報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「検査終了後の夜」 3

2023-02-19 11:34:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月15日21時00分 天候:雨 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センターC棟1階シャワー室]

 シャワールームに入ると、だいたい10個ほどのブースに分かれていた。

 愛原「こんなに空いてるのにオマエ、何で俺の隣に入ろうとするんだよ?トナラーか!」
 高橋「さ、サーセン!『ご一緒に』ということっスね?でへへへ……
 愛原「そこじゃねぇ!俺はLGBTじゃねぇっつってんだろ!」

 と、そこへ私のスマホにLINEの着信。
 リサからだった。
 リサは隣の女子用に当然入っている。

 愛原「何だ何だ?」

 私が確認すると、『お兄ちゃんと一緒に入ったら、「アッー!」状態になるから、わたしと一緒に入ろう?』と書かれていた。

 高橋「リサはリサで、先生を食い殺す気ですぜ!そうはいくかってんだ!先生、リサのLINEはブロックで!」
 愛原「いや、それはしなくていいだろう。とにかく、オマエはもっと離れて入れ」
 高橋「ええ~……」
 愛原「これなら、大浴場の方が良かったよ」
 高橋「でもそこも俺達の貸し切りなんで、違った意味で大欲情……」
 愛原「やかましいわ!さっさと入るぞ!」
 高橋「は、はい」

 シャワーの水圧はまあまあで、お湯が出るタイミングも申し分無い。
 使い勝手自体は良いのだが、やっぱり私は広いお風呂に入りたいものだ。

 愛原「温泉ねぇ……」
 高橋「温泉がどうかしました?」
 愛原「何で俺の呟きが聞こえんだよ!?」
 高橋「俺の耳は、先生の御声なら、どんな小さな声でも聞き取れるのっす!」
 愛原「オマエも、リサのこと言えねーだろうが。オマエも化け物だよ、化け物」
 高橋「あざざざざーっす!」
 愛原「誉めてねーし!」

[同日22時00分 天候:雨 同センターC棟3階313号室]

 シャワーを浴びた後は、部屋に戻る。
 寝巻は部屋備え付けの浴衣である。
 高身長の高橋はLサイズを着ているが、それでも裾が寸足らずといった感じ。
 私はМサイズでちょうど良い。
 リサは、Sサイズで足りた。
 浴衣の下にはスポプラを着けているようで、胸元の隙間から黒いそれがチラッと見えていた。

 リサ「これでもブルマはМサイズなんだよ?」
 愛原「知ってる」
 高橋「聞いてねぇ!」
 リサ「Sサイズだと、パツンパツンだし……あ」
 愛原「何だ?」
 リサ「Sサイズもあるんだけど、穿いておく?」
 愛原「今はやめとけ。今は」
 リサ「はーい」
 愛原「明日はそのブルマで検査を受けるのか?」
 リサ「先生がそうしてほしいなら」
 高橋「先生、騙されてはダメですよ?」
 愛原「学校の体操着でやるならいいさ。それがМサイズなんだろ?」
 リサ「うん、そう」

 Sサイズというのは、絵のモデル用に購入した紺色ブルマのことだろう。
 前から見る分には、そんなにキツいような感じはしなかったのだが……。

 リサ「宿題の続き、やる」
 愛原「俺は書類整理でもやるか」
 高橋「俺は何をしたらいいですか?」
 愛原「スマホゲームでもやってたら?」
 高橋「……うっス」

 リサはライティングデスクに向かい、私は座卓に向かう。
 高橋は上段ベッドに横になった。
 幸いこの施設は無線LAN完備なので、それでネットができる。
 リサも宿題で調べ物をする時、ネットが繋がる環境は大助かりのようである。

[同日23時00分 天候:雨 同センターC棟3階]

 愛原「ん?もうこんな時間か。歯磨きして、そろそろ寝るか。リサも疲れただろ?」
 リサ「
 愛原「おい、リサ!」

 リサは机に向かったまま、舟を漕いでいた。

 愛原「寝るなら、ベッドで。ていうか、宿題終わったのか?……ん!?」
 寄生虫(芋虫型):「ヨッ!」
 寄生虫(百足型):「シューリョー!」
 愛原「!!!」

 何と、リサの体から出た寄生虫達が、器用にリサの筆記用具で、代わりに宿題を片付けていた。

 寄生虫(蜘蛛型):「カンリョー!」
 愛原「ぎゃああああああっ!!」
 高橋「せ、先生!?」
 愛原「リサぁぁっ!起きろぉぉぉっ!!」

 私がリサを叩き起こすと、寄生虫達は小型化し、リサの体内へと戻って行った。

 リサ「あれ?寝ちゃった?……ヤバッ!宿題、宿題!……おおー!終わってる!ラッキー!」
 愛原「オマエの寄生虫は、靴屋の小人か!」

 誰作の童話だったか忘れたが、経営破綻寸前の靴屋を助けた小人達の話。
 童話だと愛らしい小人達が登場して、靴屋の主人に代わって立派な靴を作るのだが、リサの場合は寄生虫か……。

 高橋「しかも何か、さっき喋ってませんでした!?」
 愛原「……気のせいだ!」
 高橋「いや、しかし……」
 愛原「気のせいだ」
 高橋「でも先生、さっき絶叫して……」
 愛原「俺は何も聞いていない。寄生虫達が、リサの代わりに宿題やってたのをチラッと見ただけだ」
 リサ「便利でいいね!」
 愛原&高橋「オマエが言うな!」

 私は自分の荷物から、歯磨きセットを取り出した。

 愛原「先に歯磨きさせてもらうぞ」
 高橋「あ、はい」
 リサ「わたしはトイレに行って来る」
 愛原「カードキー忘れんなよ?」
 リサ「はーい」
 高橋「オマエ、先生を驚かせた罰として、和式使え!」
 リサ「何でよ!」

 リサは悪態をつきながら、部屋を出て行った。
 室内には洗面所はあるが、トイレは付いていない。
 そこは合宿所といったところか。

 高橋「先生……」
 愛原「ああ、分かってる。実は気のせいなんかじゃないってことをな」
 高橋「これって、善場のねーちゃんには……」
 愛原「俺達は何も見ていない。ただ、寄生虫がリサの体から出て、ちょっと歩き回っていただけだ」
 高橋「は、はい」

 私はカーテンの隙間から、外を覗いた。
 まだ雨は降り続けている。
 窓からは相模湖が遠くに見えるが、近場に目をやると、A棟や守衛所が見える。
 24時間365日警備に当たっている守衛所の明かりが消えることはないだろうが、A棟は1階の1室だけが明かりが付いていた。
 しかし、そこは管理室とかではない。
 恐らく、そこに善場主任が泊まっているのだろう。
 しかし、本館の宿泊室は新館同様、2階と3階にしか無いはずだが……。
 B棟に程近いあそこの部屋は何なのだろう?
 まさか、職員の仮眠室とかになっているとか?

 高橋「ねーちゃんの所に、夜這いにでも行かれるつもりですか?」
 愛原「まさか。そんなことしたら、俺の人生オワタになるよ」
 高橋「はは、そうですね」

 歯磨きが終わった後、私もトイレに行くことにした。
 廊下は消灯時間により、常夜灯くらいしか点灯していない薄暗さであったが、トイレはさすがに明るかった。

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