「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「花の香を」

2006-06-03 11:30:47 | 和歌

 鉢植えのミニバラが、小さいとはいえ一輪だけ、見事な花を咲かせた。

 一昨年の薔薇のシーズンオフに、虚庵夫人が一鉢買い求めて、丹精を籠めて来た。今年もその丹精に応えてくれた。花の美しさは、第一にその色合いにあるが、虚庵居士に言わせれば、花びらの繊細さにもある。高級品種のシカと揺るぎない端正な花は、それなりに立派であるが、その花のほんの一寸した独創的な風情の中に、虚庵居士は共感を覚える。ヒネクレ屋と言うものであろうか。このミニバラも、花びらの表情が堪らない。

 薔薇のもう一つの愉しみは、香りである。
若い頃からヘビースモーカーであった虚庵居士は、一般の紙巻タバコでは飽き足らず、パイプ煙草、ヘビーな葉巻などに凝った付が回って、臭覚がすこぶる衰えたが、バラの香りには限りない愛着がある。このミニバラの繊細な香りについて言えば、言葉の表現から判断するに、どうも虚庵夫人の方が数段の愉しみを味わっているらしい。悔しい限りだ。






             いとおしむ家内に応えてミニ薔薇の

             ただ一輪の心ばえ哉



             神漏美(かむろみ)のけはいを薔薇は花びらに
  
             湛えて咲けば朝けに拝みぬ  


  
             花の香をうるはしむかも我妹子(わぎもこ)は
  
             あな悔しくも幽(かそ) けきを聞く