報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「20年後の予知夢?」

2023-02-13 20:19:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[期日不明 時刻不明 天候:不明 場所不明(どこかの日本屋敷内?)]

 こ、ここはどこだ?
 そして、私はどうしてここにいる?

 ???「やっと戻って来たか。ヤドロクめ」

 だ、誰だ?
 私の前に現れ、赤い瞳を光らせ、牙を剥き出しにして睨みつける着物姿の女。
 それに私は見覚えがあった。
 やけに大人の体型をしているが、それは……。

 愛原「り、リサなのか!?」

 すらりとした体型に、胸も大きく、顔立ちも大人びている。
 それに対して、私の手は随分と老けてしまっている。
 これはもしかして……未来の世界!?

 リサ(36歳):「頭(こうべ)を垂れてつくばえ。平伏せよ」

 私は反射的に、そうした。
 そうしないといけない威圧感が、リサから放たれている。
 と、その時私は、自分の左手の薬指に指輪がされていることに気が付いた。
 ふと顔を上げると、リサの左手の薬指にも指輪がはめられている。
 これは、もしかして……?

 リサ(36歳):「また長い物を佐川急便が配達してきたが、最近回数が減ったゴルフクラブか、棚に並び切れなくなってきている釣り竿か、それとも1年間家事を頑張って来た妻への御褒美か、答えろ」

 やはり、リサは私の妻!?
 てか、リサのヤツ、人間に戻れなかったのか!?
 まずは人間に戻ってから、という前提だったはずだが……。
 未来の私、どうなってる!?

 リサ(36歳):「毎週末、当たり前のように釣りに行きやがって!オマエの本業は漁師か?答えろ!」
 愛原(アラカン):「でも、『新鮮な魚が食べられて嬉しい』って……。『ゴルフはお土産が無いから、釣りの方が……』って……」
 リサ(36歳):「まず、聞かれたことに答えろ。オマエの本業は漁師か?私は探偵じゃなくて、漁師の妻なのか?答えろ!」
 愛原(アラカン):「ち、違います!違います!本業は……本業はもちろん探偵です!」
 リサ(36歳):「黙れ!何も違わない。私は何も間違えない。それに……新鮮な魚が食べられる?私は魚じゃなくて、肉が好きだということを忘れたのか?では、聞くが……そのマダイ1匹に費やした費用はいくらだ?言っておくが、乗船料だけで逃げるなよ?竿、リール、餌は元より、交通費、防寒着、果てにはオマエの部屋の保管用冷凍庫までだ。重たいカツオを釣り上げ過ぎては肘を痛め、仕事で痛めたと嘘をついて家計から出費したバンテリンと湿布、肘用サポーターまで入れて計算しろ!」

 リサの背中から赤黒い触手が何本も伸びて、着物の隙間から飛び出し、私に絡みついてこようとする。
 ダメだ!逃げられない!

[10月15日06時00分 天候:曇 東京都八王子市三崎町 ホテル東横イン八王子駅北口・7F客室]

 愛原「うーん……うーん……!リサ様……リサ様……ごめんなさい……ごめんなさい……」
 高橋「先生!?先生!?しっかりしてください!」
 愛原「……はっ!?」
 高橋「大丈夫ですか、先生!?どんな怖い夢を!?」
 愛原「う、うん……俺が悪いんだ。未来の俺が、嫁さんをほったからしにして、釣りに行ったりしたから……」
 高橋「“釣りバカ日誌”のハマちゃんですか!?」
 愛原「……何でオマエ、そんな古いマンガ知ってるんだよ?……と、とにかく、夢で良かった……」
 高橋「は、はい!あ、安心してください。現実ですよ」

 私はバスルームの洗面所に行って、顔を洗うことにした。

[同日06時30分 天候:晴 同ホテル1Fロビー]

 30分後、私はリサや高橋を伴って、朝食会場に向かった。
 東横インでは1Fのロビーが朝食会場となる。

 スタッフ「おはようございます!」
 高橋「うっス!」
 愛原「おはようございます……」
 リサ「おはようございます……」
 高橋「な、何か2人とも、テンション低くないっスか!?」
 愛原「うーん……」
 リサ「うーん……」

 取りあえず、バイキング形式の朝食を取る。

 愛原「リサ、今日は少ないな……」
 高橋「いや、それでも俺達より一番多いっスよ!?」
 リサ「ちょ、ちょっと食欲が……」
 愛原「ぐ、偶然だな。俺もなんだ……」
 高橋「ま、まさか先生!?昨夜のステーキが当たったとか?!」
 愛原「いや、そういうことじゃない。別に、腹具合は何とも無い」
 リサ「そうなの。ただ、ちょっとメンタルが……」
 高橋「メンタルぅ!?」

 私達は空いているテーブルに座った。

 愛原「ちょ、ちょっと鬼嫁のリサに厳しい尋問を受けて……」
 リサ「わ、私も旦那様になってくれた愛原先生から、浮気を疑われて……えっ!?」
 愛原「ん!?」

 どうやら、リサもリサで、似たような夢を見たらしいぞ?
 聞くと、やっぱり20年後くらいの未来の夢で、リサの夢でも、私はリサと結婚しているらしい。
 しかし、リサの夢の中の私は、人間を辞めたBOWと化し、パワハラ&モラハラ夫と化していたという。
 夜遅くに帰って来たリサを私は拷問に掛け……。

 リサ「わたしに【ぴー】したり、【ぴー】したり、【ぴー】してきたりしたの」
 愛原「こ、こら!こういう公共の場ではそういうことを言っちゃダメ!」
 高橋「こんな化け物に拷問を掛けるとは、さすが先生です!BSAAや善場のねーちゃんも真っ青ですね!」
 愛原「俺は逆に、人間に戻れなかったリサと結婚した世界線の未来を見させられたがな……」
 リサ「で、でも、結局はわたしと先生、結婚するってことだね。……べ、別に先生になら鞭でお尻を叩かれてもいいんだけど、お手柔らかにね?」
 愛原「お、俺も1人で釣りに行ったりはしない!」
 高橋「サイアクの未来っスね!」

 唯一ハブかれた高橋が、吐き捨てるように言った。

 愛原「と、とにかくあれだ。8時台の電車で行くから、7時半にはホテルをチェックアウトするぞ?」
 高橋「分かりました」
 リサ「り、了解……!」
 高橋「8時台の電車って、高尾乗り換えですか?」
 愛原「違う。その高尾から先へ直通する電車があるんだ。あれなら、乗り換え無しで行ける。多分、前にも乗ったことあるぞ?」
 高橋「ああ、確かにそうっスね」

 私にしろ、リサにしろ、とんでもない夢を見たものだ。
 枕が変わったからだろうか?
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“私立探偵 愛原学” 「八王子前泊」 2

2023-02-13 15:08:29 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月14日18時15分 天候:曇 東京都八王子市三崎町 某ステーキハウス]

 八王子市の歓楽街の一角。
 とある古い雑居ビル。
 古めかしいエレベーターで上がった先に、目当てのステーキ店はあった。
 店内はジャズの音が鳴り響く、とても賑やかな店だった。

 店員「いらっしゃいませー!」
 高橋「予約してた高橋だ」
 店員「高橋様ですね!どうぞ、こちらへ!」

 高橋が厨房に向かって手を振ると、太った強面の男がペコリと頭を下げてきた。
 なるほど。
 あれが高橋の知り合いか。
 厨房にはもう1人いて、壮年だが、高橋の知り合いよりも大柄で強面の男性だ。
 あれが、高橋の知り合いの親父さんか。
 オーナーシェフと、その息子というわけか。
 私達はテーブル席に案内された。

 高橋「先生、どうします!?一杯やりますか!?」
 愛原「んー、まあ、一杯だけならいいか」

 実は飲食店にとって、アルコールの方が回収率が良いというからな。
 ここは1つ、貢献してやることにしよう。

 リサ「じゃあ、とりまビールのジョッキ3つで」
 ギャル店員「とりまビールジョッキ3つ入りまーす!」
 高橋の知り合い「おい、だから、その前に聞くことあるだろ!」
 ギャル店員「あ、サーセン。お車の運転とか、無いですか?」
 高橋「それは大丈夫だ。全員電車だ」
 ギャル店員「確認オッケーです!とりまビールジョッキ3つ~!」
 リサ「やった!」

 誰かツッコんでくれーっ!
 ここでも、ツッコミ役は私だけのようだ。
 急いで私はビール1つをキャンセルし、オレンジジュースに変更させた。

 愛原「全くもう!」
 高橋「サーセン。類友で、皆してアタマ悪くて……」
 愛原「で、何がいい?」
 リサ「ダイナマイトステーキ1ポンド!」
 愛原「本当にダイナマイト突っ込んで来るんじゃないだろうな?」
 高橋「いや、さすがにそんなことはないっスよ。先生は何にします?」
 愛原「ショットガンステーキ、300グラムでいいよ」
 高橋「じゃあ、俺はマグナムで」

 あえて銃火器の名前を付けているが、要はヒレとかサーロインとかである。

 高橋「これが、俺からの誕プレだ」
 リサ「ありがとう!」
 ギャル店員「焼き加減どうしますか?」
 愛原「私はミディアムレアで」
 高橋「じゃあ、俺も」
 リサ「私は生!」
 愛原「焼いてねーだろ、それ!」
 高橋「ゴムは着けねーとヤベェよな」
 愛原「そっちじゃねぇ!」
 ギャル店員「生ビール追加でーす!」
 愛原「そっちの生でもねぇ!」

 何だか、疲れる店に来ちゃったな……。

 ギャル店員「ダイナマイトステーキは自動的に焼き加減が決まってますんで」
 リサ「んん?」
 愛原「あ、そうなの?」
 ギャル店員「お肉が3分割になってて、1つがウェルダン、もう1つがミディアム、もう1つがレアになってます」
 愛原「……だってさ、リサ」
 リサ「じゃあ、それで」

 これで注文は決まった。
 しばらくしてから、肉がジュウジュウ焼ける音を立てて、ステーキが運ばれてきた。

 リサ「おお~!」
 愛原「うむ。これは美味そうだ」
 高橋「でしょ?でしょ?」

 リサは場合、1ポンドなので、かなりの量だ。

 リサ「ガゥゥゥッ!」

 ウェルダンに焼かれた肉に、リサはガブリ付いた。
 レアと違って肉汁も無く、むしろ焦げ目がついた肉は硬くなっているだろうが、リサは持ち前の牙でそれを引き裂いて食べた。

 愛原「ワイルド過ぎんだろ……」
 高橋「やっぱ化け物っスね」
 リサ「ガァッ!?」
 愛原「『化け物』って言ったら怒るよ」
 高橋「サーセン」

 辛うじて、まだ第0形態は保っている。

 愛原「これじゃ、食レポどころじゃないな」
 高橋「そうっすねw」

 しょうがないから、私が代わりに撮影してあげよう。
 私はリサがガツガツ食べている所を撮影した。

 愛原「『魔王様、お食事なう』って感じでいいかな?」
 高橋「いいっスね!Twitterっスか!?それともインスタ!?」
 愛原「リサんとこの、『魔王軍』のグループLINEに投稿するだけだよ」
 高橋「なるほど。……って、何で先生、そこに入ってるんスか!?」
 愛原「何か知らんが、リサが招待してくれた」
 高橋「いいんスかね?」
 愛原「あそこではリサがルールだからいいんだろ。オマエのグループもそうだろうが」
 高橋「あ、あー……確かに」
 愛原「そこはヒトのことは言えねーなw」
 高橋「さ、サーセン……」

 そして……。

 ギャル店員「お済みのお皿、お下げしてよろしいですか?」
 愛原「ああ。ご馳走様」
 リサ「ふーっ……!」

 リサは御満悦といった感じで、自分の腹をポンポン叩いた。

 高橋「普通はこんだけ食ったら太るだろうによ。一体どうなってんだ?」
 愛原「変化の時に多大なエネルギーを使うのと、あとは体内の『寄生虫』とかGウィルスとかの餌になるからだって」

 ウィルスの餌というのはよく分からんが、寄生虫というのは本当にあることだ。
 寄生虫に栄養を横取りされて、宿主が栄養失調になるという話は聞いたことがある。
 リサの場合、栄養失調とまではいかないまでも、太るほどの余ったカロリーは、体内の『寄生虫』の方に行くのだろう。

 リサ「デザートいい?」
 高橋「調子に乗るんじゃねぇ。俺の招待券は、ステーキとセットのライスとサラダまでだ」
 愛原「……残りは俺が出すよ」
 高橋「先生?」
 愛原「ドリンク代も別料金だろ?だったらついでに、デザートまで出すよ」
 リサ「おー!」

 リサのヤツ、肉の食い過ぎで、第1形態に戻りかけている。
 具体的には少し耳が尖り、瞳は赤くなっている。
 デザート食わせて緩和させた方が良い。

[同日19時30分 天候:曇 同地区内 ホテル東横イン八王子駅北口]

 食事を終えてホテルに戻る。

 愛原「あー、ちょっと待ってくれ。飲み物買ってから部屋に戻る」
 高橋「分かりました」

 ロビーの自販機で水などを買ってから、エレベーターに乗り込んだ。
 そして7階で降りて、部屋の前でリサと別れる。

 愛原「それじゃリサ、夜更かししないで、早く寝るんだぞ?」
 リサ「分かった。おやすみ」
 高橋「ダクトを通って、部屋に侵入するのもナシな?」
 リサ「ちっ……」
 愛原「何だよ、『ちっ』ってw」

 部屋に戻ると、善場主任からメールが来た。
 明日のこと、宜しくという内容だった。
 当然、善場主任は私達が八王子市内に前泊するということは知っている。

 高橋「先生、今お茶お入れしますんで」
 愛原「ああ、悪いね」

 高橋は、部屋備え付けの電気ケトルに水を入れた。

 愛原「リサも満足したみたいだし、今夜は上手く凌げるだろう。明日の朝食はホテルのバイキングがあるし、問題は向こうでどういう食事が出されるかだな」
 高橋「実験の一環で、『飯抜き』とかあったら面白いっスねw」
 愛原「実験じゃなくて検査な。もしもそういうのがあったら、もう今日から絶食のはずだから、それは無いよ」
 高橋「それもそうっスね」
 愛原「それに、デイライトさん達がそんな危険ことをするとは思えない」
 高橋「へへ……」
 愛原「とにかく、明日に備えて、俺達も今夜は早めに寝るぞ」
 高橋「了解でやんす!」
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“私立探偵 愛原学” 「八王子前泊」

2023-02-13 11:44:01 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月14日17時41分 天候:曇 東京都八王子市 京王線7001電車先頭車内→京王八王子駅]

 私達を乗せた“京王ライナー”は、順調に走行していた。
 府中駅から先は指定席券が不要となるらしいが、それでも連結器横の優先席は優先席ではない。
 また、平日朝の上り電車で実施されている女性専用車も、“京王ライナー”では実施されない。
 全員着席の有料特急では、痴漢が発生することが無いからだろう。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、京王八王子、京王八王子です。お出口は、右側です。本日も京王をご利用頂きまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕

 京王線沿線は色々なアニメ、ドラマなどのロケ地となっている。
 小田急線や東急線と同様、それらを仕事にする人達が多く住んでいるからだろう。
 アニメだけでもざっと“ゲゲゲの鬼太郎”(調布、多磨霊園)、“ウマ娘プリティーダービー”(府中、東府中、府中競馬正門前)、“エスパー魔美”“耳をすませば”“平成狸合戦ぽんぽこ”“一週間フレンズ”(聖蹟桜ヶ丘)……って、聖蹟桜ヶ丘どんだけ多いねん!
 え?“エスパー魔美”って、名古屋じゃないのかって?それはNHK名古屋の実写版!

 高橋「どうしたんスか、先生?」
 愛原「いや、まあ……京王はオシャレな所だなぁ……と」
 高橋「新しい事務所、京王線沿線で探します?」
 愛原「どうせ家賃高いだろ?なら、やめとく」
 高橋「京王と繋がってるのに、都営新宿線はエラい地味ですよね」
 愛原「なー」

 電車はゆっくりと京王八王子駅のホームに入って行く。
 尚、ここも地下駅である。
 ゆっくりと入線するのは、行き止まりの終点駅な上に、ホームの長さ(有効長)もギリギリだからだという。

 愛原「さあ、着いた」

 だからなのか、ホームドアはまだ無い。
 電車が停車すると、すぐにドアが開く。

 愛原「先にホテルに、荷物を置いてから行こう。ホテルの近くなんだろ?」
 高橋「そうっス」

 私はこの時、忘れていた。
 ホテルの立地条件を……。

[同日17時55分 天候:曇 同市三崎町 東横イン八王子北口]

 客引き「八王子の眠らない町!三崎町!飲み歩きも良し!食べ歩きも良し!女の子と遊ぶも良し!さーて、お客さんは……」
 愛原「い、いや、結構!仕事で来たんだから……」
 客引き「へっへ!ご利用の時は、お声掛けください」

 歓楽街にあったことを忘れていた。
 都心で言えば新宿の歌舞伎町、錦糸町、浅草といったところか。

 高橋「俺と先生だけなら、ちょっと遊んで行ってもいいんスけどねぇ……」
 愛原「オマエはどっちかって言うと、『働く』方じゃねーのか?」

 私はホストクラブの看板を指さして言った。
 元々イケメンの高橋が更にオシャレをしたようなホスト達が写っている。
 ここで修行を積んだホストが、新宿に『上る』のだろうか?
 それとも……。

 高橋「い、いや、俺は違いますよ!」
 愛原「暴走族なんてやってないで、まだこっちの方が稼げただろうに……」
 高橋「いや、ちょっとは齧りついたんスよ」
 愛原「やっぱりか!その稼いだ金は?」
 高橋「全部先生に差し上げました」
 愛原「は?」
 高橋「覚えてないスか?俺が初めて先生に弟子入りした時、住み込みの宿代として……」
 愛原「! あの大金、ホストで稼いだ金だったのか!?」
 高橋「そうっス」
 愛原「……ありがたく滞納した家賃、光熱費の支払いに使わせてもらったよ」
 高橋「お役に立てて、何よりっス」

 夜のお店の客引きを交わしつつ、私達は宿泊先のホテルの前に着いた。

 高橋「知り合いの店は、この道を真っ直ぐ行った所にあるんで」
 愛原「結局は、夜のお店が軒を連ねる街の一角にあるということか」
 高橋「……サーセン。でも、ババァが経営してるような場末のスナックよりはいい店なんですよ」
 愛原「ああ、そう」

 私の母親くらいの女性が経営するスナックも、それはそれで味があるとは思うがな。
 とにかく、私達はホテルにチェックインした。

 愛原「部屋は7階だ。エレベーターで行くぞ」

 私達はカードキーを受け取った。
 歓楽街の中にあるホテルだからか、セキュリティレベルは他の東横インよりも高め。
 エレベーターに乗る時も、カードキー読取機にカードを当てないとボタンを押せない仕組み。

 愛原「アメニティはそこから持って行くんだってさ」
 リサ「ほおほお」

 部屋着のガウンとか……。

 高橋「確か、藤野の方も、浴衣くらいありましたよね?」
 愛原「あったな」

 エレベーターに乗り込んで、高橋が言った。

 愛原「浴衣はあるが、アメニティが無いんだ。だから、歯ブラシとかは持参しないと」
 高橋「それは持って来ましたよ。あとはタオルとかですね」
 愛原「うん、そうだ」

 リネンサプライ業者が対応しているのは、寝具関係と浴衣くらいまでか。
 それらは施設側がそういう契約をすればいいのだが、タオルなどは対象外である。
 その為、タオル等は持参せよということなのだろう。

 リサ「荷物を置いたら、すぐに行くの?」
 愛原「そうしたいところだが、高橋が一服してからだな」
 リサ「えー……」
 愛原「リサもトイレとか済ませておけよ。新宿駅で行ったっきりだろう?」
 リサ「うん、そうだね。そんなこと言われると、したくなってきちゃった」
 愛原「部屋の中でな」
 リサ「ここではしないよ。……先生に命令されたらするけど」
 愛原「するんかい!命令しないからな!」

 私達は7階でエレベーターを降りると、客室に向かった。
 部屋のドアも、カードキーで開ける。

 リサ「アンブレラのカードキーはどうだろう?」

 リサは試しに金ぴかのカードキーを当ててみた。
 国内の日本アンブレラの施設で使用されている、カードキー式の電子ロックなら、どこでも開けられるカードであるが、さすがに東横インのドアは開けられなかった。
 何でリサがそんなもの持っているのかというと、日本版リサ・トレヴァーの中で唯一、霧生市の研究所に取り残された個体だったが、バイオハザード発生による所内の混乱時にパクッたそうである。

 愛原「出掛ける時には連絡するから、部屋でおとなしく待ってろよ?」
 リサ「はーい……」

 私と高橋はツインルーム、リサはシングルルームに入った。
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