四万十市在住の家内の友人宅に二泊する予定で、四万十川の蛍狩りを主目的に旅行の計画を立てた。蛍狩りは5月終わりから6月10日頃までと言われた。5月29日、車で剣山の頂上近くにある奥祖谷二重かずら橋を目指す。途中の阿波ICで阿波土柱なるものを見た。壮大なる山崩れであるが、長年の風雨で砂礫層が削り取られ土柱が並んでいる奇景である。奥祖谷は剣山の頂上近くにあり、交通の不便さから一般の観光客は稀と言われる山奥である。ここから車で祖谷渓谷を西に下ること約1時間で、いわゆる観光用のかずら橋に至る。もう大歩危の近くである。奥祖谷と比べると景観が全く違う印象であった。大歩危にて一泊。翌日、四万十に到着する。ここでは一日を足摺岬巡りにあて、二晩を四万十川堤防の傍に建つ豪邸のベランダでビールを飲みながらの歓談。蛍狩りは、大歩危の吉野川支流の白川谷と四万十川蛍舟を楽しんだ。写真は撮れなかったが、闇の中で蛍の乱舞が水に写る様子は例えようのない美しさであった。今回の旅行のもう一つの目的は、道中にある八十八札所を巡ることであった。88番札所大窪寺を含み九ヶ所を巡ることができた。帰りに土佐和紙で有名な伊野町に寄り、版画用に厚手の雁皮紙と麻紙を入手。伊野町の傍を流れる仁淀川は四万十川に劣らない素晴らしい清流で、沈下橋があることも同じである。四国の幹線道路は全く渋滞がなく、車での旅行に最適と思われたが、一旦ICで降りて国道に入り山麓・山中に入ると、対向車も交わせないような狭い道になる。次回行くのであれば軽自動車が良い。次の俳句は旅行の道順に沿って記載する。「おのころ」なる俳号は我が妻の仮のものである。
奇勝なる阿波の土柱や栗の花 おのころ
奥祖谷に続く山道五月闇 おのころ
奥祖谷の渓に入るや梅雨の入り 九分九厘
奥祖谷の渓水青し五月闇 九分九厘
白川谷川(大歩危)での蛍狩り
宿主のもてなし嬉し蛍狩 おのころ
蛍舞ふ幽玄といふ他はなし おのころ
相合傘蛍一匹傘に入る 九分九厘
大歩危にて
大歩危の河水藍碧五月晴れ 九分九厘
鯉のぼり急流避けて空に舞ふ 九分九厘
四万十の夕餉
もてなしの皿鉢料理や夏座敷 おのころ
皿鉢よし土佐の酒よし初夏の旅 おのころ
四万十の風をいただき夏館 おのころ
熟睡の四万十風や旅の夏 九分九厘
足摺岬にて
足摺の椿実爛漫5月尽 九分九厘
外洋の夏風爽と吹きにけり 九分九厘
補陀落や円弧を描く夏の海 九分九厘
四万十川の蛍舟
もてなしは河鹿の美声四万十川 おのころ
四万十の闇を沈めて蛍狩 おのころ
蛍狩闇を待つ間の静寂かな おのころ
帰途
家苞は土佐の鰹と伊野の和紙 おのころ
万緑や峠を越える笠と杖 おのころ
ハンドルの操作厳しき遍路道 おのころ
結願の札所にありて五月闇 九分九厘