報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「バイオハザードリベレーションズ?」 2

2024-08-11 21:40:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月6日14時59分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 都営地下鉄菊川駅]

 〔2番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。きくかわ~、菊川~〕

 私達を乗せた電車は、菊川駅に到着した。

 高橋「先生、大丈夫ですか?」
 愛原「ああ。今は大丈夫」
 高橋「帰ったら、少しお休みになった方が……」
 愛原「いや、本当に大丈夫だ。また具合が悪くなったら、寝させてもらうとするよ」
 高橋「はあ……」

 短い発車メロディの後に、ホームドアと車両のドアが閉まり、都営の電車は発車して行った。
 ホームに強い風が吹く。
 リサは私の前を先導するように進んだ。

 愛原「高橋も疲れただろ?夕食当番だが、今日は出前でいいんじゃないか?」
 高橋「いえ、大丈夫っス。俺が作りますよ」
 愛原「そうか?」
 リサ「肉が無いとダメだよ?」
 高橋「オメー、ゼータク言ってんじゃねーよ!」
 愛原「ハハハ……。まあ、沖縄に行ったら、魚も食べる機会はあるだろう」
 高橋「はあ……」
 リサ「だよねー!」

 リサは改札階へ上がるエスカレーターに乗った。

 愛原「そうだ、リサ。Pasmoにチャージしといてやるよ。沖縄ではモノレールで使えるみたいだからな。あと、コンビニとか、那覇空港の中とか……」
 リサ「おー、ありがとう!」

 修学旅行では自由行動がある為、必然的に公共交通機関を使う機会がある。
 だが、路線バスではSuicaやPasmoが使えないらしい。
 改札口横の精算機で、私はリサのPasmoにできるだけ満額チャージしてあげた。
 あとは現金のお小遣いだけだが、それは後で渡してあげよう。
 改札口を出ると、リサは私と手を繋いできた。
 今は人間形態のはずだが、爪はやや長い状態である。

[同日15時15分 天候:曇 同地区内 愛原学探偵事務所2階]

 愛原「あー、やっと着いた!」
 パール「お帰りなさいませ」
 愛原「荷物を片付けたら、クライアントさんに報告書を書いて出すぞ」
 高橋「はい」

 数日間の出張だった為、洗濯物が多く出ている。
 パールが急いで洗濯してくれるという。
 基本的は使わない乾燥機も、今日は使うことになりそうだ。

 リサ「わたしも着替えて来る」
 愛原「ああ」
 高橋「俺は夕飯の買い出しに行ってきます」
 愛原「頼む」
 高橋「リサも買い物、手伝え」
 リサ「はいはい」
 愛原「着替えはいいのか?」
 リサ「もうこのままお兄ちゃんと買い物行ってくる」
 パール「そこのスーパー、今日は豚肉が安いから。あと、お米が無い」
 高橋「こういう時は力持ちのリサだな」
 リサ「鬼の姿に戻っていい?」
 愛原「フードとマスクは忘れるなよ?」

 私も早いとこ荷物を片付けるとしよう。

[同日18時00分 天候:曇 同地区内 愛原家3階ダイニング]

 

 今日の夕食は豚肉の生姜焼きだった。
 なるほど、これなら手軽に作って食べれる。
 冷蔵庫には生姜焼きのたれが入っていたから、これで作ったのだろう。
 リサは制服から、体操服とブルマに着替えている。
 今日は紺色のブルマだった。
 それと、テレビのニュースを観ているのだが、山手学苑の塾生らを乗せたバイオハザードは、思いの外深刻だというのが分かった。

 愛原「まるで、2005年の地中海でのバイオハザード事件だな」
 高橋「確かに」

 地中海を航行中の豪華客船、正確には廃船寸前の船をFBCがタダ同然で引き取り、それをTアビスの研究開発・製造工場に改造した船内で発生したバイオハザードだが、それとよく似ている。
 違うのは2005年のバイオハザードでは、感染者達の多くは宗教・環境テロ組織ヴェルトロの構成員達であったが、今回は何の罪も無い塾生らであることだ。

 愛原「ヴェルトロか……」
 高橋「はい?」
 愛原「いや、前、ヴェルトロの残党がどうのって騒いだことがあったじゃん?」
 高橋「ええ、まあ。ただ、それって結局デマだったってことですよね?」
 愛原「本当にデマだったのかなぁ?」
 高橋「えっ!?」
 愛原「ニュースで観ている限り、船内でばら撒かれたのは、Tアビスらしいな」
 高橋「はい」

 Tアビスの感染力並びに変異のスピードは、Tウィルスの数倍だ。
 少なくとも、感染してから数時間でウーズという名のクリーチャーに変貌する。
 Tウィルスが、変異前の物は、感染すれば、感染してからゾンビ化するまでは数日~1週間ほど掛かっていた。
 変異後の物であっても、1日~数日といったところだ。
 それがTアビスでは数時間。
 これは脅威だ。
 もちろん今はワクチンがあるのだが、困ったことに、予防薬としての効果しかない。
 せいぜい感染したら、すぐにワクチンを打たないと意味が無い。
 つまり、ウーズ化したらもう手遅れなのである。
 これはTウィルスのゾンビも同じことであるが。
 何が言いたいかというと、BSAAが突入した時、既に船内はウーズだらけで、非感染の生存者は1人もいなかったということである。

 愛原「因みに、リサの学校で、山手学苑に通っているコはいないのか?」
 リサ「うーん……。少なくとも、『魔王軍』にはいないと思うね。わたしも、エレンの事はつい最近知ったくらいだから。もし仮に通っていたとしても、あの船には乗っていないと思う。もしそうなら、とっくに誰かが騒いでるはずだから」
 愛原「なるほど。まあ、明後日には修学旅行も控えていることだから、合宿には参加しないか」

 どの学習塾・予備校等も、夏期講習に力を入れている感がある。
 もし仮に山手学苑に通っている東京中央学園生がいたとしても、ゴールデンウィークの会は見送って、夏休みの方に参加しようと考えているのかもしれない。
 いずれにせよ、後で分かることだ。
 ただ、さすがは東京中央学園である。
 後に保護者メールで、『山手学苑に通っていて、合宿の船に乗っていた生徒の保護者がいたら名乗り出てください』という物があった。
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“私立探偵 愛原学” 「バイオハザードリベレーションズ?」

2024-08-11 14:45:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月6日14時32分 天候:晴 東京都港区高輪 JR(東日本)品川駅→横須賀線1306S電車・増1号車内]

 私達は当初、京急線からの都営浅草線で事務所に戻ろうと思った。
 だが、横須賀線経由でも戻れることを思い出し、そちらで帰ることにした。
 それ経由だと、馬喰町からの都営新宿線でもいいし、錦糸町からの都営バスでもいい。

 

〔まもなく、13番線に、総武快速線、外房線直通、快速、上総一ノ宮行きが、参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この電車は、15両です。グリーン車が付いております。……〕

 ニュースを見ているが、やはり山手学苑の塾生達を乗せた客船が事故に遭ったという新着情報が入った。
 BSAAのアプリにおいても、日本地区本部隊と北米支部日本派遣隊が出動中との情報が出ている。

 愛原「一体……何が起きてるんだ?」
 高橋「BSAAが出動したったことは、バイオハザードっスね」
 愛原「ううっ……」

 電車が入線してくる。
 15両という長い編成の電車の1番後ろの車両が来る位置にいるので、風圧が凄い。
 リサの髪とスカートの裾が、その風圧で靡く。

〔しながわ~、品川です。ご乗車、ありがとうございます。次は、新橋に、停車します〕

 後ろの車両の方はそんなに混んでおらず、私は開いている座席に腰かけた。
 新型車両が来たこともあり、車内は綺麗で明るい。

 高橋「先生、ねーちゃん所に行かなくていいんスか?」
 愛原「今はいいだろう。今日は休日だし、そもそも大した情報が無いのに、押しかけても迷惑だろう。探偵というのは、クライアントからの依頼があって初めて動く仕事なんだ」
 高橋「は、はい!サーセン!」

 発車メロディーがホームに鳴り響く。
 特に珍しい曲ではないが、山手線で流れているイメージなので、何か違和感がある。

〔13番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車のドアが閉まる。
 横須賀線ホームにはホームドアが無い為、電車のドアが閉まると、すぐに発車する。

〔次は新橋、新橋。お出口は、右側です。山手線、地下鉄銀座線、都営地下鉄浅草線と、“ゆりかもめ”はお乗り換えです〕

 京浜東北線は快速運転中(新橋通過)の為、乗換案内をしない。

 愛原「……なあ」
 高橋「はい」
 愛原「もしかして、金庫に山手学苑のパンフレットが入っていたって、その船の事故を予言したものだったんじゃないのか?」
 高橋「どう……ですかね」
 リサ「レイチェルから何も連絡は無い。多分、出動中なのかも」
 愛原「留学生なのにか?」
 リサ「分かんないよ。訓練の為に参加してるかも……」

 私は試しに善場主任に、メールを送ってみた。
 だが、返信が来ることはなかった。

 リサ「明日は登校日だから、レイチェルがいたら聞いてみようか?」
 愛原「あ、そうか」

 ゴールデンウィークは明日まで。
 今日が土曜日で、明日が日曜日である。
 学校そのものは休みなのだが、明日の午前中は修学旅行の結団式がある。
 今年のゴールデンウィークは長いので、そのような措置が設けられているのだろう。

 リサ「エレンにもLINEを送ってる。事故を受けて、『私は参加しなくて良かった』って言ってる」
 愛原「そりゃそうだろうな」
 高橋「あいつなら、逆にバイオハザードの中でも生き残れそうですね」
 愛原「こらこら、何てことを……」
 リサ「わたしと同じBOWになれるチャンスだって、逆に喜ぶかも」
 高橋「よし!そん時ゃ、遠慮無く俺のマグナムで蜂の巣だ」
 リサ「ま、そう都合良くは行かないと思うけどね」

[同日14時54分 天候:晴 東京都中央区日本橋横山町 都営地下鉄馬喰横山駅→都営新宿線1406T電車・最後尾車内]

 

 無事に馬喰町駅に着いたのはいいが、問題は助手の2人。
 改札口を通過しようとしたら、2人とも残額不足でやんのw
 精算機を使おうとしたが、やや並んでいた為、乗り換えの電車に乗り遅れてしまった。
 しょうがないので、もう1本後の電車を待つことにした次第。

 高橋「せ、先生、サーセン……」
 リサ「せ、先生、サーセン……」
 愛原「仲いいね、2人とも」
 高橋「い、いえ、そういうわけでは……」
 愛原「沖縄では、ちゃんと現金用意しとけよ?」
 高橋「も、もちっス」
 リサ「お小遣いちょうだい?」

 リサは自分のスカートを捲ろうとするような仕草を見せた。
 JKなら、そのようなあざとさを身に付けるのは仕方無いのかもしれないが、リサの場合、既にJC……いや、JSの頃からやっている!

 愛原「後でやるから、ここでやるな!」
 リサ「はーい」

 電車を待っていると、メール着信があった。
 それは、善場係長からだった。

 善場「お疲れ様です。確かに今、伊豆諸島近海を航行中の客船内でバイオハザードが発生し、現在BSAAが出動しているとの情報があります。ただ、それ以上の詳細はこちらにも届いておりません。今のところ、今回の事故の件で、所長方に御依頼したいことはございませんので、ご了承ください。今後、何か御依頼がありましたら、その時お願い致します」

 とのことだった。
 やはり、バイオハザードが発生したのは、本当だったようだ。

 高橋「まるで、豪華客船“顕正”号とか、“正信”号みたいっスね」
 愛原「顕正号か……うっ!」

 私の頭に、高圧電流が走ったかのような激しい痛みと、何らかの記憶のフラッシュバックが現れた。

 高橋「先生!?」

 フラついた私は、ホームドアにぶつかった。
 もしホームドアが無かったら、線路に落ちていたかもしれない。

〔まもなく、2番線に、各駅停車、本八幡行きが、10両編成で、到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 私は高橋とリサに支えられて、何とか立ち上がった。

 高橋「大丈夫ですか、先生!?」
 愛原「あ、ああ……何とか……」

 そこへ交通局の電車がやってくる。
 ホームドアは……あった方がいいな。

〔2番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。ばくろよこやま~、馬喰横山~〕

 総武快速線乗り換え客などが、ぞろぞろ降りてくる。

 高橋「先生、こちらに」

 高橋は空いたドア横の座席を確保してくれた。

 愛原「あ、ああ、すまない」

 私は座席に腰かけた。
 すぐに短い発車メロディが鳴り響く。

〔2番線、ドアが閉まります〕

 そして、電車のドアと、私を転落から防止してくれたホームドアが閉まった。
 車掌が発車合図のブザーを鳴らす音が聞こえて来る。
 電車が動き出すと、私はスマホを取り出して、善場係長に対して返信メールを打った。

〔この電車は、各駅停車、本八幡行きです。次は浜町、浜町。明治座前。お出口は、右側です〕

 そして、また係長からメール。

 善場「御理解が早く、助かります。所長はリサの修学旅行が控えておりますので、今はそちらに専念してください」

 とのことだった。
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