報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“魔女エレーナの日常” 「本編で解けなかった謎はスピンオフで明らかにするのがデフォ」 1

2018-09-20 19:24:08 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月29日01:00.天候:晴 埼玉県さいたま市上空]

 エレーナはホウキに跨り、空を飛んでいた。
 ただ単に夜の散歩ではなく、後輩のリリアンヌの指導である。

 リリアンヌ:「フヒーッ!エレーナせんぱーい!わらひ、随分……上手く飛べてるですよねぇ!?」
 エレーナ:「おう、その調子だ!」
 リリアンヌ:「そそそ、それにしても……かかか、風が……風が物凄く……強いです!」
 エレーナ:「アナスタシア組の誰か……多分、アホアンナのせいだと思うけど、台風明日直撃だからなぁ!」
 リリアンヌ:「明日も飛ぶですか!?」
 エレーナ:「アホか!さすがに死にたくないよ!……はい、ここでターン!」
 リリアンヌ:「フヒッ!?はーい!」

 エレーナは華麗にUターンしたが、リリアンヌは大回り。

 エレーナ:「まだまだだな」
 リリアンヌ:「ご、ごごごめんなさい……」
 エレーナ:「今度は宙返りしてもらうから」
 リリアンヌ:「フヒーッ!?」
 エレーナ:「それとも背面飛行するか?」
 リリアンヌ:「フヒーッ!?」
 エレーナ:「冗談だよ。さっさと帰ろう」

 するとホウキの先端に陣取っていた使い魔の黒猫、クロがエレーナの所にやってきた。

 クロ:「エレーニャ。ニャニャニャニャ……」

 エレーナの耳元までやってきて、何やら伝える。

 エレーナ:「ほお……。リリィ!」
 リリアンヌ:「はい!?」
 エレーナ:「ちょっと私、寄る所あるから後で帰る。先に帰ってて。もう寝てていいから」
 リリアンヌ:「は、はいーっ!そそ、それじゃお先に失礼しますです」

 リリアンヌはそのまま南下していった。
 尚、エレーナもリリアンヌもゴーグルを着けてGPSを所持している辺りが何とも現実的である。
 エレーナは後輩を見送ると、スーッと降下していった。

 エレーナ:「本当にこの近くで悪魔召喚の儀式が?」
 クロ:「そうニャ」
 エレーナ:「うちの門内、悪魔を新規に呼び出す場合は事前通達をすることになってるよね?それが無いってことは……」
 クロ:「無断呼び出しニャ」
 エレーナ:「よし。いいネタ発見!行くぞ!」

 エレーナは現場へと向かった。
 が!

 エレーナ:「うわっ!?」

 突然空間に現れた大きな魔法陣に取り込まれてしまった。

 エレーナ:「おい、マジかよ!?」

[同日02:00.天候:曇 埼玉県さいたま市中央区 さいたま中央高校]

 体育館裏の地面に魔法陣を描き、その前に佇む女子生徒6人。
 そのうち1人は魔道書を持ち、眼鏡を掛けている。

 女子A:「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム。我は求め、訴えたり。……はい、皆も一緒に続いて」
 女子B:「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム。我は求め、訴えたり」
 女子C:「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム。我は求め、訴えたり」
 女子D:「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム。我は求め、訴えたり」
 女子E:「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム。我は求め、訴えたり」
 女子F:「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム。我は求め、訴えたり」

 すると、魔法陣が青色に光り出した。

 女子B:「うそ、マジで!?」
 女子C:「さすが麻子!本当に光り出した!」
 麻子:「やめないで!悪魔が出て来るまで呪文を唱え続けないと!」
 女子D:「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム。我は求め、訴えたり」
 女子E:「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム。我は求め、訴えたり」

 更に光は強くなり、そしてそこから現れた。

 エレーナ:「あたしゃ“悪魔くん”か!」
 女子F:「きゃーっ!」
 女子D:「ほ、ホントに出てきた!」
 女子B:「これが悪魔?」
 エレーナ:「あぁ!?」

 エレーナはホウキから降り立った。
 そして、ぐるりと見渡す。

 女子E:「どっちかって言うと、魔女じゃない?」
 エレーナ:「オマエらなぁ!ド素人のくせに悪魔呼び出してんじゃねぇよ!てか、本来私、魔女でもないんだぞ!」

 ただ単にダンテ門内での定義(人間時代に性暴力被害の経験があった者が“魔女”)なので、それを外に出されても困る。

 麻子:「あの……悪魔ですか?魔女ですか?」
 エレーナ:「魔道師だよ!てか、何やってんだ、オマエら!?」
 女子C:「何か、悪魔じゃないみたいだね」
 女子E:「魔女さんですか?」
 エレーナ:「ああ!百歩譲って魔女でいいよ!なに?悪魔に何か用だったの?」
 麻子:「あ、あの……。私、占いとかの研究を趣味にしている者なんですけど……。今度、力試しで悪魔を召喚してみようかなぁーって……」
 エレーナ:「それで魔道師呼び出した時点で失敗だね。じゃな!用が無いなら帰るぞ!」

 エレーナは女子高生達の遊びに付き合わされたと知り、憤慨した様子でホウキに跨った。
 ところが、後ろからポンと肩を叩かれた。

 エレーナ:「あ?」
 マモン:「まあ、待ちたまえ。そんなに悪魔を御指名なら、私が話を聞いてやろうじゃないか」

 エレーナの契約悪魔、キリスト教における七つの大罪の悪魔、強欲(主に金銭欲)を司るマモンが現れた。

 エレーナ:「あんまり勝手なことするなよ」
 マモン:「分かっている」
 麻子:「あの、その人は……?」
 エレーナ:「私の契約悪魔でマモンって言うんだ」
 女子B:「普通のリーマンのオッサンじゃね?」
 エレーナ:「皆が皆、黒いローブ羽織って、フードを被って、ガイコツ顔して、大きな鎌を持ってるわけじゃないんだぞ」
 クロ:「エレーナ、それ死神」
 エレーナ:「ん?」
 マモン:「あいにくと私の契約者はここにいる魔道師ただ1人。だが、せっかくの御指名だ。私の力をお見せしようではないか。どうだろう?1つゲームをしないか?それに勝ったら、何でも望みを1つだけ叶えてあげよう」
 エレーナ:「あー、マジであれやるの?」
 マモン:「たまにはやらせてくれよ。いかがかな?」
 麻子:「どんなことをするの?」
 マモン:「簡単なゲームさ。お互いにサイコロを振る。そして、出た目の数が多い方が勝ちだ。いたってシンプルだろう?」
 麻子:「本当にどんな願いも叶えてくれるの?」
 マモン:「もちろんさ。但し、負けたら私も1つ望みを言わせてもらおう」
 女子B:「私、やってみる」
 女子C:「じゃあ、私も」

 我も我もと女子生徒達はマモンのゲームに参加する意思を見せてしまった。

 マモン:「それでは……」

 マモンは上着のポケットからサイコロを……出す前に、紙を出した。

 マモン:「この同意書にサインを……」
 女子B:「きっちりしてるね」
 エレーナ:(あーあ。オワタな、こいつら……。ロクに悪魔の契約書を読みもしないで……)

 女子生徒達は悪魔の契約書にサインをしてしまった。

 マモン:「それではキミ達はサイコロを1個、5回ずつ振ってもらおう」
 麻子:「えっ、5回も振っていいの?」
 マモン:「もちろん。ここにそう書いてある。そして私は1回だけだ」
 女子B:「マジ!?それ、超ラクショーなんですけど!」
 エレーナ:(バーカ……)
 マモン:「順番は自由だ。誰からやるかな?」
 女子B:「じゃ、アタシから!」
 マモン:「よし。じゃ、先に5回振りたまえ」

 Bはサイコロを5回振った。
 あいにくと1とか2とかも出たが、5や6も出た。

 マモン:「ふむ。こんなものか。エレーナ、悪いが記録係を」
 エレーナ:「はいはい。もうやってますよ」
 マモン:「じゃ、次の人どうぞ」

 マモンは次々と女子生徒達にサイコロを振らせる。
 そして、次はマモンの番になった。

 マモン:「それでは私は1回だけ振るぞ」

 マモンは懐の中から別にサイコロを取り出した。
 それはどんなものだったと思う?

 1:普通のサイコロ1個
 2:普通のサイコロ10個
 3:正二十面体のサイコロ1個
 4:普通のサイコロだが10から60まで
 5:想像もつかない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「誰もやらないとは思うが、素人が悪魔の召喚術式をやってはいけない」

2018-09-20 10:29:13 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月29日15:00.天候:曇一時雨 埼玉県さいたま市中央区 さいたま中央高校]

 しばらく応接室で待たされた稲生達だったが、やっと中島がやってきた。
 彼はこの高校の教員で、稲生とは大学の同級生だった者である。

 中島:「いやあ、上司達が渋っちゃってねぇ……」
 稲生:「ま、そりゃそうだろうな。で、ダメだって?」
 中島:「俺が全部案内するってことでOKにしてもらったよ」
 稲生:「おお〜!」
 中島:「但し、あくまでこの台風で警察は一時退散しただけで、捜査はまだ続いているから、それの妨害にならないようにとのことだ」
 稲生:「分かった。……ですって、先生」
 イリーナ:「了解です。要は規制線の中に入るなということですね」
 中島:「そういうことです」

 こうして稲生達は中島の案内で現場に向かうことにした。
 雨は時折サーッと強く降ってくるだけで、それはまるで通り雨のようである。
 あっという間に降ってきて、あっという間に止んでしまう。
 それよりも問題なのは強い風。
 これは常にビュウビュウ吹いている。

 中島:「本当に変な台風ですね。まさか、これも変死事件に関係があるんじゃ?」
 稲生:「それを調べたいんだよ」
 中島:「いきなり否定はしないんだ」
 稲生:「まあね……」

 この変な台風を発生させたのは、アナスタシア組。
 伊豆大島でバカンス……もとい、合宿を行っていたところ、魔法の実技講習にて1人の見習魔道師が実験に失敗したものらしい。
 もちろん素人には、何をどうしたらこんなことになるのか、さっぱり分からない。
 稲生もまだ見習である為、全くその通りであった。
 もしかしたら、強い力を持った悪魔が何かやらかした可能性もあるので。
 それで、中島の疑問を否定しなかったのだ。
 強い力を持った悪魔というのは、それは神にも匹敵する力を持つ。

 中島:「ここですよ」
 稲生:「ほお……」

 中島に連れて来られたのは、体育館裏。
 昔のマンガなどでは不良の溜まり場だったり、リンチの現場だったり、御礼参りの現場だったり、男女生徒のイチャラブ青k……ゲフンゲフン!イチャラブ野外p……ゲフンゲフン!……の現場にも指定される場所だ。
 稲生の母校である東京中央学園においては、そういう甘酸っぱいエピソードなど皆無に等しく、怪談話の主人公達に占拠された場所であった。
 この高校も、漏れなくそういう舞台になってしまったのだろう。

 中島:「あそこに全員、銘々に倒れていたんですよ。私が駆け寄った時は全員、息をしていませんでした」
 稲生:「なに?ナカジーが第一発見者だったの!?」
 中島:「だから、テレビでインタビューとか受けさせられたよ。警察からも色々と話を聞かれたしね」
 稲生:「そのコ達、一体どうしてここへ?」
 中島:「それが分かれば苦労しないよ。うちは今月27日に始業式があって、28日から授業が開始されるんだが……。下校時刻を過ぎて、全員帰ってるんだよ」
 稲生:「なるほど……。ということは、1度帰宅してからまた来たのか……」

 稲生達がそんな話をしていると、イリーナは規制線を潜った。

 中島:「あっ、ちょっと!中に入っては……」
 イリーナ:「御心配無く」

 イリーナは目を細めたまま笑みを浮かべると、スーッと浮き上がった。

 イリーナ:「足跡は一切残しません」
 中島:「ええーっ!?」
 稲生:「せ、先生のイリュージョンの1つだよ」
 マリア:(また調子に乗って、この人は……)

 マリアは師匠の行動に心の中で舌打ちをした。
 もっとも、稲生は中島と一緒に驚き、マリアは舌打ちをするという反応の違いで2人の魔法の習熟度の違いが分かるのである。

 イリーナ:(魔法陣の残り香がするわ。やはり誰かがここで悪魔の召喚術を行っていたのね)

 強い風雨に晒され、魔法陣がそこにあったことなどは殆ど分からない。

 イリーナ:(さあ、どういう経緯でこうなったのか教えてもらいましょうか)

 イリーナは水晶球を取り出した。

 イリーナ:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!」

 水晶球に現れたその映像は……。

[同日15:30.天候:雨 さいたま中央高校1F 応接室]

 稲生:「やはり悪魔の召喚術式が行われたわけですか」
 イリーナ:「ええ。たまたま魔法に興味を持ったコがあの中にいて、色々と研究していたみたいですね。で、仲間に炊き付けられているうちに、実際やってみる流れになったしまったと。で、実際やってみたら、本当に上手く行ったみたいですね。悪魔というのは1度呼び出したら、契約を結ばないと帰ってくれませんから」
 マリア:「これ、きっとゴエティア系の誰かですよ?よく呼び出せたものですね。普通、ゴエティア系くらいの強い悪魔なんて、ただの人間の前には滅多に現れないのに……」
 イリーナ:「そういうあなただって、ベルフェゴール呼び出せてたじゃない」
 マリア:「別に、私はイエス・キリストに祈ったつもりだったんで、呼びたくて呼んだんじゃありません」
 稲生:「そのコ、イジメられたりとかしてたのかい?」
 中島:「いや、そういう話は聞いてなかったんだが……。ただ、スピリチュアルに興味のある大人しいコだったとは聞いてる」
 稲生:「あんまり友達は多い方じゃなかったか」
 中島:「多分ね。どちらかというと、休み時間でも教室の片隅で占いの本とかを読んでいるコだったらしいよ」
 稲生:「じゃ、先生のことも知ってたかもしれませんね」
 イリーナ:「残念ね。生きているうちに会えたら、握手とサインくらいしてあげたのに……」
 稲生:「悪魔はどういう契約を結んだんでしょうか?」
 イリーナ:「そこまでは水晶球に出てこないわね。ただ、悪魔の方も強かだから、合法的に全員の魂をもらっていくという契約を結ばせたのは確かね」
 中島:「これ、警察に……」
 稲生:「話せるわけないよね。これでめでたく、事件は迷宮入りということだ」
 イリーナ:「取りあえず、あなたができることは、生徒の皆さんに『くれぐれも悪魔の召喚術式を素人が気軽にやってはいけない』ことを呼び掛けることではないでしょうか?」
 中島:「それも難しいことですな」

 中島は困り果てた顔をした。

 稲生:「だよねぇ……。僕達としても、他にできることは、この犯人が誰なのかを突き止めてあげることくらいだけど……」
 イリーナ:「都合良くうちの組、全員ゴエティア系の悪魔に縁の無いコばっかりだもんね」
 稲生:「そうなってくると、アナスタシア組が怪しいということになりますか?あそこ、全員がゴエティア系悪魔の契約者でしょう?」
 イリーナ:「やっぱりナスっち、締め上げるしかないか」
 マリア:「でもゴエティア系の悪魔の方でも、全員が誰かと契約しているとは限らないわけでしょう?ヒマなフリーダムが暇つぶしに出て来ただけかも……」
 イリーナ:「いずれにせよ、ここでは分からないか。1度引き上げて、天候が回復したら、私達も魔法陣を描いて呼び出してみましょう」
 稲生:「魂抜かれたりしませんかね?」
 イリーナ:「契約もしないのに、そんなことできるわけないでしょう。それに、イザとなったらうちの悪魔達がケンカしてくれるから」
 稲生:「ははは……」

 キリスト教系の悪魔とゴエティア系の悪魔は仲が悪いと、ダンテ門内では有名だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする