[8月29日10:50.天候:雨 埼玉県さいたま市中央区 稲生家1F仏間]
ジリリリリリと目覚まし時計のベルが鳴る。
イリーナ:「はい。じゃあ、これでラテン語講座中編は終了よ。10分休憩したら、次はいよいよ後編ね。これで午前中は終わり」
稲生:「ありがとうございました」
マリア:「…………」
マリアは眠気を堪えるのに必死だった。
マリア:「……ぶっちゃけ、ラテン語、自動通訳魔法で良くない?」
稲生:「ダンテ先生著述の魔道書には効きませんからねぇ……」
稲生は席を立った。
トイレに行くのと、あともう1つやることがある。
1階のトイレはイリーナが使っているので、稲生は2階のトイレに行く。
その後リビングに行って、家族共用のPCを開く。
マリア:「何をしてるの?」
稲生:「昼食の用意ですよ。こんな台風じゃ、買いにも食べにも行けませんもの」
マリア:「で、何を頼むの?」
稲生:「ピザでいいですか?」
マリア:「注文できるの?」
稲生:「大丈夫みたいですよ」
マリア:「ほおほお」
稲生:「何がいいですか?」
マリア:「この、ミートが沢山載っているヤツ」
稲生:「マリアさんもなかなか肉食ですね。ま、日本人にとって白人はそういうイメージですけど。飲み物は?」
マリア:「この紅茶」
稲生:「じゃあ、僕は……。先生は何がいいですかね……?」
イリーナ:「グリーンティーよろしく」
稲生:「うわ、びっくりした!」
いつの間にか背後にイリーナがいた。
イリーナ:「あと、フランスのブルターニュ地方生まれのリリアンヌは魚食中心だったらしいよ」
稲生:「そ、そうですか」
稲生は慣れた手つきでPCを操作し、ピザと飲み物を注文した。
イリーナ:「段々魔法が魔法じゃなくなって来ちゃったねぇ……」
その為か、未だに稲生は水晶玉を貸与はされていても、ほとんど使ったことがない。
本科教育の際に実習で使っただけだ。
ほとんどスマホで事足りてしまうからだ。
稲生:「ちょうど12時に来るみたいですよ」
イリーナ:「そお。それじゃ、ラテン語講座後編はピザのデリバリーが来たら終了ってことにしようかねぇ……」
その時、仏間からまた目覚まし時計のベルが聞こえて来た。
イリーナ:「はい、休み時間終わり。早速始めるよ〜」
稲生:「よろしくお願いします」
マリア:「…………」←眠気防止の為、稲生からもらったミンティアを口に放り投げる。
[同日12:00.天候:雨 稲生家1F仏間]
イリーナ:「……はい、というわけで、ラテン語の基礎講座後編はこれにて終了〜!」
ジリリリリリリ!
稲生:「ちょうど時間ですね」
マリア:「でも、まだピザが来ない……」
稲生:「この台風ですからね。なかなか無茶はできませんよ」
イリーナ:「ま、もう少し待ちましょう」
稲生:「それより先生、50分でよくここまで教えて頂けましたね」
イリーナ:「50分ごとに10分の休憩を挟むと効率がいいって本当ね。私も初めてやってみたけど、なかなか上手く行くものね」
稲生:「持ち時間を余すことなく、かといってオーバーすることもなくピッタリにやることはなかなか難しいんですよ」
イリーナ:「それもそうね」
稲生:「僕が大学生の頃、教育実習に行った時は……」
ピンポーンとインターホンが鳴る。
稲生:「おっ、やっとピザ来た。はーい!」
稲生は自分の財布を手に玄関に向かった。
イリーナ:「それじゃ、ランチタイムと行きましょうか」
マリア:「はい」
ダイニングへ向かうイリーナとマリア。
会計を済ませた稲生が、Lサイズのピザと飲み物を持って来た。
稲生:「はい、無事に届きましたよ」
イリーナ:「おー、素晴らしい」
マリア:「たまにはピザもいいかもな」
稲生がピザの入った箱を開けた時だった。
稲生:「あっ、しまった!」
イリーナ:「なに?」
稲生:「Lサイズだと10切れになっているんです。3人で割れませんね」
イリーナ:「それなら勇太君が1切れ多く食べればいいわよ」
稲生:「僕がですか?」
イリーナ:「注文から支払いまでしてくれたの勇太君なんだから、その権利があるわ」
マリア:「確かに……」
稲生:「そうですか?それならお言葉に甘えて……」
稲生はピッとテレビを点けた。
平日の昼時なので、ワイドショーをやっている。
やはり突然発生した台風について中継を行っていた。
稲生:「これがアナスタシア組の不始末だって知ったら、マスコミも騒ぎますかね?」
イリーナ:「それは大丈夫でしょう。そもそもマスコミが嗅ぎ付けられるわけないし、もし嗅ぎ付けた場合であっても、最凶魔女軍団ですもの。【お察しください】」
稲生:「怖い怖い。やはり、ロシアではロシアンマフィアだったりするんですね?」
イリーナ:「お察しください」
マフィアのボスは大抵男だが、アナスタシア組においては、アナスタシア・スロネフという女魔道師という……。
稲生:「午後はどうします?」
イリーナ:「そうねぇ。ラテン語を覚えてもらったことだし、今度はダンテ先生の魔道書を使って、魔法の根本について勉強してもらいましょうかね」
稲生:「なるほど」
イリーナ:「そもそも、魔法というものがあるということを『知る』ことから始まるわけだから」
稲生:「ふーむ……」
イリーナ:「勇太君くらい霊感の強い人はともかくとして、普通の人はそこが心霊スポットだと分からなかったら、幽霊の存在に気付かないのと同じことよ」
稲生:「なるほど……」
分かったような分からないような感じの稲生だった。
マリア:「あれ?ねぇ、勇太。ここの高校ってすぐ近く?」
テレビを観ていたマリアは、そこを指さした。
稲生:「はい?」
〔「……はい、こちら現場となった埼玉県立さいたま中央高校に来ています。御覧のように埼玉県にも台風の影響が出始めまして、時折強い風と雨に晒されています。今日は大事を取って臨時休校となっているこの高校ですが、一部を除く教職員は出勤しておりまして、その教職員が発見したものです。今、警察が規制線を張っておりまして中に入ることはできませんが、今朝7時頃、この高校に通う女子生徒5名が謎の変死を遂げているのが発見されました。……」〕
稲生:「あれ?ここ、車で10分と掛からない場所ですよ」
マリア:「栗原江蓮の母校?」
稲生:「いや、違いますよ。彼女の母校は私立の女子校でしたから……」
イリーナ:「あいつら、何やってんの?」
ずぶ濡れの中リポートをするテレビ記者の後ろでピースサインをしているアスモデウスと、黒いハットでなるべく顔を隠そうとするレヴィアタンの姿があった。
稲生:「もしかして、そこの女子高生達が変死をしたのって……!?」
イリーナ:「うーむ……」
イリーナは少し考えた。
そして……。
イリーナ:「よし。午後の授業は少し予定を変更して、『悪魔について』もう少し勉強しましょうか」
稲生:「悪魔達、何かしたんですか?」
マリア:「でなきゃあいつらあんなことしないし、師匠もこんなこと言わないよ」
ジリリリリリと目覚まし時計のベルが鳴る。
イリーナ:「はい。じゃあ、これでラテン語講座中編は終了よ。10分休憩したら、次はいよいよ後編ね。これで午前中は終わり」
稲生:「ありがとうございました」
マリア:「…………」
マリアは眠気を堪えるのに必死だった。
マリア:「……ぶっちゃけ、ラテン語、自動通訳魔法で良くない?」
稲生:「ダンテ先生著述の魔道書には効きませんからねぇ……」
稲生は席を立った。
トイレに行くのと、あともう1つやることがある。
1階のトイレはイリーナが使っているので、稲生は2階のトイレに行く。
その後リビングに行って、家族共用のPCを開く。
マリア:「何をしてるの?」
稲生:「昼食の用意ですよ。こんな台風じゃ、買いにも食べにも行けませんもの」
マリア:「で、何を頼むの?」
稲生:「ピザでいいですか?」
マリア:「注文できるの?」
稲生:「大丈夫みたいですよ」
マリア:「ほおほお」
稲生:「何がいいですか?」
マリア:「この、ミートが沢山載っているヤツ」
稲生:「マリアさんもなかなか肉食ですね。ま、日本人にとって白人はそういうイメージですけど。飲み物は?」
マリア:「この紅茶」
稲生:「じゃあ、僕は……。先生は何がいいですかね……?」
イリーナ:「グリーンティーよろしく」
稲生:「うわ、びっくりした!」
いつの間にか背後にイリーナがいた。
イリーナ:「あと、フランスのブルターニュ地方生まれのリリアンヌは魚食中心だったらしいよ」
稲生:「そ、そうですか」
稲生は慣れた手つきでPCを操作し、ピザと飲み物を注文した。
イリーナ:「段々魔法が魔法じゃなくなって来ちゃったねぇ……」
その為か、未だに稲生は水晶玉を貸与はされていても、ほとんど使ったことがない。
本科教育の際に実習で使っただけだ。
ほとんどスマホで事足りてしまうからだ。
稲生:「ちょうど12時に来るみたいですよ」
イリーナ:「そお。それじゃ、ラテン語講座後編はピザのデリバリーが来たら終了ってことにしようかねぇ……」
その時、仏間からまた目覚まし時計のベルが聞こえて来た。
イリーナ:「はい、休み時間終わり。早速始めるよ〜」
稲生:「よろしくお願いします」
マリア:「…………」←眠気防止の為、稲生からもらったミンティアを口に放り投げる。
[同日12:00.天候:雨 稲生家1F仏間]
イリーナ:「……はい、というわけで、ラテン語の基礎講座後編はこれにて終了〜!」
ジリリリリリリ!
稲生:「ちょうど時間ですね」
マリア:「でも、まだピザが来ない……」
稲生:「この台風ですからね。なかなか無茶はできませんよ」
イリーナ:「ま、もう少し待ちましょう」
稲生:「それより先生、50分でよくここまで教えて頂けましたね」
イリーナ:「50分ごとに10分の休憩を挟むと効率がいいって本当ね。私も初めてやってみたけど、なかなか上手く行くものね」
稲生:「持ち時間を余すことなく、かといってオーバーすることもなくピッタリにやることはなかなか難しいんですよ」
イリーナ:「それもそうね」
稲生:「僕が大学生の頃、教育実習に行った時は……」
ピンポーンとインターホンが鳴る。
稲生:「おっ、やっとピザ来た。はーい!」
稲生は自分の財布を手に玄関に向かった。
イリーナ:「それじゃ、ランチタイムと行きましょうか」
マリア:「はい」
ダイニングへ向かうイリーナとマリア。
会計を済ませた稲生が、Lサイズのピザと飲み物を持って来た。
稲生:「はい、無事に届きましたよ」
イリーナ:「おー、素晴らしい」
マリア:「たまにはピザもいいかもな」
稲生がピザの入った箱を開けた時だった。
稲生:「あっ、しまった!」
イリーナ:「なに?」
稲生:「Lサイズだと10切れになっているんです。3人で割れませんね」
イリーナ:「それなら勇太君が1切れ多く食べればいいわよ」
稲生:「僕がですか?」
イリーナ:「注文から支払いまでしてくれたの勇太君なんだから、その権利があるわ」
マリア:「確かに……」
稲生:「そうですか?それならお言葉に甘えて……」
稲生はピッとテレビを点けた。
平日の昼時なので、ワイドショーをやっている。
やはり突然発生した台風について中継を行っていた。
稲生:「これがアナスタシア組の不始末だって知ったら、マスコミも騒ぎますかね?」
イリーナ:「それは大丈夫でしょう。そもそもマスコミが嗅ぎ付けられるわけないし、もし嗅ぎ付けた場合であっても、最凶魔女軍団ですもの。【お察しください】」
稲生:「怖い怖い。やはり、ロシアではロシアンマフィアだったりするんですね?」
イリーナ:「お察しください」
マフィアのボスは大抵男だが、アナスタシア組においては、アナスタシア・スロネフという女魔道師という……。
稲生:「午後はどうします?」
イリーナ:「そうねぇ。ラテン語を覚えてもらったことだし、今度はダンテ先生の魔道書を使って、魔法の根本について勉強してもらいましょうかね」
稲生:「なるほど」
イリーナ:「そもそも、魔法というものがあるということを『知る』ことから始まるわけだから」
稲生:「ふーむ……」
イリーナ:「勇太君くらい霊感の強い人はともかくとして、普通の人はそこが心霊スポットだと分からなかったら、幽霊の存在に気付かないのと同じことよ」
稲生:「なるほど……」
分かったような分からないような感じの稲生だった。
マリア:「あれ?ねぇ、勇太。ここの高校ってすぐ近く?」
テレビを観ていたマリアは、そこを指さした。
稲生:「はい?」
〔「……はい、こちら現場となった埼玉県立さいたま中央高校に来ています。御覧のように埼玉県にも台風の影響が出始めまして、時折強い風と雨に晒されています。今日は大事を取って臨時休校となっているこの高校ですが、一部を除く教職員は出勤しておりまして、その教職員が発見したものです。今、警察が規制線を張っておりまして中に入ることはできませんが、今朝7時頃、この高校に通う女子生徒5名が謎の変死を遂げているのが発見されました。……」〕
稲生:「あれ?ここ、車で10分と掛からない場所ですよ」
マリア:「栗原江蓮の母校?」
稲生:「いや、違いますよ。彼女の母校は私立の女子校でしたから……」
イリーナ:「あいつら、何やってんの?」
ずぶ濡れの中リポートをするテレビ記者の後ろでピースサインをしているアスモデウスと、黒いハットでなるべく顔を隠そうとするレヴィアタンの姿があった。
稲生:「もしかして、そこの女子高生達が変死をしたのって……!?」
イリーナ:「うーむ……」
イリーナは少し考えた。
そして……。
イリーナ:「よし。午後の授業は少し予定を変更して、『悪魔について』もう少し勉強しましょうか」
稲生:「悪魔達、何かしたんですか?」
マリア:「でなきゃあいつらあんなことしないし、師匠もこんなこと言わないよ」