さるすべり
この夏はことのほか暑かった。朝の散歩で街中に見る百日紅の鮮やかな色は貴重な慰めである。
手元のメモ代わりの日記で7,8月の気温を比べると去年、一昨年でも35度や38度の日もあった。しかし、適度に雨が降り、台風がきたりで気温が下がる日もあった。それに比べて今年は連日35度越えで、下がる日がほとんどなし。体は今年の方がはるかに参った。年が加算されたこともあろう。ともあれ今から来年が思いやられる。
主住むや住まぬや今朝のさるすべり
予報見るたび猫の目の野分かな
初秋や薄暮の風の尖り消ゆ
八十路越え残暑の背なのひしゃげをり
句づくりの内なる目覚め芒かな
妻天塩かけし西瓜よプロ裸足
山門にしばし大の字涼新た
涼求め日帰りで若狭へ繰り出した。三方五湖、そのほとりの「若狭三方縄文博物館」、「年縞博物館」そして江戸時代栄えた鯖街道、その中心となる熊川宿を訪ねた。名を馳せた熊川宿も今は、秋雨の中に静かに眠るがごとくだった。
中でも年縞博物館は特異な博物館である。この博物館は五湖の一つの水月湖の底に毎年積もった地層、地下垂直に45mの深さ、7万年間分を切り出した地層が展示されている。無論世界一。人類がこの世にあらわれてからの地球の歴史、日本列島の歴史の一端が一目でわかる。
越路来て荒瀬をわたる秋茜
湖越しに若狭の海や夾竹桃
新涼の墨絵眼前三方五胡
年縞や七万年の史知る秋
縄文は土と炎よ秋暑し
秋時雨掛け声いずこ鯖街道
秋雨や時経てねむる熊川宿
年縞博物館の展示、途中の大山の噴火の辺り、0.7mmが1年
熊川宿
お久しぶりの「俳句大行進」ですね。先ずは、最初の三句と四句です。
主住むや住まぬや今朝のさるすべり
・解釈がやや難しい。主がいようといまいが、百日紅は勝手自在に咲き誇ります。ただ「今朝の」言葉が「主」から出た言葉ではないのは事実。外から見ている人の言葉或いは認識です。「今朝の」を颱風の「後」と結びつけるとおもしろくない。さて「今朝の」くぉ同解釈するか!
予報見るたび猫の目の野分かな
・まさに然り!
初秋や薄暮の風の尖り消ゆ
「風の尖り消ゆ」は10号颱風の「急に勢いが衰えた」と解釈しましたが!? それより、龍峰さんが枯野のただ中で案山子のように突っ立っている光景と見たほうが面白いですが。
八十路越え残暑の背なのひしゃげをり
・長生きをして下さい!
句づくりの内なる目覚め芒かな
・この句も難しい。「芒」と「あや」を結び付けると謎が氷解します。
妻天塩かけし西瓜よプロ裸足
・ご馳走さまでした!
山門にしばし大の字涼新た
・がらりと光景が変りました。京都南禅寺の山門かな!
後のブロック「三方五湖」の俳句は、眼前の光景とその背後の歴史をうまく詠まれていて感心しました。
以上
①主住むや住まぬや今朝のさるすべり。
~”この暑さの中、家の主は高原の別荘の方へいっているのではないか?、と百日紅の花は独り言をいっているようだ。
②句づくりの内なる目覚め芒かな
~我らが師匠あやさんが、まだご健在の頃曾爾原に行って、芒の句を数多く詠んだことがありました。そのことが私達が俳句にいそしむ結果につながったのかも知れません。
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三方五湖、若狭縄文博物館。そしてまた「熊川宿」など、詠み手と同じルーㇳを歩き回った(いや車だったかも)ことがありました。懐かしく思い出します。
③湖越しに若狭の海や夾竹桃
~はるばる歩いて若狭の海が見えて、ほっとした。ふと横を見ると夾竹桃の花が咲いていて、心安まる思いがした。
④新涼の墨絵眼前三方五湖
~中国の湖水地方の景色を思い起こさせるような名句。イチオシの句です!
⑤秋雨や時経て眠る熊川宿
~秋雨が降って、熊川宿も雨に霞んでいる。時代が経つの忘れてしまうようだ。
紙上大吟行を楽しませていただきました。
投句も去ることながら、熊川宿の街道の土の色が、
何とも言えないぐらい、しみじみときます。
そこで次の句をいただきます。
・ 縄文は土と炎秋暑し
かってこの地を訪れたことがあり、その時の空気感は、現代のそれとは違っていたと思っています。
次に、冒頭に戻って次の句をいただきます。
・予報見るたび猫の目の野分かな
この句を受けて連句の脇句を思いつきました。江戸時代の野分と、今日ではその中身が様変わりで
風情に欠けるなと思います。
有難うございました。
葉有露拝
九分九厘様、ゆらぎ様、葉有露様の皆様
今回より小生は鑑賞のみの参加となりました。
そこで是々非々の「忌憚無く選び鑑賞」させて頂きます!!。
龍峰様
さすが昔より、紀行俳句はお手のものですね?
実際に訪れた感動が伝わり、感嘆致します。
かつらたろう(桑本栄太郎)
☆予報見るたび猫の目の野分かな
今回の台風10号は過去に例がない程の大型であり、
鹿児島へ上陸する一週間前より連日の予報でありました。自足10キロと足踏みばかりであり、行方も猫の目のような変化ぶりでした。
然し、上陸するや否やずぶずぶの砕けでしね!!。
☆八十路越え残暑の背なのひしゃげをり
時折ひょいと鏡に映る吾が姿勢を見れば、背筋は真っ直ぐであったものが、前かがみとなって居り愕然としますね?長く続いた酷暑と、残暑の為パソコンばかりのせいです。
☆山門にしばし大の字涼新た
フットワークの良い龍峰様ならでは若桜の三方五湖巡りでしたね?北国は涼しかった事でしょう!!。
☆湖越しに若狭の海や夾竹桃
若桜の海は湖越しに臨めるようですね?夾竹桃の花が景色に色を添えます。
☆新涼の墨絵眼前三方五胡
有名な三方五湖は、絵に描いた墨絵のような風情なのですね? 海風も涼しくまさに新涼の景色のようです。
☆年縞や七万年の史知る秋
「年縞」との言葉を初めて知りました!!。この年齢になり良い勉強です。三方五湖の一つ水月湖は荒れる事がなく、火山の灰が静かに沈殿したままの所為とか?又、大山の年縞と云う事も珍しい限りです。
☆縄文は土と炎よ秋暑し
一瞬にして、縄文時代の火炎土器を想起しました。まさしく「土と炎」の織り成す、芸術的生活道具ですね!!。
☆秋雨や時経てねむる熊川宿
若桜と京都を繋ぐ要所の熊川宿ですね?長い歴史の中で、時を繋ぎ秋雨の中に眠って居ります。雨に濡れ赤茶けた鄙びさが風情を誘います!!。
地名の「若狭」の事を「若桜」と誤記して居ります。訂正致します。お恥ずかしい!!。
沢山の拙句に深読みのコメント有難うございます。
主住むや住まぬや今朝のさるすべり
*そもそも句の意味は街中を散歩するに、「立派な家の門灯は点いているものの、どうも人の気配が薄い。しかし、庭の百日紅は今朝も鮮やかな花を咲かせている。世の移ろいのはかなさ、いずれ我が身も同じように人に思われるかも、と思えてしまった。」ということです。
予報見るたび猫の目の野分かな
*今回の台風を見ていて、台風も従来の延長にない異次元世界に突入していると感じました。
尚、猫の目と台風の目に関連を持たせましたが。
初秋や薄暮の風の尖り消ゆ
*色々な解釈興味深く読ませていただきました。一日の猛暑の夕暮れに、立秋を過ぎると、何気なくふと感じたものです。
八十路越え残暑の背なのひしゃげをり
*暑さと枯れていく我が身を重ねてみました。
句づくりの内なる目覚め芒かな
*読みとっていただいた通りです。芒を見るたびわが俳句の原点を思い起こします。
妻天塩かけし西瓜よプロ裸足
*何年も西瓜作りをトライしてきたが、今年のモノは上出来だったので思わず詠んだ。
山門にしばし大の字涼新た
*かつて夏に永平寺を訪ねた時の実景です。山の中の山門は広々、涼しい風が吹き通る。思わず横になると、そのまま一寝入りした。
三方五胡の句のコメントありがとうございます。
暑い中拙句への沢山のコメントありがとうございます。
主住むや住まぬや今朝のさるすべり
*別荘なんぞ滅相もないことです。草深いマッチ箱のわび住まいです。朝の散歩で立派な邸宅も人の気配が薄い。しかし、百日紅は今朝も鮮やかに咲いている。世の移ろいはかなさを感じました。
句づくりの内なる目覚め芒かな
*ご感想の通りです。芒を見るたび、わが俳句の原点を思い出します。
湖越しに若狭の海や夾竹桃
*解釈していただいた通りです。但し、乗り物で行きました。日本的な景色ですね。
新涼の墨絵眼前三方五胡
*評価の言葉有難うございます。ただほめ過ぎです。
秋雨や時経て眠る熊川宿
*テレビなどで、昔からの鯖街道やその中心の熊川宿の賑わいが紹介されていたので期待して行きましたが、あまりもの静けさに正直驚きました。この後もここはそのまま眠り続けるのでしょう。
拙句を、かつての思い出と共に、深く読み込んでいただき有難うございます。
縄文は土と炎よ秋暑し
*三方五湖のほとりには縄文人が多く住んでいたことを知りました。立派な赤茶けた素朴な土器をみていると。人間の原点の思いが伝わってくるように感じました。
予報見るたび猫の目の野分かな
*今回の台風の動きから過去とは違う、別次元に台風も入ったと感じました。江戸の風情ははるか歴史のかなたですね。
拙句に対し、丁寧に一句ごとにコメントを頂き有難うございます。
予報見るたび猫の目の野分かな
*ご指摘の通りです。もはや台風もこれまでのモノとは違う、次世代のモノに置きかわりましたね。
八十路越え残暑の背なのひしゃげをり
*仰せの通りです。この夏は、残暑で一段とひしゃげてしまいました。
山門にしばし大の字涼新た
*以前夏に永平寺へ行った時のことを思い浮かべ詠みました。さすが、俗世間と違う空気が流れていました。
湖越しに若狭の海や夾竹桃
*三方五湖は海の際です。高台からの一望はきれいです。
新涼の墨絵眼前三方五胡
*ご感想の通りです。わが詠みではとても実景にはかなわないです。
年縞や七万年の史知る秋
*小生も今回初めて「年縞」なる言葉を知りました。一見の価値ありです。機会ありましたら是非行かれたら良いと思います。
縄文は土と炎よ秋暑し
*三方五湖の辺りには沢山の縄文土器や丸木舟などが発見されています。近くで見ると土器も舟も立派なものです。
秋雨や時経てねむる熊川宿
*仰せの通りです。今は静かに眠るがごとくでした。かつての賑わいはどこに行ってしまったのだろうか。秋雨の中に感慨にふけりました。
秋の初めのやわらかく、しかし確かな風の
感触を頂きました。
湖越に若狭の海や夾竹桃
私には想像を越えた、大きな情景の広がり
を頂きました。
縄文は土と炎よ秋暑し
縄文土器の力強さに秋の暑さが
饒舌に語りかけていると感じました。
紘子(やまもも)