草若葉

シニアの俳句日記
 ~日々の俳句あり俳句談義あり、そして
折々の句会も

今日の俳句/春の句 『あなたへの一句』より(ゆらぎ選)

2008-02-29 | Weblog
 春立つと古き言葉の韻(ひびき)よし(後藤夜半)
 雪とけて村いっぱいの子どもかな (一茶)
 振り返ってみたくて上る春の坂 (黛執)

 外(と)にも出よ触るるばかりに春の月(中村汀女)
 春燈や今日ありしこと今日告ぐる(降矢とも子)
 囀りをこぼさじと抱く大樹かな(星野立子)

 日のあとを追ってゆきけり石鹸(しゃぼん)玉(佐藤和枝)
 春昼の指とどまれば琴もやむ(野沢節子)
 想ふこと春夕焼より美しく(富安風生)


 ごく最近(2月末)に出版された『あなたへの一句』は、著者である黛まどかが毎日配信していたメルマガ「俳句でエール」の一年間の記事をまとめたものである。私も途中から、配信して貰い、それを見るのが毎朝の楽しみの一つであった。「言葉には人を励まし、癒す上で何ものにも勝る力がある」として、17音の応援歌を送ろうということで始まったメルマガであるが、毎朝8時の配信されたメールは、思いがけない大きな反響があったとか。

 俳句の狭い世界にとどまることなく、こうして社会とつながる活動、社会に貢献することをしようとしている著書には、心からのエールを送りたい。この本で取りあげたのは、、著者自身が励ましをうけた古今東西の句に加え、エールを込めた自らの句がある。

 明日から3月。よううやく春を迎えた感があるので、春の項から気に入った句をいくつか選んでみた。必ずしも著名な俳人のものばかりではないが、いずれも心温まるものである。それぞれにつけられた解説も味わいがある。

 しばし左脳にかかわる活動がつづいたせいか、右脳(イメージ脳)の働きが活性化していないので、人の句を紹介することで記事欄を埋めさせていただいた。お許しを頂きたい。
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今日の俳句/ 春一番 (九分九厘)

2008-02-26 | Weblog
春一番浪速環状桜の宮
春一番走って転んでノーサイド

冴えかへり雲はねずみの色にあり
冴えかへる縮む身体の軋む音

囀りの誰が為なるやパルティータ
囀りや墓場にいけば盡く話

神戸も春一番が通り過ぎ、雪も降り、まさに季語「冴えかへる」の実感しきりである。
今日は昼から冷たい雨が降っている。
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今日の俳句/ひな飾り(ゆらぎ)

2008-02-23 | Weblog
娘へとふたとせかけしひな飾り
リヤドロで迎える桃の節句かな
ひな祭アップルパイの甘い香に

雛にほふ家や静かに老夫婦
はんなりと芦屋の山やひな祭り
炎(ほ)となさむ思い沈める雛まつり

いずれくる句会で、「ひな祭」を詠むことになりました。その予行演習をかねて「雛祭り特別展」に行きました。
別ブログに詳しい紹介をしておりますので、よろしければお立ち寄りください。

リヤドロなど関係のない句も出てきますが、お気になさらずに、どうぞ。


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今日の俳句 / 春嵐 (九分九厘)

2008-02-20 | Weblog

蟇出でてかぶく新宿夜は更けて
フラメンコ跳ねてネオンの春嵐
立山の霊を徳利に春の酒
子の刻に俳句語るも春の人
真夜中のメトロ煌々春浅し

先週末の話になってしまったが、久しぶりに東京に出かけた。かつて職場のあった八重洲辺りの変貌ぶりに驚いた。現役時代を懐かしむ風情などは、殆ど見当たらなかった。新宿で俳句の友人達と、フラメンコを楽しんだあと、遅くまで飲み且つ俳句論議をした。本当に楽しい一晩でした。


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今日の俳句 / 梅 (九分九厘)

2008-02-19 | Weblog

 梅でのむ茶屋も有るべし死出の山   子葉

赤穂浪士の一人、大高源吾は「子葉」と号した俳人でもあった。食録二十五人扶持。武芸をよくした傍ら、風流を好み其角らとも交際があった。趣味を生かして吉良邸の動静をさぐり、元禄十五年(1702)十二月十四日に茶会があることを突き止め、討ち入りの日を決める働きをした。翌年二月、幕府は四十七士に切腹を命じ、陰暦二月四日に源吾は江戸の松山藩邸で自刃する。上記の句は自刃の際の辞世の句である。梅で飲むとは、梅を見ながら酒を飲むとの意で、子葉は酒豪で知られていた。死出の山とは、仏説に冥土にある山とされている。他に三句、

 灸(やいと)にて侘言申す夏断かな  子葉
 爐開や鼻をならべて雨を聞く     〃
 山をぬく力もをれて松の雪      〃

最後の「松の雪」の句は討ち入りして本懐を遂げたあと、俳諧の師匠沾徳に届けられたものとされている。(近世俳句俳文集:岩波書店より)

切腹後の彼らに対する追善供養は、幕府の厳命によってすべてを禁じられたが、かえって世間の人々は黄舌をひるがえして、ことの良し悪しを論じ始めることになった。泉岳寺の参詣は許されず、外から見ると義士たちの墓の周りは草ぼうぼうであったいう。

宝井其角は、こうした状況に憤慨しつつ、義士、大高源吾、富森助右衛門(春帆)神崎与五郎(竹平)等と付き合いがあり、彼らの句を自分の選集に入れていることを、ことわりがきに書いて、次の句を詠んでいる。

 うぐひすに此芥子酢はなみだかな   其角

この句は大高源吾の次の句を受けて、俳友を偲んだものとされている。(其角俳句と江戸の春;半藤一利 より)

 初鰹江戸のからしは四季の汁     子葉

なお、春帆の自刃の際の辞世の句は次の句である。

 寒鳥の身はむしらるる行衛哉     春帆

こちらの句は寒々とする不憫な句であるが、子葉の句は本懐を遂げたあとの、悠々たる男らしい句である。義士祭は四月の初めに泉岳寺で行われるが、子葉の梅の辞世の句に惹かれて、この時期に取り上げてみた。

                                   以上
 
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今日の俳句 / 下萌(四捨五入)

2008-02-17 | Weblog
うすらひの池の波紋を拒みけり
今日この日バレンタインの弛み貌
下萌は這いつくばひて烏鳴く

雲走り日差し疎らに蕗の薹
うすらひや岸の立杭捕縛せり


二月の句会のために詠んだ5句です。
「ゆるんでいるのはこの日だけでよかったね」とのコメントを頂戴しました。
立春過ぎてのこの寒さに、冬眠状態です。
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今日の俳句 / 薄氷 (九分九厘)

2008-02-17 | Weblog
薄氷や隕石落下の音もなく
薄氷や彼此の切れ字に埒明くる
薄氷の風紋刻む夜明けかな

失せしもの見当たらずしてバレンタインデー
草青み絵筆の墨の水洗ひ

今月の二月の句会に出した句です。神戸は今日の昼からまた雪が降ってきました。今年は例年になく雪の多い年です。気候異常の関係でしょうか。
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今日の俳句/バレンタインデー(ゆらぎ)

2008-02-14 | Weblog
バレンタインデー幼き文字のラブレター

薄氷を踏みしめてゆく男旅
わが踏みし春の氷やツルゲーネフ
初恋はうすらひに似て君の黙(もだ)

草青む今のまさかをいとほしむ
草青むバラクオバマの若き声

草青み大和し美しくちずさむ

 今日はバレンタインデー。その日の句会でした。兼題の一つが、「バレンタインの日」で、必須科目でした。 いやいや悪戦苦闘しました。でもチョコレートを頂戴しました。句会には出せなかった句もふくめてご笑覧に供します。
 
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今日の俳句/梅が香(ゆらぎ)

2008-02-12 | Weblog
梅が香やふたりのあゆみ遅々として
なにごともなけれど庭の梅見酒

裾もよう梅染め抜きて春兆す
唐梅や心ほころぶ天満宮


『三艸書屋雑筆』(山口青邨著)にこんな一節があった。

「昨年の今頃だった、俳句を作る友人が紅白の梅の大枝を持ってきた。どこで折ってきた、と咎めるように訊くと、ちゃんと断ってもらって来た、多摩だという。こんな大きい枝、活ける花瓶もない。とりおあえずバケツに投げ入れ、これでは座敷にも置けないので茶の間の縁側に置いた。外の硝子戸と内の障子で囲まれて日が射すと温室のように暖かで、ぱっぱっと咲いた。紅白交錯して美しかった。・・」

  ”黒き壺金冬心の梅を挿す”

金冬心というのは、清朝の詩人にして書・画をよくした。梅の画が得意であった。
ちなみに、中川一政は、この人の書画にぞっこん惚れていたとか。この山口青邨の随筆集には、こんな味わいのある話があちこちで出てくる。




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今日の俳句/ 水仙 (九分九厘)

2008-02-10 | Weblog

潮騒の崖を伝ひて水仙花
群生の水仙下り海に入る
朝凪に緊張解けし水仙花

水仙や直ぐな若衆数知れず
北を向く水仙ありて訳を問ふ


淡路島の東南、紀伊水道を望む海岸に黒岩水仙郷がある。海沿いの急勾配の大斜面に水仙が咲き乱れている。風は穏やかで、ゆっくりと水仙の花を楽しむことができた。いまどきちょうど満開時である。鳴門の渦潮がおりしも大潮の干潮時に当たるということであったので、帰りは観潮のために福良港に向かう。
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