報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

地下鉄転落に注意

2013-06-09 19:38:11 | 日記
線路に飛び降り、頭の上を電車が…男性けが 大阪市営地下鉄(産経新聞) - goo ニュース

 実は大阪市営地下鉄中央線は、第3軌条方式を採用しているはずだ。それは何かというと、本来電車が走るための電気を頭上に通した電線(架線)ではなく、レールの横にもう1本のレールを敷き、そこに電気を流してそれで走る方式のことである。こうすることでトンネル断面を小さくでき、その分建設コストを安くできるメリットがある。
 東京では銀座線と丸ノ内線が該当する。この2つの路線が他の架線方式の路線と違って駅のホームの天井が低いのは、この為である。実際に丸ノ内線の場合、後楽園駅などの地上駅で電車の頭上がすっきりしているのが分かる。
 もし仮にそういった地下鉄で転落した場合、それが池袋駅のような島式ホームの場合は壁際に近づかないように。電気が流れているので感電する恐れがある。では、後楽園駅のような対向式ホームはどうか?そう。上り線と下り線の間に、電気が通っている。対向式ホームで転落した場合、不用意に反対側の線路に逃げないように。感電の恐れあり、却って命に関わる。
 なのでケガはしたけども、電車が来た時に線路の間にうつ伏せになるというのは、ある意味で正解なのかもしれない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 “ボーカロイドマスター”より、前回の続き。

『鏡音レン、研究所事務員を刺殺未遂!』『事務員、意識不明の重体』『一体何が?ミュージカル成功の陰で……』
 上記は財団の機関紙で緊急発行された号外である。
「いつの間にうちの機関紙は、スポーツ新聞になったのじゃ……」
 南里は号外を手に呆れていた。
「ドクター南里。全員集合・しました」
「よし」
 南里は研究所内の会議室に集まったレン以外のボーカロイド達と、平賀、赤月の元へ向かった。
 皆、一様に暗く沈んでいた。
 リンの姿だけ無かったが、泣きじゃくっていたのを七海が連れ出したという。
「あー、皆も知っていようが、鏡音レンが昨晩未明、敷島君を刺殺……しようとした。動機は不明じゃが、メモリーを見るにウィルス感染の疑いが濃厚になっている。敷島君は意思不明の重体ではあるが、幸い命の危険は脱したそうじゃ」
 レンは財団事務所の一室に拘束してある。実際は監禁である。
「わしもまもなく緊急理事会に出席するが、大半の理事がレンの廃棄処分の意見に傾いているものと思ってくれ。いかにウィルスに感染していたとはいえ、明確な殺意を持って人間を襲うなど言語道断じゃ。わしはなるべく弁護側に回るつもりではあるが、ウィルス感染に気づけなかった責任を併せて問われるじゃろう。ややもすると、理事を退任するやもしれん。それは別にどうでもいいのじゃが……」

「ではな、行ってくるぞ」
 南里は平賀の車に乗り込んだ。残された赤月は、気丈に振る舞っていた。
「皆は研究所で待機してて」
「せっかく、軌道に乗ったと思ったのに……」
 ミュージカルの大成功でボーカロイド達には、多くの仕事が舞い込んでくるはずだった。
「フォレスト博士でしょうか?こんなことしてくるの……」
 ルカが赤月に話し掛けた。
「恐らくね。ミュージカル自体はあれから何もしてこなかったけど、まさかこんな形でやってくるとはね……。つくづく汚い爺さんだわ」
 赤月は最後には吐き捨てるように言った。

「MEIKO」
 エミリーは険しい顔をして、MEIKOを呼び止めた。
「なに?」
「ちょっと・話が・ある」

 理事会は案の定、紛糾したようだ。幸いなのは、意見が五分五分だったこと。但し、南里の責任者として管理不足だった部分への非難は避けられなかった。
「お願い!レンに合わせて!!」
「駄目ダ。理事会ヨリ、一切ノ面会ガ禁止サレテイル」
 リンが居たたまれなくなって財団事務所までやってきたが、警備ロボットに阻止された。敷島が最初のフィールドテストの際、上手く忍び込んでミクを連れ去ったことから、より警備が厳しくなっていた。
「鏡音レンハ、殺人未遂ノ廉デ、マモナク処分サレルダロウ」
「だからそれは何かの間違いなんだってば!」
「……リンちゃん、行きましょう」
 七海はリンを引っ張って行った。警備ロボットが、レーザーガンを向けていたからだ。

 それから数日後……。
「アッ、コレハコレハ……」
 警備ロボットが後ずさりするほどの相手……。それは、エミリーであった。
「鏡音レンと・話がある。お前達は・席を外して」
「シ、シカシ……」
「ノー・プロブレム。ドクター南里には・許可を・取ってある」
「ハハッ……」
 例えレンが暴れ出してもエミリーなら簡単に捻じ伏せられるだろうし、逃亡しても簡単に捕まえられる。これが、エミリーが特権階級にいる理由の1つである。
 ドアは二重になっていて、さすがに奥のドアは開けられなかった。但し、エミリーはそのドアの開錠の仕方を知っている。何しろエミリーは財団の中でも、特別なロボットなのだ。
「鏡音レン・聞こえるか?」
「……エミリー姉ちゃん」
「話がある」
「ボクを……処分しにきたの?」
「ノー。理事会で・話が・まとまらない」
「どうして?ボクはプロデューサーを殺そうとしたんだよ?一言、処分って言えば決まることなのに……。こんな殺人ロボット、とっとと処分した方がいいよ」
「……人間の都合は・分からない。しかし・お前は・そう簡単に・処分されるような・立場でもない。ただ・私は・お前の・味方をする」
「どういうこと?」
「お前は・騙されていた。MEIKOに」
「えっ?」
「敷島さんは・鏡音リンを・処分しようとは・していない」
「嘘だ!だって……」
「敷島さんは・リンの体が・耐用年数が来る前に・交換しようと・しただけだ」
「耐用年数?」
「私達は・機械の体だ。部品だけでなく・体そのものにも・耐用期間がある。鏡音レンは・度重なる・激しい芝居に・体の疲労が・思いの外大きかった。耐用年数満了前に・体を交換する・必要があった。それだけだ」
 体を交換するといっても、全く違う姿形になるわけではない。それにメモリーなどは他の媒体にコピーしておき、それを新しい体に移し変えれば、そのままの状態というわけだ。
「MEIKOは・お前を・唆した」
「ど、どうしてそんなこと……」
「それは・MEIKOが・ウィルスに・冒されていたからだ」
「そ、そんな……」
「MEIKO自身・自分で・自覚できないものだった。だから・MEIKOにも・悪気はない」
「ええっ!?」
「MEIKOは・隣の部屋にいる。『殺人教唆の罪』で」
「……ハハッ!ハハハハハハハッ!!」
「レン。このことは・理事会に・通達済みだ」
「いくらボクが騙されていたって、人間なら無罪になるのか?ならないでしょ?結局同じことだよ」
「あとは・敷島さんが・意識を取り戻して・レンの無罪を……」
「それはないよ。プロデューサーは絶対に怒ってる。ボクを許すことはないさ」

 その頃、理事会では……。
「いくらウィリアム・フォレスト容疑者のウィルスのせいだからといって、やっぱりマズいだろ!」
「しかし、ボーカロイド1体造るのにどれくらいの金が掛かると思ってるんだ!むしろこっちは被害者だぞ!」
「いいや!どんな理由があるにせよ、やはり人間1人の命を奪うことは許されない!」
「……おーい、田中教授。うちの敷島君、死んでおらんぞ。勝手に殺すでない」
「人間の……我が国の刑法では、殺人未遂罪でも死刑が適用される!」
「あのですな、それは全く反省が見られない時とか、最悪な場合じゃろう?うちのレンとMEIKOはむしろ被害者ですじゃ。敷島君には意識が戻ったら、私から説明します。彼は多少抜けている所はあるが、話せば分かる男です。それまで、処分は保留にしませんかの?」
「確かに、被害者は南里さん所の事務員が1人だ。全くの第3者がやられたわけじゃない」
「それに、このまま処分すれば、それこそフォレスト容疑者の思う壺かもしれない」
「全く。南里さんには負けますなぁ……」
「皆さん、申し訳ない。しかし何はともあれ、私の管理体制の不備が招いたのもまた事実。立場上の責任は取るつもりです。理事を辞める覚悟であります」
「いやいやいや!南里さんに理事を辞められたら困る!」
「そうそう。これまでの功績を考えますと……」
「では、こうしましょう。リンとMEIKOについては徹底的なウィルス除去を行った後、しばらくの間、謹慎処分にするということで」
 これで理事会は決着した。
 もっとも、MEIKO達がウィリーの元から逃れた後で徹底的なウィルス検査をしなかった財団にも不備がある。そこを突かれたくなかったのかしもれない。
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする