報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサの異変」

2023-02-26 20:51:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月20日06時30分 天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 愛原「今日は朝から雨か……」

 目を覚ました私は、窓の外を見て呟いた。

 愛原「おはよう」
 高橋「あっ、先生。おはようございます」

 今日辺り、リサの再検査の結果が来ると善場主任が言っていた。
 その結果をうちの事務所に持って来てくるということなので、事務所はしっかり開けないといけない。

 愛原「リサは?」
 高橋「何だか早くに目が覚めたとかつって、俺より早く起きてアニメ観てました」
 愛原「そうなの!?」

 高橋は6時に起きるはずだ。
 先に起きて顔を洗い、朝食の準備をしてくれる。
 高橋としては、『住み込みの弟子として、これくらい当然っス!』と言ってはいるが……。

 愛原「それでリサは?」
 高橋「今、シャワーを浴びてますよ」
 愛原「あれ?でも昨夜、ちゃんと風呂入ったよな?」
 高橋「本人は『寝汗かいたから』っつってましたけど、きっとオナり過ぎたんスよw」
 愛原「……それくらい、元気ならいいんだがな」

 それが今日だけだというのなら、まあ、たまにはそんな日もあるだろうくらいにしか思わなかっただろう。
 しかし、リサの眠りが浅いのは今日に始まったことではないのだ。

 リサ「おはよう」

 バスルームから出てきたリサは、見た目は普通だった。
 特に顔色が悪いとか、目に隈が出来ているとか、そういう所はない。

 愛原「あ、ああ、おはよう。大丈夫なのか、リサ?」
 リサ「何が?」
 愛原「お前、ここ最近、寝つきが悪くて、眠りが浅いんだって?大丈夫なのか?」
 リサ「う、うん。大丈夫だよ」
 愛原「今日、再検査の結果が出る。それまでは、学校休んだ方がいいんじゃないのか?」
 リサ「別に、どこも悪くないよ。ズル休みはダメだよ」
 愛原「ま、まあ、そうなんだが……」

 そりゃまあ、もう1度言うように、リサの見た目はどこもおかしくない。
 しかし、連日の寝つきの悪さ、そして眠りの浅さは、普通の人間にとってはダメージだ。
 もちろん、リサはただの人間ではないから、同じに考えてはいけないのは分かっている。
 それにしても、それにしても、だ。
 それまでは普通に寝つきが良くて、普通に眠れてたのが、急にダメになったとなったら、それは違和感のあることではないか?

 リサ「もしも検査で悪い結果が出たら、その時は早退するよ」
 愛原「知らず知らずのうちに、ウィルスをばら撒いていたとしてもか?」
 リサ「……いや、そんなことないでしょ。もしそうなら、先生やお兄ちゃんが真っ先にゾンビになってるはずだよ?」
 愛原「だって俺達は抗体があるからさ」

 Tウィルスの短所はいくつかあるが、その1つ、使用する側から見た短所だが、それは『10人に1人の割合で、最初から抗体を持っている者がいる』ということだ。
 BSAAの創設に携わったオリジナル11のメンバーは、全員がバイオハザードを経験しているが、誰もが感染者からの攻撃を受けていたにも関わらず、感染しなかったのは、偏に抗体を持っていたからだとされる。
 幸いにして、私もその1人だった。
 高橋は違ったが、変異前の感染力の弱い方のウィルスに感染していた為、発症する前にワクチンを使用できたことで、事なきを得ている(変異前のTウィルスは、感染してからゾンビ化するまで、数日ないしは1週間強の初期症状がある。変異後の株に感染すると、1日ないしは数日でゾンビ化する)。

 リサ「それもそうか。Gウィルスは……」
 愛原「それは俺も高橋も、ワクチン接種済みだ」

 そして、特異菌に関しても。
 だからリサの体内のウィルスが変異でもしない限りは、私達は感染しない。
 だが、もしかしたら、変異しているのかもしれないのだ。
 リサのその異変は、その信号かもしれない。
 今のところ私達には何の症状も無いが、感染無症状の状態なだけかもしれない。

 リサ「わたしは行く」
 愛原「……どうなっても知らないぞ」

[同日10時00分 天候:雨 同地区 愛原学探偵事務所]

 愛原「……と、いうようなことがありました」
 善場「そうですか」

 私は事務所を訪ねてきた善場主任に、今朝のことを話した。

 善場「愛原所長の危機意識については、素晴らしいことだと思います。ですが、リサの言う事にも一理あります」
 愛原「はあ……」
 善場「本人の具合が悪くなければ、学校を休む必要は無いでしょう」
 愛原「そうですか。それで、再検査の結果は……?」
 善場「『異常無し』です」
 愛原「ええっ!?」
 善場「落ち着いてください。要は、藤野のセンターでの検査と同じ結果が出ただけという意味です。Tウィルスの濃度は下がり、逆に特異菌の濃度が上がり、Gウィルスについては変わらないということです」
 愛原「すると、また再々検査ということですか?」
 善場「いえ、通常の検査は何度やっても、同じ結果が出るだけでしょう。リサの問診を行った医師の所見では、『精神的に不安定さがある』とあります」
 愛原「精神?」
 善場「これには思い当たることがありまして、特異菌感染者は知能や知性の低下はありませんが、精神が不安定になるという傾向があります。もっとも、100%適合したイーサン・ウィンターズ氏は除きます」
 愛原「リサは100%の適合者ではない?」
 善場「全くの不適合者というわけではないでしょうが、100%でもないでしょうね」

 適合率が0だと死亡する。
 低いとモールデッドなどのクリーチャーに転化する。
 中くらいだと、普段は人間の姿を保ってはいられるが、端々にクリーチャーの片鱗が現れる(例、ゾイ・ベイカーを除くベイカー一家)。
 高いとより人間に近いが、それでも狂人となる(例、感染中のミア・ウィンターズ)。
 100%だと、本人も自覚の無いまま人間としての生活が送れる(例、イーサン・ウィンターズ)。

 善場「Tウィルスを排除するほどの強い菌です。特異菌は」
 愛原「な、なるほど……。いずれは、Tウィルスが無くなると」
 善場「可能性はあります。もしかしたら、リサが体内で飼育している寄生虫にも変化があるでしょう」

 も、もしかして、代わりにリサの宿題やったりしたのは……。

 愛原「あ、あの……善場主任……」

 私は気になることを話した。

 善場「そういうことは、もっと早く仰って頂きませんと……」
 愛原「す、すいません。でも、藤野では寄生虫についても調査されたのでは?」
 善場「危険ですので、寄生虫の死骸を調べただけです。恐らく、特異菌の割合が増えたので、蟲達にも変化があったのでしょう」
 愛原「そ、そうなんですか……」
 善場「今度は特異菌に特化した検査をする必要があります」
 愛原「また、藤野ですか……」
 善場「行くのが大変でしょうからね。何とか、浜町の診療所で再検査ができないか、確認してみます」
 愛原「分かりました。取りあえず、リサはどうしますか?早退させますか?」
 善場「本人に何かしら、具合の悪い所が発生したらそうしましょう。本人にも、そのように伝えてください」
 愛原「分かりました」

 この時は、まだ平和だった。
 だが、もう少し、リサの方を注視した方が良かったのかもしれない。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの再検査」

2023-02-26 15:13:53 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月18日16時30分 天候:曇 東京都中央区日本橋浜町 某診療所]

 問診票を書いたリサは、レントゲン室近くの待合椅子に座った。

 レントゲン技師「愛原リサさん、中へどうぞ」
 愛原「はい。……リサ、呼ばれたぞ」
 リサ「う、うん。……先生は行かないの?」
 愛原「レントゲン室は、基本的に技師さんと患者しか入れないからね」
 リサ「……それもそうか」

 レントゲン室の中に入るリサ。
 放射能でBOWを倒すことは可能なのだろうか?
 恐らくBOWも生物である以上、可能なのだろうが、その後の処理が大変か。
 未だに放射能を除染するには、現代の技術を持ってしても多大な費用と時間を要する。
 BSAAがレールガンなどを装備していたとしても、核兵器を使わないのはそれが理由か。
 高圧電流で動きを止めることはできるので、それで動きを止めた後、集中砲火を浴びせて倒すという些か乱暴なやり方が通っているという。

 リサ「終わった」

 案外早めに撮影は終わった。
 撮影に当たり、上に着ていたニットやブラウスは脱がないといけないので、それをまた着るのに時間が掛かったようだ。
 尚、医師の問診がある為、ニットはまだ着ていない。

 事務員「次は検尿です。この紙コップに、尿を取ってください」
 リサ「はい」

 このフロアにも共用トイレはあるが、診療所内にもトイレはある。
 リサはそこの女子トイレに行った。
 ウィルス濃度を測るには、体液を調べるのが1番だ。
 だからなのか、検尿と採血が最も注視されたような感じであった。

 事務員「次は、採血です」

 もちろんリサの血は赤い。
 しかし、私の健康診断の時でさえ、せいぜい3本分くらいしか採血しないのに、リサは10本くらい採血されていた。
 恐らく、ここ以外にも検査に持って行くつもりなのだろう。
 リサの血液から、抗ウィルス剤が作れるかもしれないのだ。
 何しろ、エボラウィルスでさえ食い殺すGウィルスやTウィルスを保有しているのだから。
 しかもそれを、リサは自分の意志で操作できるのだから。

 検査技師「はい、目を大きく開いて。虹彩を撮ります」

 様々な検査が終わった後、最後は医師の問診。
 リサを診るのは、女性医師。
 だが、ここにいるのは、本当にこのクリニックの医師なのだろうか?
 BSAAから派遣されてきた医官かもしれない。

 医師「何か体に変わったことはないですか?」
 リサ「生理の時、前より重くなった」
 医師「……他には?例えば、手から白い液体が出るようになったとか……」
 リサ「それは無い」

 白い液体が出るというのは、特異菌感染者の初期症状の1つである。
 どうやらBSAAは、リサが特異菌を駆使するようになることを恐れているようだ。
 Gウィルスと特異菌がタッグを組んだら、どうなるのか……。

 医師「幻覚症状のようなものは?」
 リサ「……それも無い」
 愛原「あ、あの……!」

 私は口を挟まずにはいられなかった。

 愛原「彼女は最近、あまり寝つきが良くないようです。あと、このビルに入る前、フラッシュバックと思しき症状が発生しまして……」
 リサ「先生!」
 医師「記憶障害の症状の1つですね。フラッシュバックで、何を見ましたか?」
 リサ「……わたしに似た女の子。小学生の制服と、黄色い帽子を被って……」
 医師「そのコ、1人だけ?」
 リサ「1人だけ……」
 医師「背景は?」
 リサ「背景……」
 医師「ビルの中とか、外とか、海とか山とか……」
 リサ「山……かな?何か、草とか木とか生えていて……」
 医師「そうですか……」

 その女の子が誰なのかは分からない。
 しかし、リサにフラッシュバック現象を起こさせたきっかけとなった女子児童も同じ格好をしていた。
 コロナ禍の昨今、マスクを着けていて顔は分からなかったが、リサの消えた記憶の中に残っていた少女と似た雰囲気だったのだろう。
 もしかしたら、リサと同様に、日本アンブレラに捕まった女の子なのかもしれない。

 愛原「あと、眠りが浅いそうです。そうだな、リサ?」
 リサ「う、うん……」
 医師「眠りが浅いということは、夢を見やすいということですね。どんな夢をよく見ますか?」
 リサ「夢……それは……うっ……!!」

 リサが頭を抱えた。
 椅子から落ちそうになったので、慌てて体を支えてやる。

 医師「……何がしかのトラウマを抱えているようですね」
 愛原「そりゃ、アンブレラで非人道的な実験を受けてきましたからね」

 私はそれを思い出しているのかと思った。

 医師「…………」

[同日17時30分。天候:曇 某診療所の入っているビル]

 再検査が一通り終わり、私とリサは診療所をあとにした。
 リサの疲労が激しかったので、同じフロア内にあるリフレッシュコーナーに行く。
 ここには自販機はあるし、ベンチもある。
 リサに好きなジュースを飲ませて、落ちつかせた。

 愛原「どうだ?少しは落ち着いたか?」
 リサ「うん……」
 愛原「悪かったな。まさか、ここまでキツいとは……」
 リサ「ううん」
 愛原「帰りはタクシーにしよう。この時間だと、帰りの電車も混んでいるしな」

 乗車時間は短いのだが、またもやリサにフラッシュバック現象が発生したりするとマズいので。
 ジュースを飲み終えると、エレベーターホールに向かい、そこからエレベーターに乗って1階に下りた。
 それからバス停のある通りに出て、空車のタクシーを探す。
 平日の日本橋地区のバス通りなので、少し待てば空車のタクシーがやってきた。

 愛原「タクシー!」

 大手のタクシー会社のタクシーが私達の前で止まる。

 愛原「はい、乗って」

 トールワゴンタイプのタクシーだった。
 スライドドアが開くと、先にリサを乗せ、助手席後ろに私が乗った。

 愛原「菊川1丁目……までお願いします」
 運転手「はい、ありがとうございます」

 タクシーが走り出すと、私は高橋にLINEを送った。
 高橋はマンションで夕食の支度をしているはずなので、まもなく帰るという連絡である。
 善場主任には、既にメールで検査終了の報告をしている。
 すると、彼女からこんな返信があった。

 善場「お疲れ様です。あとは再検査の結果待ちですが、リサの動向については、より一層の監視強化をお願いします。できれば結果が出るまで、登校も控えるのが望ましいと思われます」

 とのことだった。
 私はびっくりした。
 確かにここ最近、リサの様子が変だとは思っていたが、デイライトはもっと深刻に捉えているようだ。

 愛原「さすがに不登校には無理があると思います。そこまでリサは、体調不良というわけではありません。再検査の結果次第で、休むかどうかを決めては?」

 と、更に返信すると、

 善場「判断は愛原所長にお任せします」

 とのことだった。

 愛原「善場主任は何かを御存知なのですか?もしそうなら、私にも説明しては頂けませんでしょうか?」

 と、送信した。

 善場「今はまだ憶測の段階です。再検査の結果がこちらに来ましたら、ご説明させて頂きます」

 とのことだった。
 その憶測が何なのかを聞きたいのだが……。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの異変?」 3

2023-02-26 11:18:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月18日15時45分 天候:雨 東京都千代田区外神田 JR秋葉原駅前バス停→都営バス秋26系統車内]

 私は当初の予定の東京中央学園上野高校ではなく、秋葉原駅の中央口で待ち合わせることにした。
 リサからそうしてほしいと言われたのだ。
 恐らく、私と一緒にいると恥ずかしいとか、そういうことなのだろうと思った。
 直接、本人から聞いてはいないのだが。

 リサ「お待たせ」

 リサは単独でやってきた。
 まあ、今回は行く所が行く所だけに、『魔王軍』がぞろぞろ来られても困る部分はある。
 駅の外に出て、駅前ロータリーの外周部にあるバス停に向かう。

 リサ「地下鉄でいかないの?」
 愛原「行きはバスの方が楽なんだよ」
 リサ「ふーん……?」

 

 バス停に到着する。
 バス停の前は、ヨドバシAkibaの建物がそびえ立っている。

 

 愛原「学校はどうだった?」

 私は制服姿のリサに聞いた。

 リサ「特にも何にも無かった。わたしも、いつも通り」
 愛原「そうか。それは良かった」

 今朝は具合が悪そうにしていたが、今は回復したようだ。

 

 バスは既にバス停に停車していたが、まだ乗車は始まっていない。
 始発停留所に相応しく、ヨドバシカメラのラッピングをしたバスだった。
 当然ながら、ヨドバシカメラの店舗がある町でしか、このラッピングを見ることはできない。
 名物は、カメラのレンズ部分にタイヤホイールが来るようになっていること。
 発車の5分前くらいになってから、バスは所定の停車位置に移動し、それから前扉が開いた。

 愛原「大人2人で」

 行きのバス代は、私が2人分払っておいた。
 それから、後ろの2人席に着席する。

 リサ「再検査って、どういうことをやるの?」
 愛原「どうも、やり方は普通の健康診断と大して変わらないみたいだな。行き先は、見た目は普通のクリニックだし、そんなに構えなくてもいいんじゃないかな?」
 リサ「そう……」

 それから発車の時間になって、バスが出発した。
 ロータリーをグルッと回って、公道に出る。
 ロータリーのヨドバシカメラ側にもバス停はあるが、こちらは高速バス用である。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは浜町中の橋、江戸川車庫前経由、葛西駅行きでございます。次は須田町、須田町でございます〕

 愛原「都営バスだと、バスの中でもWi-Fiが使えるよ?」
 リサ「ホントだ。……本当はね、今日も文化祭の打ち合わせがあったんだ」
 愛原「え、そうなの?実行委員会か何か?」
 リサ「わたしは違うんだけど、何か、色んな所から声が掛かっちゃって……。『絵のモデルになって』とか、『写真のモデルに』とか、『リサ・トレヴァーの役で演劇部の支援を!』とか……」
 愛原「最後の依頼、『なに本人に頼んでんだよ』ってツッコミか?」
 リサ「そうだね。まあ、私はオリジナル大先輩とは違うけど」
 愛原「うん」

 何だかんだ言って、学校では人気者か。
 持ち前の能力を良い方向に使うと、『魔王様』か。

[同日16時07分 東京都中央区日本橋浜町 久松町バス停→某診療所]

〔「久松町です」〕

 都営バスを降りる。
 バス停の名前は日本橋久松町から取ったと思われるが、実際は日本橋浜町である。
 神田も『神田○○町』など、神田の名前が付く地区名が多い。
 何を隠そう、明治座の最寄りである。
 地下鉄の浜町駅でも、副駅名に『明治座前』とあるほどだ。
 バスを降りると、通学服に見を包んだ小学生達が代わりにバスに乗り込んで行った。
 この近くに小学校があるのだろう。

 リサ「うっ……!」
 愛原「リサ!?」

 高学年の女子児童と思しき少女がリサとすれ違い、最後にバスに乗り込んだ。
 その少女を見た時、リサが頭を抱えた。

 リサ「うう……」
 愛原「どうした?大丈夫か?」
 リサ「……大丈夫。ちょっと、頭痛がしただけ……」

 リサには人間だつた頃の記憶が殆ど無い。
 しかし、時折その記憶の糸口に触れるようなことがあると、フラッシュバックのように断片的な記憶が蘇り、その際に激しい頭痛を起こすのだ。

 愛原「何か、記憶が……?」
 リサ「思い出せない……」

 リサの記憶は、あまりにも断片的過ぎて、特定するのが困難なのである。
 未だに、人間だった頃はどこに住んでいて、親は?というのは分かっていない。
 上野利恵が実の姉妹ではなく、従姉妹であった所までは分かっている。
 だが当の利恵も、人間だった頃の記憶は殆ど失われている(上野利恵自身も実の姉を失っており、それが最初はリサではないかとされた)。

 愛原「そうか……」

 とにかく、私達はクリニックのあるビルの中に入った。
 複合ビルの中にあるクリニックというのは、大都市では珍しいことではないが、それでも1階とか2階となどの低層部分に入居しているのが普通である。
 このビルからすれば、確かにクリニックが入居しているフロアは低層階になるのだろうが、それでもエレベーターでの移動を余儀無くされる所は珍しいと言えるだろう。
 低層階用のエレベーターに乗り込み、クリニックのあるフロアへと向かう。

 愛原「こんにちは。愛原と申しますが、デイライトさんの指示で参りました」
 受付係「少々お待ちください」

 確かに入ると、内装はクリニックそのものだった。
 待合ロビーがあり、受付がある。

 受付係「それでは、こちらの問診票をお書きになり、書き終わりましたら、あちらのレントゲン受付で、こちらの問診票を出してお待ちください」

 とのことだった。
 まるで本当に、健康診断のようだ。
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