[8月29日04:00.天候:雨 東京都江東区森下 ワンスターホテル]
エレーナがホテルの屋上に着陸した時、雨が降り出して来ていた。
エレーナ:「ふぅーっ!本降りになる前に到着ぅ!」
そして、すぐにホテルの中に入る。
5階建てのホテルなので、屋上から階段を下りたら5階である。
宿泊客を起こさないように、そーっと廊下を進み、エレベーターを呼び出した。
〔下へ、参ります〕
ホテルのエレベーターは喋らないイメージがあるが、ワンスターホテルもバリアフリールームを設けた関係で、エレベーターも喋るようになった。
当然ドア横だけでなく、脇の壁にもボタンがある。
〔ドアが閉まります〕
尚、エレーナの部屋は地下1階にあるが、宿泊客には機械室や倉庫があることになっている為、普段はエレベーターが下りない設定になっている。
下りるように設定する為にはスイッチ・キーが必要になるのだが、これはフロント預かりになっていた。
その為、エレーナは一旦フロントに寄らなければならなかった。
〔1階です。ドアが開きます〕
ピンポーンは客室の騒音になる為、鳴らない。
エレーナ:「オーナー」
オーナー:「おう、エレーナ。お帰り。遅かったね」
エレーナ:「すいません。ちょっとトラブルに巻き込まれて……」
オーナー:「大丈夫かい?」
エレーナ:「私は無事です。それに、このホテルに迷惑は掛けません」
オーナー:「それならいいけど……。今日は台風が直撃で、軒並みキャンセルが出そうだ」
エレーナ:「マジっすか。後でアナスタシア組に賠償請求した方がいいですよ」
オーナー:「まあ、アナスタシア組にもお世話になっているからね」
団体でホテルが貸し切られたこともある。
但し、その際は何故かエレーナは休みを取っているが。
アナスタシア組の弟子の人数はエレーナも把握していないが、数十人はいると思われる。
それだけで学校ができるほどだとアナスタシアは豪語していたが、人数が多過ぎてレベルのバラつきを抑えることができず、今回みたいな台風を作り出してしまうというアクシデントを招いたりする。
如何にイリーナ組やポーリン組の弟子2人が少ないかが分かるというものだが、いやいや、やはりアナスタシアという師匠1人に対して弟子数十人は抱え過ぎなのである。
本当に魔法学校でも作る気かと揶揄されても致し方無いことだろう。
エレーナ:「今日のシフトどうします?」
オーナー:「もしかしたら、台風で交通機関が乱れる前にチェックアウトするお客様が多いかもしれない。帰って来たばっかりで悪いけど、こっち手伝ってくれる?」
エレーナ:「分かりました」
オーナー:「恐らく今日のチェックインの大部分はキャンセルになるだろうから、10時のチェックアウト後は休んでいいよ」
エレーナ:「了解です。その前にシャワー浴びて、着替えてきていいですか?」
オーナー:「ああ。というより、少し休んできなさい。6時くらいから入ってもらえればいいよ」
エレーナ:「了解です」
エレーナは鍵を受け取ると、それでエレベーターに乗り込んだ。
そして操作盤の蓋を開けると、中にあるスイッチを入れる。
すると、B1Fのボタンを押せばランプが点く(B1Fへ下りられる)というわけだ。
〔地下1階です。ドアが開きます〕
ドアが開くと薄暗い機械室が目の前に飛び込んで来た。
すぐにまたスイッチを切って、操作盤の蓋の鍵を掛ける。
すると、1階外側から下へ行くボタンを押しても反応しないし、中からB1Fへのボタンを押しても反応しないというわけだ。
但し、B1F外側のボタンは、押せば反応する。
いくら非常階段が別にあるとは言えど、さすがにそうでないと不便だろう。
防犯上の都合で、なるべく非常階段を普段使いしないようにと言われている。
リリアンヌ:「エレーナ先輩、お疲れさまです」
先に寝ているだろうと思って、そっとドアを開けたエレーナ。
確かに2段ベッドの下段にリリアンヌが寝ていたが、パッと飛び起きた。
これは人間時代に受けた暴力の名残りだという。
エレーナ:「おう。別に、寝てていいよ。私はシャワーを浴びて、少し休んだらフロントに入るから」
リリアンヌ:「も、申し訳ありません、先輩。わわ、私も……ほ、ホテルの仕事……手伝えたら……」
エレーナ:「まあ、アンタにはフロントの仕事は無理だね。だけど、ゴミ出しとか掃除とか手伝ってくれてるからいいよ」
この部屋には備え付けのシャワールームとトイレがある。
稲生家2Fのが後付けされたように、こちらも後付けのシャワールームだ。
元々はボイラー技士が泊まり込みで業務を行う技師室だった部屋をエレーナが下宿先としたもの。
そのボイラーも自動化されて技師は退職し、空き部屋となった為、倉庫の一部になっていたのだが、エレーナが住むことになってリニューアルされた。
エレーナが脱いだ服をリリアンヌが丁寧に畳み、下着は洗濯カゴに入れて後で洗濯するのも後輩の務めとされている。
それだけ魔道師の世界は上下関係が厳しいのだが、イリーナ組はそこまでやらない。
まあ、稲生が先輩たるマリアの服をどうこうするわけにはいかないからだ。
イリーナ組においては、マリアの使役するメイド人形が家事全般を一手に引き受けている。
リリアンヌ:「エレーナ先輩、忙しそう……」
リリアンヌは戸棚の中からカロリーメイトを出しておいた。
非常食兼多忙食である。
賄いは無いのだが、食費は別に支給される為、エレーナはホテル周辺の飲食店を食べ歩いたりしている。
で、最近は鈴木に食事を奢ってもらうことが多い。
しばらくして、エレーナがバスタオルだけ羽織った状態で出て来た。
エレーナ:「リリィ、アンタは寝てていいんだよ」
リリアンヌ:「そういうわけには……。先輩、カロリーメイトです」
エレーナ:「ああ、気が利くな。さすがに昨夜は疲れたからねぇ」
リリアンヌ:「何かあったんですか?」
エレーナ:「もし観る機会があったら……そうだなぁ……。昼のワイドショーでも観てみな。台風以外のことで、何か大事件が報道されるかもしれないから」
リリアンヌ:「フヒ?何ですか、それ?」
エレーナ:「観れば分かるよ」
エレーナは取りあえず、替えの下着にTシャツとスパッツだけ穿くと、カロリーメイトを口にした。
エレーナ:「6時からフロントに入るから、1時間だけ寝る。5時半になったら起こして」
リリアンヌ:「了解しました」
自称、マリアンナより働いている魔道師とのことだが、ホテル業務においては確かにその通りかもしれない。
エレーナ:「キキより働いてるよ、アタシゃ。じゃ、そういうことで」
リリアンヌ:「き、キキ?……お、おやすみなさい……です」
エレーナはさっさと2段ベッドの上段に上がると、布団を頭から被ったのだった。
リリアンヌ:(ここはまだまだ学ぶ所が多い……。私も……いずれは先輩みたいにホテルで働けるかナ……)
リリアンヌは再び下段ベッドに潜り込んだ。
エレーナがホテルの屋上に着陸した時、雨が降り出して来ていた。
エレーナ:「ふぅーっ!本降りになる前に到着ぅ!」
そして、すぐにホテルの中に入る。
5階建てのホテルなので、屋上から階段を下りたら5階である。
宿泊客を起こさないように、そーっと廊下を進み、エレベーターを呼び出した。
〔下へ、参ります〕
ホテルのエレベーターは喋らないイメージがあるが、ワンスターホテルもバリアフリールームを設けた関係で、エレベーターも喋るようになった。
当然ドア横だけでなく、脇の壁にもボタンがある。
〔ドアが閉まります〕
尚、エレーナの部屋は地下1階にあるが、宿泊客には機械室や倉庫があることになっている為、普段はエレベーターが下りない設定になっている。
下りるように設定する為にはスイッチ・キーが必要になるのだが、これはフロント預かりになっていた。
その為、エレーナは一旦フロントに寄らなければならなかった。
〔1階です。ドアが開きます〕
ピンポーンは客室の騒音になる為、鳴らない。
エレーナ:「オーナー」
オーナー:「おう、エレーナ。お帰り。遅かったね」
エレーナ:「すいません。ちょっとトラブルに巻き込まれて……」
オーナー:「大丈夫かい?」
エレーナ:「私は無事です。それに、このホテルに迷惑は掛けません」
オーナー:「それならいいけど……。今日は台風が直撃で、軒並みキャンセルが出そうだ」
エレーナ:「マジっすか。後でアナスタシア組に賠償請求した方がいいですよ」
オーナー:「まあ、アナスタシア組にもお世話になっているからね」
団体でホテルが貸し切られたこともある。
但し、その際は何故かエレーナは休みを取っているが。
アナスタシア組の弟子の人数はエレーナも把握していないが、数十人はいると思われる。
それだけで学校ができるほどだとアナスタシアは豪語していたが、人数が多過ぎてレベルのバラつきを抑えることができず、今回みたいな台風を作り出してしまうというアクシデントを招いたりする。
如何にイリーナ組やポーリン組の弟子2人が少ないかが分かるというものだが、いやいや、やはりアナスタシアという師匠1人に対して弟子数十人は抱え過ぎなのである。
本当に魔法学校でも作る気かと揶揄されても致し方無いことだろう。
エレーナ:「今日のシフトどうします?」
オーナー:「もしかしたら、台風で交通機関が乱れる前にチェックアウトするお客様が多いかもしれない。帰って来たばっかりで悪いけど、こっち手伝ってくれる?」
エレーナ:「分かりました」
オーナー:「恐らく今日のチェックインの大部分はキャンセルになるだろうから、10時のチェックアウト後は休んでいいよ」
エレーナ:「了解です。その前にシャワー浴びて、着替えてきていいですか?」
オーナー:「ああ。というより、少し休んできなさい。6時くらいから入ってもらえればいいよ」
エレーナ:「了解です」
エレーナは鍵を受け取ると、それでエレベーターに乗り込んだ。
そして操作盤の蓋を開けると、中にあるスイッチを入れる。
すると、B1Fのボタンを押せばランプが点く(B1Fへ下りられる)というわけだ。
〔地下1階です。ドアが開きます〕
ドアが開くと薄暗い機械室が目の前に飛び込んで来た。
すぐにまたスイッチを切って、操作盤の蓋の鍵を掛ける。
すると、1階外側から下へ行くボタンを押しても反応しないし、中からB1Fへのボタンを押しても反応しないというわけだ。
但し、B1F外側のボタンは、押せば反応する。
いくら非常階段が別にあるとは言えど、さすがにそうでないと不便だろう。
防犯上の都合で、なるべく非常階段を普段使いしないようにと言われている。
リリアンヌ:「エレーナ先輩、お疲れさまです」
先に寝ているだろうと思って、そっとドアを開けたエレーナ。
確かに2段ベッドの下段にリリアンヌが寝ていたが、パッと飛び起きた。
これは人間時代に受けた暴力の名残りだという。
エレーナ:「おう。別に、寝てていいよ。私はシャワーを浴びて、少し休んだらフロントに入るから」
リリアンヌ:「も、申し訳ありません、先輩。わわ、私も……ほ、ホテルの仕事……手伝えたら……」
エレーナ:「まあ、アンタにはフロントの仕事は無理だね。だけど、ゴミ出しとか掃除とか手伝ってくれてるからいいよ」
この部屋には備え付けのシャワールームとトイレがある。
稲生家2Fのが後付けされたように、こちらも後付けのシャワールームだ。
元々はボイラー技士が泊まり込みで業務を行う技師室だった部屋をエレーナが下宿先としたもの。
そのボイラーも自動化されて技師は退職し、空き部屋となった為、倉庫の一部になっていたのだが、エレーナが住むことになってリニューアルされた。
エレーナが脱いだ服をリリアンヌが丁寧に畳み、下着は洗濯カゴに入れて後で洗濯するのも後輩の務めとされている。
それだけ魔道師の世界は上下関係が厳しいのだが、イリーナ組はそこまでやらない。
まあ、稲生が先輩たるマリアの服をどうこうするわけにはいかないからだ。
イリーナ組においては、マリアの使役するメイド人形が家事全般を一手に引き受けている。
リリアンヌ:「エレーナ先輩、忙しそう……」
リリアンヌは戸棚の中からカロリーメイトを出しておいた。
非常食兼多忙食である。
賄いは無いのだが、食費は別に支給される為、エレーナはホテル周辺の飲食店を食べ歩いたりしている。
で、最近は鈴木に食事を奢ってもらうことが多い。
しばらくして、エレーナがバスタオルだけ羽織った状態で出て来た。
エレーナ:「リリィ、アンタは寝てていいんだよ」
リリアンヌ:「そういうわけには……。先輩、カロリーメイトです」
エレーナ:「ああ、気が利くな。さすがに昨夜は疲れたからねぇ」
リリアンヌ:「何かあったんですか?」
エレーナ:「もし観る機会があったら……そうだなぁ……。昼のワイドショーでも観てみな。台風以外のことで、何か大事件が報道されるかもしれないから」
リリアンヌ:「フヒ?何ですか、それ?」
エレーナ:「観れば分かるよ」
エレーナは取りあえず、替えの下着にTシャツとスパッツだけ穿くと、カロリーメイトを口にした。
エレーナ:「6時からフロントに入るから、1時間だけ寝る。5時半になったら起こして」
リリアンヌ:「了解しました」
自称、マリアンナより働いている魔道師とのことだが、ホテル業務においては確かにその通りかもしれない。
エレーナ:「キキより働いてるよ、アタシゃ。じゃ、そういうことで」
リリアンヌ:「き、キキ?……お、おやすみなさい……です」
エレーナはさっさと2段ベッドの上段に上がると、布団を頭から被ったのだった。
リリアンヌ:(ここはまだまだ学ぶ所が多い……。私も……いずれは先輩みたいにホテルで働けるかナ……)
リリアンヌは再び下段ベッドに潜り込んだ。