池井戸潤 著 「不祥事」を読みました。
ベテラン女子行員はコストだよ―
そう、うそぶく石頭の幹部をメッタ斬るのは、若手ホープの“狂咲”こと花咲舞。
トラブルを抱えた支店を回って業務改善を指導する花咲は、事務と人間観察の名手。
歯に衣着せぬ言動で、歪んだモラルと因習に支配されたメガバンクを蹴り上げる!
東京第一銀行本店事務部事務管理グループ調査役の相馬健とアシスタントの花咲舞が、支店の営業課の臨店指導を通してトラブルを解決するエンタテイメント連作短編小説です。
どの話も『半沢直樹』と同様に外部の者ではなかなか知る事のできない銀行の内情というものが描かれていてなかなか興味深い。
「狂咲(くるいざき)」というあだ名で呼ばれる女子行員・花咲舞の若くて正義感あふれる言動が爽快感満載です!!
日本テレビ系ドラマ「花咲舞が黙ってない」原作本。
この小説の満足度:☆☆☆☆
奪還」を読みました。
1年前に自衛隊を辞し、ミンダナオ島のダイビングショップで働いていた河合斌に、フィリピンで消息を絶った日本人女医を捜してくれとの依頼が持ち込まれる。
捜索を進めるうち、双子の巨大台風が接近する与那国島で61名もの人質を盾に立て篭もる武装集団の存在が明らかに。
日本政府は河合がかつて率いていた部隊を政治決断により招集、事態打開の特別任務を発令する。
だが、その裏には国家が決して明かしはしない驚愕の事実が隠されていた。
取り戻すべきは人質の命か、己の誇りか、それとも―この国の未来か。
作者は「ZERO」や「外事警察」などの国際謀略小説の第一人者です。
しかし、本作は前作とは違って娯楽に徹したアクション小説です。
海上自衛隊の特別警備隊(Special Boarding Unit:SBU)をモデルにして、国に幻滅して部隊を辞めた隊員が主人公。
誘拐された国境なき医師団の女医を救出するためにフィリピンの巨大マフィア組織を相手にたった一人で奪還作戦を進めてゆく・・・。
特殊部隊としてのプロの技が随所に描かれていて、なかなかリアルです!
エンターテインメント性充分で久々に面白いアクション小説でした。
この小説の満足度:☆☆☆☆
伊東潤 著 黒南風の海 「文禄・慶長の役」異聞 を読みました。
もはや生まれた国などどうでもよい。
一度、この大地に生を享けた者は、この大地に恩返しすればよいのだ――。
文禄、慶長と二度に渡って行なわれた、豊臣秀吉の朝鮮出兵。
それは、日本と朝鮮両国にとって、無益な戦そのものであった。
主人公は、文禄・慶長の役で日本軍の先陣を務めた加藤清正の鉄砲隊をあずかる佐屋嘉兵衛忠善と、朝鮮のなかでも治め難い地である咸鏡道の役人・金宦。
日本軍が破竹の進撃を続けるなか、加藤清正軍の先手として活躍するも、他国を侵す戦いに疑問を抱きはじめていた嘉兵衛と、都を落ちのびて咸鏡道にやってきていた王子を守る金宦があいまみえる。
嘉兵衛、金宦、そして加藤清正・・・
戦う男たちのあいだに何があったのか?
豊臣秀吉の朝鮮出兵・「文禄・慶長の役」については、日本史で習いましたが、実際にどのようなものだったかまでは良く知りませんでした。
本作は朝鮮に出兵した加藤清正の配下の兵である嘉兵衛の眼を通して、その実態がリアルに描かれていきます。
小西行長・石田光成らと加藤清正との覇権争い・・・
そこから端を発した無益な戦い、残虐な殺戮・・・
朝鮮の身分制度や明との関係・・・
厳しい朝鮮の冬・・・
攻める側も守る側も凄惨な状況に置かれます。
そんな中で嘉兵衛は敵方として朝鮮の勘定方役人の金宦と出会う。
互いに敵対する立場であるものの、無益な戦いをなんとか止めさせたいと思う気持ちは同じ・・・。
物語の中盤以降、二人が歩む数奇な運命と、彼らが選んだ道に胸を打たれます。
「本屋の選ぶ時代小説大賞2011」受賞作
この小説の満足度:☆☆☆☆
警視庁情報官」を読みました。
追尾・秘聴・協力者作り…。
ここまでやるのか!
公安捜査の超ディテール「事件は起きる前に解決せよ」
警視総監直々の極秘捜査指令にノンキャリエリート警視が大活躍。
作者が警視庁の元警視だっただけに内容はかなりリアルです.
警視庁情報官の主人公を軸に『警視庁情報室』を作る経緯や警察組織、公安の仕事内容などが詳細に書かれています。
マニアにはたまらない情報かもしれませんが、小説としてはまったく面白みに欠けました。
尚且つ、主人公のノンキャリエリート黒田警視がかっこ良過ぎです。
この小説の満足度:☆☆
是枝 裕和 , 佐野 晶 著 「そして父になる」【映画ノベライズ】を読みました。
学歴、仕事、家庭。
すべてを手に入れ、自分は人生の勝ち組だと信じて疑わない良多。
ある日、病院からの連絡で、6年間育てた息子は病院で取り違えられた他人の子供だったことが判明する。
血か、共に過ごした時間か。
2つの家族に突きつけられる究極の選択・・・。
福山雅治主演で第66回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した映画を小説化したものです。
映画は観ずに小説の方を読んでみました。
マスコミでもかなり話題になり、ある程度ストーリーの予測できていましたが、実際に読んでみると・・・
父親である良多の子供時代の父親との確執や取り違えた看護師とのやり取りなど想像以上の内容でした。
取り違え事件そのものよりも、仕事一辺倒だった父親が様々な葛藤を乗り越えて本当の意味での父親として成長してゆく過程を描いた作品でした。
この小説の満足度:☆☆☆☆
骸の爪」を読みました。
ホラー作家の道尾は、取材のために滋賀県山中にある仏像の工房・瑞祥房を訪ねる。
彼がその夜見たものは、口を開けて笑う千手観音と、闇の中で血を流す仏像。
しかも翌日には仏師が一人消えていた。
道尾は、霊現象探求家の真備、真備の助手・凛の三人で、瑞祥房を再訪し、その謎を探る。
工房の誰もが口を閉ざす、二十年前の事件とはいったい・・・。
真備シリーズ第2弾と云う事ですが、1作目を読んでいなくても物語にすんなり入る事ができました。
近江の山中にある仏像工房で起きる不気味な事件・・・。
序盤はホラーかと思いましたが、徐々にミステリー色が強くなります。
仏像に関する知識も散りばめられていて、こちらもなかなか勉強になりました。
いたるところに伏線がはられていますが、最後にそれらをきっちりと収束させる手腕は見事です。
この小説の満足度:☆☆☆☆
「白ゆき姫殺人事件」を読みました。
美人会社員が惨殺された不可解な殺人事件を巡り、一人の女に疑惑の目が集まった。
同僚、同級生、家族、故郷の人々。
彼女の関係者たちがそれぞれ証言した驚くべき内容とは。
「噂」が恐怖を増幅する。
果たして彼女は残忍な魔女なのか、それとも―
フリー記者によるインタビュー形式でストーリーが進みます。
重要参考人の女性の同僚や上司、後輩、学生時代の友人などからのさまざまな証言・・・
犯人と決め付け、些細なことを取り上げて悪く言ったり、自分を守ろうとして悪し様にいう者・・・
それをセンセーショナルに取り上げて煽るマスコミ・・・
次第に“犯人像”が作り上げられてゆく・・・
ネット社会で情報が根拠なしに広まる状況が上手く描かれていますが、読んでいて気持ちの良い話ではありませんでした。
この小説の満足度:☆☆☆
「生存者ゼロ 」を読みました。
北海道根室半島沖の北太平洋に浮かぶ石油掘削基地で、職員全員が無残な死体となって発見された。
救助に向かった陸上自衛官三等陸佐の廻田と、感染症学者の富樫博士らは、政府から被害拡大を阻止するよう命じられた。
北海道本島でも同様の事件が起こり、彼らはある法則を見出すが…。
Hさんの故郷の北海道が舞台。
その北海道で、”生存者がゼロ!”・・・ときては、北海道はどうなっちゃうの!と、読まずにはいられない!!
北海道沖に浮かぶ石油採掘プラント現場から始まった未知の病原体によるパンデミック・・・。
それは海上から道東に上陸して、やがて全道へと広がる気配が・・・。
ん~、これはヤバいよ~!!
病原体は一体何なのか・・・
さらに読み進めると、これが意外な展開に…。
”こんなのアリ?”と思う処もありますが、スケールが大きく、アイディアがなかなか面白い!!
一気に読了です!!
2013年第11回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。
この小説の満足度:☆☆☆☆
模倣の殺意」を読みました。
七月七日の午後七時、新進作家、坂井正夫が青酸カリによる服毒死を遂げた。
遺書はなかったが、世を儚んでの自殺として処理された。
坂井に編集雑務を頼んでいた医学書系の出版社に勤める中田秋子は、彼の部屋で偶然行きあわせた遠賀野律子の存在が気になり、独自に調査を始める。
一方、ルポライターの津久見伸助は、同人誌仲間だった坂井の死を記事にするよう雑誌社から依頼され、調べを進める内に、坂井がようやくの思いで発表にこぎつけた受賞後第一作が、さる有名作家の短編の盗作である疑惑が持ち上がり、坂井と確執のあった編集者、柳沢邦夫を追及していく。
1972年に発表されたミステリー小説です。
大手書店のプッシュによって大ブレークして、すでに30万部を売り上げているそうです。
大どんでん返しや、意外なトリックはありませんが、最後には”成る程そう云う事か!”と合点がいきました。
内容的には少々古臭さもありますが、最近の小説にはない本格派ミステリーといった趣でした。
この小説の満足度:☆☆☆