報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

闘病のことについて書いていないが、それはネタが無いほど調子がいいということ。

2013-06-19 19:36:24 | 日記
 “ボーカロイドマスター”より。

 鏡音レンの謹慎が解除された。レンの勇敢な行動が、ついに理事長を動かしたのである。それに……反対派の殆どが爆弾テロによって【Nice boat.】となったのも大きい。
 早速新しいミュージカル“白ノ娘と緑ノ娘”の舞台稽古を行う。
 予想通り、今度の主役と準主役は弱音ハクと初音ミクとなった。今度のミュージカルは続編というよりは、前作の視点を変えたものとなっている。これもまた原作になるべく忠実になるようにとの配慮から。
「第2弾目でもお前の役回りは重要だからな、頑張れよ」
 敷島はレンの肩をポンと叩いた。
「はい!」
 あくまでも視点を変えただけで、ストーリー性自体は変わっていない。なので、レン演じるアレン・アヴァドニアがミク演じるミカエラを【禁則事項です】というのも変わっていない。
(さすがに同じ手は2度と食わないぞ。ウィリーのクソジジィ……)
 敷島は稽古の様子を客席から見ながらそう思った。
 ミュージカルでは一応、前作を見ていない観客のために多少それと被る描写がある。つまり前作の一部描写が今作でも再現されている箇所があるのだ。
「『どうして……こんなことに!』」
 物語の後半付近。レン演じるアレンが、死に行くミカエラを抱きかかえて号泣するシーン。
「『ミカエラ、僕は君のことが好きだ!……どうしようもなく好きになってしまったんだ!』」
「はい、ストップ!!」
 演出家がパンパンと手を叩く。ウィリーの手の者に拉致・監禁されていた演出家が、また今作も手掛ける。
「レン、今どこを見ていた!?」
「えっ?」
「どうしようもなく好きになってしまった子が、自分の手の中で死のうとしているんだ!顔も見ずに泣き出すヤツがいるか!」
(あれ?台本に書いてあったっけ、それ?)
 敷島はパソコンのキーボードを叩いて、すぐに調整する。
(やれやれ、こっちの作業も大変だ)
 ちらっとステージの前を見ると、弱音ハクが所属する研究所のプロデューサーがやはりパソコン片手に調整していた。
 今回は主要人物が同じ研究所一固まりというわけではないのも特徴だ。
 しかし、これとて原作小説で多くの読者が泣いたそうだから、成功すればまた大きな反響を得られるのは確かだった。

「休憩は15分でーす!」
 休憩時間に入る。
「はー、こっちも大変だ~」
 敷島が大きく伸びをして、椅子にもたれかかった。その時、背後から、
「なにジジ臭いこと言ってんのよ」
 と、声を掛ける者がいた。
「あっ、MEIKO」
「ほら、飲み物」
「おっ、ありがとう。MEIKOはステージにいなくていいのか?」
「だって今回、私ほとんど出番ないもの」
「ははっ、そうか」
「それより、ミクを励ましてあげなよ。私やレンはいいからさ」
「えっ?」
「準主役で、今うちの研究所で1番頑張ってるのはむしろミクなんだからね」
「そ、そうか。そうだな」
 敷島は慌てた様子で、ステージに向かった。
(フン。鈍感プロデューサーが)
 当のミクはレンを励ましていた。
コメント (2)
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今日は雨?

2013-06-19 15:01:58 | 日記
 “ボーカロイドマスター”より。少し時系列を戻す。“新人魔王の奮闘記”と世界観が同じだというのがバレる箇所。

〔「夕焼けを2人で♪分け合おう♪私は昼♪僕は夜♪手をつなげばオレンジの空♪」〕
 ミュージカル東京公演初日。控え室のモニタで、客席を見る。
「ぞろぞろ入って来たな……」
 敷島が呟く。すると、七海が急いで入って来た。
「開場しました!お客さん、いっぱいですよ!」
「よし!皆、今まで厳しい“稽古”よく頑張った。今日から思う存分、その力を発揮するのじゃ!」
「はい!」

「るりらるりらと響く唄♪時をいろどる哀れな唄よ♪」
 敷島は舞台袖でボーカロイド達を見守っていた。だいたい今、中盤くらい。レン演じるアレン・アヴァドニアが、ミク演じるミカエラと出会う所。
「『あ、あの……』」
「『あら、何かご用かしら?可愛い異国の方』」
「ん?」
 敷島はふと客席が気になった。
(……気のせいか?)
「『“とてもすごいネギ”よ!これは!』」
「『……このネギ、どこら辺がすごいのですか?』」
「『とにかくすごいのよ!ひたすらに!』」
(何か変だな……)
 劇は何の問題も無く進んでいる。
 気になるのは舞台ではなく、客席の方……。

 その頃、当の客席では……。
(霊力の強い人間がいるな)
 安倍春明は、舞台袖の分厚いカーテンに隠れた所から強い霊力を感じ取った。
 恐らく春明と大して変わらぬだろう。
(役者としているのかな?)
 春明はオペラグラスを使った。
「あっ、春明。用意がいい。私に貸して」
「えっ?さっき売店で何か買ってなかった?」
「うん」
 ルーシーが出したのはラージサイズのポップコーン。
「……聞くんじゃなかった」
 春明は溜め息をついた。

〔「『あら、おやつの時間だわ』」「『執行!』」ズシャッ!〕
「うわ……」
 ギロチンが下ろされた。本当に首が落ちるシーンが見ものだというが、どういう仕掛けなのだろうか。
「グスッ……」
 ルーシーはハンカチ片手に涙ぐんでいた。

 そして、役者控え室……。
(結局、あの強い妖力、何だったんだろうなぁ……。まさか、妖怪が鑑賞に……なわけないよな)
 敷島は考え事していた。
「お疲れさまでーす!」
 そこへレンの声がした。
「おう、お疲れ……って、コラっ!首を外したまま戻ってくるんじゃない!」
「意外とバッテリー持ちますね、これ」
 レンは喋りながら両手に自分の頭を抱えて首に嵌めた。良かった。『回してはめる』タイプじゃなくて。
「分かったから早く戻せ。いくら機械の体でも、見てて気持ちのいいもんじゃないって!」
「お疲れ様です」
 KAITOも戻って来た。
「おっ、実は何気に悪役だったKAITO。お疲れさん」
「原作小説でほとんど僕、悪役みたいな感じになってるの、どうしてですか?」
「知らんよ。原作者に聞きなよ」
「皆、戻ってきたかのー」
 南里がやってきた。
「初日の出だしは好調じゃったぞ。この調子で千秋楽まで頑張ってくれ」
「はい!」
「ところで敷島君、途中から客席の方が気になっていたようじゃが、何か気になる人物でもおったかの?」
「いや、気のせいでしょう。少なくとも、ドクター・ウィリーではないです」
「そう、かね?」
「ええ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 何か今日雨だということで傘を手にしたのだが、結局使うことはなかった。
 そういうことはよくある。そして傘を持って行かないと、雨に降られるのだ。
 なんとも、不思議な話だ。
コメント (2)
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