秋に入って一日奈良井宿に遊んだ。
この宿場はそっくり昔の佇まいが残されており、ゆっくり過ごすにはちょうど良い大きさである。小さな店には、この土地の物が並べられている。何といってもそばが旨い。見つけたのは「徳利屋」という店で、江戸末の大きな古民家がそのまま使われている。家は武田信玄の頃にスタートし、江戸の頃は庄屋や脇本陣を担っていた。そばを食べているとすだれを通して秋風が流れ、それだけで来た甲斐があったというものである。
木曽の山に囲まれたこの宿場が、いつまでもこの姿を留めていて欲しいものである。
奈良井宿
徳利屋
「木曽の大橋」奈良井宿の裏にかかる。
秋立つや窓に黒雲関ケ原
くねる田になべて稲穂や過疎の村
笹竹をゆらす秋風無人駅
秋空や湧水の音奈良井宿
秋澄むや江戸古民家の信州そば
秋気満つ天井高き土間の甕
秋暮れてそば屋の柱の黒光り
蜻蛉群る百草干したる宿場町
秋興や木曽の川瀬に暮雲帰す
鵙高し木曽の川辺に吟遊す