熊本熊的日常

日常生活についての雑記

5月に読んだ本

2007年06月01日 | Weblog
池田晶子「人生のほんとう」
池田晶子「人間自身 考えることに終わりなく」
池田晶子「14歳からの哲学」

池田晶子は今年2月23日に腎臓がんで亡くなった文筆家。享年46歳である。昨年12月から日本経済新聞の訃報欄をスクラップしているのだが、年齢が自分に近いということで興味を覚えた。たまたま駿河台下の三省堂本店に立ち寄った時、亡くなった直後ということで、池田晶子のコーナーが設けられていた。そこで手に取って読んでみたら、これがおもしろく、思わず3冊も購入してしまった。

辻原登「円朝芝居噺 夫婦幽霊」
落語が好きである。といってもたまにしか寄席に足を運ばない。直近は、今月23日に上野の鈴本に寄ってから出勤したが、その前というと昨年9月16日に新宿の末広亭に行った時まで遡らなければならない。落語は当然ながら噺家の話を生で聴くに限るのだが、本になったものを読んで愉しむことのできる噺もある。岩波文庫で円朝の「牡丹灯籠」が出ている。これは面白いなんていうものではない。物語が緻密に組み立てられ、全体の話を通して読んでも、部分部分を抜き出しても、面白いのである。「夫婦幽霊」は書いたものが残されていないが、円朝晩年の傑作と言われる伝説の噺である。この辻原の作品は、その伝説の噺の速記録が発見されたという物語である。私は「牡丹灯籠」しか読んだことがないが、円朝は天才落語家だと思った。辻原の作品は「夢からの手紙」という短編集しか読んだことがないが、やはり上手い文章を書く人だと思う。いわば、この作品は名文家が名噺家の作品を創作したようなものである。読みながら、思わず唸ってしまう箇所がいくつもあった。