多分、今回の駄句をご覧になっても何のことかお分かりにならないでしょう。
そこで少々蛇足ながら説明を書き添えておきます。前書きのようなものです。こういうことは俳句の投句としては邪道かも知れませんが、いわば、わたしのメモワールと思ってお許しください。
藍浴衣白雨たばしるなかをゆく
~このところ夏用に浴衣を仕立ててもらったりしている。小千谷縮み。それに藍の布地に細い縞模様が入った近江縮み。そんなこんなで、浴衣を着た男、女の句が浮かんできた。
蓮散華水面にに浮かぶ命かな
三界は唯一心と朝茶の湯
追憶のかなたに沈む蝉しぐれ
~このところの猛暑である。少し早いが8月15日に終戦の詔勅をラジオで聞いた日のことを思い出した。往事茫々である。もちろん藤沢周平の名作『蝉しぐれ』のエピローグの一節も。”顔を上げると、さっきは気づかな かった黒松林の蝉しぐれが耳を聾(ろう)するばかりに助左衛門をつつんできた”
秋篠の里の小径の苔の花
~秋篠寺を訪れて。本堂に至るアプローチに見事な苔庭があった。
消え失せし五重塔や西大寺
~近鉄で奈良へゆくと、必ず大和西大寺という駅を通過する。ここに古刹にして巨大な寺院があったとはこれまで知らなかった。しかし、ここに豪壮な五重の塔があったのだが、今はその塔の跡のみが残されていた。何か無常観を感じる。
紅の花立石寺からの風渡る
~まことに酔狂な旅をした。紅花が半夏生の時に一輪花をつける。そして次の日から二輪三輪とつけてゆく。それをみたさに山形へ。最上川周辺では、数日まえの暖かさで花は開ききっていたが、幸い山形市の山間、蔵王に向かう途中の高沢というでまだ五分咲きというところ見つけることができた。そこの紅花畑の向こうには高い岩山があり、芭蕉で有名な立石寺の裏手であった。
旅の宿くどき上手に玉こんにゃく
~「くどき上手」というのは山形の銘酒、亀の井酒造の逸品である。爽やかにしてフルーティ。こんなうまい酒は飲んだことがない。それに玉こんにゃくは山形の名産である。俳句とよべるものではないが、心覚えとして。
朝涼にやらんかなの気をもらひ