報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

本日も2本立て

2013-06-03 19:03:26 | 日記
 “ボーカロイドマスター”に出てくる劇中劇、ミュージカル“悪ノ娘と召使”の原作は実在する楽曲“悪ノ娘”と“悪ノ召使”である。これは小説化はもちろんのこと、実際に舞台化(東京芸術劇場で開催)されたことも先述した。
 それは派生キャラも含めてボーカロイドが総出演するのだが、あくまでボーカロイドをモチーフにしたキャラクター構成になっている。なので、名前も違う。舞台化までされたというのを聞いて、『ボーカロイド達がミュージカルに出演している』というアイディアを考えてみた。
 あくまで劇中劇なので、詳しくは【お察しください】。

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 せっかくなので、ちょっと公開を……。

「『……“緑の国”を滅ぼしなさい!緑の髪の女は全て殺してしまえ!!』」
「はい、ストップ!」
 パンパンと手を叩く演出家。
 リン演じる暴君王女リリアンヌの重要なセリフの1つである。なればこそ、その演技指導もより厳しい。
「リン!それじゃダメだ!全然、わがまま王女の悔しくも憤怒の気持ちが伝わってこないぞ!」
「……はい」
「いいか?何度も言うが、ここは物語の最重要とも言えるポイントだ!全てを出し切れ!全ての思いをぶつけるんだ!」
「……はい!」
 ストーリーで言うと中盤くらい。
 王女リリアンヌは海の向こうの“青の国”の国王、KAITO演じるカイル王との結婚が内定していた。
 いわゆる政略結婚ではあるが、リリアンヌはまんざらでもない感じで、結婚を楽しみにする表現もある。(原作者による小説では、恋愛感情があるような描写もある)
 それが、一方的に先方から破棄された。
 別に“黄色の国”の暴政に抗議して、とかそんなんじゃない。
 そういう考えに至れるのも、現代ならでは。中世ヨーロッパの時代背景をモチーフにしているので、そういう殊勝な(?)ことで政略結婚を破棄することはない。
 “黄色の国”の隣国の“緑の国”の少女(演:初音ミク)に、カイル王が一目惚れしたからである。
 それで原曲の歌詞、『嫉妬に狂った王女様♪ある日大臣を呼び出して♪静かな声で言いました♪「緑の国を滅ぼしなさい」♪』となるのである。
「よし、ではもう1度!」

「休憩は15分でーす!」
 休憩時間に入る。
 主役と準主役が出ずっぱりのようなミュージカルなので、確かに人間が演じるには厳しいかもしれない。
 膨大なセリフについては、メモリーに打ち込めば1回で記憶できる。とどのつまり、台本に書いていること自体は1回で覚えられるのだ。これは人間の役者にはできないことだ。
 だが、演出家にとっては細かい動きや言い回しなどが人間より難しいことが欠点となっているようだ。だから演出家にとっては、人間の役者もボーカロイドの役者も大して変わらないようだった。
 敷島や赤月が交替でPCを操作したり、ライブラリを調整したりして、ソフト面の調節をしている。
 リンとレンの体温は上がり、口から大きく息を吐いている。ちょうどPCが廃熱する為に、ファンを回しているようなものだ。
「大丈夫か?」
「ありがとうございます」
 敷島が氷の入った袋をリンとレンに渡す。それで体を冷やす。人造人間にとって、熱は大敵である。
「噂通り、厳しい演出家さんだな。さすが、日本で有名な劇団なだけのことはある。だけどこれが成功したら、一気に注目度がアップするぞ。何しろ、メインキャラクターの全員がボーカロイドなんて前代未聞だからな」
「はい」

「ふむ。そうか。みんな頑張っているか」
 南里は研究所で、敷島から報告を受けていた。
「台本の内容を覚えること自体は全く問題無いんですが、細かい立ち回りや台詞回しがなかなか難しいようで……」
「そうか。実に、壮大な実験じゃの」
「は?」
「“歌うアンドロイド”が更に発展して、演技までできるのか?という実験ではないかね?正に」
「あ、はあ……まあ、確かに」
「キミも知っていようが、成功すればデカいぞ!」
「分かっております」
「それと……せっかく関係者として舞台に出入りしているのだから、十分に気をつけてくれな?」
「と、言いますと?」
「ドクター・ウィリーのスパイが入り込んでいる可能性が出てきた。ロボットではないじゃろう。であれば、とっくにボーカロイド達が気づいておるじゃろうからな」
「人間ですか」
「ただ、今現在そのスパイがいるのかどうかさえも不明じゃ。なので関係者の出入りには、十分注意して欲しいのじゃ」
「分かりました」

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 因みに“悪ノ娘”の歌詞に中に、こんなのもある。
『悪の華♪可憐に咲く♪鮮やかな彩りで♪周りの哀れな雑草は♪嗚呼♪養分となり朽ちていく♪』
 一瞬、顕正会の浅井会長一族と一般会員の関係を思い浮かべたのだが。多分、元顕正会員なら何となくお分かり頂けるかと。
コメント (2)
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ぶらり一人旅

2013-06-03 15:56:24 | 日記
 久しぶりに1泊2日で一人旅に出てみた。明日は東京都北区で不発弾処理が行われるということで、その間は現場付近を通る新幹線も東京~大宮間も運休する。
 明日は大宮止まりの新幹線を体験しようという魂胆だ。
 因みに往路は、JRバス関東“あぶくま”号である。天気は晴れだし、道路も車内も空いていた。絶好のコンディションである。郡山駅には数分遅れであったが、高速バスでは定時な方であろう。
 取りあえず、今日は市内でゆっくりしていよう。

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 “ボカロマスター”より。前回の続き。

 敷島が受けた七海からの緊急の電話。それは……。
{「大変です。敷島さん。先ほどイベント制作会社から電話があって、『頼んでいたボーカロイド2人がまだ来ていないけど、どうなってるんだ』って……。確かそれ、リンちゃんとレン君が行くことになってると思うんですけど……」}
 敷島は頭を抱えた。
「も、申し訳ない。ダブルブッキングだ。リンとレンは今、別の現場に行ってて……」
{「ですよね。取りあえずリンちゃんとレン君にはそっちの仕事をしてもらってて、代わりにルカさんとミクちゃんに行ってもらいましょうか?」}
「ああ。……ああ、ダメだ!まだ、ミクの修理が終わってない!くそっ!どうすれば……」
 因みに今、敷島は財団事務所にいる。
 KAITOとMEIKOの調査が終わったので、身元引き受けに来たのだった。
「お困りのようですね。良かったら僕達が行きましょうか?」
 奥から出てきたKAITOが言った。
「えっ?」
「ちょうど今、釈放が決まったんです。南里研究所でお世話して下さるそうで、よろしくお願いします」
 MEIKOがペコリと頭を下げた。
「や、やった……!」
「では、南里研究所の敷島さん」
 財団職員がやってきた。
「あ、はい」
「あちらで書類手続きをお願いします」
「は、はい。えー……」
「あ、大丈夫ですよ。場所さえ教えて頂ければ、あとは僕達で行けますから」
「すまん。頼む」

 書類手続きは意外と面倒で、だいぶ時間を食ってしまった。
 やっと終わってタクシーに飛び乗り、現場に向かったが、渋滞に巻き込まれてしまった。
「くそっ……!何やってんだ、俺……」
 敷島は絶望に駆られ、頭を抱えた。その時、タクシーのラジオから初音ミクの歌声が聴こえてくる。
「……!?」
 ラジオで流されるほど、まだミク達はメジャーになっていない。
 それが車内のオーディオから流れてくるものだと知ったのは、曲が終わってからだった。
「ミク……」
 すると運転手がルームミラーを見て話しかけてきた。
「あ、お客さんもご存知なんですか?」
「え?ええ……」
 知ってるも何も、こちとらプロデューサーだ。
「いや、いい年してお恥ずかしいんですが、たまたまCDショップで手売りしているのに出くわしましてね、つい買っちゃいましたよ。いい歌ですよね」
 そのタクシーは個人タクシーだった。
 いくら何でも法人タクシーでは、なかなかラジオ以外のオーディオは搭載していない。
 運転手の裁量で、いくらでも車内の装備をカスタマイズできる個人タクシーならではだろう。
 確かに前、初音ミクがCDショップで手売りをするイベントをしていた。
「あ……そうですね」
 何故だか敷島は、勇気付けられた気分になった。

 現場に着いた時、既にイベントは終了していた。
「あっ!」
 会場でKAITOとMEIKOに何か言っているのは、イベントの責任者だった。
「だから、まあ……」
「すいません!」
「ん?」
「南里研究所の者です!この度は、大変ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした!全部、私の責任で……!」
 すると責任者は笑みを浮かべた。
「いやー、良かったよ。このコ達、凄いねぇ。歌もダンスも1度しか教えられなかったのに、すぐこなせちゃって……。いやいや、さすがボーカロイドだねぇ。ま、だからって遅刻は困るけど、またよろしく頼みますよ。今度は時間厳守でね」
 責任者はそう言って立ち去った。
「……というわけで、異常無く終了しましたよ、敷島さん」
 KAITOは片目を瞑った。
「そうか……。そうだったのか……。2人とも」
「はい?」
「ありがとう!本当に助かった!」
 するとMEIKOは、
「これくらいボーカロイドとして当然ですよ。これからお世話になるんですから。今後ともプロデュース、お願いしますね」
 と、応えた。
「そうだな……」

 翌日、敷島は研究所の事務室にいた。
 相変わらずホワイトボードの予定表は、空欄だらけである。
「たかおさん、お茶入りました」
 ミクがお茶を持ってくる。
「おっ、ありがとう。……あ、いや、その前に……」
「はい?」
 敷島は立ち上がった。そして、ミクに深く頭を下げる。
「無茶なことさせてしまって、すまなかった!」
 逆にミクが困惑する。
「い、いいえ!いいんです。そんな……」
「兄ちゃん、さっき南里博士に怒られてたもんね~」
 リンがいたずらっぽく言った。
「『もっとマシな売り込みせんかい!』って」
「そ、そうだな……」
「新参者の僕が言うのも何ですが……」
 KAITOが遠慮がちに言い始めた。
「僕達は歌を歌うだけではありません。それぞれに特徴がありますので、それをどんどん活用してください」
「そうだな……」
 敷島は小さく頷いた。
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