熊本熊的日常

日常生活についての雑記

一週間経過

2007年09月30日 | Weblog
独身になっても、特にこれといった心境の変化はない。婚姻期間中から、そのような心持ちで暮らしていた所為であろうか。

なにはともあれ、こちらに来て一週間が経過した。着いた日とその翌日こそ暖かく、半袖で平気だったが、月曜日からは日に日に寒くなり、着る物が無くて困るようになった。冬物衣料は別送便の中にあり、手元には防寒になるようなものがないのである。月、火、水までは我慢したが、木曜日には、ジャケットでも買おうかと思い立った。しかし、職場近くのショッピングモールを見て歩いたが気に入ったものがない。とりあえず、GAPで安いカシミアのセーターを買った。これで当座は寒さをしのぐことができそうである。

金曜日には携帯電話を購入した。電話が必要というより、生活を始めるに際しての様々な手続のなかで、携帯の電話番号が必要とされることが少なくないのである。本当は、こんなものは持ちたくないのだが、必要とあらば仕方が無いので、職場近くの携帯ショップで安いモデルを購入した。25ポンドである。

こちらで住む家を探さなければならない。通勤の便やら家賃の予算やら自分に課された諸々の制約条件を考えると、選択肢は多くはない。昨日の土曜日は朝9時から午後5時まで、候補となる地域を歩き回った。その結果、さらに選択肢は絞られた。1件、昨日のうちに内見をすることができ、現在居住している人の話を伺うこともできた。たいへん古いフラットだが、気に入った。週明けにでも、ここを紹介してくれた不動産屋に借りることの意思表示をしようと考えている。

また、部屋探しに出かけるに先立ち、最寄りの地下鉄の駅で、Oyster Cardという東京でのPasmoやSuicaに相当する交通カードを購入した。これはオートチャージを設定することもでき、使い勝手はPasmoやSuicaと同じである。しかも、このカードを使うと、切符を買うよりも3割程度、運賃が割引になる。この点はPasmo/Suicaよりも評価できるかのように見える。しかし、この割引をもってしても、ロンドンの交通機関の運賃は東京より割高である。

今日は地下鉄で一駅移動し、比較的新しいショッピングセンターへ出かけてみた。TescoとBootsを核に様々な商店が軒を連ねている。ショッピングセンターというところでどのような物が調達でき、どのような物が手に入らないのか、概ね理解できた。このショッピングセンターの別棟にDECATHLONという巨大なスポーツ用品店がある。スポーツ用品店なら登山用具もあるだろうと店内を散策してみると、登山用具はあまり置いてなかったが、ハイキング用品は豊富である。そこでハイキングジャケットの手頃な物があったので、それを通勤用に買い求めた。もちろん、ハイキングにも使うつもりなので、その店のハウスブランドではなく、Columbiaのものを選んだ。North Faceのものがよかったのだが、適当なサイズの在庫が無かったのである。スポーツ用具は機能性に富んでいて重宝するので、少々高くても一般衣料よりはコストパフォーマンスが良いと思う。これで懸案の防寒対策がひとつ片付いた。

なんだか、この一週間は長く感じた。まるで一ヶ月くらいの感覚である。次の一週間はどのような一週間になるだろうか。

娘へのメール 先週のまとめ

2007年09月23日 | Weblog

今の段階で何をどのように話したらよいか、正直なところわかりません。事実を述べるなら、9月18日に私と君の母親は離婚し、9月22日に私はロンドンへ引っ越しました。しかし、君の学費はこれまで通り私が負担しますし、生活費も一部負担し続けます。君の母親も働いているのですから、きちんとやりくりをすれば、生活に困ることはないはずです。余計な心配はせずに、自分がやるべきことをきちんとやってください。

さて、今日は、これから一ヶ月ほど生活する仮の住まい周辺の探索をかねて近所を歩き回ってみました。ここ10年ほどの間に新たに開発された地域なので、特にこれといった色がなく、見た目にはどのような人たちが生活しているのかよくわかりません。小さな商店は点在していますが、スーパーのようなものは無いので、生活には不便であるような印象です。鉄道で10分ほどのところにグリニッジという町があり、ここは観光地でもあるので、なかなか賑やかな場所です。まだ、こちらの不動産事情を何も知らないのですが、できれば職場に近いところで、ひっそりと暮らしたいと希望しています。

ちなみに、今日はグリニッジのMARKS&SPENCERというスーパーで冷凍のチリコンカーンライスとローストチキンパイなどを買ってきました。こちらのスーパーはこのような半調理済の食材が豊富です。トマトと林檎も買ってみました。トマトは私が子供の頃食べていたようなトマト臭いトマトで、なんだかとても懐かしい味でした。林檎はニュージーランド産のJAZZという名前の品種で、ほどよい酸味があって美味しいです。昼にそのチリコンカーンライスを仮住まいの電子レンジで加熱して食べてみましたが、なかなか美味しかったです。一人だとレストランには入りずらいので、しばらくこのような食事が続きそうです。住む家が決まれば、調理器具などをきちんと揃えて自炊をしようと思います。 仮住まいはCanary Southというサービスアパートです。

職場があるのはCanary Wharfという地域で、ここには金融機関の本社ビルが集積しています。ショッピングモールもありますが、今日は日曜で殆どの店が休みであったせいか、ちょっとパンチに欠ける感が否めません。(キリスト教では日曜日は安息日なので、働かないことになっています。ただし、プロテスタントと呼ばれる宗派の人たちは労働=信仰という考えなので、営業している店もあります。) テムズ川には歩道のトンネル(Greenwich foot tunnel)もあり、このトンネルを使ってグリニッチから歩いて仮住まいまで帰ってきました。所要時間約30分ほどです。近くもないけど遠くもない、って感じでしょうか。

暑さが長引いているので、これから急に秋らしくなると体調を崩し易くなると思います。好き嫌いなく栄養を摂り、健康に気をつけてください。


野分のまたの日

2007年09月22日 | Weblog

離婚をしてロンドンにやって来た。まだ着いたばかりなので、これから生活を立ち上げなければならない。とりあえず勤め先が用意してくれたサービスアパートに1ヶ月だけは住むことができる。その間に住むところを探し、生活ができるようにするのである。こちらに来る前、ロンドンは家賃が高いので家を探すのは大変だと聞かされてきた。なにはともあれ、新しい生活の始まりである。


娘へのメール 先週のまとめ

2007年09月09日 | Weblog

台風一過で暑さがぶり返しましたが、朝晩はさすがに秋らしくなってきましたね。2学期の最初の週は無事に終わりましたか? 黒澤明の「天国と地獄」はおもしろかったようですね。黒澤明の作品は、比較的単純なストーリーでありながら、場面の構図や登場人物の立ち居振る舞いには細かい所まで凝っており、深く観ようと思えばいくらでも深く観ることができる作品が多いように思います。このことは同じ作品でも、自分が置かれている状況によって、違ったように見えるということでもあります。そのような作品であるからこそ、時代を超え、言語の違いを超えて、黒澤作品は現在まで多くの視聴者を惹き付けるのでしょう。

「感動ものにはあまり興味がない」と言っていましたが、やがて君が「感動もの」にハマる時も来るのかもしれません。時を重ねて、様々な事象や人物に出会えば出会う程、物事の見方や考え方は変化するものです。「考える」ということは、既に知っていることを様々に組み合わせる作業ですから、知識や経験が多いほど、様々な考え方ができるようになり、それだけ人生は豊かになると思います。せっかく生きているのですから、豊かに生きることを心がけた方が、人生はより楽しくなるのではないでしょうか。 先週は佐藤正午「5」を読了しました。

「5」は本の帯にあるように「世界の中心で、愛をさけぶ」の対局にある恋愛小説です。あまりに現実的な生々しさに、読んでいて嫌な気分になることもありましたが、文章が洗練されているのか、構成が巧みなのか、思わずその嫌な世界に引き込まれてしまいました。純愛という幻影を求めて右往左往する人々の滑稽なまでの醜悪さと、主人公のいやらしいほどの自己顕示欲には辟易させられます。しかし、その醜悪こそが人間性の現実であるようにも思われます。人に勧めたり、手元において何度も読み返すタイプの作品ではないと思いますが、その汚れ具合がまた良かったりするわけです。まだ君には難しいタイプの作品だと思います。でも、あと何十年かすれば、このような作品を面白いと感じるようになるのかもしれません。

季節の変わり目は気候が不安定で、体調を崩し易いものです。栄養のバランスを考え、睡眠時間をしっかり確保して、ご自愛下さい。


娘へのメール 先週のまとめ

2007年09月02日 | Weblog

すっかり秋らしくなってきましたね。季節の変わり目である所為か、巷では喪服姿が目立つような気がします。もうすぐ彼岸ですが、彼岸というのは現世とあの世とが近づく時期でもあります。気候の変化が人間の健康に影響を与えるという生理的な現象が、世俗の世界観において、あの世とこの世との距離に反映されていることが興味深く感じられます。宿題は無事に終わりましたか? 土曜日の深夜に、日本に住む外国人が日本の文化や習慣について語るというテレビ番組を観ました。テーマは「夏休み」というものでしたが、その中で、学校が生徒に夏休みの宿題を課すのは日本だけだということが語られていました。「夏休み」というからには宿題などせずに休むべきだろう、と出演していた外国人の何人かが語っていました。尤もな話だと思います。受験や目先の試験があるなら1ヶ月という時間はその合否を左右する時間であるかもしれません。しかし、長い人生のなかで、たいして役にも立ちそうにない知識を詰め込んだところでどれほどの意味があるのだろうかと、私も思います。 先週は荒井とみよ「中国戦線はどう描かれたか」、佐藤正午「花のようなひと」を読了しました。

「中国戦線はどう描かれたか」は第二次大戦中に日本軍の宣伝活動のために動員された作家たちによる従軍記についての評論です。前回のメールに書いたかもしれませんが、私は戦争という破滅的な行為に走る人間の姿に興味があります。本書で紹介されている従軍記は太平洋戦争開戦前の中国戦線について書かれたものです。従軍記そのものではなく、それについての評論ですから、私がそれら従軍記を読んだことにはならないのですが、本書から透けて見えるのは、人の生物としての業のようなものです。象はおとなしくて人に対して従順な動物ですが、時として、その象の世話をしている象使いや飼育係を襲うことがあるそうです。それは、例えば、飼育係が象の糞に足を取られて転んだ時などに象が文字通り牙を剥くのだそうです。象のようなおとなしい動物ですら、目の前で崩れ行く者に対しては征服欲が刺激されるのだそうです。当時の日本人にとって中国は先進国であり、中国文化は憧れの対象でもありました。その中国が列強の侵略を受け、国家として転ぶ姿に、日本人の生物としての征服欲が刺激されたのではないかと思いました。 佐藤正午は寡作ながら恋愛小説の達人と呼ばれている作家のひとりです。

「花のようなひと」は彼の短編集です。短編といっても、ひとの生活のほんの数分間を描いた作品ばかりです。氏の作品はその構成の妙と文章の上手さに定評があるのですが、この短編は彼の視点をよく表しているような気がしました。短編小説というより文章教室のような作品です。

急に涼しくなったり、学校が始まったり、今週は生活の変化が多い週です。また、夏の疲労が顕在化し易い時期でもあります。栄養と休養に気を配り、ご自愛下さい。