つばさものがたり」を読みました。
パティシエールの君川小麦は、自身の身体に重い秘密を抱えたまま、故郷・北伊豆で家族とケーキ屋を開いた。
しかし、甥の吐夢からは「ここは流行らないよ」と謎の一言。
その通り、店は瞬く間に行き詰まってしまう。
力尽きた彼女に新たな勇気を吹きこんだのは、吐夢と、彼にしか見えない天使の“レイ”だった…。
これまでに読んだ雫井作品は「犯人に告ぐ」や「火の粉」などの警察小説あるいはサスペンス小説といった分野でした。
本作はそれらとは全く違うファンタジー色の強い作品です。
主人公は乳がんに侵された20代の女性と、その甥で小さい時から天使が見えると云う男の子。
天使が登場するのがこの話のミソですね~!
しかもその天使が、これから天使になれるかどうかのテストに挑むと云う設定が面白い!!
テストに合格するために頑張っている天使を応援すべく、自分も頑張る男の子。
彼らを中心として、次第に家族が一体になってゆく過程が良いんです!!
久々にいい物語を読みました!!
この小説の満足度:☆☆☆☆
骨の記憶」を読みました。
東北の没落した旧家で、末期癌の夫に尽くす妻の清枝。
ある日そこに五十一年前に失踪した父親の頭蓋骨が宅配便で届く。
差出人は集団就職で町を出た翌年、火事で死んだはずの同級生・長沢一郎だった。
「骨」に込められた思いと秘密とは?
黒野伸一 著 「限界集落株式会社」を読みました。
起業のためにIT企業を辞めた多岐川優が、人生の休息で訪れた故郷は、限界集落と言われる過疎・高齢化のため社会的な共同生活の維持が困難な土地だった。
優は、村の人たちと交流するうちに、集落の農業経営を担うことになる。
現代の農業や地方集落が抱える様々な課題、抵抗勢力と格闘し、限界集落を再生しようとするのだが……。
65歳以上が地域の半数を超えると“限界集落”と呼ばれるそうです。
そんな限界集落で東京からやって来た若い銀行マンが村を救うために村おこしに取り組む話です。
田舎が抱えている「過疎」「少子化」「農業」などの社会的な問題を真っ向から扱いながらも、小説としては楽しく軽いタッチで描かれています。
この作品の前に読んだ三浦 しをんの「神去なあなあ日常」に比べて現実味もエンターテイメント性も多少落ちますが、そこそこ最後まで面白く読めました。
この小説の満足度:☆☆☆☆
「神去なあなあ日常」を読みました。
美人の産地・神去村でチェーンソー片手に山仕事。
先輩の鉄拳、ダニやヒルの襲来。
しかも村には秘密があって…!?
林業っておもしれ~!
高校卒業と同時に平野勇気が放り込まれたのは三重県の山奥にある神去村。
林業に従事し、自然を相手に生きてきた人々に出会う。
横浜で覇気のない生活を送っていた男子が、高校卒業と同時に無理やりに三重県の山奥・神去村に送り込まれる。
そこで待っていたのは、林業と云う自然相手の山仕事だった・・・。
最初は訳もわからずも、逃げようとするが、移ろいゆく四季の中で自然とそして神様と共に生きる村人たちに触れ、少しずつ村の一員としてして認められて成長してゆく・・・。
実際にある林業の会社を取材して作りあげた作品らしく、知らなかった林業の知識も随所に盛り込まれています。
なにより、“なあなあ”と言いつつ自然に生きる村人たちの姿が良いですね~!
最後の全然なあなあじゃない”お祭り”に巻き込まれるくだりはページを捲る手が止まりませんでした!
あ~! 田舎を思い出しちゃったよ~!!
映画「WOOD JOB!~神去なあなあ日常~」原作。
この小説の満足度:☆☆☆☆
ヘッドライン」を読みました。
TBNテレビの人気報道番組『ニュースイレブン』の遊軍記者・布施。
警視庁捜査一課・継続捜査担当のベテラン刑事・黒田。
偶然にも二人が追い始めた未解決の女子学生猟奇殺人事件、背後には都会にうごめく巨大な闇が…。
記者と刑事という異色コンビが協力して事件解決を目指す!
長編ながらテンポの良い文体で一気読みです!
今野作品に外れなし!
本作はシリーズ2作目と云う事で1作目も読んでみたくなりました。
この小説の満足度:☆☆☆☆
良作小説。
ー今野敏氏一流のすらすら読めます。(
SOSの猿」を読みました。
百億円の損害を出した株の誤発注事件を調べる男と、ひきこもりを悪魔秡いで治そうとする男。
奮闘する二人の男のあいだを孫悟空が自在に飛び回り、問いを投げかける。
「本当に悪いのは誰?」
はてさて、答えを知るのは猿か悪魔か?
そもそも答えは存在するの?
前回読んだ「オー!ファーザー 」が面白かったので、本作も期待して読み始めました。
二人の主人公の物語が交互に展開します。
奇想天外な話なのですが、あまりにも色々入り組んでいてストーリーが判りづらい・・・。
独特のユーモアもあまり感じられず、残念な作品でした。
この小説の満足度:☆☆
冤罪死刑」を読みました。
三年前に発生し、犯人逮捕で終結したはずの少女誘拐殺人事件。
だが、その裏側にはあまりにも多くの嘘や裏切り、腐敗や汚職があふれていた。
死期を迎えた刑事の告白、目撃証言に挟み込まれた意図、被害者の母の衝撃的告発、そして埋葬された記念品…。
事件を洗い直すべく動き出した通信社記者と女性弁護士は、次々と意外な事実に突き当たる。
ともに東京拘置所に収監されている死刑確定者と、勾留中の刑事被告人の間には、いかなる接点があったのか。
少女誘拐殺人事件を巡り、通信社の記者と女性弁護士が事件の真相に迫る冤罪ミステリーです。
死刑囚に刑が執行されるまでの描写が詳細に描かれています。
ミステリーとしては、ここまで詳細に描く必要があったのかどうかは別ですが・・・。
警察の暗部、脅迫、報道協定、小児性愛、特ダネ、冤罪、ect・・・
話の展開が展開が次々と切り替わり、最後に大どんでん返しが・・・
伏線が読めたのがちょっと残念でした。
この小説の満足度:☆☆☆
大沢在昌 著 「ブラックチェンバー」を読みました。
警視庁の河合はロシアマフィアを内偵中に拉致されるが、殺される寸前“ブラックチェンバー”と名乗る組織に救われた。
この組織は国際的な犯罪組織に打撃を与える一方で、奪ったブラックマネーを資金源にしているという。
スカウトされた河合はブラックチェンバーに加わることを決意。
その河合たちの前に人類を崩壊に導くおそるべき犯罪計画が姿を現す―。
大沢作品を読むのは久々です。
本作は多国籍化する犯罪組織に対抗するため、超法規的な組織が立ち向かうと云うもの。
しかも、その資金源は犯罪組織から奪取したブラックマネー!
かなりの長編ですが、なにやら壮大なスケールの話になりそうですね~!
早速、読み進めると・・・
期待した以上の広がりもなく・・・
終了!・・・
ん~、「新宿鮫」シリーズが懐かしい!!
この小説の満足度:☆☆
白石一文 著 「ほかならぬ人へ」を読みました。
二十七歳の宇津木明生は、財閥の家系に生まれた大学教授を父に持ち、学究の道に進んだ二人の兄を持つ、人も羨むエリート家系出身である。
しかし、彼は胸のうちで、いつもこうつぶやいていた。
「俺はきっと生まれそこなったんだ」。
サッカー好きの明生は周囲の反対を押し切ってスポーツ用品メーカーに就職し、また二年前に接待のため出かけた池袋のキャバクラで美人のなずなと出会い、これまた周囲の反対を押し切って彼女と結婚した。
しかし、なずなは突然明生に対して、「過去につき合っていた真一のことが気になって夜も眠れなくなった」と打ち明ける・・・。
男性主人公の「ほかならぬ人へ」と、女性主人公の「かけがえのない人へ」の2篇で構成されている恋愛小説です。
自分にとってベストの相手とは・・・
そんな相手に巡り合うまでに苦しむ・・・
ようやく巡り合えたと思ったら・・・
ん~、男と女は複雑ですね~!!
今時の恋愛事情と云う感じでした。
第142回(平成21年度下半期) 直木賞受賞作。
この小説の満足度:☆☆