報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「修学旅行初日の夜」

2024-08-25 21:00:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月8日20時00分 天候:晴 沖縄県那覇市大道 沖縄ホテル1階ロビー]

 私と高橋、そしてリサと我那覇絵恋はロビーのソファに座った。

 愛原「聞きたいことは、ただ1つ。斉藤早苗の居場所だ」
 リサ「先生にウソ付いたらコロス!」

 リサは瞳を赤く光らせて、牙を覗かせた。

 絵恋「リサさんに殺されるなら本望ですぅうふんうふん

 絵恋にはリサの警告も逆効果だったようだ。

 愛原「斉藤絵恋は、山手学苑が開催した合宿に参加したはずだ。それは知ってる?」
 絵恋「いえ、知りません」
 愛原「斉藤早苗は、いつから学校に来てない?」
 絵恋「かれこれ、1ヶ月くらにいになります」
 愛原「1ヶ月か。その間、キミは1度も早苗には会っていない?」
 絵恋「何回か会いました」
 愛原「なにっ!?どこで!?」
 絵恋「塾です。私と同じ、沖縄山手学苑に通い始めて……。それで、家まで一緒に帰ったりしたんです」
 愛原「斉藤早苗の家!?」
 絵恋「いえ、私の家です。何故だか、私の事を心配して、家まで送ってくれたりですとか……」
 愛原「その時、何か変わった話とかはした?」
 絵恋「いいえ。私も心配して、早く学校に来るように言ったんですけど……。『気が向いたら行く』の一点張りで……」
 愛原「ふむふむ」

 私は絵恋の証言をメモしていた。

 愛原「他には?」
 絵恋「私のお母さんを説得してあげるとのことでした。私が……東京中央学園大学に行けるように……」

 絵恋はリサに恍惚とした表情を見せた。

 愛原「説得って……そんなこと、本当にできるのか?」
 絵恋「分かりませんけど、早苗さんはそう言ってました」
 愛原「うーむ……。今でも、キミの家に来る?」
 絵恋「そうですね。たまに来ます」
 愛原「お母さんを説得しに?」
 絵恋「それもありますけど、私の悩み相談に乗ってくれたりとか、あと、頭がいいので、私に勉強教えてくれたりもするんです」
 高橋「それ、塾行ってる意味無くね?」
 絵恋「塾は、お母さんに無理やり行かされてるの!」
 愛原「国立大学の琉球大学に合格できるようにする為だよな?」
 絵恋「そうです」
 愛原「それなのに、説得できると斉藤絵恋は思ってるんだ」
 絵恋「そのようです」
 愛原「分かったよ。また、キミの家に行くかね?斉藤早苗は……」
 絵恋「来ると思います」
 愛原「分かったよ。ちょっと、善場係長に電話してくる」

 私は席を立ち、誰もいないソファの所に向かった。
 その間、3人は談笑している。
 何だかんだ言って仲の良い連中だ。

 リサ「何か、お菓子とかジュースとか持って来るの?」
 絵恋「ええ、そうよ。早苗さん、お菓子焼くの得意みたいでね。クッキーとかブリオッシュとか、手作りの物を持って来てくれるの」
 リサ「聞くだけなら、食べてみたい気はする」
 絵恋「是非とも、リサさんにも食べてもらいたいわ」
 高橋「『どくいり きけん たべたら しぬで』じゃねーだろうなw」
 絵恋「だったら私、とっくに死んでるじゃない!」
 高橋「オメーも殺しても死なねぇ感じだもんなぁw」
 絵恋「どうして知ってるのよ!?」
 高橋「そりゃ、オメーともなかなかの腐れ縁だからだよ。なぁ、リサ?こいつも頭撃ち抜いても死にそうにねーよなぁ?」
 リサ「いやぁ~、やめといた方がいいと思うよ。少なくともここでは」
 絵恋「あんリサさん、優しーっ

 絵恋はリサに抱き着いた。

 リサ「……!?」
 愛原「おい、ちょっと静かにしてくれ。電話中だ」
 絵恋「あ、はい……」
 高橋「怒られてやんのw」
 絵恋「うるっさいわね!」
 愛原「……あ、すいません、うるさくて。そういうわけですから、今後、絵恋の家に斉藤早苗が訪れる可能性があります。……分かりました。少々お待ちください」

 私は手帳を取り出すと、1枚白紙を取り出した。

 愛原「絵恋さん、悪いんだけど、ここに君の家の住所書いてもらえるかな?」
 絵恋「いいですよ」

 絵恋はすらすらとボールペンを走らせた。

 愛原「ありがとう。……あ、もしもし、お待たせしました。沖縄県那覇市……です。……はい。確かに、沖縄ホテルの近くですね」
 リサ「家からホテルまで何で来たの?」
 絵恋「自転車よ」
 高橋「チャリで行ける距離なのかよw」
 絵恋「そうよ。ねぇ、リサさん。那覇市には、今夜だけ泊まるの?」
 リサ「いや、確か最後の夜も那覇市だったと思う。このホテルかどうかは、ちょっと栞を見ないと……」
 絵恋「この近く、他にもホテルがあるから、また私の家の近くだといいね」
 リサ「まあね」
 愛原「……分かりました。それでは、また……はい。失礼します」

 私は電話を切った。

 愛原「有力な情報、ありがとう。今後、デイライトの関係者が、キミの家の周りを見張るらしい。なるべく、迷惑は掛けないようにする。申し訳ないが、斉藤早苗を捕まえる為だ。そして、この事は本人には内緒にして欲しい」
 絵恋「分かりました」
 愛原「協力してくれたら、デイライトの方から謝礼があるよ」
 絵恋「それは助かりますぅ!……で、お話はもういいですか?」
 愛原「ああ。今のところは。御協力どうもありがとう」
 絵恋「いえいえ」
 リサ「エレン、わたしの部屋に行こう!お風呂一緒に入ろう!」
 絵恋「ぼへへへ……ま、待ってましたぁ~……

 リサは絵恋を引っ張って、旅館棟へと向かって行った。
 大浴場もそこにある。

 高橋「先生!俺達も入りましょう!」
 愛原「バカ、今は入れねーだろ。俺達引率者は、生徒達の就寝時間になってからだ」

 就寝時間は22時となっている。
 朝食は7時からであるが、出発は翌日9時なので、それまでに食べて、バスの中に集合すれば良い。
 明日、またバスが迎えに来る。
 小学校や中学校では無いのだから、ホテルの中で点呼を取って……ではなく、各自バスに乗り込んで、その中で点呼を取るといった形になっている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする