」
 愛原「買い出しにはリサに手伝ってもらえばいい」
 リサ「分かった」
 高橋「それはいいっスね」

 発車の5分前にやってきたバスだが、だいたい発車前になると、席が粗方埋まっている。
 本数は少ないが、需要に見合っているのだからしょうがない。

〔発車致します。お掴まり下さい〕

 バスは発車の時刻になると、グライドスライド式の前扉を閉め、都道465号線を南に走り出した。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは森下駅前、浜町中の橋経由、築地駅前行きでございます。次は錦糸堀、錦糸堀でございます。警備会社の全日警、東京中央支社へおいでの方は、菊川一丁目でお降りになると便利です。次は、錦糸堀でございます〕

 愛原「なあ、リサ」
 リサ「なーに?」
 愛原「もしも斉藤早苗が成田に向かったとしたら、何の為だろうな?」
 リサ「高飛びじゃない?沖縄にいたんじゃ、デイライトの人達に見つかるからでしょ?」
 愛原「わざわざ、そのデイライトの近くの成田にか。まあ、羽田よりはマシだと思うけど」
 リサ「ジェットスターって安いんでしょ?それとか?」
 愛原「予算の都合でLCCにしたんたなら、他にもLCCは飛んでるからな。ピーチとか、ソラシドエアとか。それで別の地方に行けば、デイライトからは逃げられる。デイライトは六大都市にしか事務所を構えてないからだ」
 リサ「どっちみち、東京以外の大都市にも事務所があるんだったら、地方に逃げても無駄なんじゃないの?」
 愛原「普通はそうなんだが……」
 リサ「霧生市に向かったとか?」
 愛原「だとしたら、何らの目撃情報があってもいいはずなんだ」
 リサ「善場さん達、成田に向かったのかな?」
 愛原「分からん。日曜日返上で行ったのなら、本当に大変なことだ」

 ある意味、公権力の出番なので、それが使えない民間の探偵業者たる私らの出番は無い。

[同日09時59分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 菊川駅前バス停→愛原家]

〔「ご乗車ありがとうございました。菊川駅前です」〕

 バスが新大橋通り沿いのバス停に停車する。

 愛原「ここまで来たら、帰って来たも同然!」
 高橋「全くですね」
 リサ「買い物はいつ行くの?」
 高橋「昼飯食ってからでいいだろ。どうせ、すぐ近くのマルエツだ」
 リサ「なるほど」

 リサはリサで、何か買いたい物があるようだ。
 一瞬、交差点角にあるコンビニの方を見ていた。
 それはスーパーでも売ってるものなのだろう。
 私は私で、情報収集でもしよう。
 これから新婚旅行の思い出辿りの両親には申し訳無いが、あの2人にも協力してもらおう。
 斉藤絵恋、もしかしたら、いつの間にかひょっこり沖縄に戻ってるかもしれないからな。
 何も知らない人が、何気に目撃していたりするものだ。
 とはいえ、さすがにブルマ画像を送るのはどうかと思った。

 愛原「リサ。後で絵恋さんに、制服か私服姿の斉藤早苗の写真送ってくれるように伝えてくれないか?」
 リサ「分かった」
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“私立探偵 愛原学” 「成田空港より帰京」

2024-07-08 14:34:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月16日07時59分 天候:曇 千葉県成田市三里塚御料牧場 JR成田空港駅→成田線(空港支線)780F列車5号車内]

 

〔「2番線に停車中の電車は7時59分発、快速、東京行きです。都賀までは、各駅に止まります。4号車と5号車は、グリーン車です。乗車券の他に、グリーン券が必要です。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 私達は成田空港の地下にある駅から、東京に向かう電車に乗り込んだ。

 

 成田空港から錦糸町駅までは、およそ1時間20分ほど。
 特急列車みたいな設備の車両なら、ラクに移動できるというわけだ。
 今度はそんなに大きな荷物は持っていなかったので、平屋席ではなく、2階席に座ってみた。
 まもなく発車時刻になろうとするが、車内は空いている。
 もっと本数の多い京成に客が流れるのか、或いはバスの方に流れるのかもしれない。
 千葉市内に行くのなら、この電車が1番便利なのだが。

〔この電車は、総武快速線直通、快速、東京行きです。停車駅は都賀までの各駅と、千葉、稲毛、津田沼、船橋、市川、新小岩、錦糸町、馬喰町、新日本橋、東京です。グリーン車は、4号車と5号車です。グリーン車をご利用の際には、グリーン券が必要です。グリーン券を車内でお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください〕

 乗った電車は新型車両ということもあり、グリーン車には充電コンセントがある。
 また、WiFiも飛んでいる為、リサにとってはありがたいことだろう。

 愛原「今頃、両親も飛行機の中だ」
 リサ「もう離陸した?」
 愛原「いや、8時10分だからまだだろう。でもまあ、搭乗時刻にはなっているから、今頃もう乗り込んでいると思うよ」
 リサ「そっか……」
 愛原「高橋達も付き合ってもらって悪かったな」

 私は通路を挟んで進行方向右側に座る高橋達に言った。

 高橋「いや、いいっスよ。俺達も先生の御両親には、お世話になりましたし」
 パール「その通りです」
 愛原「そうか」

〔「お待たせ致しました。7時59分発、快速、東京行き、まもなく発車致します」〕

 ホームから発車メロディが聞こえて来る。
 地下のホームなので、かなり響いた。
 曲名は“Esperanza(希望)”というらしい。

〔東京行き、快速電車が、発車します。ドアが閉まりますから、ご注意ください〕

 車掌が吹いているのか、ピィーッと笛を吹く音も聞こえて来た。
 それからドアチャイムを鳴らして、片開きのドアが閉まる。
 そして、電車が動き出した。

〔次は空港第2ビル、空港第2ビル。お出口は、右側です〕

 簡易的な放送なのは、下車客の事は想定していないのだろう。
 第2・第3ターミナルに行くのなら、ターミナル間無料循環バスが頻繁に運転されている為、わざわざ運賃を払ってまで電車に乗る客などいないからである。

 愛原「あれ?」

 その時、私のスマホに着信があった。
 見るとそれは、善場係長からだった。
 日曜日だというのに、仕事されているのだろうか?
 政府のエージェントは大変だな。

 リサ「どうしたの?」
 愛原「善場係長からだ。ちょっと、デッキに行ってくる」

 私はスマホを片手に、デッキに向かった。
 デッキといっても、乗降口と2階席・1階席を繋ぐ階段は扉で仕切られているわけではないので、本当にデッキと言えるかどうかは不明だ。
 平屋席はドアで仕切られているのだが。

 愛原「はい、もしもし?」」
 善場「愛原所長、おはようございます。善場です」
 愛原「おはようございます。係長」

 因みにこのやり取りをしている間に、電車は空港第2ビル駅に到着した。
 私は開かないドアの前に立ち、乗車客の邪魔にならない所に立った。

 善場「今、お電話大丈夫ですか?」
 愛原「はい、大丈夫です」
 善場「今、成田空港にいらっしゃると思います」
 愛原「はい。ただ、両親の見送りは終わりましたので、もう総武線の電車に乗っているところですが」
 善場「昨日から滞在されておられたんですよね?」
 愛原「はい、そうですが?」
 善場「空港内外で、斉藤早苗は目撃されませんでしたか?」
 愛原「いいえ……?あの、リサの言う“トイレの花子さん”ですよね?見ませんでしたよ」
 善場「そうですか……」
 愛原「もしかして、空港にいる可能性があるんですか?」
 善場「まだ、目撃情報は那覇空港においてですが」
 愛原「はあ……」
 善場「那覇空港では、彼女に似た者が、成田行きのジェットスターに乗ったという目撃情報があるのです」
 愛原「ジェットスター……」
 善場「令状が無ければ、航空会社側に乗客名簿の開示を求めても断られます。辛うじてようやく、那覇空港の監視カメラの映像を確認できただけです」
 愛原「何でも、沖縄中央学園に派遣した調査員さん達が行方不明になったとか?」
 善場「機密ですので、それは口外なさらぬようお願い致します」
 愛原「あっ……」
 善場「斉藤早苗は、しばらく学校に来ていないようです。あとは成田空港の監視カメラを映像を確認するだけです。所長方のGPSを確認させて頂いたところ、ジェットスターが離着陸する第3ターミナルにいらっしゃったようで、もしかしたらと思ったのですが……」
 愛原「いえ……申し訳ないですね。我那覇絵恋が送って来た画像が本当なのであれば、斉藤早苗の顔はそれで分かるのですが、ちょっと気が付かなかったですね……」
 善場「そうですか。それは残念です」
 愛原「まさか、成田空港にいるとは思いませんから……。後でリサにも聞いてみます」
 善場「よろしくお願いします」

 私はそれで電話を切った。
 電車は空港第2ビルを発車し、成田駅に向かっている。
 京成線もそうだが、JRもまた、駅間距離の長い区間である。

 愛原「ただいま」

 席に戻ると、座席はまだ空席が目立っていた。
 やはり、快速で東京に向かう需要は少ないのだろう。

 リサ「善場さん、何だって?」
 愛原「何でも、斉藤早苗が成田空港にいたかもしれないんだって」
 リサ「えっ、そうなの!?」
 愛原「そうかもしれないって話。何でも、那覇空港から成田行きのジェットスターに乗ったそっくりさんがいたらしいよ?」
 リサ「ジェットスターって、先生のお父さんやお母さんが乗った飛行機?」
 愛原「そう。俺は見てないんだけど、リサは見た?」
 リサ「いや~……」

 リサは首を傾げた。

 リサ「普通にかわいい子だと思うけど、それだけのコって、案外そこら辺にいたりするもんね」
 愛原「そうなんだよな」

 リサと斉藤早苗は顔は似ていないが、それでも似ているように思えるのは、髪型が同じということも去ることながら、リサもまた、『そこら辺にいる、ある程度かわいい子』だからであろう。
 『雰囲気そっくりさん』とでも言うのか?
 この2人が白い仮面を着けて現れれば、どっちがどっちだか分からなくなるだろう。

 愛原「まあ、目撃はしなかったということで。係長に報告しておこう」

 私はスマホを取り出した。
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