kotoba日記                     小久保圭介

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きれい?

2007年01月15日 | 生活
同僚でツバキノオジという人がいる。
労働場の一角に、プランターがある。
元は花が植えてあったのだけど、枯れて、
昨夏以降、そこらへんで調達してきた花や草で、
僕とツバキノオジは、生け花というか、花がない土がさみしいので、
適当に植えて遊んでいる。
「ここの角度がどうの」とか「バランスがどうの」とか、
そういうことをして遊んでいる。
タイトルが必要だということで、
適当にタイトルを付けて、プランターに添えてある。
最近の作品名は「わ」。これで5作目だ。

ツバキノオジと僕は朝、若者達が歩いてくるのを見ていた。
若者達は信号待ちをしていた。
女の子3人と男の子2人。
近くの美術大学の学生さんである。
何故判るのかというと、
キャンバスを持っていたりする風は、一様に雰囲気が似ているのだ。
で、オジは若者の中の目立つ男の子に声を出した。
「おのれらあっこの学生じゃろう?」
「はい」
と言う。
「じゃあ、ちょっと見てほしいものがあるんじゃあ」
オジは作品「わ」を見せたいのだ。美術を志す若者達に。
「今、急いでいるんで」
と若者はオジに言った。
「件pじゃあ、わいらが作ったんだ」
とオジは引き下がらない。見せたいのだ。無理でしょ、急がしいのだから。
「きれい?」
と若者が言った。
きれい。その言葉がなんだかいやらしく聞こえた。
「信号待ちの間でいいから」
とオジは言う。
言うと同時に、仕方がないな、というふうに「きれい?」
と言った若者がオジの後ろを小走りに着いていく。
他の女の子も、「何何?」と言って、驚いたように着いていく。
数メートル先にある「わ」を見て、
美術大学の学生さんたちは、笑った。
そして、僕にも会釈して信号を渡っていった。
オジはご満悦である。
ツバキノオジは、抜けている。
「見てよ見てよ」と自作をアピールする。
作品の善し悪しはともかく、
オジのエネルギーに僕は圧唐ウれた。
また、あの学生さん達も。
件pとは何か。
どこぞで拾ってきた草木をまだ暗い朝、プランターに挿して、
活けているオジ。
タイトルを一生懸命考えるオジ。
自画自賛するオジ。
誰彼の腕を引っぱって見せるオジ。
「誰もが件p家である」と言ったのは現代音楽家のジョン・ケージだった。
オジは件p家である。生活は件pだ。
そのことを、彼らは判ってくれるだろうか。
判ってほしいと思う。
きれいなのは、ツバキノオジの遊ぶこころなのだ。
コメント
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