報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「懇親会であった執事ロイド」

2016-10-07 20:24:45 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月30日18:00.天候:晴 東京都中央区銀座 とある高級レストラン]

 敷島(伯父):「本日は我が四季エンタープライズ、創業100周年記念のセレモニーにお越し頂き、真にありがたい限りであります。本来は10月1日が創業日なのですが、明日は土曜日ですので、今年にあっては本日開催させて頂きました。我が社は今でこそ、芸能界切っての規模を誇るまでに成長しましたが……」
 敷島孝夫:「おい、アリス。伯父さんの挨拶が終わるまで食うなよ」
 アリス:「分かってるよー。それにしても、日本人って、どうしてこう同じような挨拶の連発が好きなの?あんたの伯父さんが挨拶するまで、似たような肩書きのオッさん達が挨拶しまくってたじゃない」
 敷島孝夫:「それが日本企業ってもんだ」

 アリスは子会社の社長夫人よろしく、ドレスを着ていたし、平賀も呼ばれていた。
 シンディとエミリーは社長秘書とか教授護衛というよりは、会場の接待役で来ているようなもので、やはりイブニングドレスを着させられている。
 ようやく懇親会が始まった時、アリスは早速料理を皿盛りにしていた。
 四季エンタープライズの懇親会は、昔から立食形式と決まっている。
 余興に四季エンタープライズのアイドルのライブがあり、もちろん、その中に敷島エージェンシーのボーカロイドも入っている。

 敷島孝夫:「まさか自分がこういう所に来られるとは思いませんでしたよ」
 敷島(伯父):「そうかい?かなり絶好調じゃないか。お前の抱えるボーカロイド達は……」
 敷島孝夫:「おかげさまで」
 敷島(伯父):「まだ、例の……『もう1つの仕事』は続けているのか?」
 敷島孝夫:「ロボットを使ったテロが撲滅されない限りは、終わらないです」
 敷島(伯父):「いくらお前が『不死身の敷島』と呼ばれてるからって、あんまり危険なことはやめてくれよ?もうお前の体はお前1人のものではないんだからな?」
 敷島孝夫:「ええ、気をつけます」

 アリス:「んー、これは美味しい」
 シンディ:「マスター。あの料理も結構、人気があるみたいです」
 アリス:「ローストビーフかぁ!シンディ、持って来て!」
 シンディ:「かしこまりました」

 シンディは空になった皿を手に、ローストビーフの置かれた場所へと向かった。
 そこには1人のタキシード姿の男の後ろ姿があり、最初はレストランの従業員かと思ったのだが……。

 シンディ:「ああっ!?」

 さっきまでそこそこあったはずのローストビーフがごっそり無くなっていた。
 見ると、さっきのタキシードの男が皿に山盛りにして持って行っている。
 スキャンしてみると、人間ではなく、ロイドと出た。
 どうやら、誰かが連れて来た執事ロイドのようである。

 シンディ:「ちょっと!そこのあんた!」
 執事ロイド:「はい、何でしょうか?」
 シンディ:「私もマスターにその料理を持って行かなければならないの。譲ってくれる?」
 執事ロイド:「あいにくですが、私もマスターの御命令ですので、できかねます」
 シンディ:「あんた、私が誰だか知っててその答えを言ってるんだろうね?」
 執事ロイド:「はい。マルチタイプ3号機のシンディ・サードですね?」
 シンディ:「分かってるなら、私の方が格上なんだから寄越しなさいよ」
 執事ロイド:「マスターからの御命令に、格上も格下もございません。あなたがマスターの命令に忠実なように、私もまたマスターの御命令には忠実でありたいと思っているからです」
 シンディ:「ナメてんのか、テメェ!?」

 シンディは右手をマグナムに変形させた。
 このままだと、シンディは執事ロイドにマグナムを撃ち込んでしまうだろう。
 そんなことが許されるのか。
 ヘタしたら、懇親会を台無しにしてしまう。

 エミリー:「シンディ、何を・している?」

 だがそこへ、異変をいち早く感じ取ってエミリーが駆け付けてきた。
 険しい顔をした姉機に、シンディは慌てて右手を引っ込めた。

 シンディ:「ね、姉さん!こ、こいつがマスターの料理を根こそぎ持って行くからよ!」
 執事ロイド:「こいつ、ではございません。私は越州大学工学部教授、村上大治郎博士をマスターとさせて頂いております、ロイ・ホワイトと申します。どうぞ、お見知り置きを……」
 エミリー:「マルチタイプ1号機の・エミリー・ファースト・だ。妹の・無礼、姉として・詫びを・入れる」
 シンディ:「姉さん!?」
 エミリー:「お前が・悪い。明らかに・ロイが・先だ。それに・少し・待てば、すぐに・追加の・料理が・来る」

 確かに見ると、ウェイターがローストビーフの追加分を入れていた。

 シンディ:「くっ……!」
 エミリー:「とはいえ・ロイも・このように・直情的な・者を・相手に・するには、少し・対応を・間違えた。正論だけを・言い伏せれば・良いという・ものでもない」
 ロイ:「なるほど。それは“学習”になります。それでは……」

 ロイは2人の鋼鉄姉妹にお辞儀をして去って行った。

 シンディ:「何よ、アイツ……!」
 エミリー:「だからって・マグナムを・発砲する・その判断を・疑う」
 シンディ:「まだ撃ってないし!ちょっと脅かすつもりだけだったし!」
 エミリー:「いいから・早く・お料理を・ドクター・アリスの・所へ・お持ちしろ」
 シンディ:「おっと、そうだった!」

 シンディは急いでローストビーフの所に向かった。

 それからしばらくして……。
 エミリーは空になったワイングラスを手に、ワインの所へ向かった。
 もちろん、グラスは平賀の物であるからだ。
 エミリーがどのワインにするか考えていたが、

 ロイ:「平賀教授は今、肉料理を召しあがっておられるようです。赤もよろしいですが、ちょうどここにある白の……」
 エミリー:「そうか。なら・そうしよう。先ほどは・妹が・失礼した」
 ロイ:「いいえ。おかげで助かりました。あなたが来て頂けなければ、私は頭部を撃ち抜かれていたことでしょう」
 エミリー:「もし……良かったら・私と・ID交換を……」

 エミリーはスルッと右手の手袋を取る。
 掌の中央には赤外線通信があり、これで互いの個人情報を交換することができるのである。
 言わば、ロイド同士の名刺交換だ。
 動物で言うなら、犬が互いの尻を嗅ぎ合うようなもの。

 ロイ:「それは光栄です」

 銀髪の短髪で、かつてのキール・ブルーと比べれば身長も体格もガッチリしているロイ。
 これも、エミリーのタイプなのだろうか。
 ロイもまた右手を差し出した。

 シンディ:「ちょおっと待ったぁぁぁぁっ!」

 そこへシンディが割って入る。

 シンディ:「姉さん!あんたはまたオトコにほだされて!何回泣かされれば気が済むの!」
 エミリー:「……まだ、キールにしか・泣かされて・いない」

 とはいえ、キールに騙されて最後に泣かされたことは負い目でもある。
 シンディはロイの方に向き直った。

 シンディ:「姉さんを誑かそうったって、そうはいかないからねっ!」
 ロイ:「いえ、私は何も……」
 シンディ:「ほらっ、姉さん!とっとと行くよ!」
 エミリー:「シンディ、ゴメン……」

 シンディは姉の手を引っ張って、会場の別の場所へと向かった。

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