報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「検査終了」

2023-02-19 20:30:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月16日12時00分 天候:晴 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センターB棟体育館]

 リサ「ハァ……ハァ……!」
 善場「ゼェ……ゼェ……!」

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 午前中に、リサと善場主任の身体能力検査が行われたのだが……そのもようは、とてもレポートできるものではない。
 少なくとも、化け物クラスの2人が床に大の字で疲弊するほどの激しい検査であった。

 高橋「あ……ありのまま……ありのまま、今起こったことを話すぜ……」
 愛原「いや、ダメだ!」
 高橋「せ、先生!?」
 愛原「ありのまま全部話してしまったら、また1話分が終了……もとい、日が暮れてしまう!」
 高橋「は、はあ……」
 愛原「まるで、少年ジャンプのマンガの中でよく行われる武闘大会のようだった。そんなところだろ?」
 高橋「そ、そうです」

 よく体育館が壊れなかったものだ。
 まあ……修繕は必要だろうがな。

 善場「り……リサちゃん……」
 リサ「な……なに……?」
 善場「取りあえず……引き分けね……」
 リサ「……うん……」
 愛原「これで、検査は全て終了ですか?」
 主任研究員「……はっ!……えっ、ええ!そ、そうですね、はぁい!こ、これにて以上……終了となります……はぁい」
 愛原「それで、これから私達はどうすれば良いので?」
 主任研究員「えっ、えーと……。そ、それでは、私服に着替えて頂き、取りあえずは昼食を取ってください。今後のお話は、それからさせて頂きます。はぁい」
 愛原「分かりました。……だ、そうです。善場主任」
 善場「しょ……承知しました」

 私は善場主任を助け起こした。

 愛原「高橋はリサを起こしてやれ」
 高橋「は、はい」

 2人とも汗だくであった。
 リサの白い体操服は汗で濡れて、下の黒いスポブラが透けてしまっている。

 善場「昼食の前に、シャワーを浴びさせてください」
 主任研究員「ど、どうぞ」
 善場「C棟のシャワー室を使わせて頂きます。宜しいですね?」
 主任研究員「も、もちろんです。はぁい」
 愛原「ほ、本当に大丈夫ですか?」
 善場「大丈夫ですよ。ご心配をお掛けしました。本当はあそこまで激しい運動をするものではないのですが、思わずハッスルしてしまいました。年甲斐も無く、お恥ずかしいことです」
 愛原「い、いえ、そんな……」

 それにしても、ラスボスを張る実力を持つリサに、素手で引き分け状態に持って行けるなんて、やっぱり善場主任は、見た目は人間だが、やっぱり人外なのだと思った。
 これでは確かに、BSAAからも監視対象のままとなってしまうことだろう。

[同日13時00分 天候:晴 同センターA棟1階食堂→C棟3階313号室]

 本当は食堂の営業は13時までなのだそうだが、今日だけ施設側の計らいで、延長してくれた。
 昼食はポークカレーとサラダであった。
 御ひつに入った米からよそおうのはいつも通りだが、そこに掛けるカレーも鍋からセルフサービスで掛ける方式だった。

 リサ「大盛り……いや、特盛で!……ううん、この鍋全部!」
 愛原「サイヤ人か!」
 善場「私も少し多目にお願いします」
 愛原「あ、ハイハイ!……俺達は並盛だぞ?」
 高橋「も、もちろんっス!」

 2人の日本版リサ・トレヴァーは、シャワーを浴びた後、私服に着替えていた。
 リサも、黒いTシャツとデニムのショートパンツに着替えている。
 善場主任はスーツだった。

 善場「昼食を食べ終わりましたら、このまま帰宅して頂いて結構です」
 愛原「1度、C棟に戻って荷物を取って来ませんと」
 善場「それもそうですね。あと、車を用意しますので、藤野駅まではそれでお送り致します」
 高橋「何だよ。東京まで送ってくれるんじゃねーのかよ」
 愛原「高橋!」
 善場「申し訳ございません。私達も、残務処理がございますので……」
 愛原「いえ、恐れ入ります」

 リサは特盛カレーをペロリと平らげた。
 昼食を食べ終わると、私達はC棟に向かった。
 313号室に戻り、荷物を持ち出す。
 それと、管理室から頼まれたのは、使用済みのリネンを廊下に出しておくこと。
 合宿所ならではと言える。
 このリネンには、浴衣も含まれる。

 愛原「よし、忘れ物ないな?」
 リサ「うん」
 高橋「大丈夫っス」
 愛原「それじゃ、行くか」

 C棟から再びA棟に戻り、そこで部屋のカードキーを返却する。
 それから守衛所に行き、退構手続きを行う。

 守衛長「どうでしたか?今日の検査は……」
 愛原「ここに来る度、非日常を体験させてくれますよ」
 守衛長「はは、そうですか」
 愛原「早いとこ、日常に戻りたいものです」
 守衛長「でもね、愛原さん。非日常も、それが続いて慣れれば、日常と化すものですよ」
 愛原「……それもそうですね」
 高橋「歩く非日常がここにいやがる」
 リサ「何が?お兄ちゃんもでしょ?」
 高橋「ンだとォ!?」
 愛原「こら、2人とも!……っと、俺もか」

 退構手続きが終わると、駐車場から黒塗りのミニバンがやってくる。

 善場「どうぞ、お乗りください」
 愛原「失礼します」

 そして、固く閉ざされていた正門の門扉が左右に開いた。
 私達が乗り込むと、車がゆっくりと走り出す。
 守衛達の敬礼に見送られて、私達は研修センターをあとにした。

 善場「今回はお疲れさまでした」

 助手席に座る善場主任が、後ろを振り向いて行った。

 愛原「いえいえ。私なんかより、善場主任の方がお疲れでは?」
 善場「こう見えましても、体力には自信がありますので」
 高橋「自信どころの騒ぎじゃねー」
 愛原「高橋!」
 善場「いえ、その通りですね」
 愛原「すいません。高橋には、後で言っておきますので……」
 善場「いいえ、大丈夫ですよ」

 体力には自信があると言った主任だが、精神的な疲れについては、まだ回復していないようだった。

[同日14時38分 天候:晴 同区小渕 JR藤野駅→中央本線1460M列車最後尾車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の2番線の列車は、14時38分発、普通、高尾行きです。この列車は、3つドア、6両です〕

 藤野駅で善場主任達と別れる。
 私達は手持ちのICカードで改札口を通り、すぐにホームに向かった。

 高橋「先生。高尾で、中央快速に乗り換えですか?」
 愛原「いや、京王にする」
 高橋「なるほど。都営新宿線に、そこからもう乗るってことですね」
 愛原「いや、違うよ」
 高橋「は?」

〔まもなく2番線に、普通、高尾行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、3つドア、6両です〕

 往路に乗った時と同じように、211系と呼ばれる中距離電車がやってきた。
 往路は6両で1編成の電車だったが、今度やってきた電車は、3両編成を2編成連結した6両編成だった。

〔ふじの~、藤野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、相模湖に、停車します〕

 前3両はボックスシート車だったが、私達の乗った後ろ3両はロングシートの車両だった。
 最後尾は空いていて、長い座席の真ん中に3人並んで座れた。
 すぐに発車メロディがホームに流れる。

〔2番線の、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 プシューと大きなエアー音がして、ドアが閉まる。
 ホームドアなど無いので、全部の車両のドアが閉まり切れば、電車がすぐに発車する。

〔「次は相模湖、相模湖です」〕

 往路の時と同様、一段下降式の窓が開いているので、トンネルに入ると、強風が車内に入って来る。

 高橋「高尾から、どの電車に乗り換えるって言うんです?」
 愛原「まあ、俺に任せとけ。リサは身体的に疲れただろうし、俺達も精神的に疲れただろ?それを癒しに、ちょっと寄り道をしようと思うんだが、いいかい?もちろん、金は俺が出す」
 高橋「俺は先生にどこまでも付いて行きます!」
 リサ「わたしも」
 愛原「よし、決まりだな」

 まあ、この電車は終点まで乗るのは間違いない。
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“私立探偵 愛原学” 「検査2日目」

2023-02-19 15:20:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月16日07時00分 天候:晴 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センターC棟313号室]

 枕元に置いたスマホがアラームを鳴らす。

 愛原「もう朝か……。いやいや……」

 私は大きく手を伸ばしたが、その手が上段ベッドに当たった。

 高橋「おあっ!?朝からケツビンタはやめてください……
 愛原「何言ってるんだ、さっさと起きろ!」

 私はカーテンを開けた。
 ベッドには、開放型寝台車のようなカーテンが付いている。
 それを開けると、リサのベッドもカーテンが閉じられていた。

 愛原「リサ、起きたか?」
 リサ「

 ダメだ。
 起きている感じが無い。

 愛原「カーテン、開けるぞ?」

 開けると、リサがKの字になって寝ていた。
 布団とかも跳ね除けている状態であり、浴衣もはだけて、その下の黒いスポプラやショーツが丸見えになっている。

 愛原「起きろ、リサ!」

 私が肩を揺さぶると……。

 リサ「ガァーッ!」

 リサが牙を剥き出し、両目を赤く光らせて飛び起きた。

 愛原「おっと!」

 私は噛みつかれないよう、さっと退けた。

 リサ「……あれ?先生?人肉の塊は?」
 愛原「寝ぼけるなよ。ていうか、夢ん中で人食いしてたのかよ……。とにかく、もう朝だから起きろ」
 リサ「はーい……」

 リサは大きな欠伸をした。

 愛原「2度寝するなよ?」

 私はそう言って、リサのベッドから離れた。
 リサは浴衣を直しながら起きてくる。

 リサ「先生、ご飯は?」
 愛原「昨夜と同じ食堂だ。着替えたら、行くぞ」

 私は洗面道具を手にした。

 愛原「俺達はトイレで顔を洗ってくるから、リサはそこを使っていいから」
 リサ「分かった」

 トイレの洗面所もお湯が出るので、そっちも使えることに気づいた。
 私達が向こうで着替えている間、リサには部屋で着替えてもらうことにした。

[同日07時30分 天候:晴 同センターA棟1階食堂]

 今朝は昨夜と打って変わって、とてもよく晴れていた。
 夜半過ぎまで降っていたせいか、路面はまだ濡れていて、できた水溜まりが朝日に反射している。
 そんな中、A棟に移動する。
 尚、リサは私服ではなく、学校のジャージに着替えていた。
 まだ下はブルマではなく、その上から長ズボンのジャージを穿いている。

 善場「おはようございます」
 愛原「おはようございます」

 A棟のロビーで善場主任と合流する。
 しかし、主任はスーツ姿だった。
 確か、主任も検査を受けるはずだが……。

 善場「リサは準備万端ですね。感心です」
 愛原「どうも。……確か、主任も検査を受けられるんですよね?」
 善場「そうですよ」
 愛原「その恰好で受けられるんですか?」
 善場「え?……ああ、これですか。もちろん、後で着替えますよ。食べた後、まだ少し時間があるじゃないですか」

 何だ、そういうことか……。
 食堂に入ると、既に食事は用意されていた。
 御ひつに入った御飯と、鍋に入ったお味噌汁は鉄板だった。
 朝食らしく、鯵の開きの焼き魚であった。
 案の定、リサは骨まで食べようとする。

 愛原「麦の御飯に、大根のお味噌汁。麦飯を使う所は、合宿所らしいかな」
 善場「そうですね」
 愛原「ところで主任」
 善場「何ですか?」
 愛原「主任は、本館のどこに泊まられたのですか?2階や3階の宿泊室ではなかったようですが……」
 善場「そうですね。私は、特別な部屋に泊まらせて頂きました」
 高橋「何だぁ?VIPルームか何かあって、そこかぁ?」
 愛原「こら、高橋。失礼だぞ」

 だが、善場主任は微笑を浮かべるだけで、明確に答えようとはしなかった。

[同日09時00分 天候:晴 同センターB棟体育館]

 高橋「うぉっ、眩しっ!」
 愛原「こ、これは……!」
 リサ「……!!」

 善場主任もまた、動きやすい服装に着替えていた。
 しかしその恰好は、体操服にブルマのリサよりも、更に露出の高いものだった。
 即ち、女子陸上競技のユニフォームである。

 愛原「と、善場主任……それは……?」
 善場「私が大学生時代に着ていたユニフォームです」
 愛原「善場主任、陸上部だったの!?」

 私はつい、文科系だと思っていた。
 それは高橋もそうだったようで……。

 高橋「ねーちゃん、理系の学部っつってなかったっけ?」
 善場「理系だからスポーツをやってはいけないとでも?」
 高橋「え、えっと……そりゃあ……」
 愛原「高橋、それは偏見というものだよ。アメリカのアンブレラのお偉いさんも、なかなかスポーツに勤しんでいたというじゃないか」
 善場「そうです。ウィリアム・バーキン博士がアメフトをやっていたというエピソードもあります。私は陸上競技です」

 リサの緑ブルマに対し、赤いユニフォームが目立つ。
 赤いユニフォームを使用している大学といったら、どこだったっけ……。

 主任研究員「えーと……そろそろ始めて宜しいでしょうか?」
 善場「どうぞ。……愛原所長、撮影でしたら、ここの研究員が記録映像を撮っていますので、不要ですよ」
 愛原「こ、ここ、これは失礼しました」
 善場「私なんかより、リサを撮ってあげたらどうですか?」
 リサ「先生、撮るならわたしを撮って!」
 愛原「あ、ああ、そうだな……」
 主任研究員「えーとですね……。ここでの検査は全て重要機密事項ですので、なるべく撮影は控えて頂きたいのですが……はぁい」
 愛原「それは残念です」
 主任研究員「検査終了後でしたら、構いませんので。はぁい」
 愛原「分かりました」
 主任研究員「それでは、本日の検査の流れについて、説明させて頂きます。はぁい。まずはですね、走り高跳びをして頂きます。バーの高さは180cmからスタート致します。はぁい」
 愛原「ひゃ、ひゃくはちじゅう……!?」
 高橋「俺の身長と同じっスね!?」
 リサ「楽勝」
 善場「助走なんかつけなくても大丈夫ですね」
 愛原「お二人さん!?」
 善場「時間の無駄になりますので、3メートルからスタートして頂いてもよろしいですか?」
 愛原「さんめーとる!?」

 走り高跳びであり、棒高跳びではない。

 主任研究員「申し訳ありません。180センチからスタートすることになっておりますので……。はぁい」
 善場「しょうがないですね。じゃ、さっさとやりましょう」

 私と高橋は、ただ唖然と2人の身体能力を見ているしかなかったのである。
 ……因みに走り高跳びで言うと、彼女らは10メートルでようやくバーに触れるほどであった。
 もう1度言う。
 走り高跳び、である。
 棒高跳びではない。
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“私立探偵 愛原学” 「検査終了後の夜」 3

2023-02-19 11:34:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月15日21時00分 天候:雨 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センターC棟1階シャワー室]

 シャワールームに入ると、だいたい10個ほどのブースに分かれていた。

 愛原「こんなに空いてるのにオマエ、何で俺の隣に入ろうとするんだよ?トナラーか!」
 高橋「さ、サーセン!『ご一緒に』ということっスね?でへへへ……
 愛原「そこじゃねぇ!俺はLGBTじゃねぇっつってんだろ!」

 と、そこへ私のスマホにLINEの着信。
 リサからだった。
 リサは隣の女子用に当然入っている。

 愛原「何だ何だ?」

 私が確認すると、『お兄ちゃんと一緒に入ったら、「アッー!」状態になるから、わたしと一緒に入ろう?』と書かれていた。

 高橋「リサはリサで、先生を食い殺す気ですぜ!そうはいくかってんだ!先生、リサのLINEはブロックで!」
 愛原「いや、それはしなくていいだろう。とにかく、オマエはもっと離れて入れ」
 高橋「ええ~……」
 愛原「これなら、大浴場の方が良かったよ」
 高橋「でもそこも俺達の貸し切りなんで、違った意味で大欲情……」
 愛原「やかましいわ!さっさと入るぞ!」
 高橋「は、はい」

 シャワーの水圧はまあまあで、お湯が出るタイミングも申し分無い。
 使い勝手自体は良いのだが、やっぱり私は広いお風呂に入りたいものだ。

 愛原「温泉ねぇ……」
 高橋「温泉がどうかしました?」
 愛原「何で俺の呟きが聞こえんだよ!?」
 高橋「俺の耳は、先生の御声なら、どんな小さな声でも聞き取れるのっす!」
 愛原「オマエも、リサのこと言えねーだろうが。オマエも化け物だよ、化け物」
 高橋「あざざざざーっす!」
 愛原「誉めてねーし!」

[同日22時00分 天候:雨 同センターC棟3階313号室]

 シャワーを浴びた後は、部屋に戻る。
 寝巻は部屋備え付けの浴衣である。
 高身長の高橋はLサイズを着ているが、それでも裾が寸足らずといった感じ。
 私はМサイズでちょうど良い。
 リサは、Sサイズで足りた。
 浴衣の下にはスポプラを着けているようで、胸元の隙間から黒いそれがチラッと見えていた。

 リサ「これでもブルマはМサイズなんだよ?」
 愛原「知ってる」
 高橋「聞いてねぇ!」
 リサ「Sサイズだと、パツンパツンだし……あ」
 愛原「何だ?」
 リサ「Sサイズもあるんだけど、穿いておく?」
 愛原「今はやめとけ。今は」
 リサ「はーい」
 愛原「明日はそのブルマで検査を受けるのか?」
 リサ「先生がそうしてほしいなら」
 高橋「先生、騙されてはダメですよ?」
 愛原「学校の体操着でやるならいいさ。それがМサイズなんだろ?」
 リサ「うん、そう」

 Sサイズというのは、絵のモデル用に購入した紺色ブルマのことだろう。
 前から見る分には、そんなにキツいような感じはしなかったのだが……。

 リサ「宿題の続き、やる」
 愛原「俺は書類整理でもやるか」
 高橋「俺は何をしたらいいですか?」
 愛原「スマホゲームでもやってたら?」
 高橋「……うっス」

 リサはライティングデスクに向かい、私は座卓に向かう。
 高橋は上段ベッドに横になった。
 幸いこの施設は無線LAN完備なので、それでネットができる。
 リサも宿題で調べ物をする時、ネットが繋がる環境は大助かりのようである。

[同日23時00分 天候:雨 同センターC棟3階]

 愛原「ん?もうこんな時間か。歯磨きして、そろそろ寝るか。リサも疲れただろ?」
 リサ「
 愛原「おい、リサ!」

 リサは机に向かったまま、舟を漕いでいた。

 愛原「寝るなら、ベッドで。ていうか、宿題終わったのか?……ん!?」
 寄生虫(芋虫型):「ヨッ!」
 寄生虫(百足型):「シューリョー!」
 愛原「!!!」

 何と、リサの体から出た寄生虫達が、器用にリサの筆記用具で、代わりに宿題を片付けていた。

 寄生虫(蜘蛛型):「カンリョー!」
 愛原「ぎゃああああああっ!!」
 高橋「せ、先生!?」
 愛原「リサぁぁっ!起きろぉぉぉっ!!」

 私がリサを叩き起こすと、寄生虫達は小型化し、リサの体内へと戻って行った。

 リサ「あれ?寝ちゃった?……ヤバッ!宿題、宿題!……おおー!終わってる!ラッキー!」
 愛原「オマエの寄生虫は、靴屋の小人か!」

 誰作の童話だったか忘れたが、経営破綻寸前の靴屋を助けた小人達の話。
 童話だと愛らしい小人達が登場して、靴屋の主人に代わって立派な靴を作るのだが、リサの場合は寄生虫か……。

 高橋「しかも何か、さっき喋ってませんでした!?」
 愛原「……気のせいだ!」
 高橋「いや、しかし……」
 愛原「気のせいだ」
 高橋「でも先生、さっき絶叫して……」
 愛原「俺は何も聞いていない。寄生虫達が、リサの代わりに宿題やってたのをチラッと見ただけだ」
 リサ「便利でいいね!」
 愛原&高橋「オマエが言うな!」

 私は自分の荷物から、歯磨きセットを取り出した。

 愛原「先に歯磨きさせてもらうぞ」
 高橋「あ、はい」
 リサ「わたしはトイレに行って来る」
 愛原「カードキー忘れんなよ?」
 リサ「はーい」
 高橋「オマエ、先生を驚かせた罰として、和式使え!」
 リサ「何でよ!」

 リサは悪態をつきながら、部屋を出て行った。
 室内には洗面所はあるが、トイレは付いていない。
 そこは合宿所といったところか。

 高橋「先生……」
 愛原「ああ、分かってる。実は気のせいなんかじゃないってことをな」
 高橋「これって、善場のねーちゃんには……」
 愛原「俺達は何も見ていない。ただ、寄生虫がリサの体から出て、ちょっと歩き回っていただけだ」
 高橋「は、はい」

 私はカーテンの隙間から、外を覗いた。
 まだ雨は降り続けている。
 窓からは相模湖が遠くに見えるが、近場に目をやると、A棟や守衛所が見える。
 24時間365日警備に当たっている守衛所の明かりが消えることはないだろうが、A棟は1階の1室だけが明かりが付いていた。
 しかし、そこは管理室とかではない。
 恐らく、そこに善場主任が泊まっているのだろう。
 しかし、本館の宿泊室は新館同様、2階と3階にしか無いはずだが……。
 B棟に程近いあそこの部屋は何なのだろう?
 まさか、職員の仮眠室とかになっているとか?

 高橋「ねーちゃんの所に、夜這いにでも行かれるつもりですか?」
 愛原「まさか。そんなことしたら、俺の人生オワタになるよ」
 高橋「はは、そうですね」

 歯磨きが終わった後、私もトイレに行くことにした。
 廊下は消灯時間により、常夜灯くらいしか点灯していない薄暗さであったが、トイレはさすがに明るかった。
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