報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「京王から地下鉄へ」

2023-02-22 20:34:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月16日18時9分 天候:晴 東京都新宿区新宿1丁目 京王線新宿駅→京王新線(都営新宿線)新宿駅]

 北野駅からは、京王線本線をひたすら東へ進む。
 高尾山口駅を出たら北に向かい、高尾駅を出たら南へ向かいと、方向を変えながら進んで行く。
 この辺りは、甲州街道から外れた場所を真っ直ぐに走るJR中央線とは対照的である。
 ドラマやアニメの舞台に採用されやすい高幡不動駅や聖蹟桜ヶ丘駅に停車し、最近では“ウマ娘プリティーダービー”にも登場する府中駅に停車すると、あとは多くの駅を通過していく。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく新宿、新宿、終点です。京王新線、都営新宿線、都営大江戸線、東京メトロ丸ノ内線、小田急線、JR線はお乗り換えです。京王をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 都営新宿線に乗り換えるには、1番便利な笹塚駅。
 特急は停車するのだが、それよりも速いライナーは通過する。
 その為、都営新宿線に乗り換えたければ、終点の新宿駅で乗り換えるしかない。

〔「……お出口は、左側です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。……」〕

 電車は地下に潜り、京王線のホームに滑り込んだ。
 行き止まりの頭端式ホームの為、電車はゆっくりとホームに滑り込んだ。
 2番線はライナーが発車するホームである。
 そこに入ったということは、折り返し、また“京王ライナー”として運行するということだろうか。
 乗車ホームにはホームドアがあるが、降車ホームにはそれが無い。
 その代わり、ドア以外の場所には柵が立っている。

〔「ご乗車ありがとうございました。新宿、新宿、終点です。お忘れ物、落とし物にご注意ください」〕

 私達は電車を降りた。
 都営新宿線は5番線から出るので、京王新線ホームに移動しなければならない。
 そこに改札口を出ずに向かうには、3番線ホームから出ている連絡階段を通ると良い。
 頭端式のホームの良い所は、車止めの後ろを回り込んで、階段の上り下りをすることなく、他のホームに移動できる所である。
 幸い先頭車に乗っていたので、それは簡単にできた。
 問題は、3番線。
 4番線、5番線の連絡階段は3番線ホームの下り方向先端部分にあるので、3番線を延々と歩かないといけないという……。
 で、階段を上って辿り着く。
 そう、階段しか無いので、3番線経由での乗り換えは注意。
 京王新線のコンコースに辿り着くと、ホームに向かうのに、また階段を下りなければならないという。
 尚、こちらはエスカレーターもエレベーターもある。

 愛原「案外、歩くな、こっちのルートも」
 高橋「そうっスね……」

 3番線に到着する電車なら良いだろうと思うかもしれないが、あいにくと3番線は乗車専用。
 降車ホームは反対側のドアが開く。
 それでも整列乗車をやっていなければ、3番線側から降りても良いのかもしれない(東武東上線や西武池袋線などはOK)。
 尚、体力自慢の若者である高橋や、もっと化け物のリサは全く気にしていないもよう。

[同日18時17分 天候:晴 同地区 京王新線(都営新宿線)新宿駅→都営新宿線1806T電車先頭車内]

 都営新宿線には新宿止まり、新宿始発の電車がある。
 これらの電車は新宿駅到着後、すぐに折り返し運転をするわけではない。
 4番線に到着して乗客を全部降ろした後、引き上げ線に引き上げて行く。
 そして、1本前の本八幡方面行きが出発した後、引き上げ線から5番線に回送してくるのである。

〔「5番線の電車は、18時20分発、各駅停車の大島行きです」〕

 やってきたのは、都営の車両だった。
 フロント部分のイチョウのマークや、京王電車には無い黄緑色の塗装が目立つ。
 そして、JR東日本の普通列車と同じ音色のドアチャイムと共に、ドアが開いた。
 夕方とはいえ、ラッシュの無い日曜日で、10両編成の電車がまるっと空車状態で入線してくるわけだから、ドアが開いても熾烈な席取り合戦が行われることはなく、私達を含めた乗客達は皆、粛々と乗り込んで空席に座って行く。

〔この電車は、各駅停車、大島行きです〕

 電車に乗り込んで、座席に座る。
 初期車は座席が硬いタイプで、そのタイプであった。
 柔らかい座席の京王電車から乗り換えると、尚更硬さが際立つような気がする。
 まあ、乗車時間はそんなにあるわけではない。

〔「18時20分発、都営新宿線、各駅停車の大島行きです。発車まで、3分ほどお待ちください」〕

 駅構内もWi-Fiが入る。
 しかし、都営大江戸線と違って、電車内にもWi-Fiがあるわけではない。
 その為、リサは停車中の今のうちにネットをやっていた。

 愛原「『魔王軍』とやり取りしてるのか?」
 リサ「うん、そう」
 愛原「そうか……」

 『魔王軍』のメンバーは、リサに寄生虫を植え付けられていることが分かっている。
 但し、健康被害さえ無ければ、デイライトも動くつもりはないらしい。
 恐らく、何らかの実験のつもりなのだろう。

 それから発車の時間になり、電車はダイヤ通りに発車した。

〔都営新宿線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、各駅停車、大島行きです。次は新宿三丁目、新宿三丁目。丸ノ内線、副都心線はお乗り換えです。お出口は、右側です〕

 駅を出ると、もう電車内ではWi-Fiが使えない。
 リサは諦めて、スマホの画面を閉じた。
 あと、Wi-Fiが使えるのは駅に停車している時、あとは夕食先として予定しているファミレスくらいか。

 リサ「うーん……」

 リサは欠伸をした。
 白いマスクをしているので、牙が見えることはない。

 愛原「眠いのか?」
 リサ「うん……少し……」

 温泉に入って疲れを取ったはいいが、今度は眠くなってきたということか。

 愛原「寝れば、少しは食欲が落ちるんじゃ?」
 リサ「目が覚めた後のお腹空いてる感ハンパ無いから、食べておいた方がいい」
 愛原「そうか」

 するとリサ、私に寄りかかる。

 リサ「着くまで寝るね」
 愛原「ああ、分かった」

 因みにリサ、フード付きのパーカーを着ているが、フードも被っておいた。
 恐らく寝ている間に、第1形態に戻ってしまっても、誤魔化せるようにする為だろう。
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“私立探偵 愛原学” 「寄り道からの帰り」

2023-02-22 15:25:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月16日16時00分 天候:晴 東京都八王子市高尾町 京王高尾山温泉]

 風呂上がり後、食事処で飲み物と甘味を楽しむ私達。
 リサは何か食事をしたかったようだが、それは止めておいた。
 クリームあんみつとオレンジジュースで宥めておく。

 リサ「先生、今度わたしのオッパイで背中洗ってあげるねぇ?」
 愛原「何で知ってるんだ!?」
 リサ「わたしの蟲が……」

 リサの口の中から、百足型の寄生虫が顔を出して……。

 寄生虫(百足型)「ヨッ!」
 高橋「蟲にスパイさせんな!」
 愛原「いつの間に!?」

 スルスルとリサの体内に戻って行く蟲。

 愛原「段々とオマエ、人間離れしていってないか?」
 高橋「化け物の道、まっしぐらですな」
 リサ「でも、役に立つんだよ、このコ達!この前なんか、ピッキングしてみせたんだから!」
 高橋「自慢できることじゃねぇ!」
 愛原「いや、待て。アンブレラの施設を探索する際に、鍵が無いと開かないドアを開けたいのに鍵が無い場合は、役に立つかもしれんな」
 リサ「エヘヘ……そうでしょ?」
 高橋「都合よくまたそんな仕事、来ますかね?」
 愛原「ははっ(笑)、もう無いか?」

 私にとっては、居眠りした本人の代わりに宿題を片付けたその能力の方が凄いと思う。

 愛原「検査の時に、寄生虫なんかも調べられたんだろ?」
 リサ「うん。1種類ずつ取られたよ」
 愛原「1種類ずつ?」
 リサ「今の百足型でしょ?芋虫型でしょ?蜘蛛型でしょ?他にもゴキブリ型や蜂型もあるよ」
 愛原「全種類コンプリートする気か!」

 私は2017年にアメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザード事件を思い出した。
 そこはベイカー農場という農場やその近辺の湿地帯などが舞台だったが、農場経営者の奥さんもまた特異菌の感染者で、彼女は蟲を駆使した攻撃をイーサン・ウィンターズ氏に繰り出していたと聞いた。
 リサのその異能もそれと似たようなものだとすると……。

 愛原「なあ。もしかしてその蟲達、特異菌も影響してないか?」
 リサ「うん。研究員達も言ってた。どの蟲からも、TウィルスとGウィルス、そして特異菌の反応があったんだって」
 愛原「アメリカのベイカー農場事件だって、特異菌オンリーだったのに、オマエはそれにプラスしてTとGウィルスか」
 高橋「歩く生物兵器っスね」
 愛原「何を今さら……」

 で、海外ではこういう場合、すぐさま暴走して、周辺にウィルスや特異菌をばら撒いて、ゾンビだらけにするのがオチだが、リサはこうやって制御できている。
 はっきり言って、奇跡以外の何物でもないそうだ。
 それは偏に、私という存在が大きいからだとされる。
 もちろん、リサ自身が化け物だという自覚があるというのもあるが(BSAAに追い回される化け物達の中には、自分がそうだという自覚が無い者もいる)。

[同日17時00分 天候:晴 同地区 京王電鉄高尾山口駅→京王高尾線7506電車先頭車内]

 温泉で体の疲れを癒やした後、私達は再び駅に戻った。

 

 愛原「チケットレスサービスだから、紙の特急券は要らないよ。乗車券だけICカードでいい」
 高橋「八王子行きと同じっスね」
 愛原「そういうこと」

 

 さすがに夕方ということもあり、駅は帰りの行楽客で賑わっている。
 元々この駅始発だから、並んでいれば座って帰れるのだが、もう1度今度は上りの“京王ライナー”に乗ってみたいというのがあった。
 もちろんこれは、私の趣味なので、自分のポケットマネーである。

 

 とはいうものの、3人並んで座れる席と言ったら、連結器横の席だけということになるが。
 座席は背もたれが高く、ヘッドレストも付いているとはいえ、横向き席はあまり人気が無いもよう。
 それでも、充電コンセントは付いている。
 尚、ライナー以外での運用に当たる場合は優先席であるが、ライナーとして運転する場合は優先席ではなくなる。
 クロスシートの方が旅情はあるのだが、足の長い高橋にとっては、足が伸ばせる横向き席の方が良いのかもしれない。
 私達が座る向かい側の席は車椅子スペースになっていて座席が無い為、広々としている。
 で、発車前に“京王ライナーのテーマ”が流れているところは、新宿発の下り列車と一緒。

〔ご案内致します。この電車は、“Mt.TAKAO”号、新宿行きです。途中、高尾、めじろ台、北野、高幡不動、聖蹟桜ヶ丘、分倍河原、府中、明大前に止まります。この電車は、全車指定席です。予め座席指定券をお買い求めの上、指定された席をご利用ください〕

 リサ「それで先生、夕食は?」

 連結器横の座席に座るリサが、真ん中に座る私の方を向いて言った。

 高橋「食う事ばっかだな」
 愛原「人を食い殺すよりはマシさ。菊川に着いたら何か食おう」
 リサ「菊川ね……」
 愛原「新宿駅に着いたら、今度は新宿始発の都営新宿線に乗り換えできるんだ。それでスムーズに、帰宅できるんだよ」
 リサ「で、何を食べるの?」
 愛原「リサが食べたいものでいいよ」
 リサ「じゃあ、肉」
 愛原「だろうな。また、ジョナサンでいいか?」
 リサ「いいよ」

 これで決まった。

[同日17時15分 天候:晴 京王電鉄高尾線7506電車先頭車内]

 ピンポーンピンポーンとJR東海の普通列車と同じ音色のドアチャイムが鳴り、車両のドアが閉まった。
 高尾山口駅にはホームドアが無い為、電車のドアが閉まると、運転室から発車合図のブザーの音が微かに聞こえてくる。
 私鉄や地下鉄ではこれが当たり前で、それが省略されているJRの方が特殊なのかもしれない(新幹線や気動車を除く)。
 それから電車が、ゆっくりと走り出した。
 高尾駅までは単線であり、本線に入る為にポイント通過がある関係で、速度制限が掛かるからだ。
 チーン!と運転室からチンベルの音が聞こえてくる。
 信号が切り替わる際に鳴る合図だ。
 車両によっては、御仏壇の鈴の音にも似ている。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。京王をご利用くださいまして、ありがとうございます。“Mt.TAKAO”、新宿行きです。途中、高尾、めじろ台、北野、高幡不動、聖蹟桜ヶ丘、分倍河原、府中、明大前に止まります。次は、高尾です。高尾の次は、めじろ台に止まります〕

 山中を走るからか、トンネルも通過する。
 JR中央本線も高尾駅を出ると山の中に向かって行くが、そちらは登るという感覚は無い。
 恐らく蒸気機関車の時代に開通したことから、急な上り坂の線路は引けなかったのだろう。
 対して京王高尾線は、ぐんぐん登って、まるで登山電車のようである。
 こちらは最初から、馬力のある電車を運行する前提で開通したからであろう。
 今は逆方向だから、下り坂を下りて行くといった感じだ。
 それでもJRと接する高尾駅では、京王線ホームの方がやや高い位置にある。
 夕食だが、私としては一瞬、居酒屋のような所で一杯引っかけて……と思ったのだが、リサのような若いコはファミレスの方が良いようだ。
 ま、そこでもビールは飲める。
 私達は東京都の西部から、東部へと歩を進めた。
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