「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「桔梗草」

2006-06-10 20:15:35 | 和歌
 小さな紫色の草花が、風に揺れていた。

 草丈は二・三十センチほど、花の大きさは一センチ足らずの小ぶりで、ひと茎に二つ三つ、多いもので五つ程の花を咲かせている。草茎は直径が二ミリ程度の細さだから、いたって嫋やかで、あるか無しかの微風にすら揺らいでいる。その揺れ方もまた風情がある。





 ご主人を亡くして一人住まいだった老女が、息子さんの近くへ引越しをされて空家になった。それを見透かして居たかのように、道路端にこの草花が生えだした。移り行く人に別れを告げる積りであろうか、何時までも手を振る姿が哀れを誘った。

 花図鑑で調べたら、「桔梗草」別名を「段々桔梗」、北米から帰化した雑草だという。



            (写真の花は 実寸の五割り増し程度に拡大)



             移り行きし住み人慕ふや風にゆれて
  
             別れの手を振る桔梗草かな  



             櫛の歯の欠けるがごとく住み人の
  
             い逝き移ろふ歳月なるかも  



             人の世の移ろふさまを草花は

             我が身と見やるか風にゆれつつ