散歩していたら、かなり遠くまで香りが漂ってきて、花を見るまでもなく
「あゝ 梔子が・・・」と、知らせてくれた。
写真の梔子は六弁の一重咲きだ。
これはやがて実を結ぶ。昔の人々はその実を、料理の色付けや漢方薬などに利用した。虚庵居士はどちらかと言うと辛口党ではあるが、淡い色付けの「きんとん」は、好物の一つだ。「うつろ庵」の梔子は八重咲きで、実を付けないが、花は八重咲きの白さに、より気品がある。
くちなしの漂ふ香りにいずこかと
路を曲がれば 群花むかえぬ
梔子の花は、咲き始めの白さが清純無垢で何ともいえないが、あっという間もなく黄味がかってしまう。「花の命は短くて・・・」と歌人は詠ったが、梔子の清純さはたとえいっときであれ、高貴な香りと共に人を惹きつけてやまない。
降る雨に濡れ初むくちなし写さむと
構えるわれに傘さす妹かな
くちなしの花も香りもいにしえの
うたびと詠まぬは 「あはれ」にあらずや
いにしえの "口なしのうたびと”を詠める三首 花の旅人
実の固く口を閉ざせば梔子を
詠はざりけむいにしえ人は
雅男の襲色目の下染は
梔子の実を使ふというに
薫きこめる香なかりせばひそやかに
携えむかも梔子の花
俳句のほうでは正岡子規や、堀 麦水などの句があるというのに。
月の夜を経し山梔子は月色に 永井龍男
くちなしの花一色に埋もれたし 竹田小時
つよい香が、雨の中を漂っています。美しい画像ですね。
花くちなしに実がつかないのも悲しいですね。雨の湿りの中では一段と薫立って。
あとの三首、素敵です。まるで王朝の貴公子さながら。
いまでは指輪もま~わるほど・・・♪
~くちなしの白い花お前のような花だ~ぁ~った
どんな白い花なのかと思ってました。
解って良かったです
私にはとても縁起の良い花なんですよ~
重ねての訪ひと、「素敵」とのお言葉、うれしく存じます。
いにしえの人々の感覚としては、十分理解できます。
ところで、うたに詠まなかったそのあたりの記述、出典をお教え願いたく・・・。
八重咲きの「花くちなし」も、きっと「大好き」と
気に入ってくれると思います
すみません。
古歌にも梔子をうたったものはあります。
ただし、花と香りは詠っていないらしいですね。やっぱり、「くちなし」だからでしょうね。
http://blog.drecom.jp/yabukouji/archive/149
山吹の花色衣主やたれ問へど答へずくちなしにして(古今集、素性法師)
思ふとも恋ふともいはじ梔子の色に衣を染めてこそきめ(続古今集、読み人知らず)
来てみればくちなし色に咲きにけりいはでの里の山吹の花(夫木抄、詠み人知らず)
“しかるに、数少ない古歌に歌われている殆どの動機は、第四項の染められた黄色の支子色で、名前のパロディにからむものも僅かで、第一、二項の花の色と香りに至っては全く見当たらないのである。 ”
「みみなしの 山のくちなし えてしかな
おもひの色の 下ぞめにせん」 古今集 よみびとしらず
「みず垣に くちなし染めの 衣きて
紅葉にまじる 人やはふりて」 新勅選集 能因
http://inranskey.blog3.fc2.com/blog-entry-16.html
です。