「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「くちなし」

2006-06-18 00:42:53 | 和歌



 散歩していたら、かなり遠くまで香りが漂ってきて、花を見るまでもなく
「あゝ 梔子が・・・」と、知らせてくれた。

 写真の梔子は六弁の一重咲きだ。
これはやがて実を結ぶ。昔の人々はその実を、料理の色付けや漢方薬などに利用した。虚庵居士はどちらかと言うと辛口党ではあるが、淡い色付けの「きんとん」は、好物の一つだ。「うつろ庵」の梔子は八重咲きで、実を付けないが、花は八重咲きの白さに、より気品がある。


             くちなしの漂ふ香りにいずこかと
    
             路を曲がれば 群花むかえぬ



 梔子の花は、咲き始めの白さが清純無垢で何ともいえないが、あっという間もなく黄味がかってしまう。「花の命は短くて・・・」と歌人は詠ったが、梔子の清純さはたとえいっときであれ、高貴な香りと共に人を惹きつけてやまない。




    

             降る雨に濡れ初むくちなし写さむと
    
             構えるわれに傘さす妹かな



             くちなしの花も香りもいにしえの
    
             うたびと詠まぬは 「あはれ」にあらずや




 
 いにしえの "口なしのうたびと”を詠める三首  花の旅人


             実の固く口を閉ざせば梔子を
  
             詠はざりけむいにしえ人は  



             雅男の襲色目の下染は
  
             梔子の実を使ふというに  



             薫きこめる香なかりせばひそやかに 
 
             携えむかも梔子の花