報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「京王ライナーの旅」

2023-02-12 20:52:03 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月14日16時55分 天候:晴 東京都新宿区西新宿 京王新宿駅→京王線7001電車先頭車内]

 https://www.youtube.com/watch?v=eZc2F2GL3HA(京王ライナーのテーマ)

 

 2番線に新型車両を使用した“京王ライナー”が入線してくる。

 

 ホームドアと電車のドアが開くが、4ドア車の全部のドアが開くわけではない。
 全車両指定席である為、乗車の際に、改めて改札を受ける必要があるからだ。
 そして、駅員の改札を受けると、晴れて乗客となれるのである。
 車内では発車まで、“京王ライナー”のテーマ曲がスピーカーから流れている。
 オーケストラのそれは、まるで離陸前の旅客機内で流れるそれのようである(或いは着陸後に流れるそれでも良い)。

 愛原「俺達の席はここだな」

 

 2人席が進行方向を向いている中、私達の席は連結器横の3人席だった。
 但し、普通の通勤電車のそれと違い、ちゃんとヘッドレストに肘掛が付いている。
 写真にも写っているが、この席にも、肘掛けの下には充電コンセントが付いている。
 これは“京王ライナー”などの有料特急として運行される場合しか使用できない。
 2人席を横向きにして、都営新宿線に各駅停車や急行として乗り入れてくることもあるが、この場合は充電コンセントは使用できない。
 また、Wi-Fiも飛んでいて、リサは喜んで自分のスマホに接続していた。
 どうしても中高生向けのプランだと、パケットが制限されるので(あえて使い過ぎを防止する為、そうしているのだろう)、それを気にしなくて良いWi-Fiは貴重のようである。
 尚、私達が座る席もそうなのだが、こういう席は優先席になっていることが多い。
 しかし、“京王ライナー”として運行される場合は、全区間優先席としての扱いは行われなくなる。

 リサ「『魔王軍』に、『京王ライナーなう』ってグループLINEで送る」
 愛原「そうかい。京王線から通学しているコはいるのかな?」
 リサ「さすがにいないんじゃない?」
 愛原「それもそうか」

〔ご案内致します。この電車は、“京王ライナー”、京王八王子行きです。途中、明大前、府中、分倍河原、聖蹟桜ヶ丘、高幡不動、北野に止まります。この電車は、全車指定席です。予め座席指定券をお買い求めの上、指定された席をご利用ください〕

 自動放送が流れる時、不意にBGMが止まるが、それも確か航空機内でも同じだったな。
 日本語放送の後は英語放送が流れるが、中国語や朝鮮語が流れないのは素晴らしい。

 愛原「これで行くと京王八王子まで40分くらいで行けるはずだ」
 高橋「はいはい」
 愛原「ホテルに一旦入って、それからオマエの知り合いの店に行こう。18時過ぎくらいだけど、いいかな?」
 高橋「大丈夫っス。その辺はアバウトなヤツなんで、少しくらい過ぎても大丈夫っスよ」
 愛原「そうか。それならいいがな」

 私が真ん中席に座り、高橋が連結器横、リサがドア横といった感じに座っている。
 高橋が窮屈そうにしているのは、連結器横の壁に窪みが無く、そこに片腕を逃がすスペースが無いからだろう。
 しょうがないので、私は2人と席を交換させた。
 小柄なリサの方が良いのかもしれない。
 リサ的には窮屈なのを理由にして、私に寄り掛かることができて良かったらしいが。
 しばらくして発車時刻になり、電車は定刻通りに発車した。
 この駅は、ゆっくりと発車する。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。京王をご利用くださいまして、ありがとうございます。“京王ライナー”、京王八王子行きです。途中、明大前、府中、分倍河原、聖蹟桜ヶ丘、高幡不動、北野に止まります。次は、明大前です。明大前の次は、府中に止まります〕

 日が傾く中、電車は西に向かって進む。
 その為だろうか、笹塚駅手前で地上に出ると、夕日が車内に入り込んできた。

 愛原「夕日に向かってダッシュだな」
 高橋「そうっスね!」

 高橋、そういうの好きそうだ。
 しかしリサは、『魔王軍』とのやり取りに夢中のようだ。

 愛原「ホテルにもWi-Fiはあるし、あの研修センターにも、何気にWi-Fi飛んでるんだよな」
 高橋「確かにそうっスね」
 愛原「知り合いの店は?」
 高橋「あー……どうなんスかね。ちょっと聞いてみます」

 高橋は自分のスマホを取り出した。

 愛原「悪いな。……あー、やっぱいいや」
 高橋「えっ?」
 愛原「だってほら、今は夕食時だろ?忙しいのに、そんな下らない質問は……」
 高橋「いや、別に大丈夫っスよ。客として、店に関する問い合わせは当然の権利じゃないっスか」
 愛原「いや、まあ、店の場所とか予約とかならいいんだろうけどな……」

 高橋は知り合いにLINEを送ったようだ。

 愛原「LINEだと、すぐに返信できないんじゃないか?」

 かといって、電車内で通話はマナー違反だからなぁ……。

 高橋「あー、返ってきました」
 愛原「早っ!」
 高橋「Wi-Fi、導入してるらしいですよ」
 愛原「それは良かった。な、リサ?」
 リサ「うん。食レポよろしくって来た」
 愛原「はは、そうか」
 高橋「オメー、食べてる最中は無理だろー」
 リサ「食べてからレポる」
 愛原「事後報告か……」

 私は苦笑した。
 あとは、この電車が無事に終点に着いてくれることを願うだけだ。
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“私立探偵 愛原学” 「八王子前泊の旅」

2023-02-12 16:39:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月14日15時59分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営大江戸線1579K電車先頭車内]

 鉄道の日である。
 この日、私達は研究施設に向けて出発した。
 平日である為、リサには午後最後の授業は早退してもらった。
 1度帰って着替えた為、リサは制服から私服姿になっている。
 太ももがよく見えるデニムのミニスカートの上に黒いTシャツを着用し、その上からはグレーのフード付きパーカーを羽織っている。
 まだ東京の昼間は多少暑いが、確かに朝晩は涼しくなったような気がする。
 ましてや、これからもっと涼しい東京都の郊外、そして神奈川の山奥に行くのだから、リサくらいの恰好が丁度良いのかもしれない。
 長袖のパーカーを肘のところまで捲っている。

 愛原「悪いな、リサ。学校、早退してもらって」
 リサ「まあ、どうせ最後の授業は保健体育だったし、別にいいんじゃない?普通の体育だったら、是非やりたかったけど」
 愛原「そ、そうか……」

〔まもなく1番線に、各駅停車、笹塚行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 平日とはいえ、この時間はまだ駅や電車は空いている。
 客層もサラリーマンよりは、リサみたいな学校帰りの学生の方が多い。
 やってきた電車は、京王電車だった。
 しかし、これから乗る“京王ライナー”で使用される新型車両ではない。

〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。きくかわ~、菊川~〕

 案の定、電車は空席が目立っていて、私達はローズピンクの座席に腰かけた。
 何だか最近、都営の車両よりも京王電車に乗る機会の方が多い。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 各駅停車しか停車しない中間駅ということもあってか、すぐに電車のドアが閉まる。
 先頭車に乗っているので、運転室から発車合図のブザーの音やハンドルをガチャガチャ操作する音が聞こえてくる。
 地下鉄の電車なので、運転席直後の窓とその隣のドアの窓にはブラインドが下ろされていた。
 昔は右側のブラインドも下ろされて、運転室内が完全な密室になっていたと思うが、最近はどの鉄道会社でもそういうことはやめている。
 エアーの抜ける音がして、電車が走り出した。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 愛原「高橋、オマエの知り合いの店、予約は大丈夫なんだろうな?」
 高橋「任せてください。ちゃんと予約してあります」
 愛原「そうか。まさか、新潟の時みたいに、明らかにヤンキーの溜まり場と分かるガラの悪い店じゃないよな?」
 高橋「それは大丈夫っス!今度は八王子のど真ん中にある店なんで、さすがに新潟みたいな雰囲気では無いですよ」
 愛原「そうか」
 高橋「知り合いの親父さんと共同でやってるんで、いい店ですよ」
 愛原「そうか、それならいいんだがな。……だってさ、リサ」
 リサ「ステーキ……ステーキ……」

 リサは今夜の食事で頭がいっぱいのようである。
 尚、黒いマスクを着けている為、スカートの下の下着は黒だということだ。
 それとも、ブルマでも穿いているのだろうか。

 高橋「店は俺に任せて頂くとして、先生はホテルっスね」
 愛原「それも心配無い。ちゃんと東横インを予約してあるから」
 高橋「さすが先生。ポイント貯めてますね?」
 愛原「そういうことだ」
 リサ「それだともしかして、わたし1人?」
 愛原「やあ、いい所に気が付いたね」
 高橋「そして俺は、先生と熱い夜を……」
 愛原「過ごすわけねーだろ、バカ!」
 高橋「そんなぁ……」
 リサ「お兄ちゃんがシングルで、わたしと先生がダブルでしょ?」
 高橋「ンなわけあるか!」
 愛原「あー……報告書に、どんなホテルに泊まって、どういう部屋割りだったかも書かなきゃいけないから、常識的なヤツで頼むな?」
 高橋「それは残念です」
 リサ「ぶー……」
 愛原「まあ多分、俺の予想だが、藤野では同じ部屋になると思うぞ?何せ宿泊施設が、合宿所形式だからな?」
 高橋「おっ、それは良かったっス」
 リサ「おー!」

 全く。
 こいつらといると退屈しない。

[同日16時25分 天候:晴 東京都新宿区西新宿 京王新宿駅(新線ホーム→本線ホーム)]

〔「まもなく新宿、新宿です。お出口は、右側です。この電車は京王新線直通、各駅停車の笹塚行きです。新宿を出ますと、初台、幡ヶ谷、終点笹塚の順に止まります。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。今日も都営地下鉄新宿線をご利用頂き、ありがとうございました」〕

 私達を乗せた電車は、何事も無く無事に京王新宿駅に到着した。
 厳密に言えば、都営新宿線と京王新線の境の駅である。
 しかし、運営は京王電鉄側に任されている為、例えば駅の自動放送や発車標などは京王電鉄の物が使用されている。
 但し、誤乗を防ぐ為か、ホームドアの意匠が異なっている。
 具体的には、これから都営新宿線に向かう方は、都営新宿線のラインカラーである黄緑色、京王線に向かう方は京王線のラインカラーであるローズピンクが使用されている。

 愛原「さあ、着いた」

 同じ京王新宿駅なのだが、地下鉄ホームと本線ホームとでは、やや乗り換えが複雑である。
 その為、初心者は笹塚駅で乗り換えた方が良いという。
 しかし“京王ライナー”は笹塚駅には停車しないので、この駅で乗り換える必要がある。
 具体的には本線ホームの3番線に移動し、そこから更に2番線に向かう必要がある。

 愛原「トイレとか大丈夫?」

 コンコースの途中にトイレがある。

 愛原「電車内にトイレは無いからね」
 リサ「わたし、行ってくる」
 高橋「先生、俺達も行っておきましょう」
 愛原「ああ、分かった」

 私達はトイレを済ませてから、本線ホームに向かった。
 さすがに新宿駅ともなると、本格的な夕方ラッシュが始まる前でも、多くの人で賑わう。
 尚、京王線新宿駅もまた地下にある。
 京王新線ホームよりは、浅い所にあるが。

 リサ「先生、ジュース買っていい?」
 愛原「いいだろう」

 “京王ライナー”は進行方向を向いた2人席があるが、3人まとめて座ろうとすると、連結器横の横向き席が割り当てられることになる。
 何かを飲食しながらということは、想定されていないのか、JRの特急“はちおうじ”号と比べると、やや設備は簡素であると言える。
 但し、その分、料金は安いのだが。
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