ついにソッカー動き出す!大宮の町は大丈夫なのか!?旧中山道スクランブル交差点の混雑は解消されるのか(←関係無い!)!?自分の車でなくても、スクランブル交差点に閉じ込められた時の気まずさは【お察しください】。
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“新人魔王の奮闘記”より。まだ、続けられる……なぁ。
元は先王ガリバルディ3世がふんぞり返っていたであろう玉座。
しかし今そこに座っているのは、隣国より嫁いできたはずの王子であった。
難しい顔をしているが、そこに座っている金色短髪の男は、間違いなくスティーブン本人であった。
本当なら同窓会ものであるが、しかしここは立場を弁えなければならない。
「スティーブン殿下におかれましては【中略】、僭越至極に存じます。……」
春明は右手を胸に当て、深くお辞儀をして口上を述べた。
「此度はルーシー・ブラッドプール1世陛下の名代として親書を預かり、まかり越して参りました」
スティーブンは宰相シドに受け取るように指示した。
スティーブンは相変わらずニコリともしない。
パーティを組んでいた頃は、ほんわかした人物だった。
それが王族に戻ってから冷たくなった。そんな印象だった。
だが、春明自身も政治に携わるようになってから、その理由が痛いほどに分かっている。もし変わったのが外面だけであるなら、もしかしてこの後……。
「ルーシー殿の御厚意、真に痛み入るものである。しかし我が国は政権交代直後で、安定期に入っておらぬ。仮に支援を求めることになる時は、具体性を持って支援を願うことになると思うので、今ここではっきりとした返事をすることはできない。名代のアベ首相におかれては、返書をしたためるまで、別室にして休憩なされよ」
「ははっ……」
昔は対等の立場だったのだが、たった数年で変わってしまった。
そしてそれは、もちろん役職という外面だけである。
春明が豪華な調度品が並んだ応接室で休んでいると、スティーブンが入って来た。
「やあ、さっきはゴメン」
「いやいや、分かってるよ」
スティーブンは白い歯を輝かせていた。そのあまりの豹変ぶりに唖然とするサイラス。
「慇懃な態度を取らないと、なかなかこっちの国の連中は言うこと聞いてくれなくてさ。悪かったね」
「いや。多分そんなことだろうと思ったよ。うちも似たようなものだから」
「しかし珍しいね。ダークエルフの護衛を連れてるなんて。やっぱり“魔の森事件”は本当だったんだ」
「まあね。こっちも前政権を駆逐するのは大変だったよ。そっちも、ガリバルディ王とゼルダ王女、その他の政権幹部を全員死刑にしたんでしょ?」
「直接俺が討ったのはガリバルディ王だな。救い難い悪辣王だったからね。その他の近臣達も一部を除いて、公開処刑にするしか無かったな」
「その度にスティーブンの支持率が上がったんだから、随分ボロいよな?え?」
「それだけ前政権がメチャクチャな政治をしていたってことだよ」
スティーブンは紅茶を口にしながら言った。
「いつ決断した?」
「結納の時。明らかに城下の様子がおかしい。貧しい国だと思っていたけど、王城はご覧の通り、国の財政に似合わぬ豪華絢爛ぶりだ。案の定、国王と王女がやりたい放題で、国民から搾取していた」
「結婚したらこの国の実権も少しは手に入るだろうから、その時に是正するという手は?」
「“マスオさん”状態でそれができると思う?『傀儡王子』になるのが見え見えだった。だから決行した」
「いい判断だ。もう1度言うけど、支援については本当に遠慮しなくていいんだよ?いざとなりゃ、ルーシーなだめて王室予算回すから」
「いや、何とかやっていける。逆に国民に対して減税しても大丈夫なくらいだ。それだけの重税を、あいつらは課していたんだ。俺がやらなくても、いずれ国民達が立ち上がっていただろう」
「そのレジスタンスに協力してたこともあったな、昔?」
「ああ。懐かしいな。ジョージのヤツ、バズーカぶっ放してたよな?」
「いや、確かAK-47程度だったと思うよ、あの時は」
「そうだっけ?」
「だって今俺が持ってるAK-47、ジョージからもらったヤツだし」
「そうだったか。さすがは武器商人の息子。今何やってる?」
「人間界に戻って、今頃はソマリア辺りで暴れ回ってるんじゃない?」
「あれ?この前、俺が聞いた時はスーダンだって聞いたけど?」
「南スーダンが独立したんで、次の紛争地域に向かったらしいぞ。それがソマリア」
「あいつはこの世界より、人間界の方が向いてるのか」
「だろうね。剣と魔法のファンタジーの世界で、ランチャーぶっ放されちゃたまらんよ」
「ははははは!」
と、そこへ、衛兵が慌てて入ってきた。
「失礼します!殿下!」
「バカ者!国賓と会談中であるぞ!ノックくらいせんか!」
スティーブンは衛兵を叱り付けた。
「も、申し訳ありません!」
衛兵は慌てて敬礼した。
「まあまあ、殿下殿。(どうせただの昔話なんだし……)で、何かあったの?」
「大変です!ゼルダ王女が脱走しました!!」
「え!?処刑してなかったの!?」
「バカ者!国賓の前でそんな重大なことを報告するな!!」
「俺達はあまり長居しない方がいいんじゃない?」
春明はスティーブンに耳打ちした。
「そういうわけにはいかない。せっかく遠くから来てくれたんだ。これじゃうちが国賓を追い返したことになってしまう」
「いや、だからそこはさ……」
「それに今、城下全域に戒厳令を敷いた。それと国中に触れを出している。すぐに捕まるだろうから、それまでゆっくりしててほしい」
「何だって脱走できたんだ?てか、何で処刑しなかったんだ?」
内政干渉になるからあまり口出ししたくなかったのだが、春明には納得できなかった。
「ゼルダ王女も被害者だからだよ」
「えっ?」
「あんな暴君国王の下で育って、国民思いの王女様になれると思うかい?」
「一般民衆ならまだしも、王族は違うだろ?」
そこは春明とスティーブンで意見が食い違った。
「禍根を残さぬためにも、俺なら全員死刑にするけどな」
「ああ。アベ、お前の言うことは正しい。でも、王女には生き残ることで、贖罪してもらいたいと思っているんだ。彼女は被害者でもあり、加害者なのだから……」
「ダメだったじゃないか。脱走したってことは、全然反省していないってことだ」
「そうだな。とにかく、場合によっては死刑も止むを得ないだろう」
(そういうところ抜けているのは、スティーブンは昔から変わらんな)
と、春明は思った。
(暴君親父の下で生まれ育った箱入り王女が、今更反省するわけねーだろが!)
心の中でそう吐き捨てた。
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“新人魔王の奮闘記”より。まだ、続けられる……なぁ。
元は先王ガリバルディ3世がふんぞり返っていたであろう玉座。
しかし今そこに座っているのは、隣国より嫁いできたはずの王子であった。
難しい顔をしているが、そこに座っている金色短髪の男は、間違いなくスティーブン本人であった。
本当なら同窓会ものであるが、しかしここは立場を弁えなければならない。
「スティーブン殿下におかれましては【中略】、僭越至極に存じます。……」
春明は右手を胸に当て、深くお辞儀をして口上を述べた。
「此度はルーシー・ブラッドプール1世陛下の名代として親書を預かり、まかり越して参りました」
スティーブンは宰相シドに受け取るように指示した。
スティーブンは相変わらずニコリともしない。
パーティを組んでいた頃は、ほんわかした人物だった。
それが王族に戻ってから冷たくなった。そんな印象だった。
だが、春明自身も政治に携わるようになってから、その理由が痛いほどに分かっている。もし変わったのが外面だけであるなら、もしかしてこの後……。
「ルーシー殿の御厚意、真に痛み入るものである。しかし我が国は政権交代直後で、安定期に入っておらぬ。仮に支援を求めることになる時は、具体性を持って支援を願うことになると思うので、今ここではっきりとした返事をすることはできない。名代のアベ首相におかれては、返書をしたためるまで、別室にして休憩なされよ」
「ははっ……」
昔は対等の立場だったのだが、たった数年で変わってしまった。
そしてそれは、もちろん役職という外面だけである。
春明が豪華な調度品が並んだ応接室で休んでいると、スティーブンが入って来た。
「やあ、さっきはゴメン」
「いやいや、分かってるよ」
スティーブンは白い歯を輝かせていた。そのあまりの豹変ぶりに唖然とするサイラス。
「慇懃な態度を取らないと、なかなかこっちの国の連中は言うこと聞いてくれなくてさ。悪かったね」
「いや。多分そんなことだろうと思ったよ。うちも似たようなものだから」
「しかし珍しいね。ダークエルフの護衛を連れてるなんて。やっぱり“魔の森事件”は本当だったんだ」
「まあね。こっちも前政権を駆逐するのは大変だったよ。そっちも、ガリバルディ王とゼルダ王女、その他の政権幹部を全員死刑にしたんでしょ?」
「直接俺が討ったのはガリバルディ王だな。救い難い悪辣王だったからね。その他の近臣達も一部を除いて、公開処刑にするしか無かったな」
「その度にスティーブンの支持率が上がったんだから、随分ボロいよな?え?」
「それだけ前政権がメチャクチャな政治をしていたってことだよ」
スティーブンは紅茶を口にしながら言った。
「いつ決断した?」
「結納の時。明らかに城下の様子がおかしい。貧しい国だと思っていたけど、王城はご覧の通り、国の財政に似合わぬ豪華絢爛ぶりだ。案の定、国王と王女がやりたい放題で、国民から搾取していた」
「結婚したらこの国の実権も少しは手に入るだろうから、その時に是正するという手は?」
「“マスオさん”状態でそれができると思う?『傀儡王子』になるのが見え見えだった。だから決行した」
「いい判断だ。もう1度言うけど、支援については本当に遠慮しなくていいんだよ?いざとなりゃ、ルーシーなだめて王室予算回すから」
「いや、何とかやっていける。逆に国民に対して減税しても大丈夫なくらいだ。それだけの重税を、あいつらは課していたんだ。俺がやらなくても、いずれ国民達が立ち上がっていただろう」
「そのレジスタンスに協力してたこともあったな、昔?」
「ああ。懐かしいな。ジョージのヤツ、バズーカぶっ放してたよな?」
「いや、確かAK-47程度だったと思うよ、あの時は」
「そうだっけ?」
「だって今俺が持ってるAK-47、ジョージからもらったヤツだし」
「そうだったか。さすがは武器商人の息子。今何やってる?」
「人間界に戻って、今頃はソマリア辺りで暴れ回ってるんじゃない?」
「あれ?この前、俺が聞いた時はスーダンだって聞いたけど?」
「南スーダンが独立したんで、次の紛争地域に向かったらしいぞ。それがソマリア」
「あいつはこの世界より、人間界の方が向いてるのか」
「だろうね。剣と魔法のファンタジーの世界で、ランチャーぶっ放されちゃたまらんよ」
「ははははは!」
と、そこへ、衛兵が慌てて入ってきた。
「失礼します!殿下!」
「バカ者!国賓と会談中であるぞ!ノックくらいせんか!」
スティーブンは衛兵を叱り付けた。
「も、申し訳ありません!」
衛兵は慌てて敬礼した。
「まあまあ、殿下殿。(どうせただの昔話なんだし……)で、何かあったの?」
「大変です!ゼルダ王女が脱走しました!!」
「え!?処刑してなかったの!?」
「バカ者!国賓の前でそんな重大なことを報告するな!!」
「俺達はあまり長居しない方がいいんじゃない?」
春明はスティーブンに耳打ちした。
「そういうわけにはいかない。せっかく遠くから来てくれたんだ。これじゃうちが国賓を追い返したことになってしまう」
「いや、だからそこはさ……」
「それに今、城下全域に戒厳令を敷いた。それと国中に触れを出している。すぐに捕まるだろうから、それまでゆっくりしててほしい」
「何だって脱走できたんだ?てか、何で処刑しなかったんだ?」
内政干渉になるからあまり口出ししたくなかったのだが、春明には納得できなかった。
「ゼルダ王女も被害者だからだよ」
「えっ?」
「あんな暴君国王の下で育って、国民思いの王女様になれると思うかい?」
「一般民衆ならまだしも、王族は違うだろ?」
そこは春明とスティーブンで意見が食い違った。
「禍根を残さぬためにも、俺なら全員死刑にするけどな」
「ああ。アベ、お前の言うことは正しい。でも、王女には生き残ることで、贖罪してもらいたいと思っているんだ。彼女は被害者でもあり、加害者なのだから……」
「ダメだったじゃないか。脱走したってことは、全然反省していないってことだ」
「そうだな。とにかく、場合によっては死刑も止むを得ないだろう」
(そういうところ抜けているのは、スティーブンは昔から変わらんな)
と、春明は思った。
(暴君親父の下で生まれ育った箱入り王女が、今更反省するわけねーだろが!)
心の中でそう吐き捨てた。