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名田出身俳優、田中稔彦さん初監督映画がロッテルダム映画祭最優秀の快挙〈2024年2月8日〉

2024年02月08日 08時30分00秒 | 記事


タイガーアワードを手にし仲間と喜び合う
田中さん(前列中央)


 御坊市名田町上野出身で俳優の田中稔彦さん(40)=東京都=が初監督・脚本を手掛けた190分の長編映画「莉の対」(れいのつい)が、オランダの第53回ロッテルダム国際映画祭のメインであるタイガーコンペティション部門で最優秀賞(タイガーアワード)を獲得した。日本の作品が同賞を受賞するのは10年ぶりで単独での受賞は初の快挙。日本では今春に公開予定となっている。

 同映画祭は1872年に始まり、毎年12日間の会期中に約600作品が上映され、来場者数は30万人を記録するほど。近年では世界三大映画祭に次ぐ重要な映画祭の一つとされ、1995年に創設されたタイガーコンペティションは新進監督を対象にした賞。今年は去る1月25日から2月4日まで開催され、毎年、世界各国から数千以上の応募がある中、同部門では14作品が正式出品。授賞式の約1時間の間に発表された7つの賞のうち、最後に最大の目玉、タイガーアワードとして、「莉の対」のタイトルが読み上げられると、会場の後方から田中さんらチームが一斉に「やったー!」という大きな歓声が上がった。
「莉の対」は東京と北海道を舞台に、出会うはずのなかった2人の男女の物語。自分の存在の希薄さを感じながら生きている光莉。ふとしたきっかけで1枚の写真に心を惹かれ、その写真を取った真斗に自分のポートレイト写真を撮ってくれないかとメールで依頼。失聴者であることを伝える真斗の返信。光莉と真斗、それぞれを取り巻く人間関係が少しずつ影響を与え合い、そしてもろく崩れていく。自然の美しさと対比されるように様々な人間模様を描いている。
 商業的な映画にするつもりはなく、アート作品にも偏らず、メインキャストは全員オーディションで決定、サブキャストまでスポットライトが当たる内容にと、どこにでも居るような問題を抱えている人たちに焦点をあてた。邦画作品がノミネートすること自体が希で、この10年間で2本しかノミネートされていないという。同部門で無名でありながら、「莉の対」は会期前に行われた全3回の一般上映は完売しており、大きな期待が寄せられていた。
 田中さんは「これまでクルーやキャストや応援者と信じられないような奇跡の連続を目の当たりにして一緒になって夢を見続けてきました。何も賞が取れなかったら。夢の終わりを見させてしまうのが怖い。と思ったから、名前を呼ばれた瞬間、泣き叫び、これでまたみんなと一緒に夢の続きが見れるぞ!」と。既に世界各国の映画祭のプログラマーから続々と連絡が入っており、各種メディアへの露出も一気に増えた。田中さんは「最高の追い風が吹いてきたので、これに乗っていけるところまで行きたい」と力を込め、次作にも取りかかっている。
 田中さんは、日高高校卒。滋賀大学経済学部に在学中、米国ミシガン大学に留学、卒業後は三井住友銀行に就職。その後、俳優に転身し、舞台を中心にしながら、映画やテレビなどマルチに活動し、100を超える作品に出演。2022年5月に(株)NoSaint.&Bloomを設立し、代表取締役社長に就任。初年度の業務で「莉の対」を脚本、監督、出演、編集を手掛け、制作した。


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