“ユタと愉快な仲間たち” 「今度は山に」

［８月２８日１２：００．東京都区内某所　日蓮正宗・正証寺近くのソバ屋　稲生ユウタ、威吹邪甲、威波莞爾、藤谷春人］

「へえ。珍しく前乗りするのか。偉い偉い」
　藤谷はソバを啜りながらユタを褒めた。
　正証寺では８月３０日と３１日で支部総登山がある。
「僕は当日入りだったんですが、イリーナさん達が富士山の麓に行きたいらしく、そうなりました」
「まあ、観光するのもいいけどね。せっかくだから、大石寺でも見てくれればいいのに」
　するとユタは苦笑いして、
「そちらには興味が無いみたいです」
「あー、そうかい。あの人達、稲生君自身に興味があるみたいだからな」
「まあ、ユタには金に換えられない何かがあるからな」
　威吹はキツネうどんの油揚げを頬張った。
　何だかんだいって、油揚げを好むこと自体、狐の妖怪である。
「ちょっと待った。その稲生君に小判を積んだのは、どこの誰だい？」
「あれはユタ自身に対して、というか、ユタの御両親に積んだんだ」
「！　そういや、氷菜のヤツ……」
　藤谷は思い当たる節があった。
「あいつが俺んとこに来てから、やたら藤谷組の業績が良くなってるんだが……」
「いいじゃないですか。仏法の功徳ってことで」
　ユタは気にせず、天ぷらソバのえび天に齧りついた。
「キミねぇ……」
　藤谷は呆れたが、
「それにしても、あの魔法使いさん達は、いつまでキミの家にいるつもりなんだい？」
「明日までですよ。僕が３０日と３１日は支部総登山に行くということで、２９日には引き払うようです」
「で、キミと一緒に富士宮か。くれぐれも、謗法には気をつけるんだよ」
「はい」
「何しろあそこには、浅間大社の総本社があるんだからね」
「何気に実は富士宮駅から近いってのがニクいですねぇ……」

［同日１５：００．東京都新宿区千駄ヶ谷　ＪＲバス乗り場　ユタ、威吹、カンジ、イリーナ・レヴィア・ブリジッド、マリアンナ・スカーレット］

「えらく長いことお世話になったねぇ」
　イリーナは目を細めて言った。
「いえ、そんな。僕も１週間ほど、マリアさんの屋敷にお世話になりましたし」
「宿泊代は明日の旅行代金で払うそうだ」
　と、マリア。
「ユタ、もっと請求していいんだぞ？」
　廊下から威吹が顔を出して横槍を入れて来た。
「いや、威吹が言うセリフじゃないと思うな……」
「んあっ！？」
「明日は早く出るって？」
「よく“やきそばエクスプレス”が予約できましたね。これも魔法なんですか？」
「どうだかね」
　イリーナは肩を竦めた。
　藤谷と別れたユタ達は、今度はイリーナ達と合流した。
　東京駅バス乗り場でも良かったのだが、たまたまイリーナが新宿高島屋で買い物をしていたから。

［同日１５：１１．ＪＲ新宿駅４番線　ユタ、威吹、カンジ、イリーナ、マリア］

〔本日もＪＲ東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。４番線に停車中の電車は、１５時１６分発、各駅停車、大宮行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

　埼京線のホームには、りんかい線の電車が止まっていた。
　りんかい線には帰らず、埼京線内で折り返す、いわゆる「線内折り返し」というものである。
「どういう目的で行くんだ？」
　最後尾の車両に乗り込むと、威吹とカンジは座席に座らず、イリーナに聞いた。
「そりゃ、魔道師の私達が行く所だもの。それならではの用事よ」
　イリーナは答えた。
「ならば、ユタを連れて行くこともあるまい？」
「いや、威吹。いいんだ。僕が行きたいと言ったんだから」
「そうよ。別に取って食べるつもりは無いんだから。安心して」
「安心しろって、お前……」

〔「ご案内致します。この電車は１５時１６分発、埼京線各駅停車の大宮行きです。途中、武蔵浦和駅で快速、川越行きに接続致します。与野本町と大宮から先へお急ぎのお客様は、１番線から発車の快速、川越行きをご利用ください。……」〕

「いざとなりゃ魔法で一っ飛びだろうに、横着するとはな」
「魔法でヒョイってのも大変だし、味気無いんだからいいじゃない」
「新幹線だと新富士～富士間の移動がビミョーな所ですしね」
　ユタはフォローするように言った。
「だよね。さすがユウタ君」

［同日１５：１６．埼京線１５８７Ｋ１０号車　ユタ、威吹、カンジ、イリーナ、マリア］

　電車は軽快な発車メロディの後、何秒かのブランクがあって、ドアを閉めた。

〔「お待たせ致しました。本日もＪＲ東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。埼京線、各駅停車の大宮行きです。途中の武蔵浦和で、快速、川越行きの接続がございます。次は池袋、池袋です。……」〕

「アンタはいつ、自分のことについて話すつもりだ？」
　威吹はイリーナに問い質した。
「時期が来たら話すわよ」
「イリーナさんの……生い立ち？」
「私がどうして魔道師になったか。それが気になるんでしょ、威吹君？」
「ていうかこの前、自分でそう言ってたじゃないか」
「！……？？？」
「アンタ、まさか、『酔っぱらってたもんで忘れました』なんて言うんじゃないだろうな？」
「先日、そのようなことを言ったかもしれない今日この頃です」
　ズコーッ！

［同日１５：５８．ＪＲ北与野駅　ユタ、威吹、カンジ、イリーナ、マリア］

「僕はマリアさんから、少し聞きましたよ」
　りんかい線用の電車を降りて、改札口へ向かう途中、ユタが口を開いた。
「そうかい？」
「元々は大師匠さんに“奴隷”として買われたこと。でもそれは、大師匠さんがイリーナさんの素質を見出して、どうしても手に入れる為の口実だったとも……」
「あー、正しく私がマリアに話した通りだねぇ……」
「イリーナさんはそれだけ優秀だったんですね」
「ユウタ君にそう言われると照れるねぇ」
「僭越ながら、１つ疑問が……」
　カンジが右手を挙げた。
「なぁに？」
「大師匠殿には既にポーリン師という弟子がいたはず。いくらイリーナ師に多大な素質があったとはいえ、更に弟子入りさせるものなのでしょうか？」
「ただでさえ、魔道師ってのは人材不足だからねぇ……。（大）師匠も、思わず私を買っちゃったって感じみたいよ。でもまあ、私は良かったって思ってる」
　イリーナは微笑を浮かべた。

［同日１６：１５．ユタの家　ユタ、イリーナ、マリア］

　カンジは夕食の支度をし始め、威吹は自分の和室に引っ込んだ。
　ユタはリビングで、イリーナとマリアと話をしていた。
「今度行く所はね、私が初めて魔道師の杖を作った木のある場所だよ」
「！　それは初耳です」
　マリアは目を丸くした。
「樹齢１０００年の木ですか。相当な大木なんですね」
「ええ。さすがに杖は消耗品で、私が今使ってるものは別の木から取ったものだけど……。マリアに作ってあげようかと思ってね」
「私にも杖はありますよ」
「いや。それより、もっと強力なヤツね。いつの間にかマリアも、魔力が強くなったみたいだから」
「そうですか？」
　マリア自身に自覚が無い。
「“守りたいもの”ができるだけで強くなる。それは人間も魔道師も同じ。……師匠の受け売りだけど、どうやら本当みたいだね」
　イリーナはマリアとユタを見比べて言った。
「ええっ！？」
「少なくともゴールデンウィークに仙台に行ったことと、今回こうしてお世話になってるのも、けして無駄な時間ではなかったわけよ、マリア」
「は、はい！」
「樫の木か。それじゃ、オレも刀の鞘に使う朴の木でも探してみるか」
　威吹が部屋に入ってきて言った。
「わざわざ富士宮まで行かなくても、朴の木くらい、全国に分布してるはずだよ？」
「いや、富士の山裾の方がいい」
「竹取物語の内容が、妖怪達の間では間違って伝わってることに疑問は抱かないの？」
「いや、人間の方に伝わってる内容の方が間違ってると思う」
「……まあね」
「え？間違いなんですか？」
　ユタは訝し気な顔をした。

“アンドロイドマスター” 「テロ組織、撲滅」

［９月２１日１７：００．宮城県黒川郡利府町　セキスイハイム・スーパーアリーナ　敷島孝夫＆エミリー］

　敷島は研究所のボーカロイド全員が出演する定例ライブに来ていた。
　ミニライブにテロの標的に遭い、損傷した初音ミクや鏡音レンの復活ライブでもある。
　今回は厳重に厳重を重ね、エミリーを特別警備隊長とするセキュリティ・ロボット軍団を結成しての物々しいものとなった。
「これだけやれば十分だろ」
　敷島は舞台裏でボーカロイド達のライブを見ながら大きく頷いた。
　エミリーが隣で客席をスキャンしている。
「あとはマリオ達の情報の解析が進んでくれればな……」
　その時だった。
　敷島のスマホの着信があった。
「おっと……」
　敷島はステージ袖を離れると、電話に出た。
　相手は森須だった。
｛「ああ、別件業務中にすまない」｝
「いえ。マリオ達の情報の解析が終わりましたか？」
｛「そのことだが、どうも今回の件はシンディが原因らしい」｝
「やはりそうですか。シンディが何かやりましたか？」
｛「いや、彼女自身は何もしていない。だから本人に質しても、知らないの一点張りだったんだ」｝
「で、では？」
｛「そもそも考えてもみてくれ。キミ達がシンディを発見した場所。何故彼女はあそこに現れた？あたかも、キミ達に見つけて欲しいかの如くだ」｝
「それは私も気になってました。地下の秘密研究所にあったならまだしも、ホテル施設の展望台部分でしたからね。私は誰かがシンディをあそこに一時期保管して、ヘリか何かで運ぼうとしていたんだと思うんです。しかしその前に私達が見つけてしまった。予想外の展開に焦ったテロ組織は、急きょ活動を始めたというのが私の推理です」
｛「面白い推理だが、こちらが解析した情報ではあいにくとハズレだ」｝
「え？」
｛「その逆だよ。テロリスト達は、シンディをあのホテルに運び込んだんだ。一時保管というのは当たっているがね」｝
「運び込んだ？」
｛「アメリカのイリノイ州にあったとされるウィリーの秘密研究所。元々シンディはそこに保管されていた。日本に空輸したのが約１年前。それから警察などの目を交わしながら、あのホテルに保管したようだ」｝
「その後、どこに運び出すつもりだったんでしょう？」
｛「……私も俄かには信じられないのだが、明本さんの家だよ」｝
「はあ？！」

［同日２０：００．宮城県黒川郡利府町　県道３号線　敷島、エミリー、ボーカロイド・オールスターズ］

　敷島はワンボックスカーを運転していた。
　ライブは成功。特に、テロの発生も無かった。
　助手席に座るエミリーは休むことなく、車の周囲をスキャンしている。
　マリオ達の情報によると、明本はテロ組織の一員だった可能性がある。
　敷島がシンディを連れて行ったことで、何か思うところでもあったのか。
　明本が殺されたのはバージョン３．０の誤作動と見せかけた、テロ組織の粛清か何かか。
　明本がテロ組織の一員であるのなら、リーダーのことも知っているだろう。
　敷島と接触したことで、情報がばれると思い、殺されたか。
　無論、敷島は明本から聞くつもりではいたが。
　敷島の認識では、明本がテロリストの知り合い程度にしか思っていたのだが。
　いわゆる、『友達の友達がアルカイダ』である。
「敷島さん。今は・運転に・集中してください」
　エミリーは微笑を浮かべて、敷島の方を向き、そう言った。
「えっ？ああ、そうだな。悪い」
　更なる謎はある。
　では明本がシンディを受け取って、どうするつもりだったか、だ。
　まさか、本当に温泉掘削だけに使うわけではなかっただろう。
　温泉掘削はあくまでもついでで、他に使うつもりであったはずだ。
　シンディの起動は面倒なものだったが、ホテル跡にあったメモリーなどからして、その条件は全て廃ホテルや秘密研究所にある物で事足りたはずだ。
　それすら先に敷島達に持ち出されてしまったか。
「……！」
　敷島は、あることを疑問に思った。

［９月２２日２３：００．岩手県盛岡市郊外某所　閉鎖した日帰り温泉施設　敷島孝夫、エミリー、シンディ］

「ちっ、また大雨かよ。“シークルーズ”を思い出すぜ」
　フロントガラスのワイパーが規則正しく動く。
　広い駐車場を持つ日帰り温泉施設は、その灯を消していた。
　駐車場のゲートを取り除き、駐車場に車を進める。
　適当な場所で車を止めて、敷島達は車を降りた。
「閉鎖されてから、そんなには経っていないはずだ」
「温泉が涸れたようには見えないけどね」
　と、シンディ。
「ああ。それはウソだよ。ここは閉鎖して、新たな場所に作る。体のいい移転だよな」
「私が間欠泉を出したところ？」
「そうだよ。間欠泉が出たのに、関係者達は喜んでた。本当は間欠泉なんか入浴できやしないのにな。いや、俺も素人だから間欠泉でも入浴できる方法があるのかもしれない。でも、何か違和感はあったんだ」
「！　もしかして、あの工事関係者達って、テロリスト？」
　シンディが驚いた顔をした。
「俺達が明本さんちを出て、温泉掘削現場に行って戻るまで約１時間強。俺達がいない間に明本さんだけを殺害できるのはテロリストだけ。あの時、俺達の動きを監視できたのはあの人達だけだ」
「それでさっき……」
　実は敷島達、ここに来る前に件の温泉掘削現場を見て来た。
　シンディが温泉を掘り当てて、工事の進捗具合は滑らかになったはずなのに、全く進んでいる気配が無かった。
　資金不足という話ではない。もしそうなら、そもそもシンディに温泉を掘ってもらうという依頼すら無かったはず。
　シンディに温泉を掘ってもらい、涸れてしまった旧施設の代わりに新施設を建設するという話はウソだったのだ。
　では、この旧施設が閉鎖された原因とは？
「この施設は私営だ。経営者が誰か調べれば、自ずと答えは見えてくる」
「その経営者って、誰なの？」
「……聞いて驚く前に、直接本人に電話してみよう。お前達も傍受できるだろ？」
　敷島はスマホを取り出して、どこかに電話した。
｛「……こんな時間に温泉旅行か？もうすぐ日付が変わる。“日帰り”入浴というわけではないな」｝
「は！？それ何！？森須支部長！？」
　シンディが驚いた。
　エミリーも目を見開いている。
「森須支部長、全て理解しました。テロ組織ＡＲ団は、存在自体が捏造。構成員は全てあなたが雇ったアルバイトですね。組織の概要が全く分からなかったのも、そのせいです。支部長の権限なら、バージョン・シリーズを動かすこともできます。マリオ達が戦った動物タイプのロボットの開発にも、支部長が関わっていることも知っています。私が明本さんの家に行ったことを知っているのも支部長ですね。支部長なら、温泉掘削現場の作業員達に指示を与えることもできたし、錆びついているとはいえバージョン３．０の起動法も知っている」
｛「それで私を疑ったわけか。確かにキミ達がいる施設の経営には、私も携わっていた」｝
「この施設、ポンプなどの設備を大日本重工製の機械が使われてます」
｛「しかし、それだけでは私が黒幕だという証拠にはならないだろう？」｝
「なりますよ」
｛「ほお？」｝
　敷島はシンディの方を向いた。
　シンディが頷いて、代わりに答えた。
「先日、宮城県沖を震源とする地震がありましたよね？」
｛「それがどうかしたか？」｝
「古川駅の手前、およそ８ｋｍ手前ですが、バージョン３．０が１機、私達の方に銃口を向けたままフリーズしていました。回収したところ、起動に必要な入力コード、そのＩＤが森須支部長のものと同じでした。これは偶然とは言えません。確信です」
「回収したバージョン３．０はアリスの研究所で保管しています。無論、メモリーからデータから全て解析済みです。後で、支部長にお返ししましょう」
　電話の向こうが騒がしくなる。
　パトカーのサイレンの音だ。
「どうやら、支部長も年貢の納め時ですね」
｛「……どうやら、大日本電機を見くびっていたようだ」｝
「私はもう大日本電機の人間ではありませんよ。何故なら、もう存在しないからです」
｛「それは詭弁だな。キミも知ってるだろう？大日本電気が無くなったのは、その名前だけだとな」｝
「会社の名前が無くなるというのは大きいですよ」
｛「敷島君、キミは大きな間違いを犯しているぞ？」｝
「どこかで聞いたセリフですなぁ」
　敷島達の近くにも警官隊がやってきた。
「こちらもおいでなさりました。無論、逮捕されるのは私達ではありません」
「止まれ！！」
　エミリーがギラッと両目をハイビームに光らせ、右手をマシンガンに変形させる。
　但し、装填されているのは暴徒鎮圧用の模擬弾だ。
「無駄な抵抗すると、人間でも痛い目に遭うわよ！」
　シンディも似たような態勢を取る。
　慌てて中から出て来たのは、あの温泉掘削現場にいた作業員達。
「あなたが雇ったアルバイトさん達ですよ。もっとも、ちゃんと警察ではあなたが黒幕だと証言するでしょうね」

［９月２４日１０：００．宮城県仙台市泉区アリスの研究所　敷島孝夫＆平賀太一］

「敷島さん、いい加減、財団に戻ってきてくださいよ。まだ、あなたは財団仙台支部所属の参事なんですから」
　事務室で懇願するように敷島に言う平賀太一の姿があった。
　無論、財団内部では平賀の方が副理事で立場は上だ。
「だから平賀先生、私の本業はボーカロイド・プロデューサーだって言ってるでしょ？ボカロＰに参事も主事も理事も無いですよ」
「支部長が逮捕された上、その責任を理事達が取って辞任したもんだから、財団が今ゴタゴタで……」
「いや、だからそのゴタゴタを鎮めるのが副理事たる平賀先生のお仕事でしょ？私はボカロＰとして、ボーカロイドの素晴らしさを世に伝えるという仕事があります」
「敷島さんがいれば百人力なんです」
「疫病神の間違いですよ」
「大日本電機のスパイだったということに関しては目を瞑りますから」

　ガッシャーン！（←椅子からコケる敷島）

「な、何で知ってるの？……おい！」
　そっぽを向きながら、赤い舌をペロッと出しているシンディの姿があった。
「無論、その後についても追及しないよう、自分から理事達に伝えておきます」
「かー……」
　敷島は頭をかいた。
「せっかくライブの成功とテロ組織の撲滅を記念して、温泉旅行にでも行こうと思ってたのに……」
「財団のゴタゴタを鎮めるのを手伝ってくれたら、旅行積立金で行きましょう」
「そんなのありましたっけ？」
「ええ。理事会でプールしてたんです」
「汚ねぇな！よーし！だったら俺が直接乗り込んで行って、理事会のプール金、全額ガメてやる！」
「その意気です！」
　しかし、チラッと後ろを向いてニヤッと笑う平賀だった。
　シンディもニッコリ笑って頷く。

　これで平賀とシンディの確執が取れたかどうかは分からない。
　だが、財団にとっては試練の時であるが、これを乗り切った時、また大きく成長できるだろう。

「今すぐ行きますよ！やられたらやり返す！倍返しだ！」
「土下座させましょう！」
　バタバタと研究所を出る敷島と平賀だった。

　実際、プール金を全額ガメられたかは【お察しください】。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　シンディ復活編　終