報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「夢の話と鬼の話」

2024-08-04 20:40:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月24日16時45分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 リサは愛原と共にデイライトの事務所にいる。

 善場「学習塾は『山手学苑』。その名の通り、渋谷に本部があります。オーソドックスな学習塾で、集団授業を主に行っています。クラスも学力別に分ける方式ですね」
 愛原「“ベタな学習塾の法則”ですね」
 善場「このパンフレットは、ゴールデンウィークに行われる受験対策の合宿を募集したものです」
 愛原「ゴールデンウィーク。珍しいですね。私も学生時代には、親に塾に通わされたもので、そこでも夏合宿の募集はしていましたけど、ゴールデンウィークは無かったですよ」
 リサ「先生も塾の合宿に行ったの!?」

 リサはいかにも羨ましいといった感じで愛原を見た。

 愛原「いや、俺は行かなかったよ。どっちかっていうと、他の大手学習塾との共同合宿って感じだったからね」
 善場「中小規模の学習塾ですと、夏合宿はいくつか共同でという所がありますね」
 愛原「それよりは、塾自体で行われる夏期講習の方に参加してましたよ。あれもあれで、私みたいな正規の塾生の他に、夏期講習だけ参加の講習生もいたりして、それはそれで刺激的なものでした」
 善場「塾そのもので行う夏期講習に力を入れるか、合宿に力を入れるかで、その学習塾の特色が現れるものです」
 愛原「そのパンフレットからして、山手学苑の方は合宿に力を入れるタイプのようですね?」
 善場「そのようです。恐らく、モールデッド化した城ヶ崎君は、この合宿に参加しようとしていたのではないでしょうか」
 愛原「それはいいですけど、どうしてそれをあんな金庫の中に?」
 善場「それは不明です。例えばTウィルスのゾンビなどは生前の記憶が残っており、その記憶に基づいて、生前の習慣を踏襲しようとするわけですが……」

 ゾンビが生前、自分が関係していた場所を徘徊していたり、ドアの開閉はできるのは、生前の記憶が残っているからだ。

 リサ「モールデッドは、多分それ無理だよ?」
 善場「ですよね……」
 愛原「その山手学苑、本当に何も関係無いんですか?」
 善場「はい。ザッと調べてみましたが、特にキナ臭い情報などは出て来ませんでした。日本アンブレラとの資本関係も一切ありません。塾業界では比較的老舗の所で、1都3県に渡って本部と支部を持つ大手学習塾ですので、もしかしたら、かつて、日本アンブレラの子弟が通っていたことはあったかもしれません。ですが、そこまで疑ってしまうと、全ての学習塾・予備校を調査しないといけなくなりますので……」
 愛原「そうですよね」
 リサ「何だったら、わたしが直接潜り込んでみようか?わたしなら、現役生だからできるでしょ?」
 善場「しかし、あなたはBOWです。部活動への所属が認められていないのと同様、学習塾や予備校に通うのも、上の許可を取らなければなりません」
 愛原「学習塾や予備校の合宿って、参加費用も高いんだぞ?どこにそんな予算がある?」
 リサ「うう……」
 善場「その山手学苑に、何か黒い噂でもあれば、その調査の為と称して上手く上に説明できるのですが、現状何も無いですから」
 愛原「ですよね……。あ、そうだ」
 善場「はい?」
 愛原「その、城ヶ崎君は山手学苑に通っていたそうですが、どこの支部に通っていたか分かりますか?」
 善場「このパンフレットを見てください。右下に小さく、『日暮里支部』とありますでしょう?グーグルマップで調べてみたところ、日暮里駅前に山手学苑の支部があります」

 日暮里支部のみで合宿を行うというわけではなく、あくまでこのパンフレットの配布元が日暮里支部ということだ。
 パンフレットそのものは本部で発注され、発行されたものが各支部に配布されたのだろう。

 リサ「もしも城ヶ崎がこの合宿に参加する予定だったんであれば、何かその合宿であるのかもしれないけどね」
 愛原「いや、そうとも言えんぞ」
 リサ「えっ?」
 愛原「これはあくまで、募集のパンフレットだろ?もし本当に城ヶ崎君が参加する予定だったのであれば、時期的に既に申し込みしているはずだ。だったら手元にあるのは、こういう募集のパンフレットじゃなく、申込用紙の控えとか、あとは参加に当たっての注意事項とかが書かれた栞とかなんじゃないかな?オマエがゴールデンウィーク明けに参加する修学旅行の栞みたいなもんだよ」
 リサ「あー……そっかぁ……。残念」
 愛原「残念?」
 リサ「あ、いや、何でも無い」
 愛原「塾や予備校の合宿なんて、勉強漬けらしいぞ?」
 善場「もちろん、塾や予備校にもよりますけどね。中にはレクリエーション活動も入っている所もあるそうですよ」
 愛原「そうなんですか?」
 善場「はい。これは小中学生向けの学習塾の話ですが、山の合宿所ですとか、ホテルに宿泊して、夜はキャンプファイヤーとか、最終日には観光地に立ち寄るなんてこともあるそうです」
 愛原「そういうゆとりがあるのはいいことですな」
 善場「中学・高校受験は、大学受験ほど複雑ではないからでしょう」
 リサ「むー……」
 愛原「リサの成績なら、塾とか通わなくても大丈夫だよ」

 リサは本当に地頭が良い。
 これは父親とされる者が医師だからだろう。

 善場「どうしてもというのでしたら、夏合宿に参加したいと本人が言っていると上に申請してあげますよ」
 リサ「! おー!」
 善場「それでは、学習塾の話はここまでにして……。今度はリサが見たという夢の話を聞かせてもらいましょうか?」
 リサ「あー……うん」

 リサは仮面の者に電撃を食らってしまい、気絶した時に見た夢の内容について話した。

 善場「そう……ですか。斉藤……いえ、我那覇絵恋がねぇ……」
 リサ「びっくりしたけど、でも、夢の中だからね」
 善場「リサは夢の内容について、何か心当たりはありますか?」
 リサ「数人の男女が天井に磔にされているという話、あれは学校の七不思議に出て来る内容だよ。“トイレの花子さん”の」
 善場「そうなんですか」
 リサ「ただ、旧校舎が3階建てというのは……」
 善場「そこは本当に2階だったのでしょうか?」
 リサ「えっ?」
 善場「リサが夢の中でスタートした女子トイレは、2階ではなく、1階だったのかもしれませんよ?」
 リサ「えー、そうかなぁ……?まあ、夢の話だからね」
 善場「さて、問題なのは、唐突な我那覇絵恋さんの登場です。リサはこれにはビックリしたそうですね?」
 リサ「そりゃそうだよ。フツー出てくるわけないもん」
 善場「ところが、そうでもないのです」
 リサ「えっ?」
 善場「まず、“トイレの花子さん”と思しき者は、斉藤早苗と名乗って沖縄中央学園に出入りしていました。そしてその時、我那覇絵恋と接点を持ったわけです。そして、夢に出て来た我那覇絵恋は、リサのGウィルスまたは偽性特異菌が見せたものかもしれません」
 リサ「えー……」
 善場「今から、我那覇絵恋に連絡が取れますか?」
 リサ「ちょっと待って」

 リサは自分のスマホを取り出すと、それで絵恋にLINEを送った。
 すぐに既読が付いて、返信があった。

 リサ「『どうかしたの?』だって。何て答えればいい?」
 善場「最近、斉藤早苗と会ったかどうか聞いてみてください」
 リサ「うん」

 リサがその内容を入力している時だった。
 送信する前に、絵恋の方からまた何か送信されたらしい。

 リサ「『これから塾だから、また後でね』だって。そういえばエレン、塾に通ってるんだった」
 善場「……試しにその塾の名前、聞いてもらえませんか?」
 リサ「うん。……『山手学苑』だって」
 愛原「んん!?」
 善場「ほお……」

 山手学苑は1都3県しか営業していないのではなかったか?
 これはどういうことなのだろう?
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“愛原リサの日常” 「デイライト会議」

2024-08-04 11:56:49 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月24日16時07分 天候:晴 東京都港区新橋2丁目 東京メトロ銀座線1521電車・最後尾車内→東京メトロ新橋駅]

〔まもなく、新橋です。出口は、右側です〕

 リサと愛原を乗せた銀座線の電車は、浅い地下トンネルを走行していた。
 アジア一古い地下鉄ということもあり、トンネルは全体的に浅い所を通っている。
 その為、戦時中は大阪の御堂筋線と違い、防空壕の代わりや避難電車の運行は行われていない。

〔お客様に、お願い致します。お降りの際は、お近くのドアから、前のお客様に続いて、お降りください。また、ドア付近のお客様は、一旦ホームに降りて、お待ちください。御協力を、お願い致します〕

 夕方ラッシュはまだ始まっていないが、それでも東京の賑わう場所のみを走る地下鉄ということもあり、車内はだいぶ賑わって来た。

〔しんばし、新橋です。電車とホームの間に、広く空いている所があります。足元に、ご注意ください。1番線の、電車は、渋谷行きです〕

 ドアが開いたので、電車を降りた。
 今のリサは人間の姿に化けているが、それでも鬼型BOWということもあり、五感は普通の人間より優れている。
 鼻に、黴臭い臭いがついた。

 

 ホームを歩いていると、アップテンポな発車メロディが鳴り響く。
 塩塚博氏作曲の“スタートライン”という曲名である。

〔ドアが閉まります。手荷物を、お引きください。無理なご乗車は、おやめください〕

 すぐに電車が発車していく。
 丸ノ内線ではワンマン運転が行われているが、銀座線ではまだ車掌が乗務している。

〔都営浅草線、JR線、ゆりかもめは、お乗り換えです〕

 愛原「まだ、頭がボーッとしてる?」
 リサ「さっきよりは……」
 愛原「そうか。まあ、デイライトでコーヒーくらい出してくれるだろう。それ飲んで目を覚ませ」
 リサ「うん……」

 リサ自身は、そんなにお茶やコーヒーが好きというわけではない。
 もちろん嫌いというわけではなく、出されたら飲むといった感じ。
 目が覚めるというのは分かっているので、愛原の言う通り、向こうでコーヒー出されたら飲もうかくらいには思っていた。
 あと、事務所で愛原が飲んでいるのをマネして飲むというのもある。

[同日16時15分 天候:晴 同地区内 NPO法人デイライト東京事務所]

 善場「本日は御足労頂き、ありがとうございます」

 事務所に行くと、善場が待っていた。
 すぐに会議室に通される。

 善場「コーヒーで宜しいですか?」
 愛原「私は『お構いなく』なんですが、リサがまだ頭が覚めてないらしくて……」
 リサ「変な夢見るくらい、中途半端に意識が飛んでからね」
 善場「ほお……。変な夢ですか……」

 善場は意外そうな顔をした。

 善場「興味がありますね。その話も聞かせてください」
 リサ「そうなの?別にいいけど……」
 善場「リサのようなBOWが見る夢というのは、体内に有しているGウィルスが特異菌が見せる夢という可能性も多々ありますから」
 愛原「なるほど……。イーサン・ウィンターズ氏も、意識不明だった時に、倒したはずのジャック・ベイカーが人間の姿で現れた夢を見たと手記に書いていましたね」
 善場「その通りです」
 リサ「ふーん……。その場合、目が覚めると元の姿に戻ってたりするんだけど、今回は無かったなぁ……」
 善場「必ずしも、第1形態に戻るというわけでもないでしょう?」
 リサ「まあ……。とにかく、お持ちしますので、少々お待ちください」

 善場はリサだけでなく、愛原のコーヒーも持って来た。

 愛原「ああ、これはどうも恐れ入ります」
 リサ「サンブラ茶じゃないよね?」
 善場「違いますよw」

 リサの指摘に、普段はポーカーフェイスの善場も、一瞬だけ顔を崩した。

 愛原「サンブラ茶?」
 リサ「学校の七不思議に出て来るの。確か、90年代半ばくらいの回の時の記録にあるよ」
 愛原「何だい?東京中央学園じゃ、そんな怪しげな名前のお茶の栽培もしてるのかい?」
 リサ「違う違う」
 善場「正体は、寄生植物の1つ……って、今はそういう話をしてる場合ではありません」
 リサ「そうだった。で、なに?」

 リサはコーヒーをズズズと啜りながら聞いた。
 尚、愛原同様、ブラック加糖である。
 これはリサの好みではなく、愛原がそういう飲み方をしているので真似しているだけである。
 コーヒーの飲み方だけでなく、その他の食べ物も、愛原の食べ方を真似している。

 善場「皆さんが旧校舎の女子トイレで見つけた金庫についてです」
 愛原「調べがついたんですね?」
 善場「おおよそは。まず、あの金庫は、傘森倉庫から盗まれたものでした」
 愛原「傘森倉庫。確か、日本アンブレラ100%出資の子会社、アンブレラ・ロジスティックスが解散してできた倉庫会社ですね」
 善場「そうです」

 日本アンブレラ解散後、その運送部門だった件の会社は、今はUL運送として再スタートしている。
 一部の元社員達はそこから独立し、『ユー・ライン』とか『傘森倉庫』を設立している。

 善場「アンブラ・ロジスティックス時代から使用されていた物で、古くなったので廃棄処分寸前だったそうです。ですので、傘森倉庫としては被害届を出すつもりは無いそうですが」
 愛原「確かに、古い金庫でしたね。でも、中身は……」
 善場「中身についても、廃棄処分寸前だったので、使用していなかったそうです。学習塾のパンフレットについても、全く知らないそうです」
 愛原「すると、誰かが傘森倉庫から金庫を盗んで、旧校舎の女子トイレに置いて、その中に塾のパンフレットを入れたってことですか?」
 善場「その可能性が高いです」
 リサ「誰が何の為に?」
 善場「それをこれから推理してみようではありませんか」
 愛原「可能性が高い物から順に、ホワイトボードに書き出してみましょう。まず、学習塾のパンフレットですが、これは適当に入れた可能性は低いです。入れた者が、何らかのメッセージ性を込めていると見て間違い無いでしょう」
 善場「そうですね。因みにこの学習塾ですが、特にアンブレラとの関係性は見当たりませんでした。それだけでなく、アンブレラ以外のバイオテロ組織もです」
 リサ「鍵を持っていたのは、城ヶ崎だよね?城ヶ崎と関係があるんじゃない?」
 善場「いい所に気がつきました。自殺した城ヶ崎さんは、ここの塾生だったそうです」
 リサ「やっぱり!」
 善場「それと、モールデッド化した弟の方もです」
 愛原「何かありそうですね。私達の前に現れた仮面のコについては?」
 善場「警視庁が追っていますが、未だ特定には至っておりません。何しろ、学校の監視カメラにも、『突然映った』といった感じなので」
 リサ「モールデッドの特徴だ……」
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