散歩していたら、かなり遠くまで香りが漂ってきて、花を見るまでもなく
「あゝ 梔子が・・・」と、知らせてくれた。
写真の梔子は六弁の一重咲きだ。
これはやがて実を結ぶ。昔の人々はその実を、料理の色付けや漢方薬などに利用した。虚庵居士はどちらかと言うと辛口党ではあるが、淡い色付けの「きんとん」は、好物の一つだ。「うつろ庵」の梔子は八重咲きで、実を付けないが、花は八重咲きの白さに、より気品がある。
くちなしの漂ふ香りにいずこかと
路を曲がれば 群花むかえぬ
梔子の花は、咲き始めの白さが清純無垢で何ともいえないが、あっという間もなく黄味がかってしまう。「花の命は短くて・・・」と歌人は詠ったが、梔子の清純さはたとえいっときであれ、高貴な香りと共に人を惹きつけてやまない。
降る雨に濡れ初むくちなし写さむと
構えるわれに傘さす妹かな
くちなしの花も香りもいにしえの
うたびと詠まぬは 「あはれ」にあらずや
いにしえの "口なしのうたびと”を詠める三首 花の旅人
実の固く口を閉ざせば梔子を
詠はざりけむいにしえ人は
雅男の襲色目の下染は
梔子の実を使ふというに
薫きこめる香なかりせばひそやかに
携えむかも梔子の花