[9月15日09:00.㈶日本アンドロイド研究開発財団本部 敷島孝夫、鏡音リン・レン、七海]
本部内で少し仮眠を取った敷島は、収録の為にリンとレンをテレビ局に連れて行くことにした。
「敷島さん」
そこへ、七海に呼び止められる。
久しぶりに見るメイド服姿の七海。
アリス研究所では事務の手伝いで来ているため、事務服を着ていることが多いからだ。
「これをお持ちになってください」
「これは……?」
七海から渡されたのは、クレジットカードとほぼ同じ大きさ・厚さのカード。
しかし表面には、ONとOFFというボタンがある。
「シンディ起動のリモコンスイッチです。これを押すだけで、シンディが起動します」
「ちょっ……!そんな簡単でいいのか!?」
「はい。敷島さんにおかれましては、いつでもシンディを連れて帰って頂きたいと太一様の御意向です」
「ふえ……」
ある意味、厄介払いじゃないのかと思った敷島だった。
因みにシンディは、頑丈な鉄扉に閉じられている研究室の椅子に座って“眠って”いる。
「このリモコンのスイッチを入れた人間の命令を聞くように設定されておりますので、くれぐれも紛失することのないようにと……」
「七海、お前が持ってればいいだろ?これから俺はテレビ局に行かなきゃいけないんだ」
「申し訳ありませんが、私も太一様とこれから本部を出ないといけないのです」
「兄ちゃんなら、無くしそうだYo〜?」
リンがイタズラっぽく言った。
「うるさい。そこまで言うなら、持っててやるよ」
敷島はスーツのポケットの中に入れた。
「それじゃ、さっさと行くぞ。今日はNHKで収録だ」
「じゃあ、渋谷だね」
「ボーカロイドに1番理解のあるテレビ局だから、失礼の無いようにな」
「はーい!」
「分かりました」
因みに1番ボーカロイドに理解の無い(とされる)テレビ局は【お察しください】。
[同日11:30.渋谷にあるNHK局内の男子トイレ 敷島孝夫]
「オーマイガー!神は我を見捨てたもうた!!」
頭を抱え、大絶叫を上げる敷島。
すると、敷島の閉じ籠っている個室の上から、トイレットペーパーが投げ込まれた。
「お客さん、紙が無かったかい?取りあえず、それ使ってくんな」
トイレ掃除のオジさんの声が外から聞こえた。
「紙が無いんじゃない!神に見放されたんだ!」
「はあ???」
[同日同時刻 NHK局内、関係者用廊下 ???]
何故か廊下を小走りに走る宅配ピザの店員。
手には配達用のピザの箱を抱えている。
しかしその中に入っているのはピザではなかった。
店員らしき男は、左耳に付けたインカムでどこかと連絡していた。
「会長、例のロボットの起動リモコン、無事に手に入りました」
{「ご苦労さん。すぐにそれでシンディを起動させて、こちらに連れて来るんだ」}
「了解です、会長」
何と、男は宅配ピザの配達員に扮したテロ組織のスパイだった!?
[同日12:00.財団本部ビル、防災センター ???]
「こんにちはー。ケンショー工務店です。内装工事に入ります」
「は?ケンショー工務店さん?」
防災センターの受付にやってきた、いかにも建設作業員風の男が3人。
受付に座っていた警備員が、予定外の作業に首を傾げた。
「うち、事前の作業届が無いと作業できないんですけど……」
「あ、作業届の控えならあります」
リーダーらしき男が1枚の書類を渡した。
「実は財団さんから急に作業を頼まれましてね、ビルの管理会社さんには届出を出したんですが、まだこちらに承認の通達が来てないかもですねー」
「うーむ……。確かに、管理会社の担当者の印鑑はありますね……」
「でしょ?でしょ?」
「一応、こちらの控えをコピーさせて頂きます」
「どうぞどうぞ」
偽造作業届にまんまと騙された警備員。
入館簿にも適当な偽名と連絡先を書いた作業員風の男3人は、こうして本部に入り込んだ。
※いやー、書類が偽物かどうかまで完全に見極めはできないからねー。精巧に作られて、尚且つ巧妙な芝居されたらお手上げっスよ。(by本業が防災センター警備員の作者)
[同日12:15.財団本部13階東部B地区1305部屋 AR団のエージェント3人]
「暗証番号入力式だぞ?」
「大丈夫っス。前、ここへの出入り業者の仕事してたもんで」
「さすがだな」
というわけで暗証番号式ロックを易々と解除した3人。
椅子の上には、電源の切られているシンディが眠っていた。
「このリモコンを押せば、勝手に起動して俺達の言うことを聞く設定らしいっス」
「わざわざダクト工事にかこつけて、そこで奴らの会話を盗聴しただけのことはあるな」
リモコンを押すと、機械の唸り声が聞こえた。
そして、シンディが目を開ける。
その目が3人に向けられた。
「お、おい。俺はお前のスイッチを入れた者だぞ。言う事聞け」
「……で、何をすればいいの?」
シンディが椅子から立ち上がって男達を見据えた。
「お、俺達と一緒に来い」
「分かったわ」
「おお!」
「ちゃんと言う事聞くぞ!」
「よし!さっさとこんなビル、おさらばだ!」
男達はシンディを連れ出した。
[同日同時刻 NHK局内の男子トイレ 敷島孝夫&鏡音リン・レン]
「オーマイガッ!オーマイガー!」
「プロデューサー!どうしました!?もう収録終わりましたよ!何があったんですか!?」
個室の中で絶叫を上げる敷島。
その外でレンがドアを何度もノックして呼び掛けた。
「うぇぇぇん!兄ちゃんが……プロデューサーが壊れちゃったYo〜!!」
トイレの外ではリンが泣きじゃくっていた。
「誰か兄ちゃん修理して〜!」
「プロデューサー!しっかりしてください!」
[同日13:00.東京都新宿区内 明治通り AR団エージェント3名&シンディ]
スモークの張ったミニバンで明治通りの内回り線を走る件の男3名。
「会長、予定通り、シンディを連れ出しました」
{「ご苦労さん。あとは奴らにバレないよう、アジトまで連れてきてくれ」}
「了解っス。会長」
「いやー、しかしここまで行くとは思わなかったなー」
「あのボーカロイド・プロデューサーから、リモコンキーをパクる時は冷や冷やしたよ」
「…………」
左右の口角を上に向けているシンディ。
このミニバンはハイブリットカーだった。
「ロボットがお嫌いなのに、車は随分と最新式なようね」
シンディが口を開いた。
「あー?そりゃ、車はロボットでないもんよー」
「俺達は環境保護団体でもあるんだぜ?電気をバカスカ食うロボットより、こっちのハイブリット車の方がよっぽど環境に優しいってもんよ」
「悪かったわね。電気をバカスカ食べて……」
「!」
その時、車が急に交差点を左折した。
「おい、道が違うぞ!?」
「取りあえず、明治通りをどん詰まりまで行ってだな……」
「分かってるよ!」
「分かってるんなら、お前……」
何故か車が右に左に曲がって行く。
「何やってんだ!早く明治通りに戻れよ!」
「は、ハンドルが……!ハンドルが勝手に動く……!」
「はあ!?」
「何言ってんだ、お前!?」
「ちょっ……!取りあえず止まれ!ブレーキ踏め!」
「さ、さっきから踏んでるんだが、全然減速しねぇ!どうなってんだ!?」
その時、男の1人が冷笑にも似た微笑を浮かべるシンディに気づいた。
「てめっ!何かしたのか!?」
「はあ?私は何もしてないわ。言われた通り、ここでおとなしく座ってるじゃない?何か文句あんの?」
「コイツ、いけしゃあしゃあと……!」
カーナビは、現在地として、ある有名な施設を示した。
「うわわっ!」
その時、車が急加速を始める。
「ぶ、ぶつかるー!!」
駐車場の出入口のゲートバーを破壊し、その前に立っていた警備員が慌てて回避する。
「でーっ!?」
ズガッシャーン!!
「わ、わてのキャデラックがーっ!?」
「何してまんねん!?」
たまたま駐車していた、とある有名お笑い芸人の高級車に突っ込んでやっと止まった。
[同日13:15.NHK局内の医務室 敷島孝夫&鏡音リン・レン]
「取り乱してしまいまして、すいませんでした……」
敷島は医務室スタッフに何度も頭を下げて退出した。
「んもー、兄ちゃんったら……」
「シンディのリモコン起動キーを無くしたって……そんな、簡単に……」
「さすがにこれは辞表書かないとマズいだろうな……」
その時、カメラマンやら見たことのあるリポーターが慌てて外に出て行くのを見かけた。
「あ?何だ?何の騒ぎだ?」
「ボク、見てきます」
「あ、リンも!」
ボーカロイドの双子姉弟が外に向かって走り出した。
そこで敷島は、真相の1つを知ることになる。
本部内で少し仮眠を取った敷島は、収録の為にリンとレンをテレビ局に連れて行くことにした。
「敷島さん」
そこへ、七海に呼び止められる。
久しぶりに見るメイド服姿の七海。
アリス研究所では事務の手伝いで来ているため、事務服を着ていることが多いからだ。
「これをお持ちになってください」
「これは……?」
七海から渡されたのは、クレジットカードとほぼ同じ大きさ・厚さのカード。
しかし表面には、ONとOFFというボタンがある。
「シンディ起動のリモコンスイッチです。これを押すだけで、シンディが起動します」
「ちょっ……!そんな簡単でいいのか!?」
「はい。敷島さんにおかれましては、いつでもシンディを連れて帰って頂きたいと太一様の御意向です」
「ふえ……」
ある意味、厄介払いじゃないのかと思った敷島だった。
因みにシンディは、頑丈な鉄扉に閉じられている研究室の椅子に座って“眠って”いる。
「このリモコンのスイッチを入れた人間の命令を聞くように設定されておりますので、くれぐれも紛失することのないようにと……」
「七海、お前が持ってればいいだろ?これから俺はテレビ局に行かなきゃいけないんだ」
「申し訳ありませんが、私も太一様とこれから本部を出ないといけないのです」
「兄ちゃんなら、無くしそうだYo〜?」
リンがイタズラっぽく言った。
「うるさい。そこまで言うなら、持っててやるよ」
敷島はスーツのポケットの中に入れた。
「それじゃ、さっさと行くぞ。今日はNHKで収録だ」
「じゃあ、渋谷だね」
「ボーカロイドに1番理解のあるテレビ局だから、失礼の無いようにな」
「はーい!」
「分かりました」
因みに1番ボーカロイドに理解の無い(とされる)テレビ局は【お察しください】。
[同日11:30.渋谷にあるNHK局内の男子トイレ 敷島孝夫]
「オーマイガー!神は我を見捨てたもうた!!」
頭を抱え、大絶叫を上げる敷島。
すると、敷島の閉じ籠っている個室の上から、トイレットペーパーが投げ込まれた。
「お客さん、紙が無かったかい?取りあえず、それ使ってくんな」
トイレ掃除のオジさんの声が外から聞こえた。
「紙が無いんじゃない!神に見放されたんだ!」
「はあ???」
[同日同時刻 NHK局内、関係者用廊下 ???]
何故か廊下を小走りに走る宅配ピザの店員。
手には配達用のピザの箱を抱えている。
しかしその中に入っているのはピザではなかった。
店員らしき男は、左耳に付けたインカムでどこかと連絡していた。
「会長、例のロボットの起動リモコン、無事に手に入りました」
{「ご苦労さん。すぐにそれでシンディを起動させて、こちらに連れて来るんだ」}
「了解です、会長」
何と、男は宅配ピザの配達員に扮したテロ組織のスパイだった!?
[同日12:00.財団本部ビル、防災センター ???]
「こんにちはー。ケンショー工務店です。内装工事に入ります」
「は?ケンショー工務店さん?」
防災センターの受付にやってきた、いかにも建設作業員風の男が3人。
受付に座っていた警備員が、予定外の作業に首を傾げた。
「うち、事前の作業届が無いと作業できないんですけど……」
「あ、作業届の控えならあります」
リーダーらしき男が1枚の書類を渡した。
「実は財団さんから急に作業を頼まれましてね、ビルの管理会社さんには届出を出したんですが、まだこちらに承認の通達が来てないかもですねー」
「うーむ……。確かに、管理会社の担当者の印鑑はありますね……」
「でしょ?でしょ?」
「一応、こちらの控えをコピーさせて頂きます」
「どうぞどうぞ」
偽造作業届にまんまと騙された警備員。
入館簿にも適当な偽名と連絡先を書いた作業員風の男3人は、こうして本部に入り込んだ。
※いやー、書類が偽物かどうかまで完全に見極めはできないからねー。精巧に作られて、尚且つ巧妙な芝居されたらお手上げっスよ。(by本業が防災センター警備員の作者)
[同日12:15.財団本部13階東部B地区1305部屋 AR団のエージェント3人]
「暗証番号入力式だぞ?」
「大丈夫っス。前、ここへの出入り業者の仕事してたもんで」
「さすがだな」
というわけで暗証番号式ロックを易々と解除した3人。
椅子の上には、電源の切られているシンディが眠っていた。
「このリモコンを押せば、勝手に起動して俺達の言うことを聞く設定らしいっス」
「わざわざダクト工事にかこつけて、そこで奴らの会話を盗聴しただけのことはあるな」
リモコンを押すと、機械の唸り声が聞こえた。
そして、シンディが目を開ける。
その目が3人に向けられた。
「お、おい。俺はお前のスイッチを入れた者だぞ。言う事聞け」
「……で、何をすればいいの?」
シンディが椅子から立ち上がって男達を見据えた。
「お、俺達と一緒に来い」
「分かったわ」
「おお!」
「ちゃんと言う事聞くぞ!」
「よし!さっさとこんなビル、おさらばだ!」
男達はシンディを連れ出した。
[同日同時刻 NHK局内の男子トイレ 敷島孝夫&鏡音リン・レン]
「オーマイガッ!オーマイガー!」
「プロデューサー!どうしました!?もう収録終わりましたよ!何があったんですか!?」
個室の中で絶叫を上げる敷島。
その外でレンがドアを何度もノックして呼び掛けた。
「うぇぇぇん!兄ちゃんが……プロデューサーが壊れちゃったYo〜!!」
トイレの外ではリンが泣きじゃくっていた。
「誰か兄ちゃん修理して〜!」
「プロデューサー!しっかりしてください!」
[同日13:00.東京都新宿区内 明治通り AR団エージェント3名&シンディ]
スモークの張ったミニバンで明治通りの内回り線を走る件の男3名。
「会長、予定通り、シンディを連れ出しました」
{「ご苦労さん。あとは奴らにバレないよう、アジトまで連れてきてくれ」}
「了解っス。会長」
「いやー、しかしここまで行くとは思わなかったなー」
「あのボーカロイド・プロデューサーから、リモコンキーをパクる時は冷や冷やしたよ」
「…………」
左右の口角を上に向けているシンディ。
このミニバンはハイブリットカーだった。
「ロボットがお嫌いなのに、車は随分と最新式なようね」
シンディが口を開いた。
「あー?そりゃ、車はロボットでないもんよー」
「俺達は環境保護団体でもあるんだぜ?電気をバカスカ食うロボットより、こっちのハイブリット車の方がよっぽど環境に優しいってもんよ」
「悪かったわね。電気をバカスカ食べて……」
「!」
その時、車が急に交差点を左折した。
「おい、道が違うぞ!?」
「取りあえず、明治通りをどん詰まりまで行ってだな……」
「分かってるよ!」
「分かってるんなら、お前……」
何故か車が右に左に曲がって行く。
「何やってんだ!早く明治通りに戻れよ!」
「は、ハンドルが……!ハンドルが勝手に動く……!」
「はあ!?」
「何言ってんだ、お前!?」
「ちょっ……!取りあえず止まれ!ブレーキ踏め!」
「さ、さっきから踏んでるんだが、全然減速しねぇ!どうなってんだ!?」
その時、男の1人が冷笑にも似た微笑を浮かべるシンディに気づいた。
「てめっ!何かしたのか!?」
「はあ?私は何もしてないわ。言われた通り、ここでおとなしく座ってるじゃない?何か文句あんの?」
「コイツ、いけしゃあしゃあと……!」
カーナビは、現在地として、ある有名な施設を示した。
「うわわっ!」
その時、車が急加速を始める。
「ぶ、ぶつかるー!!」
駐車場の出入口のゲートバーを破壊し、その前に立っていた警備員が慌てて回避する。
「でーっ!?」
ズガッシャーン!!
「わ、わてのキャデラックがーっ!?」
「何してまんねん!?」
たまたま駐車していた、とある有名お笑い芸人の高級車に突っ込んでやっと止まった。
[同日13:15.NHK局内の医務室 敷島孝夫&鏡音リン・レン]
「取り乱してしまいまして、すいませんでした……」
敷島は医務室スタッフに何度も頭を下げて退出した。
「んもー、兄ちゃんったら……」
「シンディのリモコン起動キーを無くしたって……そんな、簡単に……」
「さすがにこれは辞表書かないとマズいだろうな……」
その時、カメラマンやら見たことのあるリポーターが慌てて外に出て行くのを見かけた。
「あ?何だ?何の騒ぎだ?」
「ボク、見てきます」
「あ、リンも!」
ボーカロイドの双子姉弟が外に向かって走り出した。
そこで敷島は、真相の1つを知ることになる。