報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「裏の動き」

2015-03-14 11:25:31 | アンドロイドマスターシリーズ
[3月15日11:30.埼玉県さいたま市西区 デイライト・コーポレーション埼玉研究所 敷島孝夫&エミリー]

 別室で井辺と結月ゆかりが話している間、敷島とエミリーは別の場所で情報を交換していた。
「……では十条博士は、まだ見つからない?」
「はい。キールも・です」
「あの様子じゃ、国外逃亡できるとは思えないんだけどなぁ……」
 敷島は腕組みをして首を傾げた。
「はい。恐らく・まだ・国内に・いるものと・思われます」
「だよなぁ……」
 2人は歩きながら話している。
 どこに向かっているのかというと、鏡音レンが修理されている部屋だ。
「だいぶ修理は進んだみたいだ。この犯人も早く見つけてくれよ、エミリー?」
「かしこまりました」
「なるべくシンディより早く」
「?」
「シンディだとマシンガンで蜂の巣にしそうだw」
「ああ……。それなら・ご安心・ください」
「頼むぞ」
「気づかれぬよう・遠方からの・狙撃で・よろしいでしょうか?」
 エミリーは右手をライフルに変形させた。
「……やっぱサツに任す」
 『加害者に人権なし』が見事にインプットされている、旧ソ連製のアンドロイド姉妹であった。
 二重の鉄扉を潜った先に、レンがいた。
「あ、社長。お疲れ様です」
「ああ。修理はだいぶ進んだみたいだな」
「おかげさまで」
「この分なら、来月を待たずに仕事が再開できそうだな」
「平賀博士のおかげです。……ああっ、アリス博士もですよ!」
「いや、いいんだ。多分ほとんど平賀博士だろうから」
 因みに、この時のやり取りはエミリーの目と耳によって録画・録音されており、敷島は後で確認したアリスに引っ叩かれたという。

「それで……リンとは、いつ会えますか?」
「えっ?」
「あの事件で僕が電源を切られてから今まで、まだリンと会っていないんです。もしかして、リンもヒドい目に遭わされたんですか?」
「リンは……」
 どうせ人間ではないのだから、児童ポルノに当たらない。
 女子中学生(リンの設定年齢は14歳)の緊縛写真集を出したところで、全く違法ではない。
 ボーカロイドが人間の真似事をするのは、あくまでついで。
 やはり、ボカロの存在意義は他のロボット同じく、人間にはできないことをさせるべきだとの理屈から、無理やり緊縛プレイさせられたのを思い出す。
「ソフトウェアを一から更新し直す作業中だ。それまで待っててくれ。けして、修理不能なほどに壊れたわけじゃないから」
「そうですか。それなら……」

 その後で敷島とエミリーは、リンが修理中の部屋に向かった。
 体の損傷自体はレンより小さいように見えたが、顔が苦悶の表情のままフリーズしていた。
「ある意味、リンの方が深刻かもしれないな」
「はい」
(どうせなら姉弟仲良く復帰会見したいところだが、難しいか?)

「あ、社長」
 廊下で井辺と合流する。
「おう。話は終わったのか?」
「ええ。あの3人の中では、1番ポジティブかもしれません」
「そうだな。どうやらリン達より先に、キミの方のプロジェクトを始動させた方がいいかもしれないな」
「おおっ!」
「そこは平賀先生の見解通りだったかな」
「その平賀先生は……?」
「今、病院に行ってる」
「病院?どこか、体の具合でも……」
「あ、いや。先生の奥さん……平賀奈津子先生が、ここのテロに巻き込まれて重傷を負ったんだ」
 所内は今でも鋭意復旧工事中である。
 リンとレンは、被害の無かった別の研究棟を使用している。
「もうそろそろ退院だけどね。その準備の為かもしれない」
「ああ、なるほど」
「でも、それなら、エミリーも一緒にいた方が良かったんじゃないか?護衛なんだろ?」
「ドクター平賀には・七海が・ついて・おります」
「七海か。あれ?じゃあ、先生の息子さん達は……」
「御一緒・です」
「そういうことか」
 敷島はポンと手を叩いた。

[同日14:00.東京都墨田区菊川 敷島エージェンシー 井辺翔太]

「あ、こんにちは。プロデューサーさん」
 事務所に入ると、一海が笑って出迎えた。
「あ、いえ。まだ、正式に辞令が出ていないので……」
 日曜日だというのに、事務所は稼働している。
 アイドル事務所なのだから当たり前と言えば当たり前だが、井辺は違和感を覚えた。
「未夢さんとLilyさんは奥の部屋ですか?」
「ええ、そうですよ」
 井辺は2人の新人ボーカロイドが待機している部屋に向かった。
 そこには、相変わらず椅子に座って音楽を聴くLilyと部屋を掃除する未夢の姿があった。
「あ、プロデューサーさん、お帰りなさい」
 未夢は掃除の手を止め、Lilyは目線だけ向けた。
「こんにちは。えーと……午前中、最後のメンバーと会ってきました」
 井辺の言葉にLilyも、音楽プレイヤーを止める。
「起動テストは順調とのことです。恐らくこのまま行けば、来週にはこの事務所に正式に入所ということになるでしょう」
 井辺の言葉に未夢とLilyは顔を見合わせて笑みを浮かべた。
「それじゃ、プロデューサー……」
「はい。社長からはまだ具体的は話はありませんが、新しいメンバーの入所と共に、あなた達のデビューが決まるものと思われます」
「ありがとうございます!私、きっとお役に立つよう頑張ります!」
「劇場だけでは私の性能は発揮できていなかったと思うので、いい機会です」
 未夢は喜び、Lilyはあくまでもクールに答えた。

「失礼します。お茶をどうぞ」
 一海が井辺にお茶を入れて来た。
「ああ、どうもすいません」
「あの……リンちゃんとレン君の修理は進んでいましたか?」
「ええ。鏡音レンさんの方は、もう元気にコミュニケ―ションが取れています。ソフト関係だけで言えば、もう復帰できても良いくらいです。ただ、下半身を中心とするハード面の損傷が激しいということで、それにもう少し時間が必要のようですが」
「そうですか。リンちゃんは……」
「技術的なことは、自分には分かりません。弟さんとは損傷の内容は逆のようでした。ただ、ソフトウェアの損傷が云々と言われましても、自分にはどうなのかさっぱり……」
「そうですか。では、やっぱりこのコ達のデビューの方が早いということでしょうか?」
「恐らくは、そうなるかと」
 井辺が大きく頷くと、
「ちょっと待ちな!」
 そこへ怒鳴り込んで来る者がいた。
「MEIKOさん!?」
「MEIKO……先輩」
 ボーカロイドの最年長、MEIKOだった。
「新入りのくせに、先にデビューするなんて納得行かないね!」
「で、ですが、これは社長の……」
 井辺は驚きつつも、やはり冷静さは忘れない。
「お黙り!どうしても先にデビューしたいというのなら、この私と勝負しな!!」
「ええーっ!?」
 
コメント (12)
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