[10月20日06時30分 天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]
愛原「今日は朝から雨か……」
目を覚ました私は、窓の外を見て呟いた。
愛原「おはよう」
高橋「あっ、先生。おはようございます」
今日辺り、リサの再検査の結果が来ると善場主任が言っていた。
その結果をうちの事務所に持って来てくるということなので、事務所はしっかり開けないといけない。
愛原「リサは?」
高橋「何だか早くに目が覚めたとかつって、俺より早く起きてアニメ観てました」
愛原「そうなの!?」
高橋は6時に起きるはずだ。
先に起きて顔を洗い、朝食の準備をしてくれる。
高橋としては、『住み込みの弟子として、これくらい当然っス!』と言ってはいるが……。
愛原「それでリサは?」
高橋「今、シャワーを浴びてますよ」
愛原「あれ?でも昨夜、ちゃんと風呂入ったよな?」
高橋「本人は『寝汗かいたから』っつってましたけど、きっとオナり過ぎたんスよw」
愛原「……それくらい、元気ならいいんだがな」
それが今日だけだというのなら、まあ、たまにはそんな日もあるだろうくらいにしか思わなかっただろう。
しかし、リサの眠りが浅いのは今日に始まったことではないのだ。
リサ「おはよう」
バスルームから出てきたリサは、見た目は普通だった。
特に顔色が悪いとか、目に隈が出来ているとか、そういう所はない。
愛原「あ、ああ、おはよう。大丈夫なのか、リサ?」
リサ「何が?」
愛原「お前、ここ最近、寝つきが悪くて、眠りが浅いんだって?大丈夫なのか?」
リサ「う、うん。大丈夫だよ」
愛原「今日、再検査の結果が出る。それまでは、学校休んだ方がいいんじゃないのか?」
リサ「別に、どこも悪くないよ。ズル休みはダメだよ」
愛原「ま、まあ、そうなんだが……」
そりゃまあ、もう1度言うように、リサの見た目はどこもおかしくない。
しかし、連日の寝つきの悪さ、そして眠りの浅さは、普通の人間にとってはダメージだ。
もちろん、リサはただの人間ではないから、同じに考えてはいけないのは分かっている。
それにしても、それにしても、だ。
それまでは普通に寝つきが良くて、普通に眠れてたのが、急にダメになったとなったら、それは違和感のあることではないか?
リサ「もしも検査で悪い結果が出たら、その時は早退するよ」
愛原「知らず知らずのうちに、ウィルスをばら撒いていたとしてもか?」
リサ「……いや、そんなことないでしょ。もしそうなら、先生やお兄ちゃんが真っ先にゾンビになってるはずだよ?」
愛原「だって俺達は抗体があるからさ」
Tウィルスの短所はいくつかあるが、その1つ、使用する側から見た短所だが、それは『10人に1人の割合で、最初から抗体を持っている者がいる』ということだ。
BSAAの創設に携わったオリジナル11のメンバーは、全員がバイオハザードを経験しているが、誰もが感染者からの攻撃を受けていたにも関わらず、感染しなかったのは、偏に抗体を持っていたからだとされる。
幸いにして、私もその1人だった。
高橋は違ったが、変異前の感染力の弱い方のウィルスに感染していた為、発症する前にワクチンを使用できたことで、事なきを得ている(変異前のTウィルスは、感染してからゾンビ化するまで、数日ないしは1週間強の初期症状がある。変異後の株に感染すると、1日ないしは数日でゾンビ化する)。
リサ「それもそうか。Gウィルスは……」
愛原「それは俺も高橋も、ワクチン接種済みだ」
そして、特異菌に関しても。
だからリサの体内のウィルスが変異でもしない限りは、私達は感染しない。
だが、もしかしたら、変異しているのかもしれないのだ。
リサのその異変は、その信号かもしれない。
今のところ私達には何の症状も無いが、感染無症状の状態なだけかもしれない。
リサ「わたしは行く」
愛原「……どうなっても知らないぞ」
[同日10時00分 天候:雨 同地区 愛原学探偵事務所]
愛原「……と、いうようなことがありました」
善場「そうですか」
私は事務所を訪ねてきた善場主任に、今朝のことを話した。
善場「愛原所長の危機意識については、素晴らしいことだと思います。ですが、リサの言う事にも一理あります」
愛原「はあ……」
善場「本人の具合が悪くなければ、学校を休む必要は無いでしょう」
愛原「そうですか。それで、再検査の結果は……?」
善場「『異常無し』です」
愛原「ええっ!?」
善場「落ち着いてください。要は、藤野のセンターでの検査と同じ結果が出ただけという意味です。Tウィルスの濃度は下がり、逆に特異菌の濃度が上がり、Gウィルスについては変わらないということです」
愛原「すると、また再々検査ということですか?」
善場「いえ、通常の検査は何度やっても、同じ結果が出るだけでしょう。リサの問診を行った医師の所見では、『精神的に不安定さがある』とあります」
愛原「精神?」
善場「これには思い当たることがありまして、特異菌感染者は知能や知性の低下はありませんが、精神が不安定になるという傾向があります。もっとも、100%適合したイーサン・ウィンターズ氏は除きます」
愛原「リサは100%の適合者ではない?」
善場「全くの不適合者というわけではないでしょうが、100%でもないでしょうね」
適合率が0だと死亡する。
低いとモールデッドなどのクリーチャーに転化する。
中くらいだと、普段は人間の姿を保ってはいられるが、端々にクリーチャーの片鱗が現れる(例、ゾイ・ベイカーを除くベイカー一家)。
高いとより人間に近いが、それでも狂人となる(例、感染中のミア・ウィンターズ)。
100%だと、本人も自覚の無いまま人間としての生活が送れる(例、イーサン・ウィンターズ)。
善場「Tウィルスを排除するほどの強い菌です。特異菌は」
愛原「な、なるほど……。いずれは、Tウィルスが無くなると」
善場「可能性はあります。もしかしたら、リサが体内で飼育している寄生虫にも変化があるでしょう」
も、もしかして、代わりにリサの宿題やったりしたのは……。
愛原「あ、あの……善場主任……」
私は気になることを話した。
善場「そういうことは、もっと早く仰って頂きませんと……」
愛原「す、すいません。でも、藤野では寄生虫についても調査されたのでは?」
善場「危険ですので、寄生虫の死骸を調べただけです。恐らく、特異菌の割合が増えたので、蟲達にも変化があったのでしょう」
愛原「そ、そうなんですか……」
善場「今度は特異菌に特化した検査をする必要があります」
愛原「また、藤野ですか……」
善場「行くのが大変でしょうからね。何とか、浜町の診療所で再検査ができないか、確認してみます」
愛原「分かりました。取りあえず、リサはどうしますか?早退させますか?」
善場「本人に何かしら、具合の悪い所が発生したらそうしましょう。本人にも、そのように伝えてください」
愛原「分かりました」
この時は、まだ平和だった。
だが、もう少し、リサの方を注視した方が良かったのかもしれない。
愛原「今日は朝から雨か……」
目を覚ました私は、窓の外を見て呟いた。
愛原「おはよう」
高橋「あっ、先生。おはようございます」
今日辺り、リサの再検査の結果が来ると善場主任が言っていた。
その結果をうちの事務所に持って来てくるということなので、事務所はしっかり開けないといけない。
愛原「リサは?」
高橋「何だか早くに目が覚めたとかつって、俺より早く起きてアニメ観てました」
愛原「そうなの!?」
高橋は6時に起きるはずだ。
先に起きて顔を洗い、朝食の準備をしてくれる。
高橋としては、『住み込みの弟子として、これくらい当然っス!』と言ってはいるが……。
愛原「それでリサは?」
高橋「今、シャワーを浴びてますよ」
愛原「あれ?でも昨夜、ちゃんと風呂入ったよな?」
高橋「本人は『寝汗かいたから』っつってましたけど、きっとオナり過ぎたんスよw」
愛原「……それくらい、元気ならいいんだがな」
それが今日だけだというのなら、まあ、たまにはそんな日もあるだろうくらいにしか思わなかっただろう。
しかし、リサの眠りが浅いのは今日に始まったことではないのだ。
リサ「おはよう」
バスルームから出てきたリサは、見た目は普通だった。
特に顔色が悪いとか、目に隈が出来ているとか、そういう所はない。
愛原「あ、ああ、おはよう。大丈夫なのか、リサ?」
リサ「何が?」
愛原「お前、ここ最近、寝つきが悪くて、眠りが浅いんだって?大丈夫なのか?」
リサ「う、うん。大丈夫だよ」
愛原「今日、再検査の結果が出る。それまでは、学校休んだ方がいいんじゃないのか?」
リサ「別に、どこも悪くないよ。ズル休みはダメだよ」
愛原「ま、まあ、そうなんだが……」
そりゃまあ、もう1度言うように、リサの見た目はどこもおかしくない。
しかし、連日の寝つきの悪さ、そして眠りの浅さは、普通の人間にとってはダメージだ。
もちろん、リサはただの人間ではないから、同じに考えてはいけないのは分かっている。
それにしても、それにしても、だ。
それまでは普通に寝つきが良くて、普通に眠れてたのが、急にダメになったとなったら、それは違和感のあることではないか?
リサ「もしも検査で悪い結果が出たら、その時は早退するよ」
愛原「知らず知らずのうちに、ウィルスをばら撒いていたとしてもか?」
リサ「……いや、そんなことないでしょ。もしそうなら、先生やお兄ちゃんが真っ先にゾンビになってるはずだよ?」
愛原「だって俺達は抗体があるからさ」
Tウィルスの短所はいくつかあるが、その1つ、使用する側から見た短所だが、それは『10人に1人の割合で、最初から抗体を持っている者がいる』ということだ。
BSAAの創設に携わったオリジナル11のメンバーは、全員がバイオハザードを経験しているが、誰もが感染者からの攻撃を受けていたにも関わらず、感染しなかったのは、偏に抗体を持っていたからだとされる。
幸いにして、私もその1人だった。
高橋は違ったが、変異前の感染力の弱い方のウィルスに感染していた為、発症する前にワクチンを使用できたことで、事なきを得ている(変異前のTウィルスは、感染してからゾンビ化するまで、数日ないしは1週間強の初期症状がある。変異後の株に感染すると、1日ないしは数日でゾンビ化する)。
リサ「それもそうか。Gウィルスは……」
愛原「それは俺も高橋も、ワクチン接種済みだ」
そして、特異菌に関しても。
だからリサの体内のウィルスが変異でもしない限りは、私達は感染しない。
だが、もしかしたら、変異しているのかもしれないのだ。
リサのその異変は、その信号かもしれない。
今のところ私達には何の症状も無いが、感染無症状の状態なだけかもしれない。
リサ「わたしは行く」
愛原「……どうなっても知らないぞ」
[同日10時00分 天候:雨 同地区 愛原学探偵事務所]
愛原「……と、いうようなことがありました」
善場「そうですか」
私は事務所を訪ねてきた善場主任に、今朝のことを話した。
善場「愛原所長の危機意識については、素晴らしいことだと思います。ですが、リサの言う事にも一理あります」
愛原「はあ……」
善場「本人の具合が悪くなければ、学校を休む必要は無いでしょう」
愛原「そうですか。それで、再検査の結果は……?」
善場「『異常無し』です」
愛原「ええっ!?」
善場「落ち着いてください。要は、藤野のセンターでの検査と同じ結果が出ただけという意味です。Tウィルスの濃度は下がり、逆に特異菌の濃度が上がり、Gウィルスについては変わらないということです」
愛原「すると、また再々検査ということですか?」
善場「いえ、通常の検査は何度やっても、同じ結果が出るだけでしょう。リサの問診を行った医師の所見では、『精神的に不安定さがある』とあります」
愛原「精神?」
善場「これには思い当たることがありまして、特異菌感染者は知能や知性の低下はありませんが、精神が不安定になるという傾向があります。もっとも、100%適合したイーサン・ウィンターズ氏は除きます」
愛原「リサは100%の適合者ではない?」
善場「全くの不適合者というわけではないでしょうが、100%でもないでしょうね」
適合率が0だと死亡する。
低いとモールデッドなどのクリーチャーに転化する。
中くらいだと、普段は人間の姿を保ってはいられるが、端々にクリーチャーの片鱗が現れる(例、ゾイ・ベイカーを除くベイカー一家)。
高いとより人間に近いが、それでも狂人となる(例、感染中のミア・ウィンターズ)。
100%だと、本人も自覚の無いまま人間としての生活が送れる(例、イーサン・ウィンターズ)。
善場「Tウィルスを排除するほどの強い菌です。特異菌は」
愛原「な、なるほど……。いずれは、Tウィルスが無くなると」
善場「可能性はあります。もしかしたら、リサが体内で飼育している寄生虫にも変化があるでしょう」
も、もしかして、代わりにリサの宿題やったりしたのは……。
愛原「あ、あの……善場主任……」
私は気になることを話した。
善場「そういうことは、もっと早く仰って頂きませんと……」
愛原「す、すいません。でも、藤野では寄生虫についても調査されたのでは?」
善場「危険ですので、寄生虫の死骸を調べただけです。恐らく、特異菌の割合が増えたので、蟲達にも変化があったのでしょう」
愛原「そ、そうなんですか……」
善場「今度は特異菌に特化した検査をする必要があります」
愛原「また、藤野ですか……」
善場「行くのが大変でしょうからね。何とか、浜町の診療所で再検査ができないか、確認してみます」
愛原「分かりました。取りあえず、リサはどうしますか?早退させますか?」
善場「本人に何かしら、具合の悪い所が発生したらそうしましょう。本人にも、そのように伝えてください」
愛原「分かりました」
この時は、まだ平和だった。
だが、もう少し、リサの方を注視した方が良かったのかもしれない。