熊本熊的日常

日常生活についての雑記

鹿児島

2018年08月30日 | Weblog

初めて鹿児島を訪れた。台風の時期に台風の通り道のようなところに出かけるのもなんだが、参加したい行事があるのでこうなった。その行事は明日からだが、せっかくの機会なので前日に出かけて街歩きをすることにしたのである。街とは言いながら、知人の勧めがあって桜島を訪れた。

空港からバスで鹿児島中央駅に着いたのが昼前。予約しておいた駅に近い宿に荷物を預け、駅構内にある観光案内所で桜島への行き方を尋ねる。教えられた通り、路線バスでフェリー埠頭へ行き、フェリーに乗船する。路線バスもフェリーも市営だ。しかも、フェリーは終日運行している。最初、観光振興策の一環かと思ったが、桜島が活火山であることを思えば当然の行政だ。火山活動に朝も夜も関係ない。島の交通手段を常に可能な限り確保してしかるべきだ。尤も、フェリーの様子はそんな緊張したものではない。15分程度の間隔で発着している船にちらほらと車と人間が乗り、15分程度の船旅をする。のんびりしたものだ。

島のフェリー発着所は工事中だが、既に建屋の方は完成して小綺麗になっている。ここのカフェでちょっとしたランチセットも頂けるので、今日の昼食はここにする。ランチセットはチキンバーガーかカレーライスだ。カレーライスの方を注文する。カレーライスは黒米を使い、ご飯を島にカレーを海に見立てた盛り付けだ。ご飯の山は桜島なのだろう。その上に大きなサツマイモのチップが乗っている。噴煙のつもりか、今日のような雲に覆われいる様子なのか。

暑いのであまりうろうろせずにフェリー埠頭の周囲を散策するだけにする。まずは月讀神社に参拝。8世紀初頭に創設されたとされているが、そもそもの場所は噴火で埋まり、現在の位置へは昭和15年に移設されたそうだ。鳥居も社も見た目には新しく、戦後に建てられたもののように見える。人の出入りはけっこうあって、私たちが境内に滞在していた20分ほどの間に観光と思しき人たちが何人も参拝に訪れた。このところあちこちの寺社仏閣を訪れているが、寺に比べると神社はなんとなしに陰気な雰囲気のところが多い印象を受ける。明治神宮だとか春日大社だとか華やいだところもあるのだが、街角の小さな神社は社だけで宮司が常駐していない所為もあるのかもしれないが、素直に柏手を打ちにくい雰囲気を醸しているところが多い。月讀神社は宮司が常駐する桜島最大の神社であり、陰気というようなことはない。

神社を後にして、ビジターセンターを目指す。国民宿舎の敷地を抜けてすぐのところにある。桜島の成り立ちのようなことがわかりやすく展示されている。外が暑い所為もあって、ここではゆっくりとひとつひとつの展示を見る。それにしても活火山の麓で暮らすというのはどういうことなのだろう。生まれ育った土地への愛着なのか、何か他に理由があるのか。土地というものと切り離されて生きてきた自分には想像がつかない。展示のなかには噴火で被害を受け、島を離れることにした一家が積もった火山灰を押しのけるように生えた草木を目にして、島に残ることにしたという物語を漫画で表現したものがあった。話としては美しいが自分にとっては説得力がいまひとつの感が否めない。

ビジターセンターから海側に出ると足湯のできる公園のような場所がある。足湯場は観光客で賑わっているが、殆どが外国の人のようだ。フェリーにも外国からと思しき人の姿が目立った。世間では「インバウンド」という言葉が飛び交っているが、そのうち「インバウンド」抜きに経済が成り立たないようになるのだろう。土地の人とか他所の人というような区別が意味を成さないようになるのかもしれない。

ビジターセンターの近くに地元生協のスーパーがある。店内を覗いてみるとこの土地ならではの商品がたくさん並んでいて眺めているだけで楽しい。鹿児島に行ったら是非食べてみようと思っていたものがいくつもある。例えば落語の「鹿政談」ではマクラに各地の名物の話をすることがある。そこにしばしば登場するのが鹿児島の薩摩揚だ。いまどきは世界中のものがネット注文で簡単に手に入る。しかし、その土地のあたりまえに旨いものをその土地であたりまえに食してみたいではないか。このスーパーにも地元メーカーの薩摩揚がたくさん並んでいる。地魚ではなんといってもキビナゴだ。もちろん東京の料理屋でも刺身だろうが天ぷらだろうが普通に食べることはできる。その土地のものをその土地の人が食べるようにして食べてみたいではないか。そうでなければ遠くまで来た甲斐がない。

そのスーパーの近くに道の駅がある。どのようなものが並んでいるのか素朴に興味があって覗いてみる。西郷隆盛の肖像をモチーフにしたTシャツとか、切干の桜島大根、ヒジキなどを購入する。

フェリーとバスを乗り継いで鹿児島中央駅前に戻る。駅前にあるイオンの大型店の食品売り場を覗いてみる。さすがに商品は全国区のものが圧倒的だが、冷菓売り場に「むじゃき」の「しろくま」が何種類も並んでいる。たぶん酒類の品揃えも鹿児島仕様なのだろう。店を出て、ひとまず宿にチェックイン。

宿は素泊まりプランなので、夜は天文館のほうへ食事にでかける。飲食店がたくさん並んでいるので何の不自由もないのだが、宿の部屋にあった「地元の味」の飲食店に「正調薩摩料理」という看板の店があったのでそこを目指す。予約を入れなかったが、午後6時前ということもあり、なんなく入店できた。「基本のコース」というものと店の人が進める焼酎をいただいた。どの料理もたいへん美味しいが、印象に残ったのは揚げたての薩摩揚だ。薩摩揚だけ追加でいただく。

 


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