報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「検査終了後の夜」 2

2023-02-18 20:46:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月15日19時30分 天候:雨 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センターA棟]

 食堂の営業は19時30分まで。
 その為、夕食後に歓談していた私達は、ロビーに移動させられる。
 そこでも利用者が私達だけのせいか、フロントの営業が終了する20時までにして欲しいと管理室から言われた。

 善場「地下1階の自販機を利用したい場合は、今のうちに。特に、タバコの自販機はC棟にはありませんから」
 愛原「だってさ?」
 高橋「ちょっと、買い溜めしておきます」
 リサ「わたしも行く」
 高橋「先生、ビールは買っておきますか?」
 愛原「あー……そうだな……」

 C棟は新館のせいか、本館の宿泊室よりも、やや設備が恵まれている。
 電気ポットがあったり、空の冷蔵庫があったりだ。
 これはA棟には共用の給湯器があるがC棟には無く、A棟は自販機の種類が多いが、C棟は1つしか無いことへの格差埋め合わせなのだろう。
 C棟の階段は塞がれているが、A棟はそんなことはない。
 階段を下りて、地下1階へ向かう。
 大浴場もこの先にあるが、この時間帯なのに、開いている感じがしなかった。
 はて?善場主任、入浴はどうするのだろう?
 それとも、善場主任だけだから、彼女が利用したい時に開けるという感じにしているだけか?
 何だか、効率が悪いような気がするが……。

 高橋「先生、ビールとつまみ、ありますよ?500mlにします?」
 愛原「バカ言うな。夕食でも瓶ビール御馳走になっただろうが。明日も仕事なんだから、少し控えないと」
 高橋「はあ……」
 愛原「350ml缶1つと、あとはつまみ……」
 リサ「ビーフジャーキー!」
 高橋「それはオメーが食いてぇだけだろ。ていうか、無ェよ」
 愛原「ピーナッツやカシューナッツ、柿の種と枝豆くらいしか無いね」
 リサ「豆ばっかじゃん!」
 愛原「まあ、自販機で売られてるおつまみなんて、そんなもんだよ。俺は柿の種でいいや」
 高橋「そうしましょう」

 さすがに缶ビールはアルミ製だが、同じ大きさのおつまみの入れ物はプラスチック缶だった。

 愛原「風呂上がりにちょうどいい」
 高橋「仰る通りです」
 リサ「わたしはお菓子とカップラーメンと……」
 愛原「食い過ぎ食い過ぎ!」
 高橋「カップラーメンどこから出てきた!?」
 リサ「ここ」

 自販機コーナーにはカップラーメンの自販機もあった。
 尚、生徒への健康に配慮してか、東京中央学園には設置されていない為、リサには珍しいらしい。
 他にも、紙コップのコーヒーも売られていた。

 愛原「食後のコーヒーは鉄板だな。これを買って行こう」
 高橋「はい」
 愛原「善場主任は何にします?」
 善場「お気遣い無く。コーヒーくらい、自分で買いますよ」
 愛原「こ、これは失礼しました」

 私達は自販機を利用すると、再び1階のロビーに戻った。
 テーブルにコーヒーを置いて、それを飲みながら、明日の事について打ち合わせする。

 善場「もう既に運動着に着替えた状態で、体育館にお越しになって頂いて大丈夫です」
 愛原「分かりました」
 善場「上着は持って来ましたか?」
 リサ「体育館シューズね。持って来たよ」
 善場「結構です」
 高橋「ねーちゃん、こいつの身体能力を見るって何だ?数メートルくらいなら、助走無しでジャンプできる所とかか?」
 善場「そうですね」
 高橋「触手を出して、天井にへばり付く所とか……」
 善場「そうですね」
 高橋「……こいつの化け物ぶりを確認するテストなのか?」
 善場「まあ、そうかもしれません」
 高橋「おいおい。暴走しても知らねーぞ?」
 善場「そこは考えておりますので、ご心配には及びません」
 愛原「BOWとして、どこまで人間離れした身体能力を持っているかのテストですね?」
 善場「そんなところです。まあ、体育館の中ですので、自ずとできることは限られていますが……」
 愛原「でしょうね」

[同日20時00分 天候:雨 同センターC棟]

 A棟のフロントが閉まる時間になり、私達は再び傘を差して、C棟に向かった。
 心なしか、さっきよりも雨の降り方が強くなっているような気がする。
 そして、秋雨前線の影響か、肌寒く感じる。

 高橋「先生!入口の鍵が掛かっています!」
 愛原「部屋のカードキーを使って開けるんだよ」
 高橋「……あ、そうか」

 C棟は普段無人のせいか、エントランスのガラス戸はオートロックになっている。
 内側からなら普通に開くが、外側から開けるには、カードキーを読取機にタッチしなければならない。
 高橋がそうすると、シリンダー錠に内蔵されたモーターがウィィンと唸って鍵が開いた。

 高橋「開きました!」
 愛原「よし、早く入ろう」

 中に入ってドアを閉めると、またモーター音が鳴って内鍵が閉まる。
 C棟は無人のせいか、ロビーは常夜灯以外は点灯しておらず、薄暗かった。
 唯一明るいのは、自販機のそれだけ。
 後は非常口誘導灯の明かりとか、火災報知器の赤ランプとか。

〔上に参ります〕

 階段は相変わらず封鎖されている。
 防犯の為だというが、エレベーターにはフリーで乗れてしまうのだから、あまり意味が無いような……。
 それとも、地下に下りられないようにする為という意味だろうか?

〔ドアが閉まります〕

 エレベーターのドアが閉まる。
 車椅子対応のエレベーターなので、かご内にはミラーと壁側にもボタンがある。
 リサは鏡の方を向いて、髪を直したりした。
 瞳が金色に光る場合もあり、赤く光る場合とどう違うのだろうか?
 いずれにせよ、不気味なことに変わりは無い。

〔ドアが開きます〕

 ピンポーン♪

〔3階です。下に参ります〕

 3階の廊下も、照明としては常夜灯のみが点灯している状態であり、とても薄暗い。
 他には1階同様、非常口誘導灯とか火災報知器の赤ランプとか。

 愛原「一息ついたら、シャワーでも浴びに行くか」
 高橋「あ、はい。そうしましょう」

 A棟の風呂は大浴場と小浴場があり、利用状況に応じて男湯・女湯と使い分けできるようになっているらしい。
 C棟に関しては、シャワールームのみ。
 冬だと寒いだろうが、この季節くらいまでなら何とかなる。
 外は秋雨と山奥のせいで肌寒いが、閉め切れば、まだそこまで寒くない。
 買って来た飲み物を冷蔵庫に入れる。

 愛原「それじゃ、シャワー浴びて来るか」
 高橋「はい」

 ボディーソープとかシャンプーくらいなら、備え付けられているらしいが、それ以外のアメニティは自分で用意しなければならない。
 即ち、タオル類だな。
 これらを持って、私達は再び1階のシャワールームに向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「検査終了後の夜」 1

2023-02-18 15:57:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月15日18時00分 天候:雨 神奈川県相模原市緑区 国家公務員特別研修センターA棟1階食堂]

 夕食の時間になり、私達は宿泊しているC棟から食堂のあるA棟へと向かった。
 間にある研修施設のB棟も含め、それらの建物は内側で繋がっていない為、移動するには一旦外に出なければならない。
 当然、雨が降っている場合は傘が必要になる。
 無人のフロントの上にある内線電話で管理室を呼び出し、そこで傘について聞くと、エントランスの傘立てにある傘を使用して良いという。
 黒いナイロン傘を開くと、『国家公務員特別研修センター』と白地で書かれていることから、本当に貸出用の傘らしい。

 リサ「闇人零式リサ・トレヴァー!」
 愛原「“SIREN2”じゃねぇ!」

 もっとも、第1形態に戻ったリサが黒いローブを羽織り、ボロボロの傘を持って踊れば【お察しください】。
 まあ、ゾンビが屍人なら、確かにリサ達のようなBOWは闇人になるのか?
 雨の中、黒い傘を持ってリサが歩くと、そんな気がする。

 リサ「あの研究施設、ハンターとかの臭いもしたよ?」
 愛原「実験用に飼われてるんだってよ。もちろん研究目的は、アンブレラとは違うだろうがな」
 リサ「わたしにとっては、どっちも似たようなものだよ」
 愛原「まあな」

 雨の中、A棟に向かった。
 構内は水銀灯の明かりくらいしかない。
 もしも本館などが使用されているのであれば、その明かりもあるのだろうが、今回、宿泊施設を利用するのは私達だけだという。

 愛原「こんばんはー」

 さすがにA棟1階は、照明が点いていて明るかった。
 ロビーの柱時計が、ボーンボーンと鐘を6回鳴らす。

 善場「お疲れ様です。愛原所長」
 愛原「夕食を頂きに参りました」
 善場「どうぞ、こちらです」

 ロビーを通って、食堂に向かう。
 テーブルの上には、既に夕食が用意されていた。
 ご飯は御ひつに入っている状態、みそ汁は鍋に入っている状態だった。

 善場「今日はお疲れ様でした。また明日も、よろしくお願いします」
 愛原「分かりました」
 善場「飲み物、注文して良いですよ」
 愛原「え?いいんですか?」

 無料の飲み物はお茶と水だけである。

 リサ「オレンジジュースいい!?」
 善場「どうぞ」

 私は瓶ビールを希望したが、その際、善場主任が食堂のスタッフに、何かチケットのようなものを渡しているのを見た。
 恐らく、善場主任が何がしかの立場を利用して、1ドリンク無料券でも手に入れていたのだろう。
 飲み物は全て瓶である。
 キリンと契約しているのか、ビールもオレンジジュースもキリンだった。
 そういえば、この本館の自販機コーナーにも、キリンビールとキリンのソフトドリンクの自販機があったような気がする。
 そして、C棟の自販機もだ。
 C棟の自販機はソフトドリンクのそれしか無いのだが、本館であるこのA棟の自販機は種類が多い。
 ついでに利用して良いとのことなので、帰りに買い込んで行こう。

 高橋「先生、まずは一杯!」

 ビール瓶は中瓶。
 高橋は私のグラスに、ビールをなみなみと注いだ。

 愛原「善場主任、私からもどうぞ」
 善場「ありがとうございます」
 リサ「むー……!」

 その様子をむくれ顔で見るリサ。
 しかし、日本版リサ・トレヴァーの先輩である善場主任には頭が上がらない。
 善場主任は表向きは人間に戻ったことになっているということもあって、変化はしないものの、それでも何がしかの特殊能力は持っていることは分かっている。
 もちろん、これは国家機密であるが。
 リサですら逆らえないようにする、『眼力』とかがそうじゃないかなと思っている。
 夕食はハンバーグ定食だった。
 私達『人間』のそれは普通の定食だったが、リサの場合は明らかに大きかった。

 リサ「おお!わたしだけ大きい!」
 善場「今日は検査を頑張りましたからね。特別に、大きさを2倍にしてもらいました」
 高橋「これに人参ブッ刺したら、ウマ娘の人参ハンバーグだぜ?」
 愛原「確かに」

 ハンバーグの上には目玉焼きが乗っていたが、さすがにリサの方も2個というわけではなかった。

 愛原「今回の検査の結果は、いつ出るんですか?私や高橋のはすぐに出ましたが……」
 善場「簡単なものについては、一両日中に出る予定です」
 愛原「早いですなぁ」
 善場「まあ、簡単なものに関しては、ですが……。難しい物に関しては、もう少し時間を頂きます」
 リサ「召し上がれ」
 善場「時間は食べ物じゃないのよ?」

 善場主任、冷たい目をリサに向ける。
 心なしか、その目が赤く光ったような気がした。

 リサ「はぁーい……」

 リサは肩を竦めて、またハンバーグの方に目をやった。

 善場「私達の場合、メインは体内のウィルスの状態を確認するのが目的です。あと、リサの場合は寄生虫の状態ですね」
 愛原「なるほど……」
 善場「他にも東京中央学園上野高校に蔓延していた、特異菌の感染状況についても確認します」
 愛原「でもそれは、ワクチンか何かを打ったから治ったのでは?」
 善場「普通の人間はそうです。高濃度の特異菌に感染した場合、モールデッドに転化してしまうような人間ですね。でも、中にはそうでない者もいるので」
 高橋「そうでないヤツ?」
 愛原「適合者のことですね。感染してもモールデッドに転化することもなく、見た目は普通の人間のままの姿でいられる状態……」
 善場「そうです。それは、ここにいるリサもそうではないかと思っているのです」
 リサ「んー?わたし、GウィルスとTウィルスを持ってて、更に特異菌?」
 高橋「ばい菌のオンパレードだな」
 リサ「がぁーっ!」
 高橋「よっ、バイキンマン!」
 リサ「あんぱんち!」
 愛原「やめなさい、2人とも!」
 善場「残念ながら、その全てを兼ね備えたBOWは、まだ前例がありません」
 愛原「特異菌って、Gウィルスより強いんですかね?何なら、Gウィルスに食われてしまっている場合も……」
 善場「ええ。ですので、それを今回は検査したかったのです。入念なチェックが必要です。恐らく、1週間は掛かるでしょう」
 愛原「そんなに……!」

 これで本当に特異菌まで備わったとしたならば、本人の言う通り、リサは一体どんなBOWになるんだろうな?
 今のところは、特に変わった所は見受けられないが……。
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