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最速のインデアン

 1962年。前年にケネディが大統領に就任。そして米国がベトナムに介入し始めた頃の実話に基づいた映画「最速のインディアン」を観てきた。

 インディアンは米国の有名なオートバイメーカー。1920年製のインデアンをこつこつと40年間にわたり改造してきたニュージーランドの63才のバート・マンローは、海岸でのスピード記録に挑戦していた。

 彼はそのバイクの最高速度をどうしても知りたくなり、ニュージーランドの片田舎からアメリカ、ユタ州のボンヌビルのスピードウイークを目指して出発することになる。

 ボンヌビルはソルトレイクから80号線を西に走りネバダ州との州境にある、干上がった湖で、厚さ2メートルにもなる塩でまっ平らになっている。ここでは地上を走る乗り物のスピード記録への挑戦が繰り返されているのである。

 年金暮らしで金の無い、心臓病と前立腺肥大という健康上の問題も抱えているマンローが、どうしても挑戦したいと旅に出るわけである。結局、色々な障害を周りの人の善意を借りて克服し、最後には世界記録を立てるという筋書きである。

 本当のマンローの凄さは、手作りでピストンをつくりシェルをつくりという技術的な面が大きいのだと思う。しかし、この映画は障害を抱えながら挑戦するマンローの精神的な面と、ロードムービーという二つの側面から製作されているようだ。

 ロードムービーというと旅を通じて主人公が成長したり、変わっていくものが多い。しかしこの映画でマンローは淡々と目的に立ち向かい、変わっていく人があるとしたらマンローの挑戦に共感した周りの人たちである。

 そのほかにも、右側通行と左側通行などの習慣の違いもトピックにしているがあまり重要な要素ではない。ただニュージーランドでタクシーに乗る場合助手席に乗るのが一般的であるというのを知っていると笑える場面はある。

 途中、ベトナムから休暇で帰って来た若い軍人を同乗させるシーンがある。まだ米国の介入は初期の段階で、半年もすれば終わるだろうといわれていた時期である。作中でマンローは、第一次世界大戦もそう言われていたが、結局1000万人が死んだと答える。

 米国はこのあと13年間ベトナムで苦しむことになる。そして米国は社会問題を山積させながら変質していくのである。この映画はベトナム以前の、古き良き時代のアメリカが存在した最後の時代を、懐かしく描いているようだ。

 実際、画面に現れるのは思いやりにあふれた善意の人たちばかりで、ボンヌビルに着いてからいろいろ助けてくれたのも明るくてフェアで典型的なヤンキーである。

 俳優が年を取ると「老いとは」という映画を撮りたくなうようだが、なかなか成功した作品は少ない。ドライビング ミスデージーならまあ許容できるが、あの大好きだったポールニューマンがノーバディーズ・フールに出たときは、止めてくれいと思ったものだ。イメージが壊れるじゃないか、ポールのように年をとることを目標にしてきたのに。

 マンローをアンソニー・ホプキンスが演じている。老いを前面に出した映画であるが、非常に良い。バイクをいじっている時の小太りのお宅おじさんが、安物のスーツを着てパーティーに出かけたときのかっこよさ、目を見張ってしまうのだ。老いの目標をアンソニーに切り替えることにする、、、誰ですか、鼻で笑っているのは、、、、、

 実話を元にしているから荒唐無稽ではない。したがってハリウッド映画に比べれば実に淡々としている。しかしこれが実話だったら凄い話だ、元気を貰うぜ、と思う方にはお勧めの映画である。そしてアンソニー・ホプキンスを好きな人にも。

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