草若葉

シニアの俳句日記
 ~日々の俳句あり俳句談義あり、そして
折々の句会も

今日の俳句/露(龍峰)

2013-09-26 | Weblog

先日信州の中山道を回ってきた。その中でかねて念願の上田市の郊外の無言館を訪ねることができた。無言館はご存じのように、東京芸大を中心とする画学生や卒業生の若者が第2次大戦末期に戦場に赴き、志半ばで戦場に散っていった、その若者たちが出撃寸前まで描いていた絵を一堂に集めて展示している美術館である。やはり胸に迫るものがある。 写真は無言館

  露の世や秒を惜しみて描きいそぐ

  露の世や出撃前夜の筆の跡

  露の世や妻に残せし未完の絵

  露の世や妻を描きて戸を出でぬ

 

  枝折戸を開けて露の世振り返り

  露の世を語り明かして酌みかわす

  露の世を抜けて踏み入る恐山

  芋の葉に真珠のごとき露の玉

 

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今日の俳句  飛蝗/ 九分九厘

2013-09-17 | Weblog

 

  雨上がり飛蝗の濡れ身透きゐりて

 

 久しぶりに雨が上がって庭に出ると、小さな子供の飛蝗が葉の上に止まっていた。飛蝗も豪雨に曝され、どこかに隠れていたに違いない。さてどうしたものかと思案している姿に自分を重ねた次第。

 

 二週間の入院で暇つぶしに季語集を持ち込んだが、全く俳句を詠む気にならなかった。外界と隔絶された季節感のない病室のせいだと思う。仮退院で改めて自宅で入院の句を詠む。この種の俳句を詠むのは初めてのことである。

 

  胆石の狼藉ありて地虫鳴く

  点滴や腹も空かない秋の夜

  看護婦の誰もが桔梗病室にて

  胆嚢に丸い影あり轡虫

  麻酔醒め娑婆に戻りて月をみる

  仮退院露見る頃となりにけり

  

  再入院告げくる電話秋真昼

  獺祭忌迎へて午後のオペとなり

 

 明日からの冥界入り直前に投句いたします。コメント御礼は一週間後になりますのでよろしく。 以上

 

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今日の俳句/秋渇き(ゆらぎ)

2013-09-14 | Weblog

(暑かった夏を思い出して)

 夕暮れに頒かちしワイン夜の秋

 生きる意思なほ存したり炎暑の日


(やはり秋の句)

 アイパッド何の苦もなく生身魂

 星月夜ひたくれないのわが人生

 虫すだく顔真卿に筆執れば

 ときめきてなし遂げし夜のさわやかさ

 曽爾原は風の音消ゆただ芒

 津山きてざくろは紅し三鬼の碑

 一人居やピューター手にする秋渇き

 あてもなく遠出をすれば花野かな
 

上掲の写真は、京都寺町二条下がるの錫師<青課堂>さんの作品です。このお店はウエブサイトのトップに「哲学」を語っています。


   
 ”現在、世の中はモノで溢れています。モノ、モノ、モノの中にいると、モノの重要性 や価値さえ忘れ、モノから離れて生活したくさえなります。
  そのモノたちの影には、隠れた文化や伝統、芸術・技術、また関わってきた多くの人々の心があります。
   私共は良いモノヅクリを心がけるだけではなく、この目には見えない、モノの陰に 隠れた部分を大切にし伝えてまいりたいと思います。”

深い共感を覚えます。

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今日の俳句 / 水澄む (四捨五入)

2013-09-08 | Weblog

水澄みて深みの紺のいや増せり

水澄めど光とどかぬ淵の奥

砂の舞飽かず眺めつ澄める水

澄める水足下に広し沈下橋

見下ろせば魚影俊敏水澄める

 

ももとせを超え行く母や月天心

望月のいよよ膨らみ沈みけり

白雲の月を過りて消えにけり

診断を聞きし夜より地虫鳴く

パソコンのデータ失せたり地虫鳴く

 

 九月の句会の兼題は「水澄む」「月」「地虫鳴く」等であったが詠みやすい「水澄む」が半数となってしまった。ご覧のようにほとんどの句が一物仕立てとなっている。取り合わせの句をと思うのだが、まだ修業が足らない。ご批判を仰ぎたい。

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今日の俳句/風の盆(龍峰)

2013-09-04 | Weblog

ことのほか暑かった今年の夏も、列島に野分が近付き、涼しさをもたらした。万物は一息ついた。気がつけば9月になっている。そして今年も風の盆がやってきた。数年前に行った八尾の小さな町角の夜通し踊る女踊り、男踊り。今も胡弓の音が闇から甦る。

  風の盆闇に引き込む胡弓の音

  影のごと男踊りや風の盆

  たおやかに手の振りそろふ風の盆

 

  野分めく庭の草木の葉裏かな

  少年の心浮かせる野分前

  夢中なる渚遊びや雲の峰

 

  天空に秋蝉叫ぶ岬かな

  城砦を出れば風の真葛原

  七夕の短冊壁に影いくつ

 

  遠花火真闇くぐりぬ音を待つ

  ひぐらしの山門抜けて届きをり

  ひぐらしの結界こえて消えゆけり 

  

 

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