綱淵 謙錠 著 「斬」を読みました。
“首斬り浅右衛門(あさえむ)”の異名で天下に鳴り響き、罪人の首を斬り続けた山田家二百五十年の末路は、
明治の維新体制に落伍しただけでなく、人の胆をとっては薬として売り、死体を斬り刻んできた閉鎖的な家門内に蠢く、暗い血の噴出であった。
もはや斬首が廃止された世の中で、山田家の人間はどう生きればいいというのか・・・。
題名の「斬」とは罪人の首を切るということ。
世襲の試刀師であり処刑人でもあった山田浅右衛門一族の物語です。
江戸時代の元禄ごろから明治14年の廃刑になるまでの間、死罪における斬首の刑を執行した山田家。
死罪になるような罪を犯した者といっても必ずしも凶悪な犯罪人ばかりではありませんでした。
幕末には体制に反抗した国事犯として吉田松陰、橋本佐内などが、さらに明治政府の転覆を目論んだ人物として雲井龍雄なども浅右衛門の手にかかり斬首されました。
仕事とはいえ人を切る生臭さ、周囲の目、技術の鍛錬、さらに家族間のいざこざや継母に対する恋慕など山田一家に生まれたが故の精神的・身体的な悩みも描かれいます。
やがて日本の西洋化が進み死刑の手段が絞首や銃殺へとって変わり、山田家が崩壊していく様は運命の皮肉としかいいようがありません。
第67回(昭和47年度上半期) 直木賞受賞作
この小説の満足度:☆☆☆☆
「鬼手 世田谷駐在刑事・小林健」を読みました。
日本有数の高級住宅地にある学園前駐在所を守るのは、山手西警察署の小林健だ。
彼が全国に名を馳せる暴力団捜査のエキスパート“鬼コバ”であることは、まだあまり知られていない―
持ち前の機動力と情報力で、芸能人やIT長者と暴力団の繋がりを摘発した小林が遂に挑んだのは、未解決の「一家殺人事件」だった。
交番の警察官が、実は捜査のスペシャリストという設定です。
2012年にTBS系で哀川翔が主演でドラマシリーズ化されました。
交番の話とあって本筋は担当地域内で起こった単発の事件や近所の住人とのエピソードなどが1章ごとに書かれています。
その中で、一見単純に思える事件の陰に隠された真実を”鬼コバ”が鋭く暴いてゆく・・・。
この辺の設定がドラマ化された由縁かもしれませんね。
さらに、著者が警視庁OBと云う事で随所に警察組織の事が詳しく書かれています。
しかし、逆に物語の本筋を楽しもうとすると、この辺の詳しすぎる記述がちょっとウザイ感じがしました。
この小説の満足度:☆☆☆
彼女は存在しない」を読みました。
平凡だが幸せな生活を謳歌していた香奈子の日常は、恋人・貴治がある日突然、何者かに殺されたのを契機に狂い始める…。
同じ頃妹の度重なる異常行動を目撃し、多重人格の疑いを強めていた根本。
次々と発生する凄惨な事件が香奈子と根本を結びつけていく。
その出会いが意味したものは…。
帯に書かれていた "ミステリーファンが声を合わせて『傑作』と唸る驚愕作!゛の文字につられて読んでみました。
「多重人格」をテーマに、二つの話が並行して進みます。
内容はかなりグロくて読んでいて不快感満載です!
文章は読みやすくスラスラ読めますが、あまりにも内容に現実味がない・・・。
こんな事したらすぐに捕まるだろう!的な・・・。
一応、最後まで読みましたが、完全に帯に騙されました!!
この小説の満足度:☆☆
マリアビートル」を読みました。
幼い息子の仇討ちを企てる、酒びたりの元殺し屋「木村」。
優等生面の裏に悪魔のような心を隠し持つ中学生「王子」。
闇社会の大物から密命を受けた、腕利き二人組「蜜柑」と「檸檬」。
とにかく運が悪く、気弱な殺し屋「天道虫」。
疾走する東北新幹線の車内で、狙う者と狙われる者が交錯する――。
伊坂作品を読むのは久々です。
新幹線の中という限られた空間の中で、様々な事情を抱えた殺し屋たちが合いまみえる・・・。
そこには丁々発止の駆け引きが・・・。
と思いきや、殆んどコミック的なノリで、当初の予想を完全に裏切られた・・・。
特に機関車トーマスの話は読んでいてもチンプンカンプンでどこが面白いのか判らない・・・。
何よりも、登場キャラ全員にまったく魅力を感じない!
かなりの長編ですが、正直、大外れでした!!
この作品の満足度:☆☆
山田 悠介 著 「その時までサヨナラ」を読みました。
別居中の妻子が、旅先で列車事故に遭遇した。
仕事のことしか頭にない悟は、奇跡的に生還した息子を義理の両親に引き取らせようとする。
ところが、亡き妻の親友という謎の女の登場で、事態は思いもかけない展開を見せ始めた。
はたして彼女は何者なのか。
そして事故現場から見つかった結婚指輪に、妻が託した想いとは?
家庭を省みない仕事人間の主人公が、不慮の事故でそれまで不仲だった妻を亡くし
残された一人息子と一緒に生活する事になるが、どう接して良いのかも判らない。
そんな時に謎の女性が現れて、主人公が徐々に家庭の大切さに目覚めてゆくストーリーです。
果たしてこの謎の女性は誰なのか?
よくある話である程度結末が予想ができる展開でしたが、それでも改めて家族の大切さ、夫婦の絆について考えさせられました。
たまにこんな本もいいか!
この小説の満足度:☆☆☆☆
民王」を読みました。
「お前ら、そんな仕事して恥ずかしいと思わないのか。目をさましやがれ!」
漢字の読めない政治家、酔っぱらい大臣、揚げ足取りのマスコミ、バカ大学生が入り乱れ、巨大な陰謀をめぐる痛快劇の幕が切って落とされた。
総理の父とドラ息子が見つけた真実のカケラとは!?
あの「半沢直樹」の
総理大臣と、そのドラ息子の魂が入れ替わってしまい、他の政治家にも同じような事が起き、それが、何らかの陰謀に関わってて、ドタバタ劇が続きます。
設定は現実離れし過ぎていますが、視点を変える事によって現代社会の本質に鋭く迫って行きます。
テンポの良いユーモラスな展開に中に時折見せる本音・・・
ユーモアのなかに正論を貫き通す痛快さに感服です!
この小説の満足度:☆☆☆☆
サハラ」を読みました。
サハラ・アラブ民主共和国解放軍に招聘された傭兵檜垣は、敵対するモロッコ秘密警察に受けた訊問で記憶を失う。
一方、サハラ砂漠に未知の油田があることを記した文書とともに日本の書記官が行方不明に。
檜垣はアルジェの駐在武官牛島から、油田を探るため手を組みたいと申し出をうける。
牛島から檜垣の妻ミランダがジュネーブで入院していると知らされ、現地を訪ねた桧垣だが妻は「カサブランカに行きたい」という言葉を残して姿を消していた……。
笹本稜平と云えば「太平洋の薔薇」や「天空への回廊」など世界を舞台にした謀略小説の第一人者です。
本作は過去の作品の「フォックスストーン」や「マングースの尻尾」に登場した傭兵の檜垣耀二を主人公に据えて、この二作品に登場した他のキャラもほぼ総出演します。
さらにタイトルが”サハラ”ときては、これはこれまで以上の壮大なストーリーになっているはず!!
ん~! これは面白そうだ!!
400ページ近い長編ですが期待感たっぷりで読み始めました。
が・・・
主人公の檜垣の記憶を尋ねる旅と”サハラ”にある資源を巡る策謀がメインで、ストーリー的にはかなり地味な展開で・・・。
もう少し派手な冒険小説を期待していただけに残念ながら期待倒れでした。
この小説の満足度:☆☆☆
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伊集院 静 著 「羊の目」を読みました。
夜鷹の女に産み落とされ、浅草の侠客・浜嶋辰三に育てられた神崎武美は、辰三をただひとりの親とあがめ、生涯の忠誠を誓う。
親の望むがままに敵を葬り、闇社会を震撼させる暗殺者となった武美に、神は、キリストは、救いの手をさしのべるのか―。
伊集院作品を読むのは本作が初めてです。
昭和の始め、夜鷹が産んだ一人の男児が戦前から戦後、そして現代まで侠客として苛烈に駆け抜けた壮絶な人生が描かれています。
彼は浅草の侠客、浜嶋辰三の下で育てられ、次第に日本の裏社会を代表する存在となっていく・・・。
羊の目をしながら群れからはぐれ、親のために我がを身体を張り、一匹の獅子の如く修羅の世界に身を投じる。
たとえ親から裏切られていようとも・・・。
武美の真っ直ぐな生き様には読んでいて胸が苦しくなります!
いや~、なかなか面白かった!!
この小説の満足度:☆☆☆☆