報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「帰省2日目」 5

2018-09-06 19:04:44 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月27日15:40.天候:曇 埼玉県さいたま市大宮区吉敷町 MOVIXさいたま]

〔「……タカオ、どうするの?これから」「もちろん、家に帰るさ。帰りのグレイハウンドバスのチケットは既に確保している」「社長、さすがにもうバス特攻はやめてくださいね?」「今度はニューヨーク市の市営バス1台弁償しなきゃいけなくなるなぁ!ハッハッハ!」「そういう問題じゃありません」〕

 主人公の敷島家を乗せたヘリコプター、昇り始めた朝日に向かって消えて行き、そこで映画は終わる。
 あとは壮大なBGMと共に、エンドロールが流れた。

 稲生:「おお〜……!」
 マリア:「…………」

 そして場内が明るくなる。

 稲生:「いやー、ホラーもいいですけど、たまにはこういうSFアクションも面白いですね」
 マリア:「私の人形にもAIを搭載したら、もっと完璧に動くようになるかしら?」
 稲生:「ダメですよ、それは」
 マリア:「そうかな?」
 稲生:「マリアさんの魔法で十分です」
 マリア:「そ、そう?」

 稲生達はシアターの外に出た。
 上映が終わると、トイレが混雑するのはベタな法則。
 男子トイレですら並ぶほど。

 稲生:「SFも観たから、次は魔法を扱った作品でも観たいですね」
 マリア:「また今度ね」
 稲生:「先生に頼んで、“魔女の宅急便”でも再生してくれないかなぁ?」
 マリア:「主人公がホウキ乗りで薬師系という時点で、何かムカつくからいいや」

 多分、エレーナのことだろう。

 マリア:「ハリーポッターの方がいい」
 稲生:「ハリーポッターねぇ……」
 マリア:「主人公が男という時点で、勇太みたいだ」
 稲生:「でも僕、眼鏡は掛けてませんよ?」
 マリア:「そんなのは些事だから」
 稲生:「魔法列車というより、冥鉄電車なら既に何度も乗ってますが?」
 マリア:「いや、だからそこじゃない」

 MOVIXの外に出る。

 稲生:「今ならマルチタイプやボーカロイドについて語れそうですね。どうです?ちょっと近くのカフェにでも……」
 マリア:「そうだな。……ていうか……」
 稲生:「はい?」
 マリア:「何か、雨が降りそうなんだが?」
 稲生:「そういえば、随分湿っぽいですね。あれ?ゲリラ豪雨が降るのは夜のはずじゃ?」
 マリア:「タイミングがズレたかなぁ……?ここは1つ、もう帰った方がいいかもしれない」
 稲生:「うー……」
 マリア:「まだ休暇は続くんでしょ?多分明日は晴れるだろうから、明日にしよう」
 稲生:「分かりました」
 マリア:「家庭用プロジェクター、是非見てみたいからなぁ」
 稲生:「あ、それは忘れてなかったんですね」
 マリア:「もちろん」

 ホームシアターのことである。
 まあ、マリアの屋敷には、それこそミニシアターを作っても良さそうな部屋はあるのだが。

[同日16:00.天候:雨 埼玉県さいたま市中央区]

 稲生達が足早に家に向かっている時だった。
 ついに稲生の頭に大粒の雨が当たった。

 稲生:「うわっ!?家まであとちょっとなのに!」
 マリア:「Damn it!Too fast!(ちくしょう!やっぱタイミングずれてた!)」

 走る2人。
 空はどんどん暗くなり、雷鳴が轟き始めた。

 稲生:「マリアさん、今のセリフ!」
 マリア:「Huh?What?(え?なに?)」
 稲生:「さっきの映画のアリス敷島と同じこと言ってましたよ!?ほら、黒いロボットに囲まれるシーン!」

 マリア、自動通訳魔法が切れたことに気づいたか、ペンダントの魔法石を握る。

 マリア:「アメリカ人と一緒にするな!私の英語の方が発音正しい!」
 稲生:「日本語は似たようなものですって!」

 雨もどんどん強くなってきた。
 そして、ようやく家に辿り着く。

 稲生:「ふぇーっ!エラい目に遭った!」
 マリア:「いや、全く!」

 因みに映画の中で、アリスなどが英語で喋るシーン(その際は字幕あり)があったので、今の稲生達のやり取りがあるのだ。

 稲生:「早く中に入りましょう」

 稲生は持っていた家の鍵で玄関のドアを開けた。
 そして、中に入ると……。

 稲生:「あっ!?」
 マリア:「なに?」

 玄関にブーツがあった。
 それはイリーナのだった。

 稲生:「イリーナ先生、来てたんだ」
 マリア:「ええっ?」

 するとリビングの方からイリーナがやってきた。

 イリーナ:「お帰り、2人とも。お邪魔させてもらってるよー」

 イリーナはにこやかな顔になっていた。

 稲生:「先生、いつ来られたんです?言ってくれれば、お迎えに行きましたのに」
 イリーナ:「あなた達が映画観てる間だよ。せっかくの映画デートを邪魔しちゃ悪いと思ってね」

 家は全て施錠されているはずなのだが、イリーナほどの大魔道師になれば侵入可能である。

 イリーナ:「それより、降って来たねぇ」
 稲生:「ええ。急いで帰って来ました」
 イリーナ:「それでもずぶ濡れね。早いとこ着替えておいで」
 稲生:「はい」

 実はブーツはもう1つある。
 リビングからもう1人、魔道師が顔を出した。

 マルファ:「本当だ!ずぶ濡れ!マリアンナちゃん、かわいいピンクのブラだね!」

 それはイリーナとは1つ階級下である、ハイマスターのマルファ。
 弟子は1人も取っていない。

 稲生:「えっ!?」

 稲生は男の本能として反射的にマリアの方を見た。
 マリアも慌てて胸を隠したが、稲生の方が一瞬早かった。
 うむ。正しい男の反射神経である。

 イリーナ:「いいから、アンタはジュースでも飲んでな」
 稲生:「マルファ先生もおいでで。後でお茶のお代わりを……」
 マルファ:「うんうん。ありがとう」
 イリーナ:「いいから、着替えてきて。この自由人は私がリード繋いでおくから」
 稲生:「はーい」
 マリア:「Yes,sir.(はいはい)」

 マリアは着替えのある客間に、稲生は2階の自分の部屋に向かった。
 そこで気づく。
 マルファの容姿が白い肌の白人である上、金髪のショートボブであることを。
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“大魔道師の弟子” 「帰省2日目」 4

2018-09-06 10:13:16 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月27日11:30.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区新都心 ロイヤルホスト]

 先に昼食から取ることにした稲生とマリア。

 マリア:「やはり、夜からゲリラ豪雨が降るみたい」
 稲生:「夜ですか。夕方じゃなくて?」
 マリア:「いや、夜だね」

 マリアはテーブルの上に置いた水晶球で占ってみた。

 稲生:「うーむ……そうですか」
 マリア:「もっとも、私も修行中の身。どこまで当たるか分からないよ?師匠みたいに、時間単位で当てられたらいいんだけど……」
 稲生:「先生の占いは当たり過ぎて逆に怖いですからねぇ……。取りあえず、日が暮れる前に帰るのが無難ってことですかね」
 マリア:「そういうことになるかな」
 稲生:「それじゃ、取りあえず今日のところは映画でも観て、少しコクーンの中でも歩いてから帰りましょうか」
 マリア:「そうしよう」

[同日13:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区吉敷町 MOVIXさいたま]

 昼食を終えて、早速映画を観に来た魔道師2人。
 まだ、シアター入場には時間がある。
 チケットだけ先に購入すると、稲生はポップコーンなどを買いに行った。

 店員:「それではこちら、ハーフ&ハーフのダブルコンボとコーラMサイズ2つになります」
 稲生:「どうもー」

 稲生はポップコーンやコーラを手にすると、マリアの所へ戻ろうとした。
 そこへ、これから観る作品の予告編が流れて来る。

 稲生:(お、これから観る“劇場版アンドロイドマスター”の予告編だ。いや、でもこれは観ないようにしよう。前情報無しで観るのが作り手への礼儀だと、僕は思う……)

 だが、そんな稲生の思いとは裏腹に……。

 マリア:「勇太、見て!私、予告編でテンション上がっちゃって、先にパンフ買っちゃ……」
 稲生:「この外道ッ!!」
 マリア:「ヒィッ!?」

 マリアがパンフを大きく開くながらやってきたので、稲生はマリアの手の上からバンッとパンフを閉じた。
 当然、びっくりするマリア。

 マリア:「え……なに?今、外道って……」

 稲生は息を整えると言った。

 稲生:「あ……ああ……違いますよ。『外道』とは仏教用語で、仏教徒以外を指す言葉ですから。マリアさん、元クリスチャンだし。ほら、僕は日蓮正宗信徒なもんで、『内道』ね。そういう意味ですから……」
 マリア:「いや、明らかにそんな穏やかなニュアンスじゃなかったぞ!?」
 稲生:「だってマリアさん、パンフなんてネタバレの宝庫じゃないですか!いいんですか!?よく鑑賞前に見るよね!?って、買うよね!?」
 マリア:「あー、私は別にネタバレ平気だから。むしろ、推理小説をラストから読む方だから」
 稲生:「マジですか……」
 マリア:「だって、しょうがないだろ。さっきも私、占ったけど、魔道師って未来を先読みする存在だぞ?ネタバレくらい、どうってこと無くなるさ」
 稲生:「う……それもそうか」
 マリア:「まあ、勇太のそういう所、嫌いじゃないよ」
 稲生:「えっ……?」
 マリア:「勇太は仏教徒で良かったね」
 稲生:「そうですか?」
 マリア:「私は普通の人間だった頃、旧約聖書を主に経典とするカトリック教会で洗礼を受けたわけだけど……」

 ということは洗礼名もあったはずだが、稲生は知らない。
 魔女のミドルネームは契約した悪魔の名前を付ける、デビルネームを付けることになっているからだ。

 マリア:「パンフどころの騒ぎじゃなく、ガンガン未来を予言しているネタバレの本だから」
 稲生:「死海文書なんか、未来予知し過ぎて、もはやアニメのネタレベルですもんね。それなら、過去の事ばっかり書いている日蓮大聖人御書の方がいいですね。『御供養ありがとう』とか『いい加減、そろそろ久遠寺に来い』とか」

 そんなことをしているうちにシアター入場の時間となり、稲生達は中へと入った。
 もちろん、それですぐに始まるわけではない。

 稲生:「そういえばマリアさんと映画来るの、久しぶりですね」
 マリア:「そうだな。それで思い出したんだけど、さっきのパンフのやり取り……」
 稲生:「はい?」
 マリア:「多分この作品を見てくれてる読者は、『またネタの流用?』とか思ってるぞ?」
 稲生:「マリアさん、ネタバレはしょうがないですけど、メタ発言はやめてくださいね」
 マリア:「それとさっきの外道とか内道とかの話……」
 稲生:「はい」
 マリア:「ブッダの伝記物はロードムービーとかの類になるのに、イエス・キリストの伝記物はどうしてもスプラッターになるな」
 稲生:「磔の刑を食らう時点で、どうしてもクライマックスはそうなりますよね」
 マリア:「日蓮大聖人とかは映画にならないの?」
 稲生:「何か昔、あったみたいですけどねぇ……。(萬屋錦之助が日蓮大聖人の役をやったヤツ……)あとは、戸田会長が主役の映画を創価学会が昔作ったって聞いたことがあります」

 “人間革命”の実写映画版。
 但し、宗門との蜜月期間に作られた為、宗門をとてもよく持ち上げる描写が多々あり、到底『日顕宗』呼ばわりする今の学会内で上映できるはずもなく、かといって宗門側も今さら破門団体の映画を宗内で公開できるはずもなく、蚊帳の外の顕正会がそんなデータを持ってるはずもなく、完全にお蔵入りとなっている。

 マリア:「あ、そうだ。家庭用プロジェクターって知ってる?ちょっと興味あるんだけど」
 稲生:「ああ、知ってますよ。1万円ちょこっとで映画館みたいな臨場感が味わえるってヤツでしょう?でも、それこそ魔道師の幻覚魔法で何とかなりません?」
 マリア:「でもそれ、大抵ホラーしか観れないから」
 稲生:「イリーナ先生にすっごく頼んだら、ハリポタ1本くらい再生してくれないかなぁ……?」

 と、ここで上映開始のベルが鳴る。
 もちろん、最初はCMというか、映画泥棒の話が出てくるのだが。
 この辺はポップコーンでやり過ごす魔道師達だった。

〔「広布の戦士!ケンショーレンジャぁぁぁぁぁっ!!」チュドーン!〕

 稲生:「プハッ!?」
 マリア:「ブッ!」

 ……やり過ごせるほど、世の中甘くなかった!

〔「スクリーンの前の皆!俺は修羅の戦士、ケンショーブルーだぜっ!あぁっ!?まさかテメェらは、この映画を盗撮しようってんじゃねーだろーな!?あぁっ!?」「いいですかー?映画泥棒は、正に本門戒壇の大御本尊に仇なす行為と同じことなんですね。ソッカー首領のダイ・サークを見て御覧なさい。映画泥棒をするだけでは飽き足らず、自分で映画まで作ってしまった。これは御本尊様を偽造することと同じ行為なんですね」「クフフフフフフ……。映画の盗撮はいけませんよ。私は女性のスカートの中だけしか撮りません。ええ」「ぇそれではですね、ぇそろそろ時間も無くなってきましたので、ぇそろそろ上映開始と、ぇいきましょ」〕

 稲生:「何これ?」
 マリア:「確かにこれは注目するなぁ……」

 尚、ケンショーレンジャーの出番は10分ほど続いたという。
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