今日の俳句:書棚・葉有露

長年、目の前に座り続けている書棚の書物を、思いきって入れ替える
ことにしました。
　先ずは孫たちに譲る書物、不要処分品、もう少し手元に置く書物と
分けて見ると、目立つのは平凡社「世界教養全集」全38巻と中央公論社
「世界の名著」でした。
　今まで、書棚の奥にあり日頃縁の遠かっただけに、何か新鮮な感じです。
自分に残された時間を賭けて、目を通すだけになるかも知れませんが、頁を
開くことにしました。

　今日の俳句は、次の5句のみです。

・手持ちの書孫に送りて白露見る
・若き日の書また手にする老いの秋
・古き書を置き直して見る秋残照

・季語季節合わぬままに星月夜
・秋茄子残照ありて我を見る

今日の俳句/葡萄（龍峰）

　　　　
　　　　　　　　　　　　　　狭庭のぶどう棚


暑さも過ぎたと思ったら、もう夜は夏蒲団が必要になってきた。いつの間にか晩秋である。

我が家の狭庭のぶどうが紫色になるには、更に朝晩の冷え込みが必要なのだろう。

世の中の騒ぎが落ち着くこと祈るのみである。




　　　木洩れ日の彩増す庭の葡萄棚

　　　育て方知らず手さぐりぶだう守

　　　一粒に昼と夜ありぶだうの実

　　　天の水地の水閉ずやこのぶだう




　　　僧院の壁にはりつく古葡萄

　　　うねりゆくトレドの丘の葡萄紅葉

　　　息荒らし二百十日の日本海

　　　台風のそれて静寂バッハ聴く




　　　汽笛届く葉月ぐもりの六甲の山

　　　無人駅過ぎて稲穂のそろい揺れ

　　　気まぐれの風に波うつ萩の夕

　　　ひぐらしやこの世はパチンコ可半不可　

今日の俳句/秋桜（ゆらぎ）

なにか新しい句作の道はないものかと思案していたところ、『玉葉和歌集』（勅撰和歌集）に行き当たりました。昔は、本歌取りと言って、古歌を参考にしながら新しい歌を詠むということが行われていました。ただし、季節は必ず、一季ずらすものとされていました。そんなことも考えながら、脈絡もなく乱れ打ち致しました。ご批判、ご叱責をお待ちしています。

　カッチーニアヴェ・マリア弾く長き夜

　虫の音や絵本手にする漢（をとこ）あり

　なにもかもあるがままにと雨名月

　名月や明日ゆく道を照らしをり
　　　～藤原為兼の和歌、”とまるべき　宿をば月に　あくがれて　明日の道行く夜半の旅人”を参考に詠みました。

　
　身に入むや水村山郭酒旗の風
　　　～杜牧の「江南の春」から

　湯上がりに銀木犀の香を浴びし

　さみどりの銀杏置きし酒亭あり


　獺祭忌道後温泉独り旅
　　　～９月１９日は、子規忌。

　青北風（あおぎた）や風に欺くこと絶えず

　秋桜墓石に刻みし「なほ薫る｝
　　～向田邦子を偲んで。森繁久彌の、”「花ひらき、はな香る、花こぼれ、なほ薫る」との文字が刻まれています。

今日の俳句 扇子 ／ 九分九厘

　　　　　　　


　写真は30年ほど前に入手した、米長邦雄名人・永世棋聖直筆の扇子である。論語の「死生有命  富貴在天」からの引用である。とても頑丈で一回り大きなもので長らく愛用している。扇子は数本ため込んでいるが、最近の外出自粛では出番がない。時に電車に乗ると超小型の扇風機を使う多くの人を見かける。どんどん世の中は変わって行くものだ。コロナのせいで、我が町は人の動きが止まり、暑さも加わって人影が消えてしまった。家の中では音楽と読書三昧の毎日である。
 
　　　　　　　扇子持つ勝負師ありて飛車を打つ　
　　　　　　　墨彩の扇求めし鳩居堂
　　　　　　　扇子より優る利器あり電車中
 
　　　　　　　鱧湯引くその時だけの無我なりし
　　　　　　　微塵切りのたまねぎこぼし望み絶つ
　　　　　　　庖丁研ぐ毎日の夏すぎゆきぬ
　　　　
　　　　　　　炎昼の謐けさに老ふ二人連れ
　　　　  　　「オペラ座のファントム」聴くや夏の怪
　　　　　　　九月来し月日は我の先をゆく
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　以上