熊本熊的日常

日常生活についての雑記

「アバウト・シュミット」

2005年04月09日 | Weblog
フォスターチャイルドへの手紙という形でナレーションが付いており、それがラストシーンの伏線にもなっている。特に、娘の結婚式から自宅に帰るシーンでの手紙の文面と、それに応じるかのようなラストの展開が素晴らしかった。
 米国でも日本でも、多くのサラリーマンは特に大きな実績を残すこともなく定年を迎え、老後の生活に入っていく。勤務先という生活の場と看板を失うと、自分に何もないという現実と向き合うことになる。「家族」という関係が持つ独特の幻想、看板を失うと維持することができない職場での関係、それまで殆ど意識してこなかった地縁。要するに人は孤独なのだという当然の疎外感に苛まれることになる。しかし一方で、人間の生活は他人との関係のなかで支えられているのも事実である。大切なのは、そうした他者との関係を意識することなのである。「メタ認知」という言葉がある。全体のなかで自分を認知すること、全体と自分の位置を俯瞰することだそうだ。そのような高次的視点を持つことができれば、人は思いの外、心安く生きることができそうな気がする。